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融資による調達

増額を断られた理由を、銀行はどこまで教えてくれるか

断られる理由は5つに収まります。銀行が言える範囲、言い方からの読み取り方、「なぜ」でなく「どういう条件なら」と聞く方法、自分で上限を診断する計算を整理します。

公開:2026年9月14日 Creww Finance Media 編集部
この記事の内容

  1. 「総合的な判断」で終わらせない
  2. 銀行は、どこまで言えるのか
  3. 断られる理由は5つに分かれる
  4. 理由①|金額が過大
  5. 理由②|債務者区分
  6. 理由③|与信方針
  7. 理由④|保全が足りない
  8. 理由⑤|資料・説明が足りない
  9. 言い方から読み取る
  10. 聞き方を変えると、答えが変わる
  11. 数字で見る|自分で診断する
  12. 理由別の打ち手
  13. 再申込のタイミング
  14. 他行に行くべきか
  15. 断られた後にやるべきこと
  16. チェックリスト
  17. よくある質問

「総合的な判断」で終わらせない

増額を申し込んで断られたとき、返ってくる答えは「総合的に判断した結果」であることが多くあります。これでは、次に何をすればよいか分かりません。

しかし、断られる理由は、実は限られた数のパターンに収まります。そして、理由によって次の打ち手はまったく違います。資料を足せば通るものもあれば、資料をいくら足しても通らないものもあります。

理由を特定することが、次の一手を決める

理由が分からないまま何度も申し込むと、案件として扱ってもらえなくなります。まず何が原因だったのかを、可能な範囲で特定してください。

この章の要点

理由は限られたパターンに収まります。特定しないと次の一手が決まりません。

銀行は、どこまで言えるのか

項目 言えるか 理由
債務者区分そのもの 言えない 内部の査定結果
審査の基準・スコアの内容 言えない 審査の手法にあたる
本部の与信方針 言いにくい 内部の方針
財務上の懸念点 言える 決算書から読み取れる客観的な事実
資料の不足 言える 改善の依頼として
金額の妥当性 言える —
保全の必要性 言える 条件の提示として

つまり、「なぜ貸せないか」は言えなくても、「どこが弱いか」は言えるという構造です。聞き方をここに合わせる必要があります。

なお、経営者保証については、2023年4月から金融機関に個別具体的な説明が求められています。保証を求める理由と、解除の可能性を高める方法について、説明を求める根拠があります。詳しくは 経営者保証ガイドライン の記事で扱っています。

この章の要点

「なぜ貸せないか」は言えなくても「どこが弱いか」は言えます。

断られる理由は5つに分かれる

— 理由 資料で解決するか 時間
① 金額が過大 金額を下げれば解決 すぐ
② 債務者区分が下がっている しない 1期以上
③ 本部・支店の与信方針 しない 読めない
④ 保全が足りない 条件の組み替えで解決しうる すぐ
⑤ 資料・説明が足りない する すぐ

①④⑤はすぐに手が打てます。②③は待つか、他行に当たるかになります。この切り分けができれば、無駄な時間を使わずに済みます。

この章の要点

①④⑤はすぐ打てる手がある。②③は待つか、他行かです。

理由①|金額が過大

もっとも多く、もっとも解決しやすい理由です。

何が過大なのか 判定
債務償還年数が長くなりすぎる 有利子負債 ÷ 簡易キャッシュフロー。実務では10年が目安
その金融機関の与信枠を超える 1社への与信の上限が内部で管理されている
支店長の決裁権限を超える 本部の審査になり、基準が厳しくなる
資金使途に対して大きい 使途から積み上げた金額と合っていない
半額なら通ることがある

3,000万円で否決された案件が、1,500万円なら支店決裁で通る——という形はよくあります。必要額に届かなくても、実行できるほうが前に進みます。残りは他行や別の手段で埋める組み立てに切り替えてください。

金額を下げるほかに、期間を延ばすという手もあります。期間が長ければ毎月の返済額が下がり、返済能力の説明が立ちやすくなります。決裁の仕組みは 融資の稟議はどこで止まるか の記事で扱っています。

この章の要点

金額を下げる、期間を延ばす。「全額を1行から」の前提を外すと道が開けます。

理由②|債務者区分が下がっている

これは、資料を足しても変わりません。区分そのものが動かない限り、持ち込める案件の形が限られます。

区分が下がる原因 戻すのに要する時間
2期連続の赤字 黒字化して1〜2期
債務超過(実質ベース) 数期。資本性の資金が入れば早い
延滞 1年以上
条件変更(リスケ) 数年

区分が原因かどうかは、担当者の言い回しから推測できます。「保証協会でお願いします」「今期の着地を見てから」「まず改善計画を」といった言葉が出ていれば、その可能性があります。

区分の仕組みと戻し方は 債務者区分 の記事で扱っています。期中の情報提供と、資本性の資金の投入が、比較的早く効く手段です。

この章の要点

区分が理由なら資料では変わりません。期中の情報提供と資本の充実が効きます。

理由③|与信方針

こちらの業績とは無関係に起こる理由です。

方針の例 影響
特定の業種への融資を絞っている 良い会社でも出せない
1社への与信の総額に上限がある これ以上増やせない
支店の目標・方針が変わった 同じ案件でも扱いが変わる
自行の資金・資本の状況 —
これは、他行では違う判断になりうる

金融検査マニュアルの廃止後、金融機関ごとの判断の幅は広がっています。業種方針や与信枠が理由なら、他行に当たる価値が高い理由です。同じ決算書でも、別の金融機関では通ることがあります。

ただし、延滞や条件変更のような事実は、どこでも重く見られます。他行に当たる価値があるのは、理由が③(またはその金融機関固有の事情)である場合です。

この章の要点

③が理由なら他行で違う判断があり得ます。業績と無関係な理由だからです。

理由④|保全が足りない

「担保があれば」「保証協会でなら」という言い方で示されます。会社の信用だけでは足りないが、保全が取れれば検討できるという状態です。

組み替えの方向 内容 注意
保証協会付きに切り替える プロパーが難しい場合 協会の枠を使う
担保を入れる 不動産、預金など 完済まで外れない
期間を短くする 短期にして実績を作る 借換の手間が増える
金額を下げる 保全の必要性が下がる —
借換とセットにする 金融機関の残高が大きく増えない —

担保を入れるかどうかは慎重に判断してください。一度入れた担保は、その借入を完済するまで外れません。他の調達の余地を狭めます。

最後の「借換とセットにする」は有効です。既存の借入を借り換えて新規分を上乗せすれば、残高の増加が小さく見えます。借換保証 の記事で扱っています。

この章の要点

保全が理由なら組み替えで通ることがあります。担保は最後の手段にしてください。

理由⑤|資料・説明が足りない

否決というより、そもそも案件として上がっていない状態です。「検討中です」が続く場合、これを疑ってください。

足りていないもの 影響
資金使途の内訳 稟議書の資金使途の欄が埋まらない
必要額の根拠 金額の妥当性が説明できない
返済原資 返済計画の欄が書けない
直近の業況 最新の状況が分からない
他行取引の状況 全体像が見えない

この理由による停滞は、時間だけが過ぎて可否がはっきりしないのが特徴です。そして、こちらが動けば解決します。

資料の揃え方は 銀行面談の準備、使途の書き方は 資金使途の説明 の記事で扱っています。

この章の要点

「検討中」が続くなら⑤を疑う。こちらが動けば解決します。

言い方から読み取る

言われ方 推測される理由 次の一手
「金額を見直していただければ」 ①金額 下げて再提案する
「本部の判断で難しく」 ①または③ 支店決裁の範囲まで下げる
「今期の着地を見てから」 ②区分(数字が惜しい) 着地見込みを資料で示す
「まず改善計画を」 ②区分(すでに下にある) 計画を作る。時間がかかる
「この業種は今ちょっと」 ③与信方針 他行に当たる
「当行の残高が既に」 ③与信枠 他行に当たる
「保証協会でお願いできれば」 ④保全 協会の枠を確認して切り替える
「担保をご検討いただければ」 ④保全 慎重に判断する
「もう少し資料を」 ⑤資料 すぐ揃える
期日を示さず「検討中」が続く ⑤資料 必要な資料を直接聞く

断りの言葉そのものより、その前後で何に触れたかに情報があります。決算の話が出れば②、業種の話が出れば③、書類の話が出れば⑤です。

この章の要点

断りの言葉よりその前後で何に触れたかを見てください。

聞き方を変えると、答えが変わる

聞き方 返ってくるもの
「なぜ貸せないのですか」 「総合的な判断で」
「どうすれば貸してもらえますか」 一般論になりやすい
「どういう条件なら、ご検討いただけますか」 金額・期間・保全の具体的な話になる
「当行の評価上、どこが弱く見えていますか」 財務上の懸念点が返る
「金額を◯万円にすれば、可能性はありますか」 ①かどうかが分かる
「保証協会付きなら、いかがですか」 ④かどうかが分かる
「今期の決算が出たら、再度ご相談してよいですか」 ②かどうかが分かる
「なぜ」ではなく「どうすれば」で聞く

理由を直接聞くと、言えない領域に触れるため一般論になります。条件を具体的に示して、可能性を確認する形にすると、答えられる範囲で返ってきます。

下の3つは、理由を切り分けるための質問です。金額を下げれば可能性があると言われれば①、保証協会付きなら検討できると言われれば④、決算を見てからと言われれば②——と分かります。

この章の要点

条件を示して可能性を聞く。理由が切り分けられます。

数字で見る|自分で診断する

聞く前に、自分で当たりをつけられます。次の3つを計算してください。

指標 計算 例
実質純資産 純資産 -(役員貸付金・回収不能の売掛金・不良在庫など) 2,000万円 - 1,300万円 = 700万円
簡易キャッシュフロー 税引後利益 + 減価償却費 700万円 + 200万円 = 900万円
債務償還年数 有利子負債 ÷ 簡易キャッシュフロー 7,200万円 ÷ 900万円 = 8年

ここで3,000万円を追加で借りると、どうなるか。

項目 現在 3,000万円借入後
有利子負債 7,200万円 1億200万円
簡易キャッシュフロー 900万円 900万円(変わらない)
債務償還年数 8年 約11.3年
8年現在の債務償還年数
約11.3年3,000万円借入後
10年実務上の目安

10年という目安を超えます。つまり、この会社が3,000万円を求めて断られたなら、理由は①(金額が過大)である可能性が高い、と当たりがつきます。

逆算すると、900万円 × 10年 = 9,000万円が負える総額の目安。既存の7,200万円を引いて、1,800万円までなら説明が立つことになります。

申し込む前に計算しておく

この計算をしてから申し込めば、断られること自体を減らせます。そして断られたときも、理由の見当がつきます。計算方法は 返済原資の説明 の記事で扱っています。

この章の要点

簡易CF × 10年 - 既存借入が説明できる上限。超えていれば理由は①です。

理由別の打ち手

理由 打ち手 効果が出るまで
①金額 金額を下げる。期間を延ばす。他行と分ける すぐ
②区分 月次の情報提供。資本性の資金。黒字化 1期〜数期
③方針 他行に当たる。時期を変えて再打診 読めない
④保全 保証協会付きへ。借換とセット。短期にする すぐ
⑤資料 使途の内訳・資金繰り表・返済原資を揃える すぐ

②に対する打ち手のうち、もっとも早く効くのは資本性の資金です。エクイティでの調達や、役員借入金の資本性借入金への転換は、決算を待たずに実質純資産を改善します。

③については、時期を変えて再打診するという選択肢もあります。業種方針は永続的なものではありません。ただし、いつ変わるかは読めません。

この章の要点

②に効くのは資本性の資金。決算を待たずに実質純資産を改善できます。

再申込のタイミング

理由 再申込の目安
①金額 すぐ。金額を下げて再提案
⑤資料 すぐ。資料を揃えて再提出
④保全 すぐ。条件を組み替えて
②区分(今期の数字が理由) 決算確定後
②区分(すでに下にある) 1期以上
③方針 読めない。他行を優先
同じ内容で繰り返さない

理由が分からないまま同じ内容で何度も申し込むと、案件として扱ってもらえなくなります。再申込は、必ず何かを変えてから行ってください。

①と⑤なら、その場で「では、この形ではいかがですか」と切り替えられます。面談を終える前に、代案を出せるよう準備しておいてください。

この章の要点

再申込は必ず何かを変えてから。同じ内容の繰り返しは逆効果です。

他行に行くべきか

理由 他行で通る可能性
①金額 ある(その金融機関の枠の問題なら)
②区分 低い(どこでも同じ決算書を見る)
③方針 高い(業績と無関係な理由)
④保全 あり得る(保全の考え方が違うことがある)
⑤資料 —(まず資料を揃える)

③が理由なら、他行に当たる価値が高いです。金融検査マニュアルの廃止後、金融機関ごとの判断の幅は広がっています。

ただし、取引実績のない金融機関に、いきなり大きな金額を持ち込んでも通りません。審査には過去の取引実績が材料として使われます。平時から2〜3行と関係を作っておく意味がここにあります。

関係の作り方は 複数行から借りるときの順番と配分 の記事で扱っています。

この章の要点

他行が効くのは主に③。ただし取引実績がないと、そこでも通りません。

断られた後にやるべきこと

順 やること
1 「どういう条件なら検討いただけますか」と聞く
2 「当行の評価上、どこが弱く見えていますか」と聞く
3 答えを記録する
4 自分で実質純資産・簡易CF・債務償還年数を計算し、理由の見当をつける
5 理由を5つのどれかに当てはめる
6 打ち手を決める(金額を下げる/資料を揃える/他行/待つ)
7 関係は切らない。月次の情報提供は続ける

7番が重要です。断られたからといって、その金融機関との関係を切らないでください。状況が変われば、次は通ります。月次の情報提供を続けていれば、改善したときにすぐ持ち込めます。

また、3番の記録は次の交渉で効きます。「前回ご指摘の点は、こう改善しました」と言えることが、大きな差になります。

この章の要点

断られても関係は切らない。指摘は記録し、次の交渉で使ってください。

チェックリスト

断られたとき/断られる前に

  • 申し込む前に、実質純資産を計算した
  • 簡易キャッシュフロー(税引後利益+減価償却費)を計算した
  • 債務償還年数を計算した(借入後も)
  • 簡易CF × 10年 - 既存借入で、説明できる上限を出した
  • 希望額が、その上限を超えていないか確認した
  • 資金使途の内訳表・資金繰り表・返済原資を用意した
  • 断られたとき「どういう条件なら検討いただけますか」と聞いた
  • 「どこが弱く見えていますか」と聞いた
  • 金額を下げた場合の可能性を確認した(①の切り分け)
  • 保証協会付きでの可能性を確認した(④の切り分け)
  • 決算後の再相談が可能か確認した(②の切り分け)
  • 言われた内容を記録した
  • 理由を5つのどれかに当てはめた
  • 同じ内容で再申込していない
  • 月次の情報提供を続けている
この章の要点

1〜5番を申し込む前にやれば、断られること自体が減ります。

よくある質問

Q. 断られた理由を教えてもらえますか
債務者区分や審査の基準は内部の情報なので、そのままは教えてもらえません。ただし財務上の懸念点、資料の不足、金額の妥当性、保全の必要性については答えてもらえます。聞き方を合わせてください。
Q. どう聞けば、具体的な答えが返りますか
「なぜ」ではなく「どうすれば」で聞いてください。「どういう条件ならご検討いただけますか」「当行の評価上、どこが弱く見えていますか」という形なら、答えられる範囲で返ってきます。
Q. 金額を下げれば通りますか
理由が金額の過大さなら通ります。債務償還年数が目安を超えていないか、支店長の決裁権限の範囲か——この2つを確認してください。「金額を◯万円にすれば可能性はありますか」と聞くのが早いです。
Q. 自分で借りられる上限を計算できますか
目安は出せます。簡易キャッシュフロー(税引後利益+減価償却費)× 10年 - 既存の有利子負債です。これを超える希望額は、金額の妥当性から議論が始まってしまいます。
Q. 「検討中です」が続いています
資料が足りず、稟議書が書けていない可能性があります。「稟議で必要な資料は何ですか」「いつ頃、可否のご連絡をいただけますか」と直接聞いてください。期日が出ないなら、案件が動いていません。
Q. 断られたら、すぐ他行に行くべきですか
理由によります。業種方針や与信枠が理由なら、他行で違う判断があり得ます。債務者区分が理由なら、どこでも同じ決算書を見るため可能性は低くなります。まず理由を切り分けてください。
Q. 取引のない金融機関に持ち込んでも通りますか
大きな金額は難しいです。審査には過去の取引実績が材料として使われます。平時から2〜3行と少額でも取引を作っておくことが、この場面での備えになります。
Q. 同じ内容で再申込してもよいですか
避けてください。案件として扱ってもらえなくなります。金額、期間、保全、資料のいずれかを変えてから再申込してください。
Q. 「担保があれば」と言われました
保全が理由だと分かります。ただし担保は慎重に判断してください。一度入れると完済まで外れず、他の調達の余地を狭めます。保証協会付きへの切り替えや、借換とセットにする形を先に検討してください。
Q. 区分が理由だと、どのくらい待ちますか
原因によります。2期連続赤字なら黒字化して1〜2期、延滞なら1年以上、条件変更なら数年です。資本性の資金を入れれば、決算を待たずに実質純資産を改善できます。
Q. 断られた金融機関とは、距離を置くべきですか
切らないでください。状況が変われば次は通ります。月次の情報提供を続けていれば、改善したときにすぐ持ち込めます。指摘された点を記録し、次に「こう改善しました」と言えるようにしてください。
Q. 経営者保証を求められた理由は、聞けますか
聞けます。2023年4月から、保証を求める場合に、どの要件が満たされていないか、どう改善すれば解除の可能性が高まるかを、金融機関が個別具体的に説明することが求められています。
出典

  • 中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針、検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方、経営者保証改革プログラム — 金融庁
  • 経営者保証に関するガイドライン — 日本商工会議所/全国銀行協会
  • 資金繰り・融資に関する支援策 — 中小企業庁