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仕入れ資金による調達営業黒字810万円でも、7か月目に現金がマイナスになる。仕入れの支払いと売上の入金の時差を月次で並べ、累積の谷を出すExcelテンプレートです。

損益計算書では利益が出ているのに、資金が足りなくなる。その原因のほとんどは、仕入れの支払いと売上の入金の時差です。
この記事のテンプレートの初期値は、年間の営業損益が+810万円の会社です。それでも7か月目に累積の現金が▲60万円になります。損益だけを見ていると、この谷は見えません。
黒字と現金は別。時差が谷を作ります。
月ごとの売上と仕入れを入れると、累積の過不足が自動で出る表です。
6シート構成。「1 前提」にサイトと粗利率、「2 月次の計画」に月ごとの売上を入れると、「3 資金の過不足」に累積の現金と谷が自動で出ます。数式が入っているので、前提を変えると全体が動きます。
| 月 | 売上(万円) | 仕入れ(万円) | その他の支出(万円) | 売上の入金 | 仕入れの支払い | 固定費 | 単月の収支 | 累積の現金 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ※前提 | 入金サイト2か月 | 支払サイト1か月 | 仕入れ先行1か月 | 粗利率30% | 固定費250万/月 | 期首現金1500万 | ||
| 1 | 800 | 560 | 0 | 0 | 0 | 250 | -250 | 1,250 |
| 2 | 800 | 840 | 0 | 0 | 560 | 250 | -810 | 440 |
| 3 | 1,200 | 630 | 0 | 800 | 840 | 250 | -290 | 150 |
| 4 | 900 | 630 | 0 | 800 | 630 | 250 | -80 | 70 |
| 5 | 900 | 1,050 | 0 | 1,200 | 630 | 250 | 320 | 390 |
| 6 | 1,500 | 700 | 0 | 900 | 1,050 | 250 | -400 | -10 |
| 7 | 1,000 | 630 | 0 | 900 | 700 | 250 | -50 | -60 |
| 8 | 900 | 910 | 0 | 1,500 | 630 | 250 | 620 | 560 |
| 9 | 1,300 | 700 | 0 | 1,000 | 910 | 250 | -160 | 400 |
| 10 | 1,000 | 700 | 0 | 900 | 700 | 250 | -50 | 350 |
| 11 | 1,000 | 980 | 0 | 1,300 | 700 | 250 | 350 | 700 |
| 12 | 1,400 | 0 | 0 | 1,000 | 980 | 250 | -230 | 470 |
| 合計 | 12,700 | 8,330 | 0 | 10,300 | 8,330 | 3,000 | -1030 | |
| ※累積の谷 | -60 | 7か月目 | ||||||
| ※期末の現金 | 470 | |||||||
| ※年間の営業損益 | 810 | 粗利3810-固定費3000 |
Excel版は、株数と1株あたり金額を入れると持株比率が自動で出ます。 入力するところは水色、自動で計算されるところはグレーに塗り分けてあります。 1枚目に使い方、最後に用語集が入っています。
コピーを押すと、タブ区切りでクリップボードに入ります。 Googleスプレッドシートに貼ると列が揃ったまま入ります(計算式は入りません)。
入っている数字はすべて記入例です。実在の会社のものではありません。 自社の数字に置き換えて使ってください。
| シート | 何をするか |
|---|---|
| はじめに | 使い方と、入れてはいけない数字 |
| 1 前提 | サイト・粗利率・固定費・期首現金を入れる |
| 2 月次の計画 | 月ごとの売上を入れる(仕入れは自動計算) |
| 3 資金の過不足 | 累積の現金と、谷が出る |
| 4 サイトを変えたら | サイトを1か月動かした場合の効果 |
| 用語と計算式 | 各項目の定義 |
灰色のセルには数式が入っています。「1 前提」の6項目と、「2 月次の計画」の売上だけを入れてください。仕入れは、売上と先行期間から自動で計算されます。
入力は前提6項目と月ごとの売上だけです。
| 前提 | 意味 | 初期値 |
|---|---|---|
| 売上の入金サイト | 売ってから何か月後に入るか | 2か月 |
| 仕入れの支払サイト | 仕入れてから何か月後に払うか | 1か月 |
| 仕入れの先行 | 売る何か月前に仕入れるか | 1か月 |
| 粗利率 | 売上に対する粗利の割合 | 30% |
| 月々の固定費 | 人件費・家賃など | 250万円 |
| 期首の現金 | スタート時点の残高 | 1,500万円 |
売る2か月前に仕入れ、その翌月に払い、売った2か月後に入金される。支払いから入金まで、3か月空いています。この3か月が谷を作ります。
支払いから入金まで3か月。ここが谷の正体です。
初期値での12か月の動きです。単位は万円。
| 月 | 売上 | 入金 | 支払い | 固定費 | 単月 | 累積 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 800 | 0 | 0 | 250 | −250 | 1,250 |
| 2 | 800 | 0 | 560 | 250 | −810 | 440 |
| 3 | 1,200 | 800 | 840 | 250 | −290 | 150 |
| 4 | 900 | 800 | 630 | 250 | −80 | 70 |
| 5 | 900 | 1,200 | 630 | 250 | +320 | 390 |
| 6 | 1,500 | 900 | 1,050 | 250 | −400 | −10 |
| 7 | 1,000 | 900 | 700 | 250 | −50 | −60 |
| 8 | 900 | 1,500 | 630 | 250 | +620 | 560 |
| 9 | 1,300 | 1,000 | 910 | 250 | −160 | 400 |
| 10 | 1,000 | 900 | 700 | 250 | −50 | 350 |
| 11 | 1,000 | 1,300 | 700 | 250 | +350 | 700 |
| 12 | 1,400 | 1,000 | 980 | 250 | −230 | 470 |
年間の粗利は3,810万円、固定費は3,000万円。営業損益は+810万円の黒字です。それでも6〜7か月目に現金がマイナスになります。
黒字でも、6〜7か月目に現金が尽きます。
単月の収支は、黒字と赤字を行き来します。資金繰りで意味があるのは、累積がどこまで沈むかです。この例なら、7か月目の▲60万円が最も深いところです。
| 手段 | この例で必要な額 |
|---|---|
| 期首の現金を増やす | +60万円以上 |
| 当座貸越の枠を持つ | 100万円程度 |
| サイトを改善する | 次の章 |
| 固定費を下げる | 月5万円で12か月なら60万円 |
この例の谷は60万円と小さい数字ですが、売上規模が10倍になれば、谷も10倍になります。自社の実数を入れて確認してください。
用意すべきは累積の谷の深さです。
この表の「年間の収支」は▲1,030万円と出ます。黒字なのに、なぜマイナスなのか。
| 項目 | 金額 | 説明 |
|---|---|---|
| 年間の売上 | 12,700万円 | 12か月分 |
| 12か月間に入金された額 | 10,300万円 | 1〜10月分だけ |
| まだ入っていない額 | 2,400万円 | 11・12月分(売掛金) |
| 12か月間の支払い | 8,330万円 | — |
| 12か月間の固定費 | 3,000万円 | — |
| 差引 | ▲1,030万円 | 10,300−8,330−3,000 |
入金サイトが2か月あるため、11月・12月の売上2,400万円は、まだ現金になっていません。これが売掛金として残っている分です。翌年に入ってきます。
期首の現金1,500万円から1,030万円が減って、期末は470万円。これは損ではなく、売掛金に変わっただけです。ただし現金としては手元にありません。
▲1,030万円は損ではなく、売掛金に変わった分です。
| 前提 | 1か月動かすと | 交渉の相手 |
|---|---|---|
| 入金サイト | 短くすると現金が増える | 取引先 |
| 支払サイト | 延ばすと現金が増える | 仕入先 |
| 仕入れの先行 | 短くすると現金が増える | 自社の在庫管理 |
入金と支払いのサイトは相手との交渉が必要ですが、仕入れの先行期間は自社の在庫管理で決まります。いちばん自分でコントロールしやすい項目です。
仕入れの先行だけは、交渉なしで動かせます。
| 条件 | サイト(か月) |
|---|---|
| 即金・前受け | 0 |
| 月末締め翌月末払い | 1 |
| 月末締め翌々月末払い | 2 |
| 検収後に締めて翌々月末 | 2〜3 |
| 手形(サイト120日) | 約4〜5 |
「月末締め翌々月末払い」でも、検収が翌月にずれ込めば、実質は3か月になります。契約書の文言ではなく、実際の入金日で入れてください。
入金を早める方法は 「債権による調達」とは何を指すか の記事で扱っています。
契約書の文言ではなく、実際の入金日で入れてください。
| 条件 | サイト(か月) |
|---|---|
| 前払い | マイナス(先に払う) |
| 納品時に現金 | 0 |
| 月末締め翌月末払い | 1 |
| 月末締め翌々月末払い | 2 |
支払サイトにマイナスは入れられません。前払いがある場合は、「2 月次の計画」の仕入れの行を、実際に払う月に直接入力してください。
支払サイトを延ばす交渉は 仕入先との支払条件交渉 と 仕入先への支払いを遅らせると、何と引き換えになるか の記事で扱っています。下請法の制限があるため、相手によっては延ばせません。
前払いがある場合は、仕入れの行を直接入力してください。
| 商売の形 | 先行(か月) |
|---|---|
| 受注してから仕入れる | 0 |
| 1か月分の在庫を持つ | 1 |
| 3か月分の在庫を持つ | 3 |
| 海外から輸入(リードタイム長い) | 3〜6 |
| 年に1回まとめて仕入れる | この表では扱えない |
3か月分の在庫を持つということは、在庫回転日数が約90日ということです。回転日数を短くすれば、先行期間も短くなります。
在庫回転日数と現金の関係は 在庫回転日数が1日延びると、現金はいくら減るか の記事で、専用のテンプレートとあわせて扱っています。
年に1回まとめて仕入れる商材は、この表の構造に合いません。年に1回しか仕入れない商材の資金計画 の記事を参照してください。
先行期間は在庫回転日数と同じものです。
「4 サイトを変えたら」のシートで出る数字です。
| できること | 増える現金 |
|---|---|
| 入金サイトを1か月短くする | 約1,058万円 |
| 支払サイトを1か月延ばす | 約694万円 |
| 両方 | 約1,753万円 |
増える金額は、それぞれの月平均の金額とほぼ同額です。売上のほうが仕入れより大きいため、入金サイトを動かすほうが効きます。
この例では、どちらか一方でも実現すれば谷は完全に埋まります。60万円の谷に対して、694万円の効果があるためです。
ただし、この数字は概算です。月ごとの金額が違うため、正確には「1 前提」のサイトを実際に変えて、「3 資金の過不足」を見てください。
効果は月平均の金額とほぼ同額。入金側のほうが大きい。
| 順 | やること | 難易度 |
|---|---|---|
| 1 | 仕入れの先行を短くする(在庫を減らす) | 自社で決められる |
| 2 | 入金サイトを短くしてもらう | 取引先しだい |
| 3 | 前受け・着手金を導入する | — |
| 4 | 支払サイトを延ばしてもらう | 下請法の制限あり |
| 5 | 売掛金を早期化する | 費用がかかる |
| 6 | 当座貸越の枠を作る | 銀行の与信 |
支払いを延ばすのはいちばん手軽に見えますが、仕入先の資金繰りを圧迫し、条件の悪化や取引の停止につながります。自社でできる1番から順に手をつけてください。
自社でできる1番から。支払い延長は最後です。
| やってはいけないこと | 何が起きるか |
|---|---|
| 取れる確証のない受注を入れる | 表が「足りている」と出る |
| 入金予定日を実際より早く書く | 谷が浅く出る |
| 支払予定日を実際より遅く書く | 谷が浅く出る |
| 税金・社会保険料を入れ忘れる | 納付月に資金が足りなくなる |
| 借入の返済を入れ忘れる | 同上 |
| 賞与を入れ忘れる | 支給月に足りなくなる |
資金繰り表の価値は、足りないことを事前に知らせることにあります。楽観的な数字を入れると、その機能を失います。
4〜6番目は「その他の支出」の列に入れてください。税金・社会保険料・賞与・返済は、忘れられやすく金額が大きい支出です。
税金・賞与・返済は「その他の支出」に必ず入れてください。
| 下振れさせる項目 | 変え方 |
|---|---|
| 売上 | 計画の8割・7割で入れ直す |
| 入金サイト | 1か月延ばす(遅延を想定) |
| 粗利率 | 5ポイント下げる |
| 固定費 | 1割増やす |
計画どおりの谷と、下振れした場合の谷。用意すべき資金は、後者です。計画どおりに進むことを前提にした資金計画は、ほぼ必ず不足します。
とくに入金サイトを1か月延ばして見ることをおすすめします。取引先1社の支払いが遅れるだけで、谷は大きく深くなります。
用意すべきは下振れした場合の谷です。
| 分からないこと | どうするか |
|---|---|
| 月内の資金の動き | 月末に集中する支払いは、日繰りで見る |
| 取引先ごとの遅延 | 大口だけ別行にする |
| 年に1回の大きな仕入れ | 別の考え方が要る |
| 消費税の納付 | 「その他の支出」に入れる |
| 設備投資 | 同上 |
| 季節による粗利率の変動 | 月ごとに分けたい場合は列を足す |
月末に支払いが集中する会社では、月次では足りていても、月末の数日だけ足りないことがあります。ぎりぎりの水準なら、日次の資金繰り表も併用してください。
月次で足りていても、月末の数日が足りないことがあります。
| やること | 頻度 |
|---|---|
| 実績を入れて、計画とのズレを見る | 毎月 |
| 先の12か月を作り直す | 毎月(ローリング) |
| 入金サイトの実績を確認する | 四半期 |
| 金融機関に見せる | 融資の相談時 |
計画と実績がずれたとき、売上が違ったのか、入金が遅れたのか、支払いが増えたのかを特定してください。それが翌月の精度を上げます。
この表は、金融機関への説明資料としても使えます。「いつ、いくら足りなくなるか」を示せれば、資金使途と返済原資の説明になります。
資金使途の説明は 資金使途は、どう説明すると通りやすいか の記事で扱っています。
毎月更新し、ズレの理由を特定してください。
この表の仕入れは、売上に原価率を掛けて自動計算されます。だから粗利率が実態とずれていると、仕入れの金額も全部ずれます。
| 粗利率 | 年間の仕入れ(売上12,700万円) | 初期値との差 |
|---|---|---|
| 25% | 9,525万円 | +635万円 |
| 30%(初期値) | 8,890万円 | — |
| 35% | 8,255万円 | −635万円 |
粗利率を実態より高く見積もると、仕入れが少なく計算され、谷も浅く出ます。決算書または試算表の実績で確認してください。
また、粗利率は商品や時期によって変わります。季節で大きく変動する場合は、「2 月次の計画」の仕入れ(C列)を月ごとに直接入力するほうが正確です。
※ 上の表の年間の仕入れは、12か月分の売上すべてに原価率を掛けた金額です。テンプレートでは仕入れが1か月先行するため、12か月目の仕入れが翌年分になり、表示される合計は8,330万円になります。
粗利率が5ポイントずれると、仕入れが年635万円変わります。
谷がマイナスになったとき、打てる手には順序があります。
| 順 | 手段 | 費用 |
|---|---|---|
| 1 | 在庫を減らす(仕入れの先行を短く) | なし |
| 2 | 入金を早めてもらう | なし(値引きを求められることも) |
| 3 | 前受け・着手金を導入する | なし |
| 4 | 当座貸越の枠を作る | 使った分だけ |
| 5 | 短期の運転資金融資 | 金利 |
| 6 | 売掛金の早期化 | 手数料 |
| 7 | 売上計画を縮小する | 機会損失 |
4番はもっとも使い勝手のよい手段ですが、資金が足りなくなってから申し込んでも間に合いません。この表で谷が見えた時点で、余裕をもって相談してください。
7番も選択肢です。売上を追うほど谷は深くなります。資金が用意できないなら、成長の速度を落とすのが正しい判断になることがあります。
枠の作り方は コミットメントラインと当座貸越枠の使い分け の記事で扱っています。
枠は足りると分かっているうちに作ってください。
8〜10番は忘れられやすく、金額が大きい支出です。
この記事は仕入れ資金による調達の一部です。手段そのものを比べたい場合は、あわせてご覧ください。