
融資を検討するとき、意識が向くのは「いくら借りられるか」です。しかし資金繰りに効いてくるのは、借りた日ではなく、返済が始まってからの毎月です。
借りた直後は手元資金が増えます。問題はその後です。毎月の支出が、返済額の分だけ増えた状態が、返し終わるまで続きます。
金融機関は実行後に返済予定表を交付しますが、それは借りることが決まった後です。判断の材料にするなら、借りる前に自分で作る必要があります。この記事にテンプレートを置いています。
効いてくるのは返済が始まってからの毎月。借りる前に予定表を作ってください。
| 項目 | 元利均等返済 | 元金均等返済 |
|---|---|---|
| 毎月の返済額 | 一定 | だんだん減る |
| 毎月の元本 | だんだん増える | 一定 |
| 毎月の利息 | だんだん減る | だんだん減る |
| 初めの返済額 | 小さい | 大きい |
| 利息の総額 | 大きい | 小さい |
| 資金繰りの読みやすさ | 読みやすい | 月ごとに変わる |
中小企業の融資では、元利均等が使われることが多くなっています。毎月の返済額が一定で、資金繰りが組みやすいためです。
元金均等は、初めの返済額がいちばん大きく、だんだん軽くなります。利息の総額は小さくなりますが、資金繰りが苦しい時期に重い返済が来る形になります。
元利均等は読みやすく、総額はやや大きい。元金均等はその逆です。
3,000万円を年利2.0%、5年(60か月)で借りる場合を比べます。
| 項目 | 元利均等 | 元金均等 |
|---|---|---|
| 1回目の返済額 | 約525,833円 | 550,000円 |
| 最終回の返済額 | 約525,833円 | 約500,833円 |
| 毎月の元本(初回) | 約475,833円 | 500,000円 |
| 利息の合計 | 約1,549,968円 | 約1,525,000円 |
| 返済額の合計 | 約31,549,968円 | 約31,525,000円 |
利息の差は5年間で約2.5万円にとどまります。一方、初回の返済額は約2.4万円の差です。つまり、1か月分の差と、5年分の利息の差が、ほぼ同じということになります。
この条件では、利息の差より「毎月いくら出ていくか」のほうが判断材料として重いことが分かります。金利が高い、期間が長い場合は差が広がりますが、それでも資金繰りへの影響のほうが先に効きます。
利息の差は5年で約2.5万円。毎月の返済額のほうが判断材料として重いです。
借入の条件を入れると、元利均等と元金均等の両方の返済予定表と、資金繰りへの影響が出ます。
借入額・年利・返済期間・据置期間の4つを入れると、返済予定表と、手元資金が何か月もつかが自動で計算されます。
1 借入の条件(この4つを入れる)
| 項目 | 値 | メモ |
|---|---|---|
| 借入額 | 30,000,000 | 円で入れる |
| 年利(%) | 2.0 | 2.0%なら 2.0 |
| 返済期間(月数) | 60 | 5年なら60、7年なら84 |
| 据置期間(月数) | 0 | 元本を返さない期間。無ければ0 |
2 返済予定表(元利均等)の作り方
| 列 | 計算のしかた | |||
|---|---|---|---|---|
| 回 | 1から順に | |||
| 元本 | PPMT(年利/12 | 回-据置 | 期間-据置 | -借入額) |
| 利息 | IPMT(年利/12 | 回-据置 | 期間-据置 | -借入額)。据置中は 借入額×年利/12 |
| 返済額 | 元本 + 利息 | |||
| 残高 | 前回の残高 - 今回の元本 |
3 返済予定表(元金均等)の作り方
| 列 | 計算のしかた |
|---|---|
| 元本 | 借入額 ÷ (期間 - 据置)。据置中は0 |
| 利息 | 前回の残高 × 年利/12 |
| 返済額 | 元本 + 利息 |
| 残高 | 前回の残高 - 今回の元本 |
4 2つの比較
| 項目 | 元利均等 | 元金均等 |
|---|---|---|
| 返済額の合計 | ||
| うち利息の合計 | ||
| 1回目の返済額 | ||
| 据置明けの1回目 | ||
| 毎月の元本(据置明け) |
5 資金繰りへの影響
| 項目 | 金額 | 計算のしかた |
|---|---|---|
| 手元の現預金 | いまの残高 | |
| 月間の営業収支(返済を除く) | 毎月の入金 - 出金。マイナスなら - を付ける | |
| 借入で入る資金 | 1 借入の条件の借入額 | |
| 毎月の返済額 | 据置が明けたあとの返済額 | |
| 返済後の月間収支 | 月間の営業収支 - 毎月の返済額 | |
| 借入前に手元資金がもつ月数 | 手元の現預金 ÷ 月間の流出額 | |
| 借入後に手元資金がもつ月数 | (手元の現預金 + 借入額) ÷ 返済後の流出額 |
6 借りる前に確認すること
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 返済方式 | 元利均等か元金均等か |
| 返済の開始月 | 実行の翌月とは限らない |
| 据置期間 | 据置明けの返済額を計算したか |
| 引き落としの日 | 他の借入と重なっていないか |
| 金利の種類 | 固定か変動か。変動なら上がった場合も計算したか |
| 繰上返済 | できるか。手数料はかかるか |
| 期限の利益喪失 | 何があると一括返済を求められるか |
Excel版は、株数と1株あたり金額を入れると持株比率が自動で出ます。 入力するところは水色、自動で計算されるところはグレーに塗り分けてあります。 1枚目に使い方、最後に用語集が入っています。
コピーを押すと、タブ区切りでクリップボードに入ります。 Googleスプレッドシートに貼ると列が揃ったまま入ります(計算式は入りません)。
入っている数字はすべて記入例です。実在の会社のものではありません。 自社の数字に置き換えて使ってください。
| シート | 内容 |
|---|---|
| はじめに | 使い方の4ステップ |
| 1 借入の条件 | 借入額・年利・返済期間(月数)・据置期間(月数)を入れる |
| 2 元利均等 | 返済予定表(自動) |
| 3 元金均等 | 返済予定表(自動) |
| 4 2つの比較 | 利息の総額、初回・据置明けの返済額 |
| 5 資金繰りへの影響 | 手元資金と月間収支を入れると、もつ月数が出る |
| 用語と計算式 | — |
入力するのは、1 借入の条件の4つと、5 資金繰りへの影響の2つだけです。
なお、この表は概算です。日数の数え方や端数の処理は金融機関によって異なります。正式な金額は、金融機関が交付する返済予定表で確認してください。
入力は6か所だけ。借りる前の判断に使ってください。
| 状況 | 向いている方式 | 理由 |
|---|---|---|
| これから立ち上げる事業 | 元利均等 | 初めが軽い。売上が育つ時間が要る |
| 資金繰りに余裕がない | 元利均等 | 初めの負担を抑える |
| すでに安定して利益が出ている | 元金均等 | 利息の総額を抑えられる |
| 数年後に業績が落ちる見込み | 元金均等 | 早く元本を減らせる |
| 資金繰り表を厳密に組みたい | 元利均等 | 毎月の金額が一定 |
実際には、金融機関から元利均等を提示されることが多く、選べる場面は限られます。それでも、両方を計算して比べておく意味はあります。「元金均等にできますか」と聞けるかどうかが変わります。
迷ったら元利均等。ただし両方を計算して、聞ける状態にしておいてください。
据置期間は、元本を返さず利息だけを払う期間です。創業融資などで設定されることがあります。
据置の間は元本が減りません。元本を返す期間が短くなるため、据置が明けたあとの返済額は大きくなります。総額が減るわけではありません。
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 据置の分だけ返済が楽になる | 据置中は楽になるが、その後は重くなる |
| 据置の分だけ期間が延びる | 延びない。同じ期間の中で据置を取る |
| 利息も払わなくてよい | 利息は払う |
2番目が重要です。「5年・据置1年」は、5年のうち最初の1年が据置で、残り4年で元本を返すという意味です。6年になるわけではありません。
据置は同じ期間の中で取るもの。その分、あとの返済が重くなります。
3,000万円を5年(60か月)で借りる場合、据置の有無で比べます(元本の返済額のみで比較します)。
| 項目 | 据置なし | 据置12か月 |
|---|---|---|
| 元本を返す期間 | 60か月 | 48か月 |
| 据置期間中の元本返済 | — | 0円 |
| 月あたりの元本(単純計算) | 50万円 | 62.5万円 |
| 据置期間中の利息(年2.0%) | — | 月5万円 |
据置を1年取ると、その後の月々の元本返済は50万円から62.5万円に増えます。25%重くなる計算です。
判断の基準は明確です。据置の期間に、月12.5万円の追加負担に耐えられる状態になる見込みがあるか。あるなら有効ですし、ないなら据置は問題を先送りするだけです。
据置12か月で、その後の元本は25%重くなります。その間に改善する見込みがあるかで判断を。
この記事の主題です。借りることで手元資金は増えますが、返済が始まると毎月の流出も増えます。差し引きで、もつ月数がどう変わるかを見ます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 手元の現預金 | 2,000万円 |
| 月間の営業収支(返済を除く) | ▲300万円 |
| 借入前にもつ月数 | 約6.7か月 |
ここで3,000万円を5年で借りると——
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 手元の現預金 | 5,000万円(2,000万+3,000万) |
| 月間の営業収支 | ▲300万円 |
| 毎月の返済額(元利均等) | ▲約52.6万円 |
| 返済後の月間収支 | ▲約352.6万円 |
| 借入後にもつ月数 | 約14.2か月 |
3,000万円を借りて、約7.5か月の時間を買ったことになります。単純に3,000万円 ÷ 300万円 = 10か月ではありません。返済が始まる分、実際に伸びるのは7.5か月です。
この7.5か月のあいだに、月間収支をプラスに転じさせられるかが本当の問いです。伸びた月数で足りないなら、金額を増やすか、期間を延ばして毎月の返済を下げるかになります。
3,000万円で伸びるのは10か月ではなく約7.5か月。返済の分だけ短くなります。
もうひとつ、資金繰りに効く構造があります。元本の返済は費用(損金)になりません。
| 項目 | 税務上 | 現金 |
|---|---|---|
| 利息 | 損金になる | 出ていく |
| 元本 | 損金にならない | 出ていく |
つまり、元本は税金を払ったあとの現金から返します。年間600万円の元本を返すには、税引後で600万円の現金が必要です。法人税等を約30%とすれば、税引前ではもっと大きな利益が要ります。
この構造は 返済原資の説明 の記事で詳しく扱っています。「利益が出ているから返せる」は、そのままでは成り立ちません。
元本は税引後の現金から返します。利益と返済可能額は別物です。
変動金利の場合、金利が上がれば返済額も増えます。3,000万円・5年で、金利ごとの返済額を比べます。
| 年利 | 毎月の返済額 | 利息の合計 | 総返済額 |
|---|---|---|---|
| 2.0% | 約525,833円 | 約155万円 | 約3,155万円 |
| 2.5% | 約532,421円 | 約195万円 | 約3,195万円 |
| 3.0% | 約539,061円 | 約234万円 | 約3,234万円 |
金利が2.0%から3.0%に1ポイント上がると、毎月の返済は約13,228円増え、5年間の利息は約79万円増えます。
3,000万円で月1.3万円なら、資金繰りへの影響は限定的です。しかし借入が1億円あれば、その3倍以上になります。借入残高が大きい会社ほど、金利の変動を計算しておいてください。
ここで確認しておきたいのは、金利の影響は返済期間の影響より小さいということです。前の章で見たとおり、据置を1年取るだけで月々の元本は12.5万円変わります。交渉するなら、金利より期間と条件です。
この比較も、テンプレートの「1 借入の条件」で年利を変えれば計算できます。変動金利で借りるなら、上がった場合を必ず計算してください。
金利1%上昇で月約1.3万円(3,000万円の場合)。期間の影響のほうが大きいです。
借入が増えると、返済も重なります。1本ずつ見ていると、全体の負担が見えません。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 月ごとの返済額の合計 | 全借入を月別に足し上げる |
| いちばん重い月 | 賞与資金や季節資金の返済が重なる月 |
| 返済が終わる時期 | 1本が終わると、その分だけ楽になる |
| 期日の集中 | 借換の交渉が重なる時期 |
とくに短期の借入が混ざっていると、特定の月だけ返済額が跳ね上がります。年間の合計では問題なくても、その月に現金が足りなければ延滞です。
見るべきは年間ではなく月ごとの合計。いちばん重い月で判断してください。
3本の借入がある会社の、月別の返済額を見ます。
| 借入 | 内容 | 毎月の返済 | 備考 |
|---|---|---|---|
| A | 設備資金 7年 | 30万円 | 毎月 |
| B | 運転資金 5年 | 25万円 | 毎月 |
| C | 賞与資金 6か月 | 50万円 | 年2回、6か月ずつ |
| 月 | A | B | C | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| Cの返済がない月 | 30万円 | 25万円 | 0円 | 55万円 |
| Cの返済がある月 | 30万円 | 25万円 | 50万円 | 105万円 |
月によって返済額が約1.9倍違います。年間の平均で資金繰りを見ていると、重い月に足りなくなります。
さらに、Cの賞与資金は賞与を支払った直後から返済が始まることが多く、賞与の支払いと返済の開始が近接します。資金繰り表は、月単位で作ってください。
月によって返済額は倍近く変わります。平均ではなく、重い月で見てください。
| 順 | やること | 影響 |
|---|---|---|
| 1 | 借換で期間を延ばす | 区分に影響しない。早く動けば使える |
| 2 | 短期の借入を長期に組み替える | 同上 |
| 3 | 回収・支払条件を見直す | 費用がかからない |
| 4 | 返済を止める手前で相談する | 相談として扱われる |
| 5 | 条件変更(リスケ)を申し出る | 要管理先になる可能性。新規が止まる |
この差は決定的です。返済が正常な状態での借換は、債務者区分に影響しません。限界まで持ちこたえてから相談すると、条件変更しか選べなくなります。借換保証 の記事で扱っています。
判断の目安は、簡易キャッシュフロー(税引後利益+減価償却費)が、年間の元本返済額を下回っているかです。下回っていれば、毎年その分だけ現金が減っています。放置すれば、いずれ返せなくなります。
簡易CFが年間返済額を下回ったら、その時点で借換を検討してください。
返済予定表を作っただけでは意味がありません。資金繰り表に反映させてください。
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 全借入の返済予定表を並べる |
| 2 | 月別に、元本と利息を合計する |
| 3 | 資金繰り表の出金欄に、月別の返済額を入れる |
| 4 | 新規に借りる場合、その返済も加える |
| 5 | 月末残高が、どの月にいくらになるかを確認する |
| 6 | 残高が最も低くなる月と金額を把握する |
6番が、そのまま次の資金需要の根拠になります。「◯月に残高が◯万円まで下がるので、その前に◯万円が必要です」——この形で説明できれば、金額の根拠として十分です。
使途と必要額の示し方は 資金使途の説明 の記事で扱っています。
返済予定表は資金繰り表に写して初めて役に立ちます。
| 確認すること | なぜ |
|---|---|
| 返済方式(元利均等か元金均等か) | 毎月の返済額が変わる |
| 返済の開始月 | 実行の翌月とは限らない |
| 据置期間の有無と長さ | 据置明けの返済額を計算する |
| 引き落としの日 | 他の借入と重なっていないか |
| 金利の種類(固定か変動か) | 変動なら、上がる可能性がある |
| 繰上返済ができるか、手数料は | 資金に余裕ができたときの選択肢 |
| 期限の利益喪失の条件 | 何があると一括返済を求められるか |
4番目を確認してください。引き落とし日が複数の借入で分かれていると、そのすべてで残高を確保する必要があります。できるだけそろえるか、少なくとも把握してください。
5番目も重要です。変動金利なら、金利が上がれば返済額も増えます。テンプレートで、金利が1%上がった場合も計算してみてください。
引き落とし日と金利の種類は、契約前に必ず確認してください。
4番と5番——何か月伸びるか、その間に転じるか。これが借入の判断の中身です。
この記事は融資による調達の一部です。手段そのものを比べたい場合は、あわせてご覧ください。