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仕入れ資金による調達年1回の仕入れで1年分の在庫を抱える商材は、仕入れた瞬間に資金が固定されます。回転日数、売れ残りの損失、平均在庫の資金コストを数字で出し、資金の組み立て方を整理します。

農産物、季節商材、年1回の入札で決まる仕入れ——仕入れの機会が年に1回しかない商材があります。
| 特徴 | 資金への影響 |
|---|---|
| 仕入れの時期が決まっている | その月に資金が集中する |
| 1年分をまとめて買う | 金額が大きい |
| 販売は1年かけて | 回収が長期に分散する |
| 追加の仕入れができない | 足りなくても補充できない |
| 売れ残っても返せない | 在庫リスクを全部負う |
通常の仕入れなら、発注の頻度を上げて在庫と資金の山を平らにできます。年1回しか買えない商材では、この手が使えません。だから、別の組み立てが要ります。
年1回の仕入れでは平準化が使えません。別の組み立てが要ります。
年間の仕入が6,000万円、毎月ほぼ均等に販売する商材で見ます。
| 時期 | 在庫 | 資金の状態 |
|---|---|---|
| 仕入れの月 | 6,000万円 | 6,000万円が出ていく |
| 3か月後 | 4,500万円 | 回収が始まる |
| 6か月後 | 3,000万円 | — |
| 9か月後 | 1,500万円 | — |
| 12か月後 | 0円 | 回収が終わる |
| 平均 | 3,000万円 | — |
仕入れの月に6,000万円が必要で、それが1年かけて戻ってきます。平均すると3,000万円が在庫として固定されている状態です。
平均在庫は3,000万円ですが、仕入れの月に必要なのは6,000万円です。資金計画は、平均ではなく最大で組んでください。
用意すべきは平均ではなく最大。仕入れの月の全額です。
| 項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 年間の売上原価 | — | 6,000万円 |
| 1日あたりの売上原価 | 6,000万円 ÷ 365 | 約16.4万円 |
| 平均在庫 | — | 3,000万円 |
| 在庫回転日数 | 3,000万円 ÷ 16.4万円 | 約183日 |
通常の卸売業で183日なら在庫が多すぎますが、年1回しか仕入れられない商材では、これが構造上の水準です。他の業種の基準と比べても意味がありません。
大事なのは、自社の過去の数字と比べることです。去年の同じ時期が150日だったなら、今年は増えています。その理由を確認してください。
在庫回転日数の計算は 在庫回転日数が1日延びると、現金はいくら減るか の記事で、テンプレートつきで扱っています。
他業種の基準と比べない。自社の過去の同じ時期と比べてください。
| 見る数字 | 使い道 |
|---|---|
| 仕入れ月の必要額 | 調達すべき金額 |
| 平均在庫 | 年間を通じて固定される資金 |
| 月末残高の推移 | 返済の設計 |
| 回収の分布 | 返済原資の時期 |
販売が均等でない場合は、月別の在庫残高を出してください。季節商材なら、特定の月に集中して売れることが多く、その分布で返済の設計が変わります。
年間を通じて均等に売れるなら、返済も均等にできます。後半に集中して売れるなら、前半の返済は軽くしてもらう必要があります。据置期間の設定が効く場面です。
販売の分布が返済の設計を決めます。月別に出してください。
年1回の仕入れには、資金以外のリスクもあります。
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 売れ残り | 返品も追加発注もできない |
| 相場の下落 | 翌年の仕入価格が下がれば、在庫が割高になる |
| 需要の変化 | 1年前の予測が外れる |
| 劣化・品質の低下 | 保管期間が長い |
| 競合の動き | 1年間、対応できない |
自己資金で仕入れて売れ残れば、その分の損失で済みます。借りて仕入れて売れ残れば、返済だけが残ります。この違いを理解したうえで、仕入量を決めてください。
借りて仕入れて売れ残れば、返済だけが残ります。
6,000万円分を仕入れ、2割が売れ残った場合を見ます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 仕入額 | 6,000万円 |
| 売れた分(8割) | 4,800万円(原価) |
| 売上(粗利率30%とすると) | 約6,857万円 |
| 売れ残り(2割) | 1,200万円(原価) |
| 半値で処分した場合の回収 | 600万円 |
| 損失 | 600万円 |
2割の売れ残りで、600万円の損失です。粗利率30%なら、売れた分の粗利は約2,057万円なので、その3割近くが消えます。
欠品を恐れて多めに仕入れる判断は、年1回の商材ではとくに高くつきます。追加できない代わりに、減らすこともできないからです。過去の販売実績を、慎重に見てください。
2割の売れ残りで粗利の3割近くが消えます。
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 仕入れの時期と金額を確定する |
| 2 | 過去3年の月別の販売実績を出す |
| 3 | 今年の月別の販売計画を作る |
| 4 | 月別の在庫残高の推移を出す |
| 5 | 月別の入金の推移を出す(回収サイトを反映) |
| 6 | 月別の資金繰り表を作る |
| 7 | 残高が最も低くなる月と金額を特定する |
| 8 | 必要な調達額と、返済の設計を決める |
2番が重要です。過去の実績がなければ、計画が立てられません。年1回の商材では、実績の蓄積がそのまま計画の精度になります。
月別の販売数、売れ残りの量、処分の金額、価格の推移——これらを毎年記録していれば、翌年の仕入量の判断が精度を持ちます。記録がなければ、毎年が勘になります。
過去3年の月別実績が計画の土台。記録がなければ勘になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 使途 | 季節資金(時期が決まった仕入れ) |
| 金額の根拠 | 仕入れの契約・見積もり |
| 返済原資 | その商材の売上の回収 |
| 返済期間 | 販売の期間に合わせる |
| 返済の形 | 販売の分布に合わせる(据置の検討) |
「◯月に◯万円の仕入れが必要。◯月から◯月にかけて販売し、その回収で返済する」——季節資金は、融資の説明としてはもっとも通りやすい部類です。時期も金額も根拠が示せます。
使途の説明の仕方は 資金使途の説明 の記事で扱っています。「仕入れ資金」ではなく「季節資金」と明示してください。
季節資金と明示する。使途も返済原資も明確なので通りやすくなります。
6,000万円を借りて、1年で販売・回収する場合の返済を設計します。
| 販売の分布 | 返済の形 | 理由 |
|---|---|---|
| 年間で均等 | 毎月500万円ずつ | 回収が均等なら、返済も均等でよい |
| 後半に集中 | 前半は据置、後半に多く返す | 前半は回収が少ない |
| 前半に集中 | 前半に多く返す | 早く返せば利息が減る |
2番目の場合、前半6か月を据置にして、後半6か月で1,000万円ずつ返すという形が考えられます。
前半を据置にすれば、後半の返済は倍になります。その時期に本当に回収できるかを、月別の計画で確認してから設定してください。
据置の考え方は 返済予定表テンプレート の記事で、テンプレートつきで扱っています。
返済は販売の分布に合わせる。据置は先送りであることを忘れずに。
「年1回しか買えない」と思っていても、納品を分けられる場合があります。
| 交渉の形 | 効果 | 相手の受け止め |
|---|---|---|
| 契約は年1回、納品を分ける | 在庫と支払いが分散する | 保管の負担が相手に移る |
| 支払いを納品ごとにする | 資金の山が下がる | — |
| 契約時に一部、納品時に残り | 中間的な形 | 受け入れられやすい |
| 保管料を払って預かってもらう | 資金の山が下がる | 費用がかかる |
年1回の仕入れの本質は「数量を押さえる」ことです。契約で数量を確保したうえで、引き取りと支払いを分けられないか——ここが交渉の焦点になります。
4番目も検討する価値があります。保管料を払ってでも、資金の山が下がるほうが得な場合があります。保管料と、資金のコストを比べてください。
焦点は数量の確保と、引き取り・支払いを分けられるかです。
| 形 | 内容 | 向いている商材 |
|---|---|---|
| 予約販売 | 販売前に注文と代金を受ける | 季節商材、限定品 |
| 年間契約 | 年間分をまとめて契約し、前受けする | 継続的に使う商材 |
| 会員制・定期便 | 毎月の代金を先に受ける | — |
| 早期予約の割引 | 早く注文した人に割引 | — |
予約で先に受注できれば、仕入量の判断も正確になり、資金も先に入ります。売れ残りのリスクと資金の山を、同時に下げられます。
ただし、前受金は負債であり、提供の義務が残ります。受け取った資金を他の支払いに使い切ると、商品を用意できなくなります。前受金と売掛金では、資金繰り上の意味が違う の記事で扱っています。
予約なら売れ残りと資金の山を同時に下げられます。
| 費用 | 内容 |
|---|---|
| 倉庫代 | 1年分の保管。自社倉庫でもスペースの機会費用 |
| 温度・湿度の管理 | 商材による |
| 保険 | 火災・水害 |
| 劣化・目減り | 品質の低下、量の減少 |
| 管理の手間 | 棚卸、在庫の移動 |
平均在庫3,000万円を年利3%で借りれば年90万円ですが、保管費用がそれ以上かかることもあります。分割納品や保管の委託を検討するときは、両方を合わせて比べてください。
劣化する商材では、在庫が古くなるほど価値が下がります。販売の順序(先入先出)を管理し、古いものから出す運用にしてください。
資金コストだけでなく保管費用も計算に入れてください。
| 判断材料 | 内容 |
|---|---|
| 過去3年の販売実績 | 基準になる数字 |
| すでに決まっている受注 | 確実な部分 |
| 予約の状況 | — |
| 市場の動向 | 需要が増えているか |
| 用意できる資金 | これが上限になる |
| 売れ残ったときに耐えられる金額 | — |
売れると思う量と、売れ残っても耐えられる量は違います。2割売れ残っても事業が続けられる水準を上限にしてください。年1回の商材では、外したときのやり直しが効きません。
売れ残りの損失は前章で計算したとおりです。その金額が、年間の営業利益を超えるなら、仕入量を見直してください。
「売れる量」ではなく「売れ残っても耐えられる量」で決めてください。
| 準備しておくこと | 内容 |
|---|---|
| 処分の手段 | 値引き販売、業者への売却、二次流通 |
| 処分の時期 | いつまでに判断するか |
| 処分の価格の下限 | いくらまでなら売るか |
| 翌年の仕入れへの反映 | 実績として記録する |
| 会計処理 | 評価損の計上 |
「もう少し待てば売れるかも」で処分を先送りすると、次のシーズンの仕入れと重なります。「◯月の時点で残っていたら処分する」と、先に決めておいてください。
処分して現金にすれば、次の仕入れの資金に充てられます。残したまま次を仕入れると、資金が二重に必要になります。
処分の判断の時期を先に決める。次の仕入れと重ねないでください。
| 示すもの | 内容 |
|---|---|
| 仕入れの契約・見積もり | 金額の根拠 |
| 過去3年の月別の販売実績 | 回収の見込みの根拠 |
| 月別の資金繰り計画 | いつ足りなくなるか |
| 返済の計画 | 販売の分布に合わせた形 |
| 売れ残りの実績 | 過去に何%残ったか |
| 処分の方針 | 残った場合の対応 |
「毎年10%程度は残りますが、◯月に業者へ売却して回収しています」——この説明があるほうが、把握できている会社として評価されます。残らない前提の計画は、かえって疑われます。
季節資金は使途と返済原資が明確なため、説明が組み立てやすい資金需要です。資料を揃えて、早めに相談してください。
売れ残りの実績も出す。残らない前提の計画は疑われます。
2番と3番——過去の実績が、すべての判断の土台です。
この記事は仕入れ資金による調達の一部です。手段そのものを比べたい場合は、あわせてご覧ください。