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債権による調達

債権年齢表テンプレート|作り方と、見るべき兆候

請求日と支払期日を入れれば経過日数と区分が自動で出るExcelを配布します。同じ6,000万円でも期日超過5.0%と41.7%の差、5つの兆候の読み方を扱います。

公開:2026年9月14日 Creww Finance Media 編集部
この記事の内容

  1. 残高の合計だけでは、何も分からない
  2. 債権年齢表とは何か
  3. テンプレート(計算式入りExcel)
  4. 作り方|必要なのは5つの列だけ
  5. 経過日数は、支払期日から数える
  6. 区分の切り方
  7. 数字で見る|同じ6,000万円でも中身が違う
  8. 基準日を固定する
  9. 兆候①|区分が右へ移っていく
  10. 兆候②|一部だけ入金される
  11. 兆候③|期日超過の割合が上がる
  12. 兆候④|初回が遅れる取引先
  13. 兆候⑤|金額が合わない
  14. この表を、どう使うか
  15. 金融機関に見せるとき
  16. チェックリスト
  17. よくある質問

残高の合計だけでは、何も分からない

試算表を見れば、売掛金の残高は分かります。しかし「6,000万円」という数字だけでは、何も判断できません。

会社 売掛金 中身 状態
A社 6,000万円 すべて期日前 健全
B社 6,000万円 1,500万円が90日超の滞留 回収が止まっている

同じ6,000万円でも、意味がまったく違います。この違いを見るための表が、債権年齢表です。

債権年齢表売掛金を、支払期日からの経過日数で区分して集計した表。エイジングリスト。
滞留債権支払期日を過ぎても回収されていない債権。
基準日いつ時点で見るかを定めた日。
期日超過支払期日を過ぎている状態。
この章の要点

残高の合計では判断できません。中身を区分して見る必要があります。

債権年齢表とは何か

売掛金を、支払期日からどれだけ経過しているかで区分し、取引先ごとに集計した表です。

取引先 期日前 1-30日 31-60日 61-90日 91日以上 合計
A商事 1,200万円 — — — — 1,200万円
B工業 800万円 85万円 — — — 885万円
C製作所 300万円 — — 43万円 — 343万円

この形にすると、どの取引先の、どの区分に、いくら残っているかが一目で分かります。C製作所の43万円が61〜90日の区分にあることが見えます。

金融機関も、この表で判断している

ABLや融資の審査で、滞留債権を担保評価から除外するときに使われるのがこの表です。自社で作っていれば、そのまま提出できます。

この章の要点

どの取引先の、どの区分に、いくら——これが一目で分かる表です。

テンプレート(計算式入りExcel)

請求日・支払期日・金額・入金額を入れれば、経過日数と区分が自動で出て、取引先別の集計まで作られます。

TEMPLATE 債権年齢表テンプレート

水色の5列を入れると、残高・経過日数・区分が自動で出ます。基準日を変えると表全体が動きます。

1 債権一覧(水色の5列を入れる)

取引先請求日支払期日請求金額入金額残高経過日数区分
(例)A商事2026-08-312026-09-301,200,0001,200,0000完了
(例)B工業2026-07-312026-08-31850,0000850,000141-30日
(例)C製作所2026-05-312026-06-30430,0000430,0007661-90日
合計

2 区分の決め方(経過日数は支払期日からの日数)

区分条件
完了残高が0
期日前経過日数がマイナス(支払期日がまだ来ていない)
1-30日経過日数が1日以上30日以下
31-60日31日以上60日以下
61-90日61日以上90日以下
91-180日91日以上180日以下
181日以上181日以上

3 年齢表(取引先別に集計する)

取引先期日前1-30日31-60日61-90日91-180日181日以上合計うち期日超過
合計
期日超過の割合

4 見るべき兆候(提出前・点検用)

確認すること内容
区分が右へ移っていく同じ取引先の残高が1-30日→31-60日→61-90日と移っていないか
一部だけ入金される請求額の一部だけが入り、端数が残り続けていないか
期日超過の割合が上がっている全体に対する割合を毎月見ているか
特定の1社に集中している1社の残高が全体の大きな割合を占めていないか
新規取引先の初回が遅れる初回の支払いが遅れた相手は、その後も遅れる
入金日が毎回ずれる期日は守るが毎回数日遅れる。相手の締め日・支払日を確認したか
金額が合わない値引き・相殺・振込手数料の扱いを契約で決めているか

5 使い方のメモ

項目内容
基準日月末で固定する。毎月ずらすと前月と比較できない
経過日数請求日からではなく、支払期日からの日数で数える
完了した行消さずに残す。期日どおり払っているかの履歴になる
金融機関に見せるとき滞留があるなら隠さず出し、回収の見込みを説明する

Excel版は、株数と1株あたり金額を入れると持株比率が自動で出ます。 入力するところは水色、自動で計算されるところはグレーに塗り分けてあります。 1枚目に使い方、最後に用語集が入っています。

コピーを押すと、タブ区切りでクリップボードに入ります。 Googleスプレッドシートに貼ると列が揃ったまま入ります(計算式は入りません)。

入っている数字はすべて記入例です。実在の会社のものではありません。 自社の数字に置き換えて使ってください。

シート 内容
はじめに 使い方の4ステップ
1 債権一覧 取引先・請求日・支払期日・請求金額・入金額を入れる
2 年齢表 取引先名を入れると、区分ごとに自動集計される
3 見るべき兆候 点検用のリスト

入力するのは1 債権一覧の5列と、2 年齢表の取引先名だけです。残高・経過日数・区分・集計・期日超過の割合は、すべて自動で計算されます。

基準日は1か所に置いています。ここを月末の日付に変えれば、その時点の表になります。

この章の要点

入力は5列+取引先名だけ。集計まで自動です。

作り方|必要なのは5つの列だけ

列 内容 出どころ
取引先 会社名 請求書
請求日 請求書を発行した日 請求書
支払期日 入金されるべき日 取引条件(締め日・支払日)
請求金額 — 請求書
入金額 実際に入った額 通帳・入金消込

この5つがあれば作れます。会計ソフトの得意先元帳から出力できることが多いので、まずそこを確認してください。

支払期日が入っていないことが多い

実務でつまずくのがここです。会計ソフトに「支払期日」が登録されていないと、年齢表が作れません。取引先ごとの締め日・支払日を登録する運用に変えてください。一度やれば、以後は自動で入ります。

登録がない場合は、取引先ごとの支払条件を一覧にするところから始めます。これ自体が、資金繰り表の精度を上げる作業になります。

この章の要点

必要なのは5列。つまずくのは支払期日の登録です。

経過日数は、支払期日から数える

間違えやすい点です。経過日数は「請求日から」ではなく「支払期日から」数えます。

日付 内容
請求日 2026年7月31日
支払期日 2026年8月31日
基準日 2026年9月30日
請求日からの日数 61日
支払期日からの経過日数 30日
区分 1〜30日
請求日から数えると、健全な債権まで滞留に見える

回収サイトが60日の会社で請求日から数えれば、期日どおりに払われる予定の債権まで「60日経過」になります。問題がある債権とない債権が区別できません。金融機関が見るのも期日超過の日数です。

この章の要点

支払期日から数える。請求日から数えると区別がつきません。

区分の切り方

区分 意味 対応
期日前 まだ支払期日が来ていない 正常
1〜30日 少し遅れている 連絡して確認する
31〜60日 明確に遅れている 書面で督促する
61〜90日 — 取引条件の見直しを検討
91〜180日 回収の見込みを再評価 担保評価から除外されることが多い
181日以上 回収が困難な可能性 処理の方針を決める

区分の切り方に決まりはありません。30日刻みが分かりやすく、実務でよく使われます。回収サイトが短い業種では、より細かく切ることもあります。

区分ごとに「やること」を決めておく

表を作るだけでは意味がありません。1〜30日なら電話、31〜60日なら書面——というように、区分ごとの対応を決めてください。決めておけば、担当者が判断せずに動けます。

この章の要点

30日刻みが基本。区分ごとに「やること」を決めてください。

数字で見る|同じ6,000万円でも中身が違う

区分 A社 B社
期日前 5,700万円 3,500万円
1〜30日 300万円 600万円
31〜60日 0円 400万円
61〜90日 0円 0円
91日以上 0円 1,500万円
合計 6,000万円 6,000万円
期日超過の割合 5.0% 41.7%
5.0%A社の期日超過の割合
41.7%B社
1,500万円B社の91日以上

B社は売掛金の4割以上が期日を過ぎており、1,500万円は91日以上滞留しています。試算表の残高は同じでも、資金繰りの状況はまったく違います。

担保としての評価も違います。91日以上の1,500万円は除外されるのが通常なので、B社の担保価値はA社より大きく下がります。評価の仕組みは 金融機関は売掛金の何を評価しているか の記事で扱っています。

この章の要点

同じ残高でも期日超過の割合で状況が違います。5.0%と41.7%です。

基準日を固定する

実務で効く細かい点です。基準日を毎月ずらすと、前月と比較できません。

基準日 比較のしやすさ
月末で固定 前月と並べられる
締め日 請求のサイクルに合うが、試算表とずれる
作った日 毎月ずれる。比較できない
1回作っただけでは、意味がない

債権年齢表は、並べて初めて意味を持ちます。今月の表だけを見ても「61〜90日に43万円ある」としか分かりません。前月と並べれば「先月は31〜60日にあった」と分かり、動いていることが見えます。

テンプレートでは基準日を1か所に置いています。月末の日付を入れて、その月のファイルとして保存してください。毎月のファイルが並べば、推移が見えます。

この章の要点

基準日は月末で固定。並べて初めて意味を持ちます。

兆候①|区分が右へ移っていく

もっとも重要な兆候です。同じ取引先の残高が、月を追うごとに右の区分へ移っていく状態。

月 C製作所の残高がある区分
7月末 1〜30日
8月末 31〜60日
9月末 61〜90日

同じ43万円が、区分だけを移動しています。これは「回収されていない」ということです。金額が小さくても、この動きは見逃さないでください。

金額の大小より、動き方

43万円という金額は小さく見えます。しかし3か月払われていない相手は、次の請求も払わない可能性があります。取引の量が増えていれば、損失も大きくなります。

対応は、取引の量を増やす前に条件を見直すことです。回収できていない相手に、さらに納品を続けると損失が拡大します。

この章の要点

区分が右へ移るのは回収が止まっている証拠。金額の大小ではありません。

兆候②|一部だけ入金される

状況 考えられる原因
請求額の一部だけが入る 相手の資金繰りが苦しい
毎回、同じ額の端数が残る 値引き・相殺・振込手数料の認識違い
特定の請求だけ入らない 請求内容に争いがある

1番目は危険な兆候です。払える分だけ払っている状態は、相手の資金繰りが逼迫している可能性を示します。

2番目は、運用の問題です。振込手数料を相手が差し引いている、値引きの認識が合っていない——原因を特定して、契約や請求書の記載で解決してください。放置すると端数が積み上がり、残高が実態と合わなくなります。

端数を放置しない

数百円の差でも、積み上がれば残高が合わなくなります。ABLの報告で「債権明細と試算表が合わない」原因の多くが、この端数です。早めに処理してください。

この章の要点

一部入金は相手の資金繰りか運用の問題。原因を特定してください。

兆候③|期日超過の割合が上がる

全体を見る指標です。売掛金全体のうち、支払期日を過ぎているものの割合。

月 売掛金 期日超過 割合
7月末 5,500万円 550万円 10.0%
8月末 5,800万円 870万円 15.0%
9月末 6,000万円 1,500万円 25.0%
10.0%7月末
25.0%9月末
2.5倍3か月での変化

売掛金の残高は5,500万円から6,000万円に増えていますが、中身は悪化しています。売上が伸びているように見えて、実際は回収が止まっているだけかもしれません。

売掛金の増加を、成長と読み違えない

売掛金が増える理由は2つあります。売上が伸びたか、回収が止まったか。年齢表を見なければ、この2つが区別できません。

この指標は毎月記録してください。絶対値より、推移が重要です。

この章の要点

売掛金が増えた理由が売上か、回収の停滞かを区別してください。

兆候④|初回が遅れる取引先

状況 意味 対応
新規取引先の初回が遅れた 以後も遅れる可能性が高い 取引量を増やす前に条件を見直す
理由の説明がない 管理ができていない 担当者に確認する
理由の説明がある — 2回目を見る

実務での経験則として、初回の支払いが遅れる相手は、その後も遅れます。会社としての支払いの運用が、そうなっているためです。

取引を広げる前に、条件を確認する

初回が遅れた相手との取引を拡大すると、滞留する金額が大きくなります。前払い・一部前受けにする、与信の上限を設ける、といった対応を先に検討してください。

与信管理の進め方は 与信管理を最小の手間で回す の記事で扱っています。

この章の要点

初回が遅れる相手は、その後も遅れます。拡大の前に条件を見直してください。

兆候⑤|金額が合わない

原因 対処
振込手数料 どちらが負担するか、契約と請求書に明記する
値引き 請求の段階で反映する
相殺 相殺の通知を書面で受け、記録する
返品 会計処理のタイミングを揃える
消費税の端数 計算方法を統一する

1番目がもっとも多い原因です。振込手数料を相手が差し引いて振り込むと、毎回その分だけ残高が残ります。金額は小さくても、件数が多ければ積み上がります。

契約と請求書の両方に書く

「振込手数料は貴社にてご負担ください」と請求書にも記載してください。契約書だけでは、実務の担当者に伝わりません。

この章の要点

最多の原因は振込手数料。契約と請求書の両方に書いてください。

この表を、どう使うか

使い道 内容
回収の管理 区分ごとに対応を決め、担当者が動く
与信の判断 遅れる取引先の取引量を制限する
資金繰り表の精度 入金予定を、実績にもとづいて見直す
決算の準備 回収不能な債権の処理を判断する
金融機関への提出 ABL・融資の審査資料になる
取引条件の見直し 遅れが常態化している先との条件交渉

1番目が本来の目的です。表を作ることが目的ではなく、回収を進めることが目的です。

毎月1回、見る時間を決める

作っただけで見なければ意味がありません。月次の締めのあとに30分、この表を見る時間を決めてください。区分が右へ移っている取引先を拾い、担当者に対応を指示する。それだけです。

この章の要点

目的は回収を進めること。月1回、見る時間を決めてください。

金融機関に見せるとき

場面 使われ方
ABLの申込 担保評価から除外する債権を判定する
ABLの月次報告 提出が求められることが多い
融資の申込 売掛金の質を見る
債権譲渡の申込 対象債権の選定に使われる
滞留があっても、隠さない

滞留している債権があるなら、その事実と回収の見込みを添えて出してください。隠しても、実地調査や翌月以降の残高から判明します。先に出せば「把握できている会社」、後から見つかれば「隠していた会社」です。

金融機関が決算書や資料をどう見るかは 銀行は決算書のどこを見るか の記事で扱っています。売掛金は、実質純資産の計算でも見られる項目です。

この章の要点

滞留は隠さず、回収の見込みを添えて出してください。

チェックリスト

債権年齢表を作って、使うために

  • 取引先ごとの支払期日が、データとして登録されている
  • 経過日数を、支払期日から数えている(請求日からではない)
  • 基準日を月末で固定している
  • 毎月作り、前月のファイルを残している
  • 入金消込ができており、残高が正確である
  • 債権明細の合計が、試算表の売掛金と一致する
  • 区分ごとの対応(電話・書面など)を決めている
  • 区分が右へ移っている取引先を、毎月拾っている
  • 一部入金が続いている取引先を把握している
  • 期日超過の割合を、毎月記録している
  • 新規取引先の初回の支払いを確認している
  • 振込手数料の負担を、契約と請求書に明記している
  • 月次の締め後に、この表を見る時間を決めている
  • 金融機関に提出する準備ができている
この章の要点

1番の支払期日の登録ができていないと、そもそも作れません。

よくある質問

Q. 債権年齢表とは何ですか
売掛金を、支払期日からの経過日数で区分し、取引先ごとに集計した表です。残高の合計だけでは分からない「回収が止まっているかどうか」が見えます。
Q. 経過日数は、いつから数えますか
支払期日からです。請求日から数えると、期日どおりに払われる予定の債権まで「60日経過」などと表示され、問題のある債権と区別できません。金融機関が見るのも期日超過の日数です。
Q. 作るのに何が必要ですか
取引先・請求日・支払期日・請求金額・入金額の5つです。会計ソフトの得意先元帳から出力できることが多いですが、支払期日が登録されていないとつまずきます。
Q. 支払期日が登録されていません
取引先ごとの締め日・支払日を一覧にして、登録する運用に変えてください。一度やれば以後は自動で入ります。資金繰り表の精度も上がります。
Q. 区分は何日刻みがよいですか
30日刻みが分かりやすく、実務でよく使われます。回収サイトが短い業種では、より細かく切ることもあります。決まりはありません。
Q. 基準日は、いつにすべきですか
月末で固定してください。毎月ずらすと前月と比較できません。この表は並べて初めて意味を持ちます。
Q. いちばん重要な兆候は何ですか
同じ取引先の残高が、月を追うごとに右の区分へ移っていくことです。1〜30日 → 31〜60日 → 61〜90日 と移っていれば、回収が止まっています。金額の大小ではなく、動き方を見てください。
Q. 売掛金が増えているのは、よいことですか
理由によります。売上が伸びたのか、回収が止まったのか。年齢表を見なければ区別できません。残高が増えても期日超過の割合が上がっていれば、悪化しています。
Q. 一部だけ入金されるのは、どう見ればよいですか
相手の資金繰りが苦しい可能性と、値引き・相殺・振込手数料の認識違いの2つが考えられます。毎回同じ額の端数が残るなら後者です。原因を特定して処理してください。
Q. 新規取引先の初回が遅れました
その後も遅れる可能性が高い状態です。取引量を増やす前に、前払い・一部前受けにする、与信の上限を設けるなどの対応を検討してください。
Q. 滞留があると、金融機関に不利ですか
担保評価から除外されますが、隠すほうが不利です。実地調査や翌月以降の残高から判明します。事実と回収の見込みを添えて先に出してください。
Q. 作っただけで、何も変わりません
区分ごとの対応を決めていないためです。1〜30日なら電話、31〜60日なら書面、というように決めておけば、担当者が判断せずに動けます。月次の締め後に見る時間も決めてください。
出典

  • 中小企業の会計に関する基本要領、資金繰り・債権管理の支援 — 中小企業庁
  • ABL(動産・債権担保融資)の普及・活用 — 経済産業省
  • 中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針 — 金融庁