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仕入れ資金による調達「300万円は出せない」と「300万円を一度に出せない」は違います。金額が決めているのは価格ではなく決裁の階層。年間支出で見る会社なら、分割で階層が変わります。

高額商材が決まらなかったとき、報告には「価格が合わなかった」と書かれます。しかし実際には、価格ではなく支払い方が理由だったことがあります。
前者なら値引きが必要ですが、後者なら支払いを分けるだけで解決します。この2つは、商談の中では同じ言葉で出てきます。
「高い」と「一度に出せない」は、違う問題です。
| 金額が上がると | 何が起きるか |
|---|---|
| 承認者が上位になる | 会ったことのない人が判断する |
| 稟議の書式が重くなる | 相見積もり・稟議書・説明資料 |
| 関係部署の合議が必要になる | 情報システム・法務・経理 |
| 取締役会の決議が必要になる | 開催を待つことになる |
| 時間がかかる | 数週間〜数か月 |
| 途中で止まる確率が上がる | 誰か1人が反対すれば止まる |
価格が妥当でも、承認の階層が増えるほど、どこかで止まる確率が上がります。これが高額商材の本当の難しさです。
金額が上がると、止まる確率が上がります。
典型的な決裁権限の例です。金額の区切りは会社によって異なります。
| 金額 | 承認者 | 必要なもの |
|---|---|---|
| 〜50万円 | 課長 | 簡易な申請 |
| 〜100万円 | 部長 | 稟議書 |
| 〜300万円 | 役員 | 稟議書+相見積もり |
| 〜1,000万円 | 取締役会 | 議案として上程 |
提案額300万円は、ちょうど階層が変わる金額です。わずかに超えるかどうかで、必要な手続きも承認者も変わります。
だから、相手の決裁権限の区切りを知ることに価値があります。「いくらを超えると、誰の承認が必要ですか」と聞いてください。
決裁権限の区切りを聞いてください。
300万円の提案を、支払い方で分けた場合の年間支出です。
| 支払い方 | 月々 | 年間の支出 | 該当する階層 |
|---|---|---|---|
| 一括 | — | 300万円 | 役員 |
| 12回 | 25万円 | 300万円 | 役員 |
| 24回 | 12.5万円 | 150万円 | 役員 |
| 36回 | 約8.3万円 | 100万円 | 部長 |
36回に分ければ年間100万円です。「年間の支出額」を基準にしている会社なら、部長決裁の範囲に入ります。
ただし、会社によっては「契約総額」で判断します。その場合、分割しても300万円の稟議です。どちらの基準かを、相手に確認してください。
年間支出か、契約総額か。基準を確認してください。
| 担当者が直面すること | 結果 |
|---|---|
| 稟議書を書く手間 | 後回しになる |
| 相見積もりを取る必要 | 競合を呼ぶことになる |
| 関係部署への説明 | 時間がかかる |
| 役員への説明 | 失敗したときの責任 |
| 他の業務との優先順位 | — |
必要性を認めていても、手続きの重さで後回しになります。そして年度が変わり、担当者も変わり、話は消えます。
だから、担当者の手間を減らすことが、そのまま受注確率に効きます。稟議書に貼り付けられる資料、相見積もりの比較表、想定問答を用意してください。
担当者の手間を減らすことが、受注確率を上げます。
| 項目 | 費用処理 | 資産計上 |
|---|---|---|
| 今期の損益への影響 | 全額が費用 | 減価償却分だけ |
| 稟議の重さ | 通常 | 設備投資として重くなる |
| 関与する部署 | 担当部署 | 経理・固定資産管理 |
| 資産の管理 | 不要 | 台帳への登録・棚卸 |
| 除却時の手続き | 不要 | 必要 |
ソフトウェアや設備が資産計上の対象になると、設備投資の稟議として扱われ、経理や固定資産管理の部署が関与します。その分、時間がかかります。
費用処理か資産計上かは、金額と内容、相手の会計方針で決まります。こちらから断定せず、相手の経理部門に確認してもらってください。判断が変わると、稟議の道筋も変わります。
資産計上になると、手続きが一段増えます。
| 聞き方 | 分かること |
|---|---|
| 「価格そのものでしょうか、支払い方でしょうか」 | 2つを分ける |
| 「どの段階で止まりましたか」 | 担当・部長・役員のどこか |
| 「決裁はいくらから誰の承認ですか」 | 階層の区切り |
| 「年間の支出額と契約総額、どちらで見ますか」 | 分割が効くか |
| 「他に何があれば通りましたか」 | 足りなかった材料 |
| 「時期を変えれば可能性はありますか」 | 再提案の余地 |
断る側にも気まずさがあり、「次につながる質問」には答えてもらいやすいものです。感情的にならず、事実を聞いてください。
失注の直後に、事実を聞いてください。
| やること | 内容 |
|---|---|
| 範囲を絞った案を出す | 機能・部署・期間を限定 |
| 効果を金額で示す | 回収期間で説明する |
| 競合との比較を総額で揃える | 3年の総費用で |
| 値引きする | 引き換えを求める |
粗利率60%なら、売価20%の値引きで粗利の33.3%を失います。先に範囲の縮小と効果の提示を試してください。
詳しくは 「予算がない」で止まった商談を、値引き以外で進める の記事で扱っています。
値引きは最後。範囲の縮小と効果の提示が先です。
| 用意する選択肢 | 相手にとって |
|---|---|
| 分割払い | 1回の支出が下がる |
| 初期費用と月額に分ける | 費目を分けられる |
| 年度をまたぐ支払い | 今期の枠を超えない |
| 使用量に応じた課金 | 初期の負担がない |
| 試験導入期間を設ける | 小さく始められる |
断られてから出すのではなく、見積書の段階で「一括/12回/24回」と並べておくほうが効きます。相手は社内で通しやすい形を自分で選べます。
分割にした場合の自社の入金は 後払いで受注したとき、自社の入金はいつになるか の記事で扱っています。
見積書に最初から支払い方を並べておいてください。
| やること | 内容 |
|---|---|
| 稟議に使える資料を作って渡す | 担当者の手間を減らす |
| 想定問答を用意する | 役員から出る質問への答え |
| 比較表を用意する | 相見積もりの代わりになる |
| 決裁者に直接会う機会を作る | 伝言では伝わらない |
| 金額を下げて階層を変える | 範囲の縮小・分割 |
| 導入事例・実績を示す | 失敗リスクへの不安を下げる |
「本当に使われるのか」「失敗したら誰が責任を取るのか」。この不安に答える材料のほうが、価格の説明より効きます。
決裁者の不安は価格ではなく失敗リスクです。
| やること | 効果 |
|---|---|
| 失注の理由を記録する | 傾向が見える |
| 金額帯ごとの受注率を出す | どこに壁があるか分かる |
| 止まった階層を記録する | 担当か、部長か、役員か |
| 時期を記録する | 期末・期初の傾向 |
| 半年後に再提案する | 予算編成に合わせる |
100万円以下は50%決まるのに、300万円を超えると10%しか決まらない——といった傾向が見えれば、そこに構造的な壁があります。
その壁が決裁の階層なら、支払い方で年間の支出額を下げることで越えられる可能性があります。
金額帯ごとの受注率で、壁の位置が分かります。
| 見積書に入れること | 効果 |
|---|---|
| 支払い方の選択肢を並べる | 一括/12回/24回など |
| 年間の支出額を明記する | 決裁の基準に合わせやすい |
| 初期費用と月額を分けて書く | 費目を分けられる |
| 総額も併記する | 誤解を避ける |
| 手数料があれば明示する | 後から出すと信用を失う |
分割にすると手数料がかかる場合、それを最初に書いてください。「分割なら月8万円」と言った後で「ただし手数料が」となると、そこで止まります。
分割の手数料は最初に明示してください。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 自社の入金が遅れる | その分の運転資金が必要 |
| 原価は先に出る | 仕入れ・外注は分割にならない |
| 貸倒れのリスク | 途中で払われなくなる可能性 |
| 収益の認識時期 | 会計処理の確認が必要 |
| 与信管理 | 相手の支払能力を確認する |
| 契約書の整備 | 期限の利益喪失条項など |
原価は先に出て、入金は24か月に分かれます。受注が増えるほど、立て替える資金も増えます。この構造を理解してから始めてください。
収益をいつ認識するかは、契約の内容と役務の提供時期で決まります。分割払いにしても、収益の認識時期は支払いのタイミングとは限りません。税理士に確認してください。
資金繰りへの影響は 後払いで受注したとき、自社の入金はいつになるか の記事で数字とあわせて扱っています。
分割で売ると、自社が資金を立て替えます。
| 形 | 自社の入金 | 貸倒れリスク |
|---|---|---|
| 自社で分割を受ける | 分割で入る | 自社が負う |
| 外部の仕組みを使う | 条件による | 条件による |
| リース会社を使う | — | — |
| 信販会社を使う | — | — |
外部の仕組みを使う場合、自社への入金時期、手数料、貸倒れリスクを誰が負うかを確認してください。この3点で比べれば、自社で分割を受ける場合と並べられます。
手数料は、売価に転嫁するのか、自社が負担するのかも決めてください。転嫁すれば相手の総額が上がり、自社が負担すれば粗利が減ります。
なお、提供する仕組みによっては、割賦販売法などの法規制が関わることがあります。形を決める前に確認してください。
比べるのは入金時期・手数料・貸倒れリスクの3点です。
分割とは別に、契約期間そのものを複数年にするという形があります。
| 項目 | 単年契約 | 複数年契約 |
|---|---|---|
| 1年あたりの金額 | 高い | 割引で下がることが多い |
| 相手の稟議 | 毎年必要 | 1回で済む |
| 決裁の階層 | 年額で判断 | 総額で判断されうる |
| 自社の売上の見通し | 読みにくい | 読める |
| 途中解約 | — | 条件を決める必要 |
| 相手の負担感 | — | 縛られる感覚 |
金額の割引より、手続きが1回で済むことのほうが響くことがあります。毎年同じ稟議を書くのは、担当者にとって負担です。
ただし、決裁が総額で判断される会社では逆効果です。年額100万円×3年=300万円として役員決裁になり、かえって重くなります。ここでも「年間支出か契約総額か」の確認が効きます。
値引きと引き換えに複数年契約を求める方法は 「予算がない」で止まった商談を、値引き以外で進める の記事で扱っています。
複数年の利点は割引より稟議が1回で済むことです。
| 時期 | 状況 | 提案の向き |
|---|---|---|
| 予算編成の時期 | 来期の枠を決めている | 最も効く |
| 期初 | 枠が残っている | 効く |
| 期中 | 枠が埋まりつつある | 分割・範囲縮小 |
| 期末の2か月前 | 使い切れない枠が出る | 一度声をかける価値 |
| 期末直前 | 手続きが間に合わない | 来期の話にする |
3月決算なら、編成は概ね11月〜1月に行われます。その時期に提案できれば、来期の枠に組み込んでもらえます。編成が終わってから提案すると、1年待つことになります。
期末の2か月前も狙い目です。「使い切らないと来期の枠が減る」という事情で、急に予算が出ることがあります。ただし、その時期に契約しても手続きが間に合わない場合があるため、納品と検収の時期を確認してください。
期末の予算については 期末予算の枠に収める提案の組み立て方 の記事で扱っています。
顧客ごとに予算編成の時期を記録してください。
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 失注の理由を「価格・支払い方・決裁」に分ける |
| 2 | 相手の決裁権限の区切りを聞く |
| 3 | 年間支出か契約総額か、どちらで判断するか聞く |
| 4 | 支払い方で階層が下がるか試算する |
| 5 | 見積書に支払い方の選択肢を並べる |
| 6 | 稟議に使える資料と想定問答を渡す |
| 7 | 自社の資金繰りへの影響を確認してから始める |
契約総額で判断する会社なら、分割しても決裁の階層は変わりません。この1点を確認しないと、効かない提案をすることになります。
年間支出か契約総額か。ここで効くかが決まります。
4番と5番。この2つで、打つべき手が決まります。
SaaSの年間一括請求が止まる理由は SaaSの年間一括請求が、相手の稟議を止めるとき、導入費用と月額の配分は 導入費用と月額の分け方で、決裁者が変わる の記事で扱っています。
この記事は仕入れ資金による調達の一部です。手段そのものを比べたい場合は、あわせてご覧ください。