ホーム / 仕入れ資金による調達 / 記事
仕入れ資金による調達回転日数とCCC、1日あたりの効果が自動で出るExcelを配布します。売上原価で割る理由、平均30日の裏で400万円が動いていない構造を品目別に見る方法を扱います。

「在庫が1,800万円あります」——この数字だけでは、多いのか少ないのか判断できません。
| 会社 | 在庫 | 月間の売上原価 | 状態 |
|---|---|---|---|
| A社 | 1,800万円 | 1,800万円 | 30日分。標準的 |
| B社 | 1,800万円 | 600万円 | 90日分。多い |
同じ1,800万円でも、意味がまったく違います。在庫は、金額ではなく「何日分か」で見てください。
在庫は金額ではなく「何日分か」で見てください。
「いまの在庫は、何日分の出荷に相当するか」を表します。この日数が長いほど、資金が在庫に固定されています。
| 項目 | 計算 | 例 |
|---|---|---|
| 月間の売上原価 | 月商 × 売上原価率 | 3,000万円 × 60% = 1,800万円 |
| 1日あたりの売上原価 | 月間の売上原価 ÷ 30 | 60万円 |
| 在庫回転日数 | 在庫 ÷ 1日あたりの売上原価 | 1,800万円 ÷ 60万円 = 30日 |
この会社は30日分の在庫を持っています。1か月分です。
在庫 ÷ 1日あたりの売上原価。これが在庫回転日数です。
間違えやすい点です。在庫回転日数は、売上高ではなく売上原価で割ります。
| 割るもの | 1日あたり | 在庫回転日数 | 正しいか |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 100万円 | 18日 | 誤り |
| 売上原価 | 60万円 | 30日 | 正しい |
在庫は仕入れた金額(原価)で計上されています。これを売上高で割ると、単位が合わず、日数が短く出ます。実態より良く見えてしまいます。
上の例では、売上高で割ると18日、売上原価で割ると30日。12日も違います。粗利率が高い事業ほど、この差は大きくなります。
売上原価で割る。売上高で割ると、実態より良く見えます。
この記事の主題です。在庫回転日数を1日動かすと、必要な資金はいくら変わるか。
在庫回転日数が1日延びれば、在庫が「1日あたりの売上原価」の分だけ増えます。その分、現金が減ります。
| 在庫回転日数 | 在庫の残高 | 現状との差 |
|---|---|---|
| 20日 | 1,200万円 | ▲600万円(現金が増える) |
| 25日 | 1,500万円 | ▲300万円 |
| 30日(現状) | 1,800万円 | 0円 |
| 35日 | 2,100万円 | +300万円(現金が減る) |
| 40日 | 2,400万円 | +600万円 |
在庫回転日数が1日延びると、現金が60万円減ります。10日で600万円です。
在庫が増えるのは、多くの場合意識的な判断ではなく、少しずつの積み重ねです。発注を少し多めにする、売れ行きが落ちた商品を残す——それが5日、10日と延びていきます。
1日で60万円(月商3,000万・原価率60%の場合)。10日で600万円です。
月商・売上原価率・在庫・売掛金・買掛金を入れれば、回転日数・CCC・所要運転資金が自動で出て、1日動かしたときの効果まで計算されます。
水色の5か所を入れると、回転日数とCCC、1日あたりの効果が自動で出ます。品目別の回転日数も出せます。
1 現状(この5つを入れる)
| 項目 | 金額 | メモ |
|---|---|---|
| 月商(売上高) | 円で入れる | |
| 売上原価率(%) | 60 | 売上に対する原価の割合 |
| 月間の売上原価 | 月商 × 売上原価率 | |
| 在庫の残高 | 月末時点の棚卸資産 | |
| 売掛金の残高 | 月末時点 | |
| 買掛金の残高 | 月末時点 |
2 自動で出る数字
| 項目 | 計算のしかた |
|---|---|
| 日商 | 月商 ÷ 30 |
| 1日あたりの売上原価 | 月間の売上原価 ÷ 30 |
| 売上債権回転日数 | 売掛金 ÷ 日商 |
| 在庫回転日数 | 在庫 ÷ 1日あたりの売上原価 |
| 仕入債務回転日数 | 買掛金 ÷ 1日あたりの売上原価 |
| CCC(現金が戻るまでの日数) | 売上債権回転日数 + 在庫回転日数 - 仕入債務回転日数 |
| 所要運転資金 | 売掛金 + 在庫 - 買掛金 |
3 日数を変えたら
| 在庫回転日数の変化 | 在庫の残高 | 所要運転資金 | 現状との差 |
|---|---|---|---|
| -10日 | |||
| -5日 | |||
| -3日 | |||
| -1日 | |||
| 現状 | |||
| +1日 | |||
| +3日 | |||
| +5日 | |||
| +10日 | |||
| 1日あたりの効果 | 1日あたりの売上原価と同額 |
4 品目別の在庫
| 品目 | 仕入単価 | 在庫数量 | 在庫金額 | 月間の出荷数 | 月間の出荷金額 | 回転日数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| (例)商品A | 1,200 | 500 | 600,000 | 150 | 180,000 | 100 |
| 合計 |
5 用語と計算式
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| 在庫回転日数 | 在庫 ÷ 1日あたりの売上原価。売上高ではなく売上原価で割る |
| 売上債権回転日数 | 売掛金 ÷ 日商 |
| 仕入債務回転日数 | 買掛金 ÷ 1日あたりの売上原価 |
| CCC | 仕入代金を払ってから売上を回収するまでの日数 |
| 所要運転資金 | 事業を回すために立て替えている金額 |
| 1日あたりの効果 | 在庫回転日数を1日動かすと必要資金が変わる額 |
| この表の限界 | 月末残高で計算している。月中の変動が大きいなら平均残高で |
Excel版は、株数と1株あたり金額を入れると持株比率が自動で出ます。 入力するところは水色、自動で計算されるところはグレーに塗り分けてあります。 1枚目に使い方、最後に用語集が入っています。
コピーを押すと、タブ区切りでクリップボードに入ります。 Googleスプレッドシートに貼ると列が揃ったまま入ります(計算式は入りません)。
入っている数字はすべて記入例です。実在の会社のものではありません。 自社の数字に置き換えて使ってください。
| シート | 内容 |
|---|---|
| はじめに | 使い方の4ステップ |
| 1 現状 | 5つを入れる。回転日数・CCC・所要運転資金が出る |
| 2 日数を変えたら | 在庫回転日数を±10日まで動かした場合の必要資金 |
| 3 品目別の在庫 | 品目ごとの回転日数。止まっている在庫を探す |
| 用語と計算式 | — |
入力するのは1 現状の5か所と、3 品目別の在庫だけです。金額は円で統一してください。
入力は5か所。1日あたりの効果まで自動で出ます。
在庫だけを見ても、資金繰りの全体は分かりません。仕入代金を払ってから、売上を回収するまでの日数を見る指標があります。
仕入れてから売れるまでの日数(在庫)と、売ってから回収するまでの日数(売上債権)を足し、仕入れてから払うまでの日数(仕入債務)を引きます。この日数のあいだ、会社が資金を立て替えています。
| CCC | 意味 |
|---|---|
| 長い | 立て替える期間が長い。運転資金が要る |
| 短い | 資金が早く戻る |
| マイナス | 払う前に回収できている。事業が資金を生む |
CCCがマイナスになるのは、前受けや、長い支払サイトがある事業です。この場合、成長するほど現金が増えます。
CCCは立て替えている日数。マイナスなら事業が資金を生みます。
先ほどの会社(月商3,000万円・原価率60%)で計算します。
| 項目 | 金額 | 日数 |
|---|---|---|
| 売掛金 | 6,000万円 | 60日 |
| 在庫 | 1,800万円 | +30日 |
| 買掛金 | 1,800万円 | -30日 |
| CCC | — | 60日 |
| 所要運転資金 | 6,000万円 | — |
この会社は60日分、資金を立て替えています。そして、どこを縮めるのが効くかも見えます。
| 縮める場所 | 1日あたりの効果 |
|---|---|
| 売上債権回転日数 | 100万円(日商) |
| 在庫回転日数 | 60万円(1日あたりの売上原価) |
| 仕入債務回転日数を延ばす | 60万円 |
売上債権は日商(100万円)、在庫と仕入債務は1日あたりの売上原価(60万円)で効きます。同じ1日でも、回収を早めるほうが効果が大きいという関係になります。
1日の効果は回収が100万円、在庫が60万円。場所で違います。
在庫回転日数30日という数字は、全体の平均です。中身は均一ではありません。
| 品目 | 在庫金額 | 月間の出荷 | 回転日数 |
|---|---|---|---|
| 商品A | 600万円 | 900万円 | 20日 |
| 商品B | 500万円 | 750万円 | 20日 |
| 商品C | 300万円 | 150万円 | 60日 |
| 商品D | 400万円 | 0円 | 出荷なし |
| 合計 | 1,800万円 | 1,800万円 | 平均30日 |
主力のAとBは20日で回っていますが、Dは400万円分が動いていません。全体の平均だけを見ていると、この400万円が見えません。
平均の内訳は均一ではありません。品目別に見てください。
先ほどの内訳から、何をすべきかを判断します。
| 品目 | 状態 | やること | 効果 |
|---|---|---|---|
| A・B | 20日で回っている | 維持する | — |
| C | 60日。やや長い | 発注量を見直す | 150万円程度 |
| D | 動いていない | 処分する | 400万円 |
在庫の22%が、何も生まずに資金を固定しています。この400万円を処分すれば、在庫回転日数は約23日に下がります。
全品目の発注量を見直すより、動いていない在庫を1つ処分するほうが、はるかに早く効きます。テンプレートの「3 品目別の在庫」で、出荷がゼロの品目を探してください。
まず動いていない在庫。全品目の見直しより早く効きます。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 欠品を恐れる | 多めに持てば、機会損失は防げる |
| まとめ買いの割引 | 単価が下がるので、多く買う |
| 最低発注数量(MOQ) | 必要量より多く買わざるを得ない |
| 納期が長い | 先に発注しておく必要がある |
| 売れ行きが落ちた商品を残す | 処分の判断をしないまま積み上がる |
| 販売計画と発注が連動していない | — |
まとめ買いで単価が3%下がっても、在庫回転日数が20日延びれば、資金は1,200万円増えます。3%の割引額と、その資金のコストを比べてください。
最低発注数量の問題は 最低発注数量(MOQ)が資金繰りを決めてしまう、発注のタイミングは 発注点を決めると、資金の山が平らになる の記事で扱っています。
まとめ買いの割引は計算しないと損得が分かりません。
| 順 | やること | 効果 | 期間 |
|---|---|---|---|
| 1 | 出荷がゼロの品目を特定する | — | 1日 |
| 2 | その金額と、在庫全体に占める割合を出す | — | 1日 |
| 3 | 処分の方針を決める(値引き販売・返品・廃棄) | 大きい | 数週間 |
| 4 | 回転日数が長い品目の発注量を見直す | 中 | 数か月 |
| 5 | 発注の頻度を上げ、1回の量を減らす | 中 | 数か月 |
| 6 | 販売計画と発注を連動させる | 継続的 | 継続 |
1〜3が最優先です。動いていない在庫は、持っていても価値が上がりません。むしろ時間が経つほど、売りにくくなります。
1年動いていない商品が、来年動く可能性は高くありません。処分を先送りするほど、値引き幅は大きくなり、保管の費用もかかり続けます。
1〜3が最優先。先送りするほど、値引き幅は大きくなります。
処分をためらう理由は、多くの場合「損失が出るから」です。
| 考え方 | 実際 |
|---|---|
| 「処分すると損が出る」 | 損はすでに出ている。計上していないだけ |
| 「まだ資産として計上されている」 | 売れない在庫は、実質的に資産ではない |
| 「いつか売れるかも」 | 時間が経つほど売りにくくなる |
| 「保管費用はかかっていない」 | 倉庫代・管理の手間がかかっている |
金融機関は、滞留している在庫を実質純資産の計算から控除します。処分してもしなくても、評価は変わりません。むしろ処分して現金にしたほうが、資金繰りは改善します。
この点は 銀行は決算書のどこを見るか の記事で扱っています。決算書の見た目を保つために処分しないのは、意味がありません。
損はすでに出ています。計上していないだけです。
| 起きること | 損失 |
|---|---|
| 欠品 | 売上の機会を失う |
| 納期が守れない | 信用を失う |
| 発注の頻度が増える | 送料・事務の手間が増える |
| まとめ買いの割引を失う | 単価が上がる |
| 急ぎの手配 | 割高になる |
在庫を減らすこと自体が目的ではありません。目的は、動かない在庫に資金を固定しないことです。よく動く商品の在庫を削って欠品させれば、資金より大きなものを失います。
だから、品目別に見ることが重要になります。全体を一律に削るのではなく、動いていないものを落とし、動いているものは適正な量を持つ——この切り分けが必要です。
一律に削らない。動いていないものを落とすのが目的です。
| 測る指標 | 頻度 | 見る点 |
|---|---|---|
| 在庫回転日数(全体) | 毎月 | 前月比。延びていないか |
| CCC | 毎月 | 資金が戻るまでの日数 |
| 所要運転資金 | 毎月 | 立て替えている金額 |
| 出荷ゼロの品目の金額 | 毎月 | 増えていないか |
| 品目別の回転日数 | 四半期 | 長い順に並べる |
在庫回転日数30日という数字だけを見ても、多いか少ないか判断できません。前月が25日だったなら、5日増えている——つまり300万円の現金が在庫に変わっています。推移で見てください。
テンプレートは毎月、月末の数字で作り直してください。ファイルを月ごとに残せば、推移が並びます。
1回では判断できません。前月と比べることで、変化が見えます。
| 場面 | 使い方 |
|---|---|
| 増加運転資金の申込 | 売上増で在庫がいくら増えたかを示す |
| 在庫が増えた理由の説明 | 回転日数が延びたのか、売上が増えたのか |
| ABLの申込 | 在庫の内訳と回転日数を示す |
| 改善の実績 | 回転日数の推移で示す |
決算書で在庫が増えていれば、金融機関は理由を聞きます。「売上が増えたため、回転日数は変わっていません」と答えられるか、「回転日数が10日延びました」となるかで、評価がまったく違います。
前者は成長に伴う自然な増加、後者は管理の問題です。回転日数を出していれば、この区別が即座にできます。
在庫増の理由が売上か、回転日数か——即答できる状態にしてください。
6番の出荷ゼロの品目を特定すれば、いちばん効く手が見つかります。
この記事は仕入れ資金による調達の一部です。手段そのものを比べたい場合は、あわせてご覧ください。