
試算表を見れば、売掛金の残高は分かります。しかし「6,000万円」という数字だけでは、何も判断できません。
| 会社 | 売掛金 | 中身 | 状態 |
|---|---|---|---|
| A社 | 6,000万円 | すべて期日前 | 健全 |
| B社 | 6,000万円 | 1,500万円が90日超の滞留 | 回収が止まっている |
同じ6,000万円でも、意味がまったく違います。この違いを見るための表が、債権年齢表です。
残高の合計では判断できません。中身を区分して見る必要があります。
売掛金を、支払期日からどれだけ経過しているかで区分し、取引先ごとに集計した表です。
| 取引先 | 期日前 | 1-30日 | 31-60日 | 61-90日 | 91日以上 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A商事 | 1,200万円 | — | — | — | — | 1,200万円 |
| B工業 | 800万円 | 85万円 | — | — | — | 885万円 |
| C製作所 | 300万円 | — | — | 43万円 | — | 343万円 |
この形にすると、どの取引先の、どの区分に、いくら残っているかが一目で分かります。C製作所の43万円が61〜90日の区分にあることが見えます。
ABLや融資の審査で、滞留債権を担保評価から除外するときに使われるのがこの表です。自社で作っていれば、そのまま提出できます。
どの取引先の、どの区分に、いくら——これが一目で分かる表です。
請求日・支払期日・金額・入金額を入れれば、経過日数と区分が自動で出て、取引先別の集計まで作られます。
水色の5列を入れると、残高・経過日数・区分が自動で出ます。基準日を変えると表全体が動きます。
1 債権一覧(水色の5列を入れる)
| 取引先 | 請求日 | 支払期日 | 請求金額 | 入金額 | 残高 | 経過日数 | 区分 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| (例)A商事 | 2026-08-31 | 2026-09-30 | 1,200,000 | 1,200,000 | 0 | 完了 | |
| (例)B工業 | 2026-07-31 | 2026-08-31 | 850,000 | 0 | 850,000 | 14 | 1-30日 |
| (例)C製作所 | 2026-05-31 | 2026-06-30 | 430,000 | 0 | 430,000 | 76 | 61-90日 |
| 合計 |
2 区分の決め方(経過日数は支払期日からの日数)
| 区分 | 条件 |
|---|---|
| 完了 | 残高が0 |
| 期日前 | 経過日数がマイナス(支払期日がまだ来ていない) |
| 1-30日 | 経過日数が1日以上30日以下 |
| 31-60日 | 31日以上60日以下 |
| 61-90日 | 61日以上90日以下 |
| 91-180日 | 91日以上180日以下 |
| 181日以上 | 181日以上 |
3 年齢表(取引先別に集計する)
| 取引先 | 期日前 | 1-30日 | 31-60日 | 61-90日 | 91-180日 | 181日以上 | 合計 | うち期日超過 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 合計 | ||||||||
| 期日超過の割合 |
4 見るべき兆候(提出前・点検用)
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 区分が右へ移っていく | 同じ取引先の残高が1-30日→31-60日→61-90日と移っていないか |
| 一部だけ入金される | 請求額の一部だけが入り、端数が残り続けていないか |
| 期日超過の割合が上がっている | 全体に対する割合を毎月見ているか |
| 特定の1社に集中している | 1社の残高が全体の大きな割合を占めていないか |
| 新規取引先の初回が遅れる | 初回の支払いが遅れた相手は、その後も遅れる |
| 入金日が毎回ずれる | 期日は守るが毎回数日遅れる。相手の締め日・支払日を確認したか |
| 金額が合わない | 値引き・相殺・振込手数料の扱いを契約で決めているか |
5 使い方のメモ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 基準日 | 月末で固定する。毎月ずらすと前月と比較できない |
| 経過日数 | 請求日からではなく、支払期日からの日数で数える |
| 完了した行 | 消さずに残す。期日どおり払っているかの履歴になる |
| 金融機関に見せるとき | 滞留があるなら隠さず出し、回収の見込みを説明する |
Excel版は、株数と1株あたり金額を入れると持株比率が自動で出ます。 入力するところは水色、自動で計算されるところはグレーに塗り分けてあります。 1枚目に使い方、最後に用語集が入っています。
コピーを押すと、タブ区切りでクリップボードに入ります。 Googleスプレッドシートに貼ると列が揃ったまま入ります(計算式は入りません)。
入っている数字はすべて記入例です。実在の会社のものではありません。 自社の数字に置き換えて使ってください。
| シート | 内容 |
|---|---|
| はじめに | 使い方の4ステップ |
| 1 債権一覧 | 取引先・請求日・支払期日・請求金額・入金額を入れる |
| 2 年齢表 | 取引先名を入れると、区分ごとに自動集計される |
| 3 見るべき兆候 | 点検用のリスト |
入力するのは1 債権一覧の5列と、2 年齢表の取引先名だけです。残高・経過日数・区分・集計・期日超過の割合は、すべて自動で計算されます。
基準日は1か所に置いています。ここを月末の日付に変えれば、その時点の表になります。
入力は5列+取引先名だけ。集計まで自動です。
| 列 | 内容 | 出どころ |
|---|---|---|
| 取引先 | 会社名 | 請求書 |
| 請求日 | 請求書を発行した日 | 請求書 |
| 支払期日 | 入金されるべき日 | 取引条件(締め日・支払日) |
| 請求金額 | — | 請求書 |
| 入金額 | 実際に入った額 | 通帳・入金消込 |
この5つがあれば作れます。会計ソフトの得意先元帳から出力できることが多いので、まずそこを確認してください。
実務でつまずくのがここです。会計ソフトに「支払期日」が登録されていないと、年齢表が作れません。取引先ごとの締め日・支払日を登録する運用に変えてください。一度やれば、以後は自動で入ります。
登録がない場合は、取引先ごとの支払条件を一覧にするところから始めます。これ自体が、資金繰り表の精度を上げる作業になります。
必要なのは5列。つまずくのは支払期日の登録です。
間違えやすい点です。経過日数は「請求日から」ではなく「支払期日から」数えます。
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 請求日 | 2026年7月31日 |
| 支払期日 | 2026年8月31日 |
| 基準日 | 2026年9月30日 |
| 請求日からの日数 | 61日 |
| 支払期日からの経過日数 | 30日 |
| 区分 | 1〜30日 |
回収サイトが60日の会社で請求日から数えれば、期日どおりに払われる予定の債権まで「60日経過」になります。問題がある債権とない債権が区別できません。金融機関が見るのも期日超過の日数です。
支払期日から数える。請求日から数えると区別がつきません。
| 区分 | 意味 | 対応 |
|---|---|---|
| 期日前 | まだ支払期日が来ていない | 正常 |
| 1〜30日 | 少し遅れている | 連絡して確認する |
| 31〜60日 | 明確に遅れている | 書面で督促する |
| 61〜90日 | — | 取引条件の見直しを検討 |
| 91〜180日 | 回収の見込みを再評価 | 担保評価から除外されることが多い |
| 181日以上 | 回収が困難な可能性 | 処理の方針を決める |
区分の切り方に決まりはありません。30日刻みが分かりやすく、実務でよく使われます。回収サイトが短い業種では、より細かく切ることもあります。
表を作るだけでは意味がありません。1〜30日なら電話、31〜60日なら書面——というように、区分ごとの対応を決めてください。決めておけば、担当者が判断せずに動けます。
30日刻みが基本。区分ごとに「やること」を決めてください。
| 区分 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 期日前 | 5,700万円 | 3,500万円 |
| 1〜30日 | 300万円 | 600万円 |
| 31〜60日 | 0円 | 400万円 |
| 61〜90日 | 0円 | 0円 |
| 91日以上 | 0円 | 1,500万円 |
| 合計 | 6,000万円 | 6,000万円 |
| 期日超過の割合 | 5.0% | 41.7% |
B社は売掛金の4割以上が期日を過ぎており、1,500万円は91日以上滞留しています。試算表の残高は同じでも、資金繰りの状況はまったく違います。
担保としての評価も違います。91日以上の1,500万円は除外されるのが通常なので、B社の担保価値はA社より大きく下がります。評価の仕組みは 金融機関は売掛金の何を評価しているか の記事で扱っています。
同じ残高でも期日超過の割合で状況が違います。5.0%と41.7%です。
実務で効く細かい点です。基準日を毎月ずらすと、前月と比較できません。
| 基準日 | 比較のしやすさ |
|---|---|
| 月末で固定 | 前月と並べられる |
| 締め日 | 請求のサイクルに合うが、試算表とずれる |
| 作った日 | 毎月ずれる。比較できない |
債権年齢表は、並べて初めて意味を持ちます。今月の表だけを見ても「61〜90日に43万円ある」としか分かりません。前月と並べれば「先月は31〜60日にあった」と分かり、動いていることが見えます。
テンプレートでは基準日を1か所に置いています。月末の日付を入れて、その月のファイルとして保存してください。毎月のファイルが並べば、推移が見えます。
基準日は月末で固定。並べて初めて意味を持ちます。
もっとも重要な兆候です。同じ取引先の残高が、月を追うごとに右の区分へ移っていく状態。
| 月 | C製作所の残高がある区分 |
|---|---|
| 7月末 | 1〜30日 |
| 8月末 | 31〜60日 |
| 9月末 | 61〜90日 |
同じ43万円が、区分だけを移動しています。これは「回収されていない」ということです。金額が小さくても、この動きは見逃さないでください。
43万円という金額は小さく見えます。しかし3か月払われていない相手は、次の請求も払わない可能性があります。取引の量が増えていれば、損失も大きくなります。
対応は、取引の量を増やす前に条件を見直すことです。回収できていない相手に、さらに納品を続けると損失が拡大します。
区分が右へ移るのは回収が止まっている証拠。金額の大小ではありません。
| 状況 | 考えられる原因 |
|---|---|
| 請求額の一部だけが入る | 相手の資金繰りが苦しい |
| 毎回、同じ額の端数が残る | 値引き・相殺・振込手数料の認識違い |
| 特定の請求だけ入らない | 請求内容に争いがある |
1番目は危険な兆候です。払える分だけ払っている状態は、相手の資金繰りが逼迫している可能性を示します。
2番目は、運用の問題です。振込手数料を相手が差し引いている、値引きの認識が合っていない——原因を特定して、契約や請求書の記載で解決してください。放置すると端数が積み上がり、残高が実態と合わなくなります。
数百円の差でも、積み上がれば残高が合わなくなります。ABLの報告で「債権明細と試算表が合わない」原因の多くが、この端数です。早めに処理してください。
一部入金は相手の資金繰りか運用の問題。原因を特定してください。
全体を見る指標です。売掛金全体のうち、支払期日を過ぎているものの割合。
| 月 | 売掛金 | 期日超過 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 7月末 | 5,500万円 | 550万円 | 10.0% |
| 8月末 | 5,800万円 | 870万円 | 15.0% |
| 9月末 | 6,000万円 | 1,500万円 | 25.0% |
売掛金の残高は5,500万円から6,000万円に増えていますが、中身は悪化しています。売上が伸びているように見えて、実際は回収が止まっているだけかもしれません。
売掛金が増える理由は2つあります。売上が伸びたか、回収が止まったか。年齢表を見なければ、この2つが区別できません。
この指標は毎月記録してください。絶対値より、推移が重要です。
売掛金が増えた理由が売上か、回収の停滞かを区別してください。
| 状況 | 意味 | 対応 |
|---|---|---|
| 新規取引先の初回が遅れた | 以後も遅れる可能性が高い | 取引量を増やす前に条件を見直す |
| 理由の説明がない | 管理ができていない | 担当者に確認する |
| 理由の説明がある | — | 2回目を見る |
実務での経験則として、初回の支払いが遅れる相手は、その後も遅れます。会社としての支払いの運用が、そうなっているためです。
初回が遅れた相手との取引を拡大すると、滞留する金額が大きくなります。前払い・一部前受けにする、与信の上限を設ける、といった対応を先に検討してください。
与信管理の進め方は 与信管理を最小の手間で回す の記事で扱っています。
初回が遅れる相手は、その後も遅れます。拡大の前に条件を見直してください。
| 原因 | 対処 |
|---|---|
| 振込手数料 | どちらが負担するか、契約と請求書に明記する |
| 値引き | 請求の段階で反映する |
| 相殺 | 相殺の通知を書面で受け、記録する |
| 返品 | 会計処理のタイミングを揃える |
| 消費税の端数 | 計算方法を統一する |
1番目がもっとも多い原因です。振込手数料を相手が差し引いて振り込むと、毎回その分だけ残高が残ります。金額は小さくても、件数が多ければ積み上がります。
「振込手数料は貴社にてご負担ください」と請求書にも記載してください。契約書だけでは、実務の担当者に伝わりません。
最多の原因は振込手数料。契約と請求書の両方に書いてください。
| 使い道 | 内容 |
|---|---|
| 回収の管理 | 区分ごとに対応を決め、担当者が動く |
| 与信の判断 | 遅れる取引先の取引量を制限する |
| 資金繰り表の精度 | 入金予定を、実績にもとづいて見直す |
| 決算の準備 | 回収不能な債権の処理を判断する |
| 金融機関への提出 | ABL・融資の審査資料になる |
| 取引条件の見直し | 遅れが常態化している先との条件交渉 |
1番目が本来の目的です。表を作ることが目的ではなく、回収を進めることが目的です。
作っただけで見なければ意味がありません。月次の締めのあとに30分、この表を見る時間を決めてください。区分が右へ移っている取引先を拾い、担当者に対応を指示する。それだけです。
目的は回収を進めること。月1回、見る時間を決めてください。
| 場面 | 使われ方 |
|---|---|
| ABLの申込 | 担保評価から除外する債権を判定する |
| ABLの月次報告 | 提出が求められることが多い |
| 融資の申込 | 売掛金の質を見る |
| 債権譲渡の申込 | 対象債権の選定に使われる |
滞留している債権があるなら、その事実と回収の見込みを添えて出してください。隠しても、実地調査や翌月以降の残高から判明します。先に出せば「把握できている会社」、後から見つかれば「隠していた会社」です。
金融機関が決算書や資料をどう見るかは 銀行は決算書のどこを見るか の記事で扱っています。売掛金は、実質純資産の計算でも見られる項目です。
滞留は隠さず、回収の見込みを添えて出してください。
1番の支払期日の登録ができていないと、そもそも作れません。
この記事は債権による調達の一部です。手段そのものを比べたい場合は、あわせてご覧ください。