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債権による調達

債権を使った調達の、コストの比べ方

手数料3%は30日なら年率約36.5%。直接費用・間接費用・機会費用の3種類に分け、1,000万円を60日使う場合の総コスト、継続利用の年間総額までを比べます。

公開:2026年9月14日 最終更新:2026年10月16日 Creww Finance Media 編集部
この記事の内容

  1. 表示の単位が違うので、そのままでは比べられない
  2. まず年率にそろえる
  3. 数字で見る|手数料3%は年率いくらか
  4. コストは3種類に分かれる
  5. ①直接費用|表に出る金額
  6. ②間接費用|手間と時間
  7. ③機会費用|担保余力を使う
  8. 数字で見る|1,000万円を60日使う場合
  9. スピードをどう織り込むか
  10. 継続して使う場合の計算
  11. 数字で見る|毎月使うといくらになるか
  12. 決算書への表れ方も、コストのうち
  13. 比べる前に確認すること
  14. 比較表を作る
  15. そもそも借りない、という選択肢
  16. チェックリスト
  17. よくある質問

表示の単位が違うので、そのままでは比べられない

債権を使った資金調達を検討すると、次のような数字が並びます。

手段 提示される数字
ABL 「年利3.0%」
債権譲渡 「手数料3%」
でんさい割引 「割引料 年2.5%」
取引信用保険 「保険料率 年0.3%」
「3%」と「3%」が、まったく違う

ABLの年利3.0%と、債権譲渡の手数料3%は、同じ数字に見えて10倍以上違うことがあります。前者は1年分、後者は1回分だからです。

年率1年間あたりに換算した費用の割合。
直接費用手数料・利息など、支払いとして出ていく費用。
間接費用手間や時間など、金額では表に出ない費用。
機会費用その選択をしたことで、失った他の選択肢の価値。
この章の要点

単位が違います。年率にそろえない限り、比較になりません。

まず年率にそろえる

年率 = 手数料率 × 365 ÷ 使う日数

1回あたりの手数料率を、その資金を使う日数で割り戻します。30日使うなら12倍、60日なら約6倍になります。

手数料 使う日数 年率
3% 30日 約36.5%
3% 60日 約18.3%
3% 90日 約12.2%
5% 30日 約60.8%
1% 30日 約12.2%

同じ手数料率でも、使う日数によって年率は大きく変わります。回収サイトが短い債権を早く資金化するほど、年率は高くなります。

率を年率に直すときは、手数料を引いた手取り額で割るかどうかでも数字が変わります。手数料額と手取り額の計算から実質年率を出す式を確かめておくと、比べる数字がそろいます。

この章の要点

手数料率 × 365 ÷ 日数。日数が短いほど、年率は高くなります。

数字で見る|手数料3%は年率いくらか

額面1,000万円の売掛金を、手数料3%で譲渡する場合を見ます。

項目 金額
額面 1,000万円
手数料(3%) 30万円
受け取る金額 970万円
本来の入金までの日数 30日
年率 約36.5%
30万円手数料
30日早めた日数
約36.5%年率換算

同じ1,000万円を、年利3.0%のABLで30日借りた場合の利息は約2万5,000円です。手数料30万円と比べると、12倍以上の差があります。

それでも債権譲渡が選ばれる理由

年率だけ見れば圧倒的にABLが有利です。それでも債権譲渡が使われるのは、速さと、審査の通りやすさです。ABLは審査に時間がかかり、業績が悪いと出ません。年率だけで判断できない理由が、ここにあります。

この章の要点

手数料3%・30日は年率約36.5%。ABLの12倍以上です。

コストは3種類に分かれる

種類 内容 見えやすさ
①直接費用 手数料・利息・登記費用・保証料 見えやすい
②間接費用 報告・書類作成の手間、待ち時間 見えにくい
③機会費用 担保余力を使う、枠を使う 最も見えにくい
②と③を入れないと、判断を誤る

「ABLのほうが年率が低いから有利」——これは①だけを見た判断です。②の報告の手間と、③の担保余力を使うことを入れて初めて、正しく比べられます。

この章の要点

コストは直接・間接・機会の3種類。①だけでは判断できません。

①直接費用|表に出る金額

手段 直接費用の内訳
ABL 利息、債権譲渡登記の費用、実地調査の費用(負担する場合)、抹消の費用
債権譲渡 手数料、登記の費用(2者間の場合)、事務手数料
でんさい割引 割引料
保証協会付き融資 利息、信用保証料
手数料以外の費用を、必ず聞く

「手数料3%」と言われても、登記費用、事務手数料、印紙代が別にかかることがあります。見積もりは「総額でいくらか」で取ってください。

とくにABLでは、登記の費用が設定時と抹消時の2回かかります。初回は割高になるため、短期で終わらせると費用対効果が悪くなります。

登記の費用は 債権譲渡登記の費用と期間 の記事で扱っています。

この章の要点

見積もりは総額で取る。登記は設定時と抹消時の2回かかります。

②間接費用|手間と時間

手段 発生する手間 目安
ABL 毎月の報告(債権明細・年齢表・試算表) 月1〜数時間
ABL 実地調査への対応 年数回
債権譲渡 申込時の書類。継続して使うなら毎回 都度
保証協会付き 申込時の書類 都度

ABLの報告に月2時間かかり、時給を3,000円とすれば、年間で7万2,000円です。金額としては小さく見えますが、金利差が小さい場合には判断を変えます。

ただし、報告の作業は自社のためでもある

債権年齢表や試算表は、ABLのためだけでなく、経営の管理としても必要なものです。すでに作っているなら、追加の負担はほぼありません。

報告の実務は ABLを使うと毎月どんな報告が発生するか の記事で扱っています。

この章の要点

ABLの報告は月1〜数時間。すでに作っている資料なら負担は小さいです。

③機会費用|担保余力を使う

手段 使う資源 後に残る影響
ABL 売掛金の担保余力 他の調達に使えなくなる
債権譲渡 その債権のみ 譲渡した分だけ
保証協会付き融資 保証協会の枠 非常時に使えなくなる
プロパー融資 与信枠 —
金額に直せないが、いちばん大きいことがある

集合債権譲渡担保で売掛金を全部押さえられると、次の調達で債権が使えません。その時点では費用として表れませんが、業況が悪化したときに効いてきます。

この影響は 一度担保に入れた資産を、他の調達でも使えるか の記事で扱っています。

比較の際は、「この選択で、次に使える手がどれだけ残るか」を並べて書いてください。金額にはできませんが、記載があるだけで判断が変わります。

この章の要点

金額にできませんが、次に使える手がどれだけ残るかを並べてください。

数字で見る|1,000万円を60日使う場合

3つの手段を、総コストで比べます。

項目 ABL(年利3%) 債権譲渡(手数料3%) 保証協会付き(年利2%+保証料)
直接費用(利息・手数料) 約4.9万円 30万円 約3.3万円
登記費用(初回) あり 2者間ならあり —
信用保証料 — — あり
間接費用(報告の手間) あり 小さい 小さい
機会費用 担保余力を使う その債権のみ 保証枠を使う
実行までの日数 2〜3週間 数日 1〜2か月
約4.9万円ABLの利息(60日)
30万円債権譲渡の手数料
約6倍その差

直接費用だけ見れば、ABLが圧倒的に安くなります。1,000万円 × 3% × 60日 ÷ 365日 = 約4.9万円です。

それでも債権譲渡を選ぶ場面がある

ABLは実行まで2〜3週間かかり、業績が悪ければ出ません。今週必要な資金には使えません。間に合わない手段は、どれだけ安くても選べません。

この章の要点

直接費用ではABLが6倍安い。しかし間に合わなければ選べません。

スピードをどう織り込むか

状況 判断
必要な日まで1か月以上ある ABL・融資を優先する
2〜3週間 プロパー融資、既存の枠
1週間以内 既存の枠、または債権譲渡
今日・明日 既存の枠。なければ手段が限られる
速さの価値は、失うものの大きさで測る

資金が間に合わなければ何が起きるか——仕入れができない、支払いが遅れる、信用を失う。その損失と、手数料の差を比べてください。30万円の手数料でも、それで失注を防げるなら安いことがあります。

ただし、これが繰り返されるなら、構造の問題です。毎回「間に合わないから高い手段を使う」状態は、資金繰り表を先まで作っていないことが原因であることが多くあります。

日数の逆算は 融資実行までの日数を逆算して動く の記事で扱っています。

この章の要点

速さの価値は間に合わなかった場合の損失で測ってください。

継続して使う場合の計算

1回だけなら手数料30万円で済みますが、毎月使えば話が変わります。

年間の総額で計算する

「今月は手数料30万円」と考えると、判断を誤ります。同じことを12回繰り返すなら、年間360万円です。年間の総額で、他の手段と比べてください。

この章の要点

継続して使うなら年間の総額で比べてください。

数字で見る|毎月使うといくらになるか

毎月1,000万円の売掛金を、手数料3%で資金化し続けた場合です。

項目 金額
1回あたりの手数料 30万円
年間の回数 12回
年間の手数料 360万円
売上総利益率30%で、埋めるのに必要な売上 1,200万円
360万円年間の手数料
1,200万円埋めるのに必要な売上
毎年続く限り

年間360万円は、粗利率30%なら1,200万円の売上に相当します。この金額を毎年払い続けることになります。

常態化しているなら、構造を見直す

毎月資金化しているということは、回収と支払の条件が事業の構造に合っていないということです。回収サイトの短縮や支払サイトの延長で、必要額そのものを減らせないか検討してください。費用がかかりません。

請求のタイミングを見直すだけでも効果があります。月商3,000万円の会社なら、回収を5日早めるだけで500万円が手元に戻ります。請求書の発行タイミング の記事で扱っています。

この章の要点

年360万円は粗利率30%なら1,200万円の売上に相当します。

決算書への表れ方も、コストのうち

手段 決算書への表れ方 次の融資への影響
ABL 借入金が増える 債務償還年数が伸びる
債権譲渡 負債は増えないが、手数料が費用に出る 金額が大きいと資金繰りを疑われる
保証協会付き 借入金が増える 債務償還年数が伸びる
「負債が増えないから分からない」ではない

債権譲渡は借入金を増やしませんが、手数料が売上債権売却損などの費用として計上されます。金額が大きければ、金融機関はそこから資金繰りの状況を読み取ります。

年間360万円の手数料が計上されていれば、「なぜこれだけの費用が出ているのか」は必ず問われます。説明できる状態にしておいてください。

銀行が決算書をどう見るかは 銀行は決算書のどこを見るか の記事で扱っています。

この章の要点

負債は増えなくても手数料は費用に出ます。説明できる状態に。

比べる前に確認すること

確認 理由
償還請求権の有無 あると実質的に借入に近い。手数料が安い理由になっている
手数料以外の費用 登記費用・事務手数料・印紙代
掛け目 額面の何%が現金になるか
実行までの日数 間に合うか
継続して使えるか 1回限りか、枠として使えるか
取引先への通知 2者間か3者間か
担保に入る範囲 次の調達に残る余地

1番目を必ず確認してください。償還請求権が付いていれば、取引先が倒産したときに自社が買い戻します。リスクの所在がまったく違うのに、手数料だけ比べると判断を誤ります。

この論点は 「債権による調達」とは何を指すか の記事で扱っています。

この章の要点

償還請求権の有無を必ず確認。手数料が安い理由はここにあることがあります。

比較表を作る

候補が3つ以上になったら、次の表を作ってください。

項目 候補A 候補B 候補C
調達できる金額 — — —
直接費用(総額) — — —
年率に換算 — — —
実行までの日数 — — —
償還請求権 — — —
取引先への通知 — — —
使う担保・枠 — — —
毎月の手間 — — —
継続利用の年間総額 — — —
空欄は、聞けば埋まる

この表を埋めようとすると、確認していない項目が見つかります。そこを相手に聞いてください。答えられない、または曖昧な回答しか返ってこない場合は、それ自体が判断の材料になります。

この章の要点

表を作ると確認していない項目が見つかります。そこを聞いてください。

そもそも借りない、という選択肢

最後に、比較表に入れるべきもう1つの候補があります。調達せずに済ませる方法です。

手段 効果 費用
請求のタイミングを早める 回収サイトが実質的に縮む なし
回収条件を交渉する 必要な運転資金が減る なし
支払条件を交渉する 同上 なし
前受け・着手金を導入する 同上 なし
在庫を減らす 同上 なし
支出の時期をずらす 必要な時期が後ろにずれる なし
費用ゼロの選択肢から検討する

年率36.5%の手段を検討する前に、費用のかからない方法で必要額を減らせないかを確認してください。すべてを解決できなくても、必要額が減れば費用も減ります。

必要な運転資金の計算は 資金使途の説明 の記事で扱っています。「売掛金+在庫-買掛金-前受金」の各項目が、それぞれ改善の対象です。

この章の要点

比較表に「調達しない」という候補も入れてください。費用ゼロです。

チェックリスト

コストを比べるときに

  • すべての手段の費用を、年率に換算した
  • 手数料以外の費用(登記・事務手数料・印紙)を確認した
  • 見積もりを「総額でいくらか」で取った
  • 償還請求権の有無を確認した
  • 掛け目(額面の何%が現金になるか)を確認した
  • 毎月の報告などの手間を、時間で見積もった
  • その時間を人件費に換算した
  • 使う担保・枠を確認し、次に残る余地を書き出した
  • 実行までの日数を確認した
  • 必要な日に間に合うかを確認した
  • 継続して使う場合の年間総額を計算した
  • その金額を、粗利率で割って必要売上に直した
  • 決算書にどう表れるかを確認した
  • 費用のかからない方法で、必要額を減らせないか検討した
  • 比較表を作り、空欄を相手に確認した
この章の要点

1番と14番——年率にそろえることとそもそも減らせないかが両端です。

よくある質問

Q. 手数料3%と年利3%は、同じですか
まったく違います。手数料3%を30日で使えば年率約36.5%、年利3%は1年分です。10倍以上の差があります。年率にそろえないと比較になりません。
Q. 年率への換算は、どう計算しますか
手数料率 × 365 ÷ 使う日数です。3%を30日なら3% × 365 ÷ 30で約36.5%、60日なら約18.3%になります。日数が短いほど年率は高くなります。
Q. 年率が低い手段を選べばよいですか
それだけでは判断できません。実行までの日数、毎月の手間、使う担保や枠も含めて比べてください。安くても間に合わなければ選べません。
Q. 手間もコストに入れるのですか
入れてください。ABLの報告に月2時間、時給3,000円なら年7万2,000円です。金利差が小さい場合には判断を変えます。ただし、すでに作っている資料なら追加の負担はほぼありません。
Q. 機会費用とは何ですか
その選択によって失う、他の選択肢の価値です。集合債権譲渡担保で売掛金を全部押さえられると、次の調達で債権が使えません。金額には直せませんが、影響は大きくなります。
Q. 1,000万円を60日使うと、いくら違いますか
ABL(年利3%)なら利息は約4.9万円、債権譲渡(手数料3%)なら30万円です。約6倍の差があります。ただしABLは実行まで2〜3週間かかり、業績が悪ければ出ません。
Q. 速さの価値は、どう測りますか
資金が間に合わなかった場合に失うもので測ってください。仕入れができない、支払いが遅れる、信用を失う——その損失と手数料の差を比べます。ただし毎回そうなるなら、構造の問題です。
Q. 毎月使うと、いくらになりますか
1回30万円を12回なら年間360万円です。粗利率30%なら、1,200万円の売上に相当します。この金額を毎年払い続けることになります。
Q. 債権譲渡は決算書に出ませんか
借入金は増えませんが、手数料が売上債権売却損などの費用として計上されます。金額が大きければ、金融機関はそこから資金繰りの状況を読み取ります。
Q. 手数料が安い事業者を見つけました
償還請求権の有無を確認してください。付いていれば取引先が倒産したときに自社が買い戻すことになり、リスクの所在がまったく違います。手数料以外の費用も総額で確認してください。
Q. 比較表には、何を入れればよいですか
調達額、直接費用の総額、年率、実行までの日数、償還請求権、取引先への通知、使う担保や枠、毎月の手間、継続利用の年間総額です。埋めようとすると、確認していない項目が見つかります。
Q. いちばん安い方法は何ですか
調達しないことです。請求のタイミングを早める、回収・支払条件を交渉する、前受けを導入する——費用がかかりません。すべてを解決できなくても、必要額が減れば費用も減ります。
出典

  • 中小企業の会計に関する基本要領、資金繰り支援 — 中小企業庁
  • ABL(動産・債権担保融資)の普及・活用 — 経済産業省
  • 中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針 — 金融庁