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創業者のセカンダリー売却はいつ認められるか

創業者が持株の一部を投資家に売るセカンダリー売却。投資家が難色を示す理由、通りやすい場面と金額の組み立て方、普通株としての価格、20.315%の税、先買権と共同売却権、承認手続きまでを整理します。

公開:2026年9月14日 Creww Finance Media 編集部
この記事の内容

  1. 創業者のセカンダリー売却とは何か
  2. なぜ投資家が難色を示すのか
  3. 認められやすい場面と、認められにくい場面
  4. どのくらいの金額なら通るのか
  5. 誰に売るのか|買い手ごとの違い
  6. 価格をどう決めるか|優先株の価格では売れない
  7. 税金はどうなるか
  8. 譲渡制限と、承認の手続き
  9. 株主間契約で先に働く権利
  10. 会社に買い取らせる場合との違い
  11. 比率はどう動くか
  12. ストックオプションの行使価額に効いてくる
  13. 投資家への説明の組み立て方
  14. 進め方の順序
  15. チェックリスト
  16. よくある質問

創業者のセカンダリー売却とは何か

セカンダリー売却とは、すでに発行されている株式を、株主が第三者に売ることです。会社が新しく株式を発行して資金を集める「新株発行」とは、まったく別の取引です。

創業者のセカンダリーは、創業者が自分の持株の一部を、投資家に売って現金を受け取る取引を指します。ラウンドと同時に行われることが多く、「今回のラウンドで3億円調達し、あわせて創業者が5,000万円分を売却する」という形になります。

プライマリー会社が新株を発行し、資金が会社に入る取引。通常の資金調達。
セカンダリー既存の株式を株主間で売買する取引。資金は売った株主に入り、会社には入らない。
ファウンダー・セカンダリー創業者が持株の一部を売却すること。
先買権株式を第三者に売る前に、既存株主が優先して買える権利。

ここで押さえておくべきなのは、資金が会社に入らないという点です。プライマリーなら調達した現金は会社の運転資金になりますが、セカンダリーで動いた現金は創業者個人のものになります。この違いが、後で見るすべての論点の出発点です。

この章の要点

セカンダリーは既存株式の売買。会社に資金は入らず、売った株主に入ります。

なぜ投資家が難色を示すのか

創業者が株式を売って現金を得ることに、投資家が慎重になるのには理由があります。感情論ではなく、構造の問題です。

投資家の懸念 その中身
動機が弱まる まとまった現金を手にすると、事業を伸ばしきる必要性が下がるのではないか
資金の向き先 会社を伸ばすために出した資金が、創業者個人に流れる形になる
評価額の意味 高い評価額を受け入れたのに、その価格で創業者が売り抜けているように見える
先例になる 一度認めると、次のラウンドでも同じ要求が出る
他の株主との公平 初期の株主や従業員は売れないのに、創業者だけが現金化する

とくに2番目は直接的です。投資家がプライマリーで3億円を出すつもりでいたところに、「そのうち5,000万円は創業者に渡す」という話が乗ると、事業に投じられる金額は2.5億円に減ります。同じ評価額で、会社に入る金額が少なくなるということです。

3番目は、投資家が高い評価額を飲む理由と矛盾します。投資家は「この価格でも将来もっと上がる」と考えて出資します。その価格で創業者が売るなら、創業者自身はそう思っていないのではないかと読まれます。

「売りたい」ではなく「売る必要がある」で説明する

投資家が納得するのは、創業者が現金を望んでいるからではなく、現金がないことが事業の判断を歪めていると示せたときです。この違いが交渉の分かれ目になります。

この章の要点

懸念の核は動機と、資金の向き先。感情ではなく構造の問題として扱ってください。

認められやすい場面と、認められにくい場面

実務では、次のような整理で議論されます。

場面 認められやすさ 理由
創業から年数が経ち、無給に近い期間が長い 高い 生活の基盤が細っていると、判断が短期に寄る
個人保証つきの借入を抱えている 高い 個人のリスクが、会社の意思決定を縛っている
シリーズB以降で、事業が伸びている 中〜高 実績が出ており、売却が撤退の合図に見えにくい
住宅購入など、明確な使途がある 中 金額が限定され、繰り返しの要求になりにくい
シードやシリーズAの段階 低い 事業がまだ証明されておらず、動機の話が前面に出る
直近で業績が落ちている 低い 売り抜けと読まれる
創業者が複数いて、一部だけが売る 低い 創業者間の不均衡が持ち込まれる

もっとも通りやすいのは、「創業者の個人的な財務状況が、会社の判断に悪影響を与えている」と客観的に言える場合です。たとえば、早期のM&A提案を断る判断をしなければならないときに、創業者が個人的に現金を必要としていると、その判断が歪みます。投資家にとっても、それは困ります。

逆に、いちばん通りにくいのはシード〜シリーズAです。この段階では、投資家が見ているのはほぼ創業者本人であり、そこに退出の気配があることを嫌います。

この章の要点

鍵は段階と、個人の財務が会社の判断を歪めているかどうか。早い段階ほど通りません。

どのくらいの金額なら通るのか

決まった基準はありません。ここは交渉です。ただし、議論の土俵として持ち出されやすい考え方はあります。

持株の一部売る対象
調達額より小さく金額の目安
生活が安定する額説明の軸

投資家との議論で出てくるのは、おおむね次の3つの考え方です。いずれも相場ではなく、交渉の材料として理解してください。

考え方 中身 注意点
調達額に対する割合で決める 今回のラウンドの調達額の範囲内に、はっきり収める 調達額が大きいラウンドでしか成立しない
持株比率の減少幅で決める 創業者比率が一定の水準を下回らないところまで 比率が低い創業者は、そもそも売れない
必要額から積み上げる 借入の返済、生活費の確保など、使途から金額を出す いちばん説明しやすいが、金額は小さくなる

実務で通りやすいのは3番目です。「いくら欲しいか」ではなく「何のためにいくら必要か」から組み立てると、投資家が判断できる形になります。金額が小さくなりますが、通らなければゼロです。

また、売却後も創業者が筆頭株主として十分な比率を持っていることは、ほぼ必ず条件になります。比率がどう動くかは 希薄化の計算 の記事で扱っています。

この章の要点

相場はありません。使途から積み上げるのがもっとも通りやすい組み立てです。

誰に売るのか|買い手ごとの違い

売却先によって、手続きも価格も難易度も変わります。

買い手 特徴 難易度
今回のラウンドの新規投資家 ラウンドと同時に実行できる。もっとも多い形 中
既存投資家 会社をよく知っており、価格の議論が早い 中
セカンダリー専門のファンド 既存株式の買い取りを専門にしている 中〜高
会社(自己株式の取得) 財源の制限がかかる。別記事で扱う 高
その他の第三者 投資家が嫌う。株主として誰が入るかの問題 高

いちばん現実的なのは1番目です。ラウンドの条件交渉の中に組み込んでしまうことで、別途の交渉をしなくて済みます。ラウンドが終わった後に持ち出すと、投資家からは「話が違う」となります。

最後の「その他の第三者」は、事実上ほぼ通りません。既存株主から見れば、知らない相手が株主名簿に入ってくる話であり、これを止めるために先買権や譲渡制限があります。

この章の要点

今回のラウンドの投資家に売る形がもっとも現実的。ラウンド後に持ち出さないでください。

価格をどう決めるか|優先株の価格では売れない

ここが実務でもっとも誤解される点です。創業者が持っているのは普通株であり、ラウンドの優先株と同じ価格では売れません。

同じ会社の株でも、種類が違えば価格が違う

優先株には、優先分配や拒否権などの権利が付いています。普通株にはそれがありません。権利が少ない分、価格は下がります。

したがって、ラウンドの1株単価がそのままセカンダリーの価格になることは、原則としてありません。実務では、ラウンド価格から一定の割引をした水準で交渉されます。割引幅に決まった数字はなく、優先株に付いている権利の重さ、会社の段階、買い手の性質によって変わります。

買い手側から見ても事情があります。セカンダリーで買った株式は普通株ですから、買い手も優先分配を受けられません。同じ金額を出すなら新株(優先株)を買ったほうがよいわけで、それでもセカンダリーを買うなら、価格が下がっていなければ理屈が合いません。

論点 売り手(創業者)の立場 買い手(投資家)の立場
基準価格 ラウンド価格に近づけたい 普通株として評価したい
権利 権利の差は小さいと主張 優先分配・拒否権の差は大きいと主張
流動性 買い手が現にいる 未上場株で、出口が読めない
数量 まとめて売りたい 量が増えれば価格は下がる

なお、買い手が優先株としての権利を引き継げるかどうかは、定款の定めによります。多くの場合、普通株を買っても普通株のままです。ここを前提にせずに価格交渉を始めると、後で崩れます。

この章の要点

創業者が持つのは普通株。ラウンド価格からの割引が前提になります。

税金はどうなるか

個人が株式を売却して利益が出た場合、譲渡所得として20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)が課されます。給与所得などとは分けて計算される、申告分離課税です。

項目 金額
売却代金 5,000万円
取得費(創業時に払い込んだ額) ほぼゼロ
譲渡益 約5,000万円
税額(20.315%) 約1,015万円
手取り 約3,985万円

創業時に1株1円などで引き受けている場合、取得費はほぼゼロになるため、売却代金のほぼ全額が課税対象になります。「5,000万円売った」と「5,000万円入る」は違います。使途から金額を積み上げるときは、この20%分を先に差し引いてください。

取得費がわからない場合は、売却代金の5%を取得費とみなす扱い(概算取得費)が使えます。創業時の払込金額が小さいなら、こちらのほうが有利になることもあります。

会社に売る場合は、扱いが変わる

会社(発行会社)に売却すると、受け取った金額の一部がみなし配当として扱われ、総合課税になることがあります。税率が上がる可能性があるため、会社への売却を検討するなら先に税理士に確認してください。

また、個人が法人に時価より著しく低い価額で譲渡した場合、時価で譲渡したものとみなして課税される規定があります。価格を低く設定して税を抑える、という考え方は取れません。

この章の要点

約20%が税で引かれます。手取りベースで金額を設計してください。

譲渡制限と、承認の手続き

未上場のスタートアップの株式は、ほぼすべて譲渡制限株式です。定款に「株式の譲渡には会社の承認を要する」と書かれています。

手順 内容 誰が
1 譲渡承認の請求(譲渡する相手と株数を示す) 売る株主
2 承認するかどうかの決定 取締役会(無ければ株主総会)
3 請求者への通知 会社
4 株式譲渡契約の締結、代金の授受 売り手・買い手
5 株主名簿の書き換え 会社

注意すべきは2番です。創業者自身が代表取締役であっても、自分の株式の譲渡承認については特別利害関係人にあたり、その決議に加われません。取締役会の他のメンバーだけで決めることになります。取締役が2名で片方が創業者、という構成だと、実質的に1名で決めることになります。

また、会社が承認しない場合、会社または会社が指定する買取人が買い取る手続きに進みます。ただしこれは、会社側に買い取りの資金と財源が要る話であり、実際にはあまり使われません。

この章の要点

承認は取締役会。創業者本人はその決議に加われません。構成を先に確認してください。

株主間契約で先に働く権利

定款の譲渡制限とは別に、株主間契約に書かれた権利が先に働きます。こちらのほうが、実務では強く効きます。

権利 内容 創業者への影響
先買権 第三者に売る前に、既存株主が同じ条件で買える 買い手を自分では選べない
共同売却権 創業者が売るなら、投資家も同じ条件で一緒に売れる 売れる株数が減る
譲渡の事前通知義務 売る前に投資家へ通知する 交渉が始まる前に知られる
売却の禁止・上限 一定期間、または一定比率を超える売却を禁止 そもそも売れない

とくに共同売却権は見落とされがちです。買い手が5,000万円分しか買わないなら、投資家が一緒に売った分だけ創業者の取り分が減ります。比率に応じて按分されるのが通常で、創業者だけが全額を売ることはできません。

これらの権利は 株主間契約 に書かれています。売却を考えるなら、投資家に話を持っていく前に、まず自社の株主間契約を読み返してください。すでに禁止されていることもあります。

この章の要点

先買権と共同売却権が先に働きます。契約を読むのが最初の一手です。

会社に買い取らせる場合との違い

買い手を探す代わりに、会社に買い取らせるという選択肢があります。ただし、これは別の制約に入ります。

項目 投資家に売る 会社に売る(自己株式の取得)
資金の出どころ 買い手の資金 会社の現金
金額の上限 買い手の意欲しだい 分配可能額の範囲内
赤字の会社 影響しない 買えないことが多い
税の扱い 譲渡所得(分離課税) みなし配当を含む可能性
他の株主 先買権・共同売却権 他の株主にも売る機会が生じうる
ランウェイ 変わらない 買った金額だけ短くなる

赤字が続いているスタートアップでは、分配可能額がそもそもゼロで、会社は1円も買えないのが普通です。手元に調達した現金があっても関係ありません。詳しくは 自己株式の取得 の記事で扱っています。

この章の要点

会社に売る道は分配可能額で塞がれていることが多い。第三者への売却が現実的です。

比率はどう動くか

セカンダリーでは新株が発行されないため、発行済株式総数は変わりません。希薄化は起きず、動くのは創業者の比率だけです。

株主 売却前 比率 売却後 比率
創業者 600,000株 60.0% 500,000株 50.0%
投資家A 250,000株 25.0% 350,000株 35.0%
その他 150,000株 15.0% 150,000株 15.0%
合計 1,000,000株 100% 1,000,000株 100%

創業者が100,000株を投資家Aに売ると、創業者は60%から50%に、投資家Aは25%から35%になります。総数は1,000,000株のまま変わりません。

ここで見ておくべきなのは、この売却が次のラウンドの希薄化と重なることです。セカンダリーで50%まで下がったところに、次のラウンドで20%の希薄化が起きれば、創業者は40%になります。売却の時点では十分に見えても、2ラウンド先で過半数を大きく割ることがあります。

売る前に、2ラウンド先まで引いておく

今回の売却後の比率ではなく、その後に想定される調達を反映させた比率で判断してください。売却は取り消せません。

この章の要点

総数は変わらず、創業者の比率だけが下がります。次のラウンドの希薄化と重ねて見てください。

ストックオプションの行使価額に効いてくる

見落とされやすい副作用があります。セカンダリーの価格が、その後のストックオプションの行使価額の根拠にされることがあるという点です。

税制適格ストックオプションは、行使価額が付与時点の株式の時価以上でなければなりません。この「時価」を算定するとき、直近で実際に普通株が売買された価格があれば、有力な参考情報になります。

状況 その後のSOへの影響
セカンダリーで普通株が1株500円で売買された 以後のSOの行使価額が、その水準を意識した金額になりうる
行使価額が上がる 付与された従業員の手取りが減る
行使に必要な資金が増える 行使のハードルが上がる

つまり、創業者が高く売れば売るほど、その後に入社する人のストックオプションの条件は悪くなる方向に働きます。価格交渉の前に、次の付与予定があるかを確認してください。詳しくは 税制適格ストックオプション の記事で扱っています。

この章の要点

セカンダリー価格はその後のSOの行使価額に波及しうる。付与予定と合わせて考えてください。

投資家への説明の組み立て方

交渉の場で通るかどうかは、金額よりも説明の順序で決まります。次の順で組み立ててください。

順 伝えること 避けること
1 今の個人の財務状況が、会社の判断にどう影響しているか 「頑張ってきたので」という功労の話
2 何のために、いくら必要か(使途と金額) 「できるだけ多く」という言い方
3 売却後も筆頭株主であり、比率が十分であること 比率を示さずに金額だけ出すこと
4 これが一度きりであること、次回は求めないこと 次回以降を曖昧にしたままにすること
5 売却後のコミットメント(在籍期間など)を書面にする用意があること 口頭での意思表明だけで済ませること

5番は有効です。セカンダリーと引き換えに、一定期間の在籍義務や、追加のベスティングを受け入れるという形が取られることがあります。投資家の最大の懸念が「動機が弱まること」である以上、そこに直接答える条件を出すのが近道です。

ベスティングの考え方は 創業株主間契約とベスティング の記事で扱っています。

この章の要点

功労ではなく会社の判断への影響から話す。引き換え条件を自分から出すと通りやすくなります。

進め方の順序

1契約の確認
2金額の設計
3ラウンドに載せる

順番を間違えると、途中で止まります。

順 やること 確認先
1 株主間契約・投資契約で、売却が禁止・制限されていないか読む 弁護士
2 先買権・共同売却権が働いた場合に、実際に売れる株数を計算する 自社
3 使途から必要額を出し、税引後の手取りで逆算する 税理士
4 売却後・次ラウンド後の比率を計算する 自社
5 ラウンドの条件交渉の中で、投資家に提案する 投資家
6 価格を合意する(普通株としての評価) 投資家・税理士
7 譲渡承認の請求と、取締役会の決議 会社
8 株式譲渡契約の締結、代金の授受、株主名簿の書き換え 弁護士
9 翌年の確定申告(申告分離課税) 税理士

1番と2番を飛ばして投資家に話を持っていくと、「契約で禁止されている」で終わります。先に自社の書類を読んでください。

この章の要点

最初は交渉ではなく契約を読むこと。売れる株数の上限が、そこで決まっています。

チェックリスト

セカンダリー売却を検討するときに

  • 株主間契約・投資契約で、売却の禁止や上限が定められていないか確認した
  • 先買権が働いた場合の買い手と条件を把握した
  • 共同売却権が働いた場合に、実際に売れる株数を計算した
  • 定款の譲渡制限と、承認機関(取締役会か株主総会か)を確認した
  • 自分が承認決議に加われないことを踏まえ、取締役の構成を確認した
  • 使途と必要額を書き出し、税引後の手取りで逆算した
  • 取得費(創業時の払込額)を確認し、概算取得費との有利不利を比べた
  • 普通株としての価格であることを前提に、割引幅を想定した
  • 売却後と、次ラウンド後の持株比率を計算した
  • 今後のストックオプション付与への影響を確認した
  • 引き換えに受け入れる条件(在籍期間・追加ベスティング)を用意した
  • ラウンドの条件交渉の中で提案する段取りにした
この章の要点

1番から3番で、売れるかどうかと、売れる量がほぼ決まります。

よくある質問

Q. セカンダリーで売った資金は、会社に入りますか
入りません。既存株式の売買なので、代金は売った株主(創業者個人)に入ります。会社に資金を入れたいなら、新株を発行するプライマリーの調達になります。
Q. ラウンドの1株単価で売れますか
原則として売れません。創業者が持っているのは普通株で、ラウンドで発行される優先株には優先分配や拒否権が付いています。権利の差の分だけ価格は下がり、実務ではラウンド価格からの割引で交渉されます。
Q. シードの段階でも売却できますか
ほぼ通りません。この段階の投資家は創業者本人に投資しており、退出の気配を嫌います。買い手も見つかりにくく、価格も付きにくい段階です。
Q. 投資家に相談せずに、知人に売ることはできますか
できません。定款の譲渡制限により会社の承認が必要で、株主間契約に先買権や事前通知義務があれば、それにも従う必要があります。無断で進めると契約違反になります。
Q. 税金はいくらかかりますか
譲渡益に対して20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)の申告分離課税です。創業時の取得費がほぼゼロなら、売却代金のほぼ全額が課税対象になります。5,000万円売れば、税は約1,015万円です。
Q. 共同売却権があると、どうなりますか
投資家も同じ条件で一緒に売れます。買い手が買う総額が決まっている場合、比率に応じて按分されるため、創業者が売れる株数はその分減ります。売る前に必ず計算してください。
Q. 会社に買い取ってもらうほうが簡単ですか
簡単ではありません。会社が自己株式を取得できるのは分配可能額の範囲内で、赤字が続いているスタートアップではゼロであることが多いです。手元に現金があっても買えません。
Q. 売却したことは、他の株主や従業員に知られますか
株主名簿が書き換わるため、株主には把握されます。従業員に開示する義務はありませんが、次の調達の資料や登記関係から伝わることはあります。社内での説明を先に考えておいてください。
Q. 共同創業者が複数いる場合、全員が売れますか
全員が同じ条件で売る形にするのが基本です。一部の創業者だけが売ると、創業者間に不均衡が生じ、投資家からも指摘されます。創業者間で先に合意してから持ち出してください。
Q. 売却の代わりに、役員報酬を上げるのではだめですか
まずそちらを検討してください。金額が小さく、毎月の資金繰りで済む範囲なら、報酬の見直しのほうが手続きも税も単純です。ただし報酬は損金算入の要件(定期同額など)があり、期中の変更には制約があります。まとまった一時金が必要な場面で、セカンダリーが検討対象になります。
Q. 売却後に、また売りたくなったらどうなりますか
2回目は1回目より難しくなります。1回目の交渉で「次は求めない」と伝えていれば、なおさらです。1回で必要額を満たす設計にしておいてください。
Q. 上場が近ければ、売却は通りやすくなりますか
逆に難しくなることがあります。上場審査では資本構成の安定性が見られ、直前期の株式の異動には説明が求められます。証券会社や監査法人と先に相談してください。
出典

  • 会社法 第107条・第108条(株式の内容)、第136条〜第145条(譲渡制限株式の譲渡の承認)、第369条第2項(特別の利害関係を有する取締役)— e-Gov法令検索
  • 租税特別措置法 第37条の10(一般株式等に係る譲渡所得等の課税の特例)、所得税法 第59条(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)— e-Gov法令検索
  • 株式等を譲渡したときの課税、取得費が不明な場合の取扱い — 国税庁