
借換とは、既存の借入を新しい借入で返済し、返済の条件を組み直すことです。複数の借入を1本にまとめたり、返済期間を延ばしたりします。
| できること | 効果 |
|---|---|
| 返済期間を延ばす | 毎月の返済額が下がる |
| 複数の借入を1本にまとめる | 管理が楽になる。返済額も下がることが多い |
| 金利を見直す | 下がることがある |
| 据置期間を設ける | 一定期間、元本の返済を止められる |
| 新しい資金を上乗せする | 借換と同時に、追加の資金を調達できる |
借換は返済の形を組み直すこと。いちばん効くのは、期間を延ばして月々を下げることです。
信用保証協会には、既存の保証付き借入をまとめて借り換えるための保証制度があります。名称や要件は保証協会・自治体によって異なります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 既存の保証付き借入(複数をまとめられる) |
| 目的 | 返済負担の軽減、複数債務の一本化 |
| 期間 | 既存の残存期間より長く設定できる |
| 新規資金 | 上乗せできる場合がある |
| 要件 | 保証協会・制度によって異なる |
借換に関する保証制度は、経済情勢に応じて新設・改定されてきました。使える制度は時期によって変わるため、必ず金融機関と保証協会に、今使えるものを確認してください。自治体が独自に設けている制度もあります。
重要なのは、「借換保証」という枠組みがあること自体を知っているかどうかです。知らなければ、そもそも相談できません。返済が重いと感じたら、この選択肢を担当者に確認してください。
借換のための保証制度があります。使えるものは時期で変わるので、確認してください。
3本の保証付き借入を抱えている会社で計算します。
| 借入 | 残高 | 残りの期間 | 月々の元本返済 |
|---|---|---|---|
| A(設備) | 1,200万円 | 3年(36か月) | 約33.3万円 |
| B(運転) | 600万円 | 2年(24か月) | 25.0万円 |
| C(運転) | 600万円 | 1年(12か月) | 50.0万円 |
| 合計 | 2,400万円 | — | 約108.3万円 |
この3本を、2,400万円・7年(84か月)で1本にまとめると——
| 項目 | 借換前 | 借換後 |
|---|---|---|
| 借入本数 | 3本 | 1本 |
| 残高 | 2,400万円 | 2,400万円 |
| 返済期間 | 1〜3年 | 7年 |
| 月々の元本返済 | 約108.3万円 | 約28.6万円 |
| 年間の元本返済 | 約1,300万円 | 約343万円 |
毎月の元本返済が約108万円から約29万円へ、月79万円下がります。年間では約957万円の差です。資金繰りへの影響は非常に大きくなります。
返済原資の計算で言えば、年間約1,300万円の返済に必要だった税引前利益が、約343万円の返済で済むようになるということです。この関係は 返済原資の説明 の記事で扱っています。
3本を7年に組み直すと、月々が約4分の1になります。期間の効果は大きいです。
ここは正確に理解しておいてください。借換で下がるのは毎月の返済額であり、返す元本の総額は変わりません。むしろ、期間が延びる分だけ利息の総額は増えます。
| 項目 | 借換前(平均2年) | 借換後(7年) |
|---|---|---|
| 元本 | 2,400万円 | 2,400万円(変わらない) |
| 利息の対象期間 | 短い | 長い |
| 利息の総額 | 少ない | 増える |
| 保証料 | — | 期間が長い分、増える |
| 毎月の負担 | 重い | 軽い |
借換は、利息と保証料を余計に払う代わりに、毎月の資金繰りに余裕を作る取引です。損得ではなく、いま何が必要かで判断してください。資金が回らなければ、利息の多寡は意味を持ちません。
逆に言えば、資金繰りに余裕があるなら、無理に期間を延ばす必要はありません。余計な費用がかかるだけです。
借換は費用を払って時間を買う取引。余裕があるなら、延ばす必要はありません。
借換で見落とされやすい点です。借換後の金利は、借りたときの金利ではなく、いまの業況で決まります。
| 状況 | 借換後の金利 |
|---|---|
| 業況が改善している | 下がる可能性がある |
| 業況が横ばい | 市場金利の動きしだい |
| 業況が悪化している | 上がることがある |
| 低金利の時期に借りた古い借入がある | 借り換えると上がることがある |
返済が重いということは、多くの場合、業況が良くないということです。つまり借換を必要とする局面ほど、金利は上がりやすくなります。
数字で見ます。既存3本の平均金利が1.5%、借換後が2.2%になった場合の利息の差です(2,400万円・7年・均等返済で、平均残高を半分として概算)。
| 項目 | 金利1.5%のまま | 借換後2.2% |
|---|---|---|
| 利息の総額(概算) | 約126万円 | 約185万円 |
| 差 | — | 約59万円 |
7年で約59万円の増加に対して、毎月の返済は79万円軽くなります。資金繰りが苦しい局面では、この比較で判断は明確です。ただし「金利も下がるはず」という前提で相談に行かないことが大切です。
なお、古い低金利の借入がある場合は、それだけを借換の対象から外すという組み方もあります。全部まとめることが常に最適とは限りません。
金利は上がることもあります。それでも月々の軽減が大きいなら、判断は変わりません。
金額以外の効果もあります。
| 効果 | 内容 |
|---|---|
| 引き落とし日が1つになる | 延滞の危険が減る |
| 資金繰り表が単純になる | 管理の手間が減る |
| 返済期日の集中が解消される | 借換の交渉が一度で済む |
| 金融機関との窓口が整理される | — |
1番目は軽視できません。引き落とし日が月に3回あると、そのすべてで残高を確保する必要があります。1回でも足りなければ延滞です。まとめれば、確認すべき日が1日になります。
延滞が区分に与える影響は 債務者区分 の記事で扱っています。延滞は、赤字より重く扱われます。
引き落とし日が1つになると、延滞の危険が減ります。金額以外の効果も見てください。
| 条件 | 変えられるか | 注意 |
|---|---|---|
| 返済期間 | 変えられる | もっとも効果が大きい |
| 金利 | 変えられることがある | 市場金利と、業況しだい |
| 据置期間 | 付けられることがある | 後の返済額が増える |
| 保証料率 | 財務の改善で下がることがある | 区分の見直しによる |
| 経営者保証 | 外せる可能性がある | 新しい契約になるため |
| 担保 | 見直せることがある | 金融機関との交渉 |
見落とされやすいのが経営者保証です。既存の借入から保証だけを外すのは難しいのですが、借換は新しい契約を結ぶ場面なので、条件の一部として交渉できます。
経営者保証の解除については 経営者保証ガイドライン の記事で扱っています。借換のタイミングは、数少ない交渉の機会です。
借換は経営者保証を外す数少ない機会。期間の交渉と一緒に持ち出してください。
借換は新しい契約なので、まとめて条件を見直せます。次の順で交渉してください。
| 順 | 交渉すること | 優先度 |
|---|---|---|
| 1 | 返済期間(毎月の返済額) | 最優先 |
| 2 | 経営者保証の解除 | 高い |
| 3 | 新規資金の上乗せ | 必要なら |
| 4 | 金利 | 中 |
| 5 | 据置期間 | 必要なら |
| 6 | 担保の見直し | 該当するなら |
3番目の新規資金の上乗せは、実務的に重要です。借換と同時に追加の資金を調達すると、金融機関から見た残高は大きく増えません。単独で追加融資を申し込むより、稟議が通りやすくなります。
稟議の仕組みについては 融資の稟議はどこで止まるか の記事で扱っています。
借換と新規資金をセットにすると、単独の追加融資より通りやすくなります。
ここが決定的に重要です。借換と条件変更は、まったく違う扱いを受けます。
| 項目 | 借換 | 条件変更(リスケ) |
|---|---|---|
| 形 | 新しい借入で、既存を返済する | 既存の契約の条件を変更する |
| 前提 | 返済できている状態 | 返済が困難な状態 |
| 債務者区分 | 通常は影響しない | 要管理先になる可能性 |
| その後の新規融資 | 受けられる | 事実上止まる |
| 他行への影響 | 限定的 | ほぼ全行に伝わる |
この差は非常に大きいものです。返済が苦しいと感じた時点で借換を相談すれば、区分に影響しません。限界まで持ちこたえてから相談すると、条件変更しか選べなくなります。
タイミングの判断は 条件変更を申し出るタイミング の記事で扱っています。「まだ返せている」うちに動くことが、最大の分かれ目です。
返せているうちに借換。限界まで待つと、条件変更しか選べなくなります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 返済が正常であること | 延滞していない |
| 業況 | 著しく悪化していない |
| 純資産 | 債務超過でない(実質ベース) |
| 保証協会の枠 | 借換保証を使うなら、枠の状況が見られる |
| 税金 | 滞納がないこと |
| 返済の見通し | 延ばした期間で返せる計画があること |
1番目が前提です。すでに延滞していると、借換ではなく条件変更の話になります。だからこそ、延滞する前に動く必要があります。
5番目も見落とされやすい点です。税金・社会保険料の滞納があると、保証協会付きは止まります。相談の前に納税の状況を確認してください。
前提は延滞していないこと。税金の滞納も確認してください。
| 状況 | 理由 | 代わりの手 |
|---|---|---|
| すでに延滞している | 借換の前提を満たさない | 条件変更を相談する |
| 保証協会の枠が残っていない | 借換保証が使えない | プロパーでの借換を相談する |
| 債務超過が大きい | 審査が通らない | 資本性の資金を先に検討する |
| すでに期間が長い | これ以上延ばせない | — |
| 制度の要件を満たさない | — | 別の制度を確認する |
4番目は、借換の限界を示しています。一度10年に延ばした借入を、さらに延ばすことは通常できません。借換で使える「期間を延ばす」というカードは、何度も切れるものではありません。
まだ余裕があるうちに最長期間まで延ばしてしまうと、本当に苦しくなったときに手が残りません。必要な分だけ延ばす、という判断も重要です。
期間を延ばすカードは何度も切れません。必要な分だけ延ばしてください。
借換と同時に据置期間を設けると、その間は元本の返済が止まります。
| 項目 | 据置なし(7年) | 据置1年(計7年) |
|---|---|---|
| 元本を返す期間 | 84か月 | 72か月 |
| 据置期間中の月々 | 約28.6万円 | 0円(利息のみ) |
| 据置後の月々 | 約28.6万円 | 約33.3万円 |
2,400万円を7年で返す場合、据置なしなら月約28.6万円。据置を1年取ると、最初の1年は元本ゼロですが、その後は72か月で返すため月約33.3万円に増えます。
据置は返済を減らすものではなく、後ろにずらすものです。その期間に資金繰りが改善する見通しがあるなら有効ですが、改善しなければ、負担が重くなった状態で返済が始まります。
据置は先送り。その期間に改善する見通しがあるかで判断してください。
| 費用 | 内容 |
|---|---|
| 信用保証料 | 新しい保証の分がかかる。既存分は返戻される場合がある |
| 事務手数料 | 金融機関による |
| 印紙税 | 契約書の金額に応じて |
| 登記費用 | 担保を設定・変更する場合 |
| 利息の増加 | 期間が延びる分 |
保証料については、既存の保証を期限前に解約すると、残りの期間に対応する分が返戻される取り扱いがあります。ただし計算方法や条件は保証協会によるため、確認してください。
費用の総額を出したうえで、毎月の軽減額と比べてください。先ほどの例では月79万円の軽減でしたから、費用がそれを大きく下回るなら、判断は明確です。
費用を出して毎月の軽減額と比べる。既存の保証料は返戻される場合があります。
借入にプロパーと保証協会付きが混ざっていると、借換の設計はやや複雑になります。
| 組み合わせ | 考え方 |
|---|---|
| 保証付きだけをまとめる | 借換保証を使う。もっとも単純 |
| プロパーだけをまとめる | 金融機関の判断。業況が良ければ可能 |
| 両方をまとめて保証付きに | 保証協会の枠を余計に使うことになる |
| 両方をまとめてプロパーに | 業況が良ければ理想。ただし難易度は高い |
3番目には注意してください。プロパーだった借入を保証付きに切り替えると、その分だけ保証協会の枠を使います。枠は有限で、非常時に必要になる資源です。
枠の考え方は プロパー融資へ移るには の記事で扱っています。目先の返済軽減と、枠を残すことを比べて判断してください。
プロパーを保証付きに切り替えると枠を余計に使います。目先の軽減と比べてください。
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 全借入の一覧を作る(残高・残期間・月々の返済・金利・保証の有無・期日) |
| 2 | 現在の月々の元本返済額を合計する |
| 3 | まとめて◯年にした場合の月々を計算する(残高 ÷ 月数) |
| 4 | 軽減額を出す |
| 5 | 簡易キャッシュフローと比べ、無理なく返せる水準を決める |
| 6 | 担当者に、借換の制度が使えるか確認する |
| 7 | 期間・経営者保証・新規資金を、まとめて交渉する |
| 8 | 費用の総額を確認し、軽減額と比べる |
5番が重要です。「返せる最大限まで返す」形にしないでください。簡易キャッシュフローぎりぎりの返済額にすると、少しの業績悪化で回らなくなります。余裕を持った水準に設定してください。
返済額は余裕を持った水準に。ぎりぎりに設定しないでください。
6番の延滞していないことが前提。ここを過ぎると、話が変わります。
この記事は融資による調達の一部です。手段そのものを比べたい場合は、あわせてご覧ください。