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仕入れ資金による調達

在庫回転日数が1日延びると、現金はいくら減るか

回転日数とCCC、1日あたりの効果が自動で出るExcelを配布します。売上原価で割る理由、平均30日の裏で400万円が動いていない構造を品目別に見る方法を扱います。

公開:2026年9月14日 Creww Finance Media 編集部
この記事の内容

  1. 在庫は、金額で見ても判断できない
  2. 在庫回転日数という物差し
  3. 売上高ではなく、売上原価で割る
  4. 数字で見る|1日で現金はいくら動くか
  5. テンプレート(計算式入りExcel)
  6. CCC|現金が戻るまでの日数
  7. 数字で見る|CCCを分解する
  8. 全体の平均では、止まっている在庫が見えない
  9. 数字で見る|品目別に見ると
  10. なぜ在庫は増えるのか
  11. 減らす手順|まず動かないものから
  12. 評価損が出ても、処分したほうがよい理由
  13. 減らしすぎると、別の損が出る
  14. 毎月測る
  15. 金融機関への説明にも使える
  16. チェックリスト
  17. よくある質問

在庫は、金額で見ても判断できない

「在庫が1,800万円あります」——この数字だけでは、多いのか少ないのか判断できません。

会社 在庫 月間の売上原価 状態
A社 1,800万円 1,800万円 30日分。標準的
B社 1,800万円 600万円 90日分。多い

同じ1,800万円でも、意味がまったく違います。在庫は、金額ではなく「何日分か」で見てください。

在庫回転日数在庫が現金に戻るまでの平均日数。
CCC仕入代金を払ってから、売上を回収するまでの日数。
所要運転資金事業を回すために立て替えている金額。
滞留在庫動いていない在庫。
この章の要点

在庫は金額ではなく「何日分か」で見てください。

在庫回転日数という物差し

在庫回転日数 = 在庫の残高 ÷ 1日あたりの売上原価

「いまの在庫は、何日分の出荷に相当するか」を表します。この日数が長いほど、資金が在庫に固定されています。

項目 計算 例
月間の売上原価 月商 × 売上原価率 3,000万円 × 60% = 1,800万円
1日あたりの売上原価 月間の売上原価 ÷ 30 60万円
在庫回転日数 在庫 ÷ 1日あたりの売上原価 1,800万円 ÷ 60万円 = 30日

この会社は30日分の在庫を持っています。1か月分です。

この章の要点

在庫 ÷ 1日あたりの売上原価。これが在庫回転日数です。

売上高ではなく、売上原価で割る

間違えやすい点です。在庫回転日数は、売上高ではなく売上原価で割ります。

割るもの 1日あたり 在庫回転日数 正しいか
売上高 100万円 18日 誤り
売上原価 60万円 30日 正しい
在庫は原価で計上されている

在庫は仕入れた金額(原価)で計上されています。これを売上高で割ると、単位が合わず、日数が短く出ます。実態より良く見えてしまいます。

上の例では、売上高で割ると18日、売上原価で割ると30日。12日も違います。粗利率が高い事業ほど、この差は大きくなります。

この章の要点

売上原価で割る。売上高で割ると、実態より良く見えます。

数字で見る|1日で現金はいくら動くか

この記事の主題です。在庫回転日数を1日動かすと、必要な資金はいくら変わるか。

1日の効果 = 1日あたりの売上原価

在庫回転日数が1日延びれば、在庫が「1日あたりの売上原価」の分だけ増えます。その分、現金が減ります。

在庫回転日数 在庫の残高 現状との差
20日 1,200万円 ▲600万円(現金が増える)
25日 1,500万円 ▲300万円
30日(現状) 1,800万円 0円
35日 2,100万円 +300万円(現金が減る)
40日 2,400万円 +600万円
60万円1日あたりの効果
600万円10日分
月商3,000万円この会社の規模

在庫回転日数が1日延びると、現金が60万円減ります。10日で600万円です。

気づかないうちに延びている

在庫が増えるのは、多くの場合意識的な判断ではなく、少しずつの積み重ねです。発注を少し多めにする、売れ行きが落ちた商品を残す——それが5日、10日と延びていきます。

この章の要点

1日で60万円(月商3,000万・原価率60%の場合)。10日で600万円です。

テンプレート(計算式入りExcel)

月商・売上原価率・在庫・売掛金・買掛金を入れれば、回転日数・CCC・所要運転資金が自動で出て、1日動かしたときの効果まで計算されます。

TEMPLATE 在庫回転日数と必要資金のテンプレート

水色の5か所を入れると、回転日数とCCC、1日あたりの効果が自動で出ます。品目別の回転日数も出せます。

1 現状(この5つを入れる)

項目金額メモ
月商(売上高)円で入れる
売上原価率(%)60売上に対する原価の割合
月間の売上原価月商 × 売上原価率
在庫の残高月末時点の棚卸資産
売掛金の残高月末時点
買掛金の残高月末時点

2 自動で出る数字

項目計算のしかた
日商月商 ÷ 30
1日あたりの売上原価月間の売上原価 ÷ 30
売上債権回転日数売掛金 ÷ 日商
在庫回転日数在庫 ÷ 1日あたりの売上原価
仕入債務回転日数買掛金 ÷ 1日あたりの売上原価
CCC(現金が戻るまでの日数)売上債権回転日数 + 在庫回転日数 - 仕入債務回転日数
所要運転資金売掛金 + 在庫 - 買掛金

3 日数を変えたら

在庫回転日数の変化在庫の残高所要運転資金現状との差
-10日
-5日
-3日
-1日
現状
+1日
+3日
+5日
+10日
1日あたりの効果1日あたりの売上原価と同額

4 品目別の在庫

品目仕入単価在庫数量在庫金額月間の出荷数月間の出荷金額回転日数
(例)商品A1,200500600,000150180,000100
合計

5 用語と計算式

用語内容
在庫回転日数在庫 ÷ 1日あたりの売上原価。売上高ではなく売上原価で割る
売上債権回転日数売掛金 ÷ 日商
仕入債務回転日数買掛金 ÷ 1日あたりの売上原価
CCC仕入代金を払ってから売上を回収するまでの日数
所要運転資金事業を回すために立て替えている金額
1日あたりの効果在庫回転日数を1日動かすと必要資金が変わる額
この表の限界月末残高で計算している。月中の変動が大きいなら平均残高で

Excel版は、株数と1株あたり金額を入れると持株比率が自動で出ます。 入力するところは水色、自動で計算されるところはグレーに塗り分けてあります。 1枚目に使い方、最後に用語集が入っています。

コピーを押すと、タブ区切りでクリップボードに入ります。 Googleスプレッドシートに貼ると列が揃ったまま入ります(計算式は入りません)。

入っている数字はすべて記入例です。実在の会社のものではありません。 自社の数字に置き換えて使ってください。

シート 内容
はじめに 使い方の4ステップ
1 現状 5つを入れる。回転日数・CCC・所要運転資金が出る
2 日数を変えたら 在庫回転日数を±10日まで動かした場合の必要資金
3 品目別の在庫 品目ごとの回転日数。止まっている在庫を探す
用語と計算式 —

入力するのは1 現状の5か所と、3 品目別の在庫だけです。金額は円で統一してください。

この章の要点

入力は5か所。1日あたりの効果まで自動で出ます。

CCC|現金が戻るまでの日数

在庫だけを見ても、資金繰りの全体は分かりません。仕入代金を払ってから、売上を回収するまでの日数を見る指標があります。

CCC = 売上債権回転日数 + 在庫回転日数 - 仕入債務回転日数

仕入れてから売れるまでの日数(在庫)と、売ってから回収するまでの日数(売上債権)を足し、仕入れてから払うまでの日数(仕入債務)を引きます。この日数のあいだ、会社が資金を立て替えています。

CCC 意味
長い 立て替える期間が長い。運転資金が要る
短い 資金が早く戻る
マイナス 払う前に回収できている。事業が資金を生む

CCCがマイナスになるのは、前受けや、長い支払サイトがある事業です。この場合、成長するほど現金が増えます。

この章の要点

CCCは立て替えている日数。マイナスなら事業が資金を生みます。

数字で見る|CCCを分解する

先ほどの会社(月商3,000万円・原価率60%)で計算します。

項目 金額 日数
売掛金 6,000万円 60日
在庫 1,800万円 +30日
買掛金 1,800万円 -30日
CCC — 60日
所要運転資金 6,000万円 —
60日CCC
6,000万円所要運転資金
100万円CCC1日あたり(日商)

この会社は60日分、資金を立て替えています。そして、どこを縮めるのが効くかも見えます。

縮める場所 1日あたりの効果
売上債権回転日数 100万円(日商)
在庫回転日数 60万円(1日あたりの売上原価)
仕入債務回転日数を延ばす 60万円
1日あたりの効果は、場所によって違う

売上債権は日商(100万円)、在庫と仕入債務は1日あたりの売上原価(60万円)で効きます。同じ1日でも、回収を早めるほうが効果が大きいという関係になります。

この章の要点

1日の効果は回収が100万円、在庫が60万円。場所で違います。

全体の平均では、止まっている在庫が見えない

在庫回転日数30日という数字は、全体の平均です。中身は均一ではありません。

品目 在庫金額 月間の出荷 回転日数
商品A 600万円 900万円 20日
商品B 500万円 750万円 20日
商品C 300万円 150万円 60日
商品D 400万円 0円 出荷なし
合計 1,800万円 1,800万円 平均30日
平均30日の内訳は、20日と「動いていない」

主力のAとBは20日で回っていますが、Dは400万円分が動いていません。全体の平均だけを見ていると、この400万円が見えません。

この章の要点

平均の内訳は均一ではありません。品目別に見てください。

数字で見る|品目別に見ると

先ほどの内訳から、何をすべきかを判断します。

品目 状態 やること 効果
A・B 20日で回っている 維持する —
C 60日。やや長い 発注量を見直す 150万円程度
D 動いていない 処分する 400万円
400万円動いていない在庫
22%在庫全体に占める割合
1,800万円在庫の総額

在庫の22%が、何も生まずに資金を固定しています。この400万円を処分すれば、在庫回転日数は約23日に下がります。

まずDを処分する。それだけで大きく変わる

全品目の発注量を見直すより、動いていない在庫を1つ処分するほうが、はるかに早く効きます。テンプレートの「3 品目別の在庫」で、出荷がゼロの品目を探してください。

この章の要点

まず動いていない在庫。全品目の見直しより早く効きます。

なぜ在庫は増えるのか

原因 内容
欠品を恐れる 多めに持てば、機会損失は防げる
まとめ買いの割引 単価が下がるので、多く買う
最低発注数量(MOQ) 必要量より多く買わざるを得ない
納期が長い 先に発注しておく必要がある
売れ行きが落ちた商品を残す 処分の判断をしないまま積み上がる
販売計画と発注が連動していない —
2番目は、計算しないと損得が分からない

まとめ買いで単価が3%下がっても、在庫回転日数が20日延びれば、資金は1,200万円増えます。3%の割引額と、その資金のコストを比べてください。

最低発注数量の問題は 最低発注数量(MOQ)が資金繰りを決めてしまう、発注のタイミングは 発注点を決めると、資金の山が平らになる の記事で扱っています。

この章の要点

まとめ買いの割引は計算しないと損得が分かりません。

減らす手順|まず動かないものから

順 やること 効果 期間
1 出荷がゼロの品目を特定する — 1日
2 その金額と、在庫全体に占める割合を出す — 1日
3 処分の方針を決める(値引き販売・返品・廃棄) 大きい 数週間
4 回転日数が長い品目の発注量を見直す 中 数か月
5 発注の頻度を上げ、1回の量を減らす 中 数か月
6 販売計画と発注を連動させる 継続的 継続

1〜3が最優先です。動いていない在庫は、持っていても価値が上がりません。むしろ時間が経つほど、売りにくくなります。

「いつか売れるかもしれない」は、判断を先送りにしているだけ

1年動いていない商品が、来年動く可能性は高くありません。処分を先送りするほど、値引き幅は大きくなり、保管の費用もかかり続けます。

この章の要点

1〜3が最優先。先送りするほど、値引き幅は大きくなります。

評価損が出ても、処分したほうがよい理由

処分をためらう理由は、多くの場合「損失が出るから」です。

考え方 実際
「処分すると損が出る」 損はすでに出ている。計上していないだけ
「まだ資産として計上されている」 売れない在庫は、実質的に資産ではない
「いつか売れるかも」 時間が経つほど売りにくくなる
「保管費用はかかっていない」 倉庫代・管理の手間がかかっている
銀行も、売れない在庫は資産として見ていない

金融機関は、滞留している在庫を実質純資産の計算から控除します。処分してもしなくても、評価は変わりません。むしろ処分して現金にしたほうが、資金繰りは改善します。

この点は 銀行は決算書のどこを見るか の記事で扱っています。決算書の見た目を保つために処分しないのは、意味がありません。

この章の要点

損はすでに出ています。計上していないだけです。

減らしすぎると、別の損が出る

起きること 損失
欠品 売上の機会を失う
納期が守れない 信用を失う
発注の頻度が増える 送料・事務の手間が増える
まとめ買いの割引を失う 単価が上がる
急ぎの手配 割高になる
「減らす」が目的ではない

在庫を減らすこと自体が目的ではありません。目的は、動かない在庫に資金を固定しないことです。よく動く商品の在庫を削って欠品させれば、資金より大きなものを失います。

だから、品目別に見ることが重要になります。全体を一律に削るのではなく、動いていないものを落とし、動いているものは適正な量を持つ——この切り分けが必要です。

この章の要点

一律に削らない。動いていないものを落とすのが目的です。

毎月測る

測る指標 頻度 見る点
在庫回転日数(全体) 毎月 前月比。延びていないか
CCC 毎月 資金が戻るまでの日数
所要運転資金 毎月 立て替えている金額
出荷ゼロの品目の金額 毎月 増えていないか
品目別の回転日数 四半期 長い順に並べる
1回作っただけでは、増えているか分からない

在庫回転日数30日という数字だけを見ても、多いか少ないか判断できません。前月が25日だったなら、5日増えている——つまり300万円の現金が在庫に変わっています。推移で見てください。

テンプレートは毎月、月末の数字で作り直してください。ファイルを月ごとに残せば、推移が並びます。

この章の要点

1回では判断できません。前月と比べることで、変化が見えます。

金融機関への説明にも使える

場面 使い方
増加運転資金の申込 売上増で在庫がいくら増えたかを示す
在庫が増えた理由の説明 回転日数が延びたのか、売上が増えたのか
ABLの申込 在庫の内訳と回転日数を示す
改善の実績 回転日数の推移で示す
「在庫が増えた」は必ず聞かれる

決算書で在庫が増えていれば、金融機関は理由を聞きます。「売上が増えたため、回転日数は変わっていません」と答えられるか、「回転日数が10日延びました」となるかで、評価がまったく違います。

前者は成長に伴う自然な増加、後者は管理の問題です。回転日数を出していれば、この区別が即座にできます。

この章の要点

在庫増の理由が売上か、回転日数か——即答できる状態にしてください。

チェックリスト

在庫と資金の関係を管理するために

  • 在庫回転日数を計算した(売上原価で割った)
  • 1日あたりの効果(=1日あたりの売上原価)を出した
  • CCCを計算した
  • 所要運転資金を計算した
  • 品目別の回転日数を出した
  • 出荷がゼロの品目とその金額を特定した
  • それが在庫全体の何%かを計算した
  • 処分の方針を決めた(値引き・返品・廃棄)
  • 回転日数が長い品目の発注量を見直した
  • まとめ買いの割引額と、増える在庫の資金を比べた
  • よく動く品目を削って欠品させていない
  • 毎月、月末の数字で作り直している
  • 前月と比べて、回転日数の推移を見ている
  • 在庫が増えた理由(売上か回転日数か)を説明できる
この章の要点

6番の出荷ゼロの品目を特定すれば、いちばん効く手が見つかります。

よくある質問

Q. 在庫回転日数は、どう計算しますか
在庫の残高 ÷ 1日あたりの売上原価です。1日あたりの売上原価は「月商 × 売上原価率 ÷ 30」で出します。月商3,000万円・原価率60%なら60万円です。
Q. なぜ売上高ではなく売上原価で割るのですか
在庫は仕入れた金額(原価)で計上されているためです。売上高で割ると単位が合わず、日数が短く出ます。上の例では18日と30日で、12日も違います。
Q. 1日延びると、いくら現金が減りますか
1日あたりの売上原価と同額です。月商3,000万円・原価率60%なら60万円。10日で600万円になります。
Q. CCCとは何ですか
売上債権回転日数+在庫回転日数-仕入債務回転日数です。仕入代金を払ってから売上を回収するまでの日数で、この間、会社が資金を立て替えています。マイナスなら事業が資金を生んでいます。
Q. どこを縮めるのが効きますか
1日あたりの効果が違います。売上債権は日商(例では100万円)、在庫と仕入債務は1日あたりの売上原価(60万円)です。同じ1日なら、回収を早めるほうが効果が大きくなります。
Q. 全体の回転日数だけ見ればよいですか
不十分です。平均30日でも、主力が20日で回り、400万円分がまったく動いていない——という内訳のことがあります。品目別に見ないと、止まっている在庫が見えません。
Q. 何から減らせばよいですか
出荷がゼロの品目です。全品目の発注量を見直すより、動いていない在庫を処分するほうが早く効きます。テンプレートの品目別シートで、出荷がゼロの行を探してください。
Q. 処分すると損失が出ます
損はすでに出ており、計上していないだけです。金融機関も滞留在庫は実質純資産の計算から控除するため、処分してもしなくても評価は変わりません。処分して現金にしたほうが資金繰りは改善します。
Q. まとめ買いの割引は、得ですか
計算しないと分かりません。単価が3%下がっても、在庫回転日数が20日延びれば資金は1,200万円増えます。割引額と、その資金のコストを比べてください。
Q. 在庫は少ないほどよいですか
違います。減らしすぎると欠品し、売上の機会を失います。目的は「減らすこと」ではなく「動かない在庫に資金を固定しないこと」です。品目別に切り分けてください。
Q. どのくらいの頻度で測りますか
毎月、月末の数字で作り直してください。1回だけでは多いか少ないか判断できません。前月が25日で今月が30日なら、300万円の現金が在庫に変わっています。
Q. 金融機関への説明に使えますか
使えます。在庫が増えていれば理由を聞かれます。「売上が増えたため、回転日数は変わっていません」と答えられるか、「回転日数が10日延びました」となるかで評価が違います。
出典