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融資による調達

複数行から借りるときの順番と配分

配分は設計しないと偏ります。シェアの置き方、メインから話す理由、使途を分けて申し込む方法、金利より期間が効くこと、期日の分散までを整理します。

公開:2026年9月14日 Creww Finance Media 編集部
この記事の内容

  1. 配分は、放っておくと偏る
  2. 何行と取引するか
  3. シェアをどう設計するか
  4. 数字で見る|配分で何が変わるか
  5. 申し込む順番
  6. 同時に申し込んでよいか
  7. 資金使途を分ける
  8. 他行の条件を交渉材料にする作法
  9. 金利差だけで判断しない
  10. 協調融資という形
  11. 期日を分散させる
  12. プロパーと保証付きの配分
  13. 新しい金融機関を入れるとき
  14. 減らすとき、やめるとき
  15. 年1回の点検
  16. チェックリスト
  17. よくある質問

配分は、放っておくと偏る

複数の金融機関から借りていても、設計せずに借りていくと、そのときに話が早かった1行に偏ります。気づいたときには、1行のシェアが8割を超えている——よく見られる状態です。

偏ること自体が悪いわけではありません。問題は、偏っていることを把握していないまま、その1行の判断に依存していることです。

シェア借入総額のうち、その金融機関が占める割合。
メインバンク借入シェアが最も大きく、決済や相談の窓口になっている金融機関。
協調融資複数の金融機関が、条件をそろえて同時に融資すること。
与信枠金融機関が1社に対して負える与信の上限。内部で管理されている。
偏りは、必要になったときに効いてくる

1行が8割を占めている状態で、その金融機関の業種方針が変わったり、支店長が交代したりすると、選択肢がありません。平時には表れず、必要な局面でだけ表れる問題です。

この章の要点

配分は設計しないと偏ります。偏りは、必要な局面でだけ表れます。

何行と取引するか

借入の規模 目安 考え方
〜3,000万円 公庫+1行 まず1行と深く付き合う
3,000万〜1億円 公庫+2行 メインを決め、2行目を作る
1億円〜 公庫+2〜3行 1行の与信枠だけでは足りなくなる

行数を増やせばよいわけではありません。取引行が増えるほど、説明と資料提出の手間が増えます。そして、どの金融機関からも深く関わってもらえない状態になります。

逆に、1行だけだと相手の事情に左右されます。メインを明確に置いたうえで、2〜3行——これが多くの会社にとっての着地点です。

金融機関の選び方は メインバンクとの付き合い方 の記事で扱っています。

この章の要点

行数は借入の規模で決まります。増やせばよいものではありません。

シェアをどう設計するか

配分 状態 評価
1行に80%以上 実質1行取引 相手の事情に左右される
メイン50%+2行で50% メインが明確 標準的な形
3行が33%ずつ 横並び どの行も主導しない
5行以上に分散 — 手間が増え、関係が薄くなる

避けたいのは3番目です。シェアが横並びだと、どの金融機関も「自分がメインだ」と思いません。資金が必要になったとき、どこも「まず他行が動くべき」と考えます。

メインは、はっきり大きくする

メインのシェアを2番手より明確に大きくしておくと、その金融機関に主導する動機が生まれます。取引が大きいほど、その会社が行き詰まったときの損失も大きいためです。

目安として、メインが4〜5割、2番手が2〜3割、残りをその他という形が、実務上バランスが取れています。

この章の要点

横並びを避け、メインを明確に大きく。主導する動機が生まれます。

数字で見る|配分で何が変わるか

借入総額1億円の会社で、2つの配分を比べます。

金融機関 A:偏った配分 B:設計した配分
甲銀行 8,000万円(80%) 4,500万円(45%)
乙信用金庫 1,000万円(10%) 2,500万円(25%)
丙銀行 0円(0%) 1,000万円(10%)
日本政策金融公庫 1,000万円(10%) 2,000万円(20%)
合計 1億円 1億円

ここで、甲銀行が業種方針を変更し、新規融資を絞ったとします。3,000万円の資金需要が出たときに何が起きるか。

項目 A B
甲以外の取引実績 乙に1,000万円のみ 乙2,500万・丙1,000万・公庫2,000万
乙に3,000万円を頼む 既存の3倍。難しい 既存の1.2倍。検討の余地がある
分けて申し込む 丙は取引がなく、時間がかかる 乙2,000万+丙1,000万で組める
結果 甲が動かないと詰まる 他行で組み替えられる
3倍Aで乙に頼む増加幅
1.2倍Bで乙に頼む増加幅
0円Aの丙との取引実績

差を生んでいるのは、平時に作っておいた取引実績です。丙銀行に1,000万円借りていたかどうかで、非常時の選択肢が変わります。

この1,000万円は、必要だから借りたのではなく、関係を作るために借りたものです。利息を払って選択肢を買っている、と考えてください。

この章の要点

差を生むのは平時に作った取引実績。利息を払って選択肢を買っています。

申し込む順番

複数行に借りる場合、順番があります。

順 相手 理由
1 メインバンク 最初に話すのが筋。後から知ると心証を損なう
2 2番手の金融機関 メインの回答を見てから配分を決める
3 公庫・その他 民間で足りない分を補う

メインに最初に話すのは、単なる礼儀ではありません。実務上の理由があります。

メインに先に話す理由 中身
いちばん条件が良い可能性が高い 取引が深く、業況を把握しているため
満額出れば、他行と交渉しなくて済む 手間が減る
後から知られると、心証を損なう 他行の動きは借入金内訳などから伝わる
断られた理由が、他行でも当てはまるか分かる —
この章の要点

順番はメインから。後から知られると、心証を損ないます。

同時に申し込んでよいか

結論から言えば、必要額を分けて同時に申し込むのは問題ありません。避けるべきは、同じ資金使途で全行に満額を申し込むことです。

やり方 評価
3,000万円を、甲に2,000万・乙に1,000万で申し込む 問題ない。使途と金額が対応している
3,000万円を、甲・乙・丙すべてに満額申し込む 避ける。使途の説明が崩れる
甲の回答を待ってから、乙に申し込む 問題ないが、時間がかかる
他行の申込状況は、把握されることがある

保証協会付きであれば協会を通じて分かりますし、決算書の借入金内訳や、担当者どうしのやり取りからも伝わります。全行に満額を申し込んでいると、必要額の説明そのものが疑われます。

時間がない場合は分けて同時に申し込む、余裕があるならメインの回答を待つ——必要な時期から逆算して決めてください。実行までの日数は 融資実行までの日数 の記事で扱っています。

この章の要点

分けて同時申込は問題ありません。全行に満額は避けてください。

資金使途を分ける

複数行に申し込むとき、それぞれに違う使途を割り当てると、説明が自然になります。

金融機関 割り当てる使途 理由
メインバンク 増加運転資金、長期の運転資金 金額が大きい。業況を把握している
2番手 季節資金、つなぎ資金 短期で完結し、実績を作りやすい
公庫 設備資金 長期・固定金利の制度がある
いずれか 枠(当座貸越) 決済口座のある金融機関で

この分け方には実務上の利点があります。それぞれの申込が、独立した案件として成立するためです。「全体で3,000万円必要なので、御行には2,000万円」という説明より、「この使途に2,000万円必要です」のほうが、稟議書が書きやすくなります。

使途の分解方法は 資金使途の説明 の記事で扱っています。

この章の要点

使途を割り当てると、それぞれが独立した案件として成立します。

他行の条件を交渉材料にする作法

他行の条件を示して交渉することは、正当な行為です。ただし、やり方で結果が変わります。

やり方 結果
「乙は1.5%と言っています」だけ 比較されているだけと受け取られる
「乙は1.5%です。同等にしていただけるなら、御行で実行したい」 検討される
見積もりだけ取り、毎回実行しない 案件を上げてもらえなくなる
条件を偽って伝える 後で分かる。信用を失う

違いは実行する意思を示しているかです。金融機関は稟議を書く手間をかけます。実行されない案件を何度も作らされれば、優先度は下がります。

また、条件を偽らないでください。金融機関どうしで条件が分かる場面があり、後で判明すれば、それまでの説明すべての信頼が落ちます。

この章の要点

実行する意思を示したうえで交渉する。見積もりだけ取り続けないでください。

金利差だけで判断しない

金利が低いほうを選ぶ——単純に見えますが、判断材料はそれだけではありません。

比べるもの 内容
金利 年間の差額を金額で出す
保証料 保証付きなら、これも費用
期間 月々の返済額を決める。金利より効くことがある
経営者保証の有無 —
担保の要否 入れると他の調達の余地が狭まる
実行までの日数 間に合わなければ意味がない
今後の関係 その金融機関と、どこまで付き合うか

数字で見ます。3,000万円を借りる場合、金利が0.3%違うと、年間の差は9万円です(残高3,000万円の場合)。一方、返済期間が5年と7年では、月々の元本返済が50万円と約35.7万円で、月14.3万円違います。

年9万円金利0.3%の差
月14.3万円期間5年と7年の差
年171万円同、年間では

資金繰りへの影響は、金利よりも期間のほうがはるかに大きいことが分かります。金利の交渉に時間をかけるより、期間を交渉してください。

この章の要点

資金繰りに効くのは金利より期間。交渉する対象を間違えないでください。

協調融資という形

金額が大きい案件では、複数の金融機関が条件をそろえて同時に融資する形が取られることがあります。協調融資と呼ばれます。

項目 協調融資 個別に申し込む
条件 各行でそろえる 行ごとに異なる
説明 一度で済む 行ごとに繰り返す
1行あたりの負担 分散される —
まとめ役 メインバンクが担うことが多い —
時間 各行の足並みをそろえる分、かかる 速い行から実行できる

利点は、1行では負いきれない金額を、分担して出してもらえることです。設備投資など、まとまった資金が必要な場面で使われます。

足並みがそろわないと、全体が止まる

条件をそろえる前提なので、1行が慎重になると、全体の実行が遅れます。急いでいる場面には向きません。時間に余裕がある大型の案件で検討する形だと理解してください。

中小企業の通常の資金需要では、個別に使途を分けて申し込むほうが速く、柔軟です。協調融資は、メインバンクから提案されたときに検討する、という位置づけで十分です。

この章の要点

協調融資は大型・時間に余裕がある案件向け。通常は個別に分けるほうが速いです。

期日を分散させる

見落とされやすい設計です。複数の借入の期日が同じ時期に集中していると、その時期に借換の交渉が集中します。

状態 起きること
期日が3〜4月に集中 その時期に交渉が重なる。1行でも止まると資金繰りが崩れる
決算期の直後に集中 決算の内容が悪いと、全行が同時に慎重になる
期日が分散している 1本ずつ対応できる。リスクが分かれる

とくに危険なのが2番目です。決算が悪かった年に、複数の借換が同時に来る。どの金融機関も同じ決算書を見て、同じように慎重になります。

対策は単純です。新しく借りるときに、既存の期日と重ならないよう期間を設定する。半年ずらすだけでも効果があります。

この章の要点

期日の集中は決算が悪い年に効いてきます。借りるときに、意図的にずらしてください。

プロパーと保証付きの配分

金額の配分だけでなく、どの借入をプロパーにし、どれを保証付きにするかも設計の対象です。

配分 状態
すべて保証付き 保証協会の枠を使い切る。非常時に手がない
すべてプロパー 理想だが、多くの会社では現実的でない
プロパーと保証付きの併用 枠を残しながら、両方の選択肢を持つ

目指すべきは3番目です。順調なうちにプロパーで借り、保証協会の枠を非常時のために空けておく。枠は有限の資源で、業況が悪化したときにこそ必要になります。

プロパーへの移行は プロパー融資へ移るには の記事で扱っています。

この章の要点

保証協会の枠は非常時のために空けておく。順調なうちにプロパーを増やしてください。

新しい金融機関を入れるとき

順 やること 注意
1 口座を開設する 口座だけでは取引実績にならない
2 決済の一部を通す 取引の量が審査の材料になる
3 決算書と会社案内を渡す 借りる前から、知ってもらう
4 少額・短期で借りて、返す これが実績になる
5 月次の情報提供を始める 既存行と同じ資料を渡す
6 金額を段階的に伸ばす —

4番が要点です。「関係を作るため」に借りるのは、無駄な利息ではありません。必要になったときに動いてもらうための、前払いの費用です。

また、既存行に黙って新しい金融機関を入れると、心証を損ないます。借入金内訳から必ず分かります。「取引先を増やしたい」と伝えてから進めてください。

この章の要点

口座だけでは足りません。少額で借りて返す。既存行にも先に伝えてください。

減らすとき、やめるとき

取引を減らす場面もあります。ここでの判断が、後に効いてきます。

やり方 結果
一括返済して、取引を終える その金融機関には戻りにくくなる
残高を少額に減らして、関係は残す 必要になったときに、話ができる
借入はゼロにし、決済だけ残す 取引実績としては弱くなる
関係を切らずに、残高を減らす

一括返済で取引を終えると、選択肢をひとつ捨てることになります。金利が高い、対応が悪いといった理由があっても、少額の残高を残して関係を維持するほうが、長期的には有利です。

金融機関側の事情で減らされる場合もあります。その場合も、なぜ減らすのかを聞いておいてください。業種方針の変更なのか、こちらの業況なのかで、意味がまったく違います。

この章の要点

一括返済は選択肢を捨てる行為。少額を残して関係を維持してください。

年1回の点検

感覚ではなく、表にして確認してください。決算のタイミングで年1回行います。

金融機関 残高 シェア 金利 保証 期日 月々
甲銀行 4,500万円 45% — プロパー — —
乙信用金庫 2,500万円 25% — 協会付き — —
丙銀行 1,000万円 10% — 協会付き — —
公庫 2,000万円 20% — — — —
確認すること 問題があるとすれば
メインのシェアは明確に大きいか 横並びだと、どこも主導しない
1行に偏りすぎていないか その行の事情に左右される
保証協会の枠はどれだけ残っているか 使い切っていると、非常時に手がない
期日が集中していないか 交渉が重なる
月々の返済合計は、簡易CFの範囲か 超えていれば、借換を検討する
取引のない金融機関はどこか 次に関係を作る候補

5番目が重要です。月々の返済合計が、簡易キャッシュフローを超えていないか。超えていれば、毎年その分だけ現金が減っています。計算方法は 返済原資の説明 の記事で扱っています。

この章の要点

年1回、表にして点検する。とくに返済合計と簡易CFの比較を確認してください。

チェックリスト

複数行との配分を設計するときに

  • 全借入の一覧を作り、シェアを計算した
  • メインのシェアが、2番手より明確に大きい
  • 1行に80%以上偏っていない
  • 3行が横並びになっていない
  • 借入の規模に対して、取引行数が適切である
  • 取引実績のある金融機関が、メイン以外に1〜2行ある
  • 申し込むときは、メインから話している
  • 複数行に申し込む場合、使途を分けている
  • 同じ使途で、全行に満額を申し込んでいない
  • 他行の条件を出すときは、実行する意思を示している
  • 金利だけでなく、期間・保証・担保・日数で比べている
  • 期日が同じ時期に集中していない
  • 保証協会の枠の残りを把握している
  • プロパーと保証付きを併用している
  • 月々の返済合計が、簡易キャッシュフローの範囲に収まっている
  • 年1回、一覧にして点検する運用にした
この章の要点

2番と6番が土台です。メインが明確で、代替先に実績がある状態を作ってください。

よくある質問

Q. 何行と取引するのが適切ですか
借入の規模によります。3,000万円までなら公庫+1行、1億円を超えるなら公庫+2〜3行が目安です。行数を増やすほど手間が増え、関係は薄くなります。
Q. シェアは均等にすべきですか
避けてください。横並びだと、どの金融機関も自分がメインだと思わず、資金が必要なときにどこも主導しません。メインを明確に大きくしておくと、主導する動機が生まれます。
Q. 複数行に同時に申し込んでもよいですか
必要額を分けて申し込むのは問題ありません。避けるべきは、同じ使途で全行に満額を申し込むことです。申込状況は把握されることがあり、必要額の説明が崩れます。
Q. メインに先に話さないといけませんか
実務上そうしたほうが有利です。条件が最も良い可能性が高く、満額出れば他行と交渉する手間も省けます。後から他行の動きを知ると、心証を損ないます。
Q. 他行の金利を交渉材料にしてもよいですか
問題ありません。ただし「同等にしていただけるなら御行で実行したい」と、実行の意思を示してください。見積もりだけ取り続けると、案件を上げてもらえなくなります。
Q. 金利が低いほうを選べばよいですか
それだけでは判断できません。3,000万円で金利0.3%の差は年9万円ですが、返済期間が5年と7年では月々が14.3万円違います。資金繰りには期間のほうがはるかに効きます。
Q. 使う予定のない金融機関からも借りるべきですか
少額でも借りて返す実績があると、必要になったときに動いてもらえます。口座を作るだけでは審査の材料になりません。利息を払って選択肢を買う、と考えてください。
Q. 新しい金融機関を入れるとき、既存行に伝えるべきですか
伝えてください。決算書の借入金内訳から必ず分かります。黙って進めると心証を損ないます。「取引先を増やしたい」と伝えてから進めてください。
Q. 条件の悪い金融機関は、一括返済して終わらせるべきですか
慎重に判断してください。一括返済で取引を終えると、その金融機関には戻りにくくなります。少額の残高を残して関係を維持するほうが、長期的には有利です。
Q. 期日が集中しています。どうすればよいですか
新しく借りるときに、既存の期日と重ならないよう期間を設定してください。すでに集中している場合は、借換のタイミングで調整します。決算が悪い年に重なると、全行が同時に慎重になります。
Q. すべて保証協会付きですが、問題ありますか
枠を使い切ると、業況が悪化したときに手が残りません。保証協会の枠は非常時に必要になる資源です。順調なうちにプロパーを増やし、枠を空けておいてください。
Q. 1行から「シェアを増やしたい」と言われました
条件が良いなら応じる価値はありますが、偏りすぎないようにしてください。その金融機関の事情が変わったときに、選択肢がなくなります。他行との関係も維持できる範囲で判断してください。
出典