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仕入れ資金による調達15日延ばして浮く900万円の金利換算は年27万円。一方、単価が1%上がれば年216万円で8倍の損。損益分岐は0.125%です。引き換えになる6つを整理します。

支払サイトを延ばせば、資金繰りは楽になります。しかし、それはタダではありません。
借入なら利息という形で費用が見えます。支払サイトの延長は、単価や取引条件という見えにくい形で費用が発生します。見えないだけで、コストがないわけではありません。
費用は金利として表れないだけ。単価や条件という形で発生します。
| — | 引き換えになるもの | 金額に直せるか |
|---|---|---|
| ① | 単価が上がる | 直せる |
| ② | 品薄のときの優先順位が下がる | 直しにくい |
| ③ | 情報が入らなくなる | 直しにくい |
| ④ | 与信枠を絞られる | 直せる |
| ⑤ | 仕入先が倒れるリスクが上がる | 直しにくい |
| ⑥ | 下請法に触れる可能性 | — |
①と④は金額に直せます。まずここを計算して、借入と比べてください。②③⑤は金額にできませんが、効いてくると大きくなります。
6つのうち①と④は金額に直せます。まずそこを計算してください。
もっとも起きやすく、もっとも見えにくい形です。
| 起き方 | 内容 |
|---|---|
| 次の見積もりから上がる | その場では何も言われない |
| 値下げに応じてもらえなくなる | 据え置きでも、実質的な値上げ |
| 数量割引の条件が悪くなる | — |
| 送料・付帯費用が別建てになる | — |
| 早期支払割引を失う | 現金払いの割引があった場合 |
支払サイトが延びれば、相手は運転資金を余計に抱えます。その分のコストを、次の価格交渉で回収しようとするのは当然です。「サイトを延ばした代わりに単価を上げる」と明示されないだけで、実質的にはそうなります。
5番目にも注意してください。現金払いや早期の支払いに割引がある取引では、サイトを延ばすとその割引を失います。これは明確な費用です。
相手は資金コストを価格に織り込みます。次の見積もりから上がります。
月間の仕入が1,800万円の取引で、支払サイトを30日から45日に延ばした場合を見ます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 1日あたりの仕入 | 60万円 |
| 15日分 | 900万円(浮く資金) |
| 900万円を年利3%で借りた場合の利息 | 年27万円 |
一方、この交渉の結果、単価が1%上がったとします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 年間の仕入額 | 2億1,600万円 |
| 単価1%の上昇 | 年216万円 |
単価が1%上がるなら、素直に900万円を借りたほうが8倍安くつきます。
年216万円が1%なら、0.125%の上昇で年27万円——借入と同じ水準です。つまり、単価が0.2%でも上がるなら、借りたほうが安いということになります。
これは、仕入額が大きい会社ほど顕著になります。浮く資金は「15日分」で頭打ちですが、単価の上昇は「年間の仕入額全体」に効くためです。
単価が0.2%でも上がるなら、借りたほうが安い計算になります。
| 場面 | 起きること |
|---|---|
| 品薄・在庫が逼迫したとき | 先に他の取引先へ回される |
| 急ぎの発注 | 対応してもらえない |
| 納期の調整 | 融通が利かなくなる |
| 不具合への対応 | 後回しにされる |
| 新製品の案内 | 後になる |
相手から見れば、支払いが早い取引先と、遅い取引先があるということです。限られた在庫を配分するとき、どちらを優先するかは明らかです。
この損失は、品薄が起きたときにだけ表れます。平時は何も起きないため、判断のときに見落とされます。
原材料が逼迫したときの対応は 原材料が値上がりしたときの資金の手当て の記事で扱っています。
損失は品薄のときにだけ表れます。平時は見えません。
| 入らなくなる情報 | 影響 |
|---|---|
| 値上げの予告 | 準備の時間がなくなる |
| 在庫が逼迫しそうだという情報 | 先に手を打てない |
| 新製品・代替品の案内 | — |
| 業界の動向 | — |
| 他社の動き | — |
「来月から原材料が上がりそうです」という情報は、優先度の高い取引先に先に伝わります。1か月早く知っていれば、先に発注できます。この差は、金額に直せませんが小さくありません。
値上げの予告が遅れて届くようになります。準備の時間を失います。
金額に直せる、もう1つの損失です。
| 起きること | 内容 |
|---|---|
| 1回の発注額に上限が付く | まとめて仕入れられなくなる |
| 未払い残高に上限が付く | 前の支払いが済むまで、次が出ない |
| 一部を前払いに変えられる | 延ばした意味がなくなる |
| 保証を求められる | — |
仕入先から見れば、サイトを延ばすことは、自社に対する与信を増やすことです。与信の総額を変えたくなければ、その分だけ枠を絞るのが自然な反応です。
この場合、サイトは延びたが、発注できる量が減るという状態になります。資金繰りの効果は打ち消され、事業の制約だけが残ります。
与信の考え方は 与信管理を最小の手間で回す の記事で扱っています。相手も、同じことをしています。
サイトを延ばせば枠を絞られることがあります。効果が打ち消されます。
| 起きること | 自社への影響 |
|---|---|
| 仕入先の資金繰りが悪化する | — |
| 供給が止まる | 事業が止まる |
| 代替先を探す | 時間と費用がかかる |
| 品質・仕様が変わる | 顧客への影響 |
| 前払いした分が戻らない | — |
自社の仕入額が相手の売上の大きな割合を占めているなら、支払サイトの延長が、相手の資金繰りを直撃します。相手が小規模なほど、この影響は大きくなります。
代替の効かない仕入先なら、15日分の資金より、供給の安定のほうがはるかに重要です。交渉する前に、相手の状況と、代替の可能性を確認してください。
代替の効かない仕入先なら、供給の安定のほうが重要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 適用 | 資本金の関係と取引の内容で決まる |
| 支払期日 | 受領日から60日以内の、できる限り短い期間内 |
| 一方的な変更 | 問題になりうる |
| 違反した場合 | 公正取引委員会の勧告・指導の対象 |
| 手形での支払い | サイトについて運用の見直しが進んでいる |
下請法が適用される取引では、60日を超える支払期日は設定できません。交渉を始める前に、自社が親事業者にあたるかを確認してください。
また、適用されない取引でも、一方的に条件を変更することは、取引上の優越的地位の濫用として問題になりうる場合があります。合意のうえで進めてください。
判断が難しい場合は、公正取引委員会または中小企業庁の窓口に相談できます。
下請法が適用されるなら60日を超えられません。先に確認を。
先ほどの例で、起きうることを金額にして並べます。
| 項目 | 年間の金額 | 向き |
|---|---|---|
| 浮いた900万円の金利換算(年3%) | +27万円 | 得 |
| 単価が1%上がった場合 | ▲216万円 | 損 |
| 与信枠が絞られ、まとめ買いの割引を失った | ▲? | 損 |
| 品薄時に回してもらえない | ▲? | 損 |
| 差し引き | ▲189万円以上 | 損 |
単価が1%上がるだけで、差し引き189万円の損になります。そのうえ、金額に直せない損失が上乗せされます。
支払サイトの延長が得になるのは、単価も条件も一切変わらない場合だけです。そうでなければ、借りたほうが安くつきます。
得になるのは単価も条件も変わらない場合だけです。
| 場面 | 理由 |
|---|---|
| 借入ができない | 赤字・債務超過で融資が出ない |
| 相手の支払サイトが業界の慣行より短い | そろえるだけ。単価に影響しにくい |
| 締め日・支払日の変更だけ | 相手の負担が小さい |
| 発注量を増やす交渉とセット | 相手にも利点がある |
| 新規の取引 | 最初から決めるので、単価に織り込まれる |
| 一時的な資金の山を越える | 期間を区切る |
5番目が重要です。新規の取引なら、条件込みで見積もりを取れます。「サイト45日でいくらか」を最初から聞けば、単価に織り込まれた形で比較できます。後から変えるのとは、まったく違います。
年利3%で借りられるなら借りたほうが安い——これは借りられる会社の話です。融資が出ない状況なら、単価が上がっても支払サイトを延ばす価値があります。
新規の取引なら条件込みで見積もりが取れます。後から変えるのとは違います。
| 場面 | 理由 |
|---|---|
| 代替の効かない仕入先 | 関係が壊れると事業が止まる |
| 相手の経営が厳しい | 倒す原因になりかねない |
| 自社の比重が相手の売上の大半 | 実質的に力の行使 |
| 下請法が適用され、60日を超える | 法令上できない |
| 自社が支払いを遅らせた直後 | 信頼がない |
| 単価の値上げ交渉を断った直後 | 相手の心証が悪い |
力関係で押し切れる相手ほど、押し切ったときの副作用も大きくなります。相手が倒れる、品質が落ちる、他の取引先に情報が回る——目先の資金より大きな損失になり得ます。
押し切れる相手ほど、押し切ったときの副作用が大きくなります。
| 提案 | 相手の負担 | 自社の効果 |
|---|---|---|
| 締め日を変える | 小さい | 中 |
| 支払日を変える | 小さい | 中 |
| 分割払いにする | 中 | 支払いの山が平らになる |
| 発注を平準化する | プラスになることも | 資金の山が平らになる |
| 一部を前払い、残りを延長 | 小さい | 差し引きでプラス |
4番目は、相手にとってもプラスになることがあります。発注が平準化されれば、相手も生産や仕入の計画が立てやすくなります。
支払条件の交渉は、ゼロサムになりがちです。まず、双方が得をする提案(発注の平準化、長期契約)から始めてください。関係を良くしたうえでなら、条件の話も通りやすくなります。
交渉の進め方は 仕入先との支払条件交渉、発注の平準化は 発注点を決めると、資金の山が平らになる の記事で扱っています。
まず双方が得をする提案から。ゼロサムの話は、その後です。
| やること | 理由 |
|---|---|
| 新しい期日を、確実に守る | 一度でも遅れれば、元に戻される |
| 自動引落・口座振替にする | 遅延が起きない仕組みにする |
| 発注量を約束どおりにする | 交換材料として示したなら、守る |
| 担当者の交代時に引き継ぐ | 条件が書面にあることを確認する |
| 次の単価交渉に備える | 上がっていないかを確認する |
サイトを延ばした後、次の見積もりで単価が上がっていないかを確認してください。上がっていれば、この記事の計算のとおり、借りたほうが安かったことになります。次の判断の材料にしてください。
次の見積もりで単価が上がっていないかを確認してください。
| 順 | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 延ばした場合に浮く金額を計算する |
| 2 | その金額を借りた場合の年間の利息を計算する |
| 3 | 年間の仕入額を確認する |
| 4 | 単価が何%上がると、利息と同額になるかを計算する |
| 5 | その水準を超える値上げが起きそうかを判断する |
| 6 | 下請法が適用されるか確認する |
| 7 | 代替の効く仕入先かを確認する |
| 8 | 相手の経営状況を確認する |
4番が判断の核です。先ほどの例では0.125%でした。これを超える値上げが起きそうなら、借りたほうが安くなります。
年利数%で借りられる状態にあるなら、支払サイトの交渉より、融資のほうが安くて確実です。関係も傷つけません。融資が受けられるうちは、そちらを優先してください。
4番の損益分岐となる値上げ率を計算してから判断してください。
14番——融資で対応できないかを、先に検討してください。
この記事は仕入れ資金による調達の一部です。手段そのものを比べたい場合は、あわせてご覧ください。