ホーム / 融資による調達 / 記事

融資による調達

経営者保証ガイドラインで保証を外せる条件

会社を畳んでも個人の保証は残ります。ガイドラインの3要件、今日から変えられる区分・分離と情報開示、2023年に始まった説明義務、新規と既存で異なる難易度を整理します。

公開:2026年9月14日 Creww Finance Media 編集部
この記事の内容

  1. 経営者保証とは何を背負うことか
  2. ガイドラインは、法律ではない
  3. 保証を外すための3つの要件
  4. 要件1|法人と個人を、実際に分ける
  5. 要件2|財務基盤を強くする
  6. 要件3|情報を開示し続ける
  7. 2023年に変わったこと|説明が義務になった
  8. 「どこが足りないか」を聞く
  9. 新規と既存で、難易度が違う
  10. 事業承継のときの特則
  11. すでに保証している債務を整理する場合
  12. 保証を外す代わりに、何かを求められることがある
  13. スタートアップの場合
  14. 進め方の順序
  15. チェックリスト
  16. よくある質問

経営者保証とは何を背負うことか

経営者保証とは、会社の借入について、経営者個人が返済の責任を負う契約です。会社が返せなくなれば、個人の財産で返すことになります。

項目 内容
誰が負うか 代表者個人。共同代表なら複数の場合も
いくら負うか 借入の全額(限度額の定めがある場合を除く)
会社を清算したら 個人の債務は残る
役員を辞めたら 自動では外れない。解除の手続きが要る
個人の財産 自宅を含め、原則として返済に充てることになる
会社を畳んでも、個人の保証は残る

ここが最も重い点です。法人の有限責任は、経営者保証によって実質的に無効化されます。事業がうまくいかなかったときに、個人の生活まで巻き込まれる——これが、再挑戦を妨げる要因として問題視されてきた構造です。

もうひとつ見落とされるのが、役員を辞めても自動では外れないことです。後継者に引き継いだつもりでも、手続きをしなければ前経営者が保証人のまま残ります。

この章の要点

保証は会社を畳んでも残り、辞任でも自動では外れません。外すには手続きが要ります。

ガイドラインは、法律ではない

経営者保証に関するガイドラインは、2013年12月に公表され、2014年2月から適用されている準則です。金融機関と中小企業の関係者が自主的に定めたもので、法的な拘束力はありません。

できること できないこと
要件を満たせば、保証を求めない扱いを検討してもらえる 要件を満たしたから外せ、と強制すること
保証を求める理由の説明を受けられる 説明に納得できないから無効だ、と主張すること
保証債務の整理で、一定の資産を残せる可能性がある 必ず残せると約束させること

ただし、金融庁の監督指針に取り込まれており、金融機関には実務上の重みがあります。「法的拘束力がないから関係ない」という扱いを、金融機関がしているわけではありません。

実務としては、「ガイドラインに基づいて検討していただけますか」と切り出せることに意味があります。話の土俵が変わります。

この章の要点

強制力はありませんが、監督指針に取り込まれています。交渉の土俵として使えます。

保証を外すための3つの要件

ガイドラインは、次の3つを満たす場合に、保証を求めない可能性を検討するとしています。

要件 中身 難易度
1. 法人と経営者の関係の明確な区分・分離 資産・経理を分ける。役員報酬や貸付が適切な範囲にある 自分で変えられる
2. 財務基盤の強化 返済能力がある。内部留保が十分 時間がかかる
3. 財務状況の正確な把握と適時適切な情報開示 経営の透明性。継続的に情報を出している 自分で変えられる
1と3は、今日から取りかかれる

2の財務基盤は、数字の積み上げなので時間がかかります。しかし1と3は、経営者の判断ひとつで変えられます。そして実務では、この2つができていないことが理由で断られる例が多くあります。

3つすべてを完璧に満たす必要があるかというと、そうではありません。総合的に判断されます。ただし、1の区分・分離ができていない状態では、他がどれだけ良くても話が進みません。

この章の要点

3要件のうち1と3は今日から変えられます。1ができていないと、話が始まりません。

要件1|法人と個人を、実際に分ける

もっとも具体的で、もっとも見られるのがここです。

見られる点 問題になる状態 あるべき状態
役員貸付金 会社から代表者への貸付がある ゼロ。あるなら返済計画がある
役員報酬 社会通念上、著しく高い/低い 職務内容に見合った水準
事業用資産の所有 事業に使う不動産が代表者個人の名義 法人所有。または適正な賃料で賃貸借契約
経費 個人的な支出が会社の経費に混ざっている 明確に分かれている
取引 代表者個人や親族の会社との取引が不明瞭 条件が明示され、合理的
口座 会社の口座と個人の口座が混用されている 完全に分離

最初に指摘されるのが役員貸付金です。金額が小さくても、「会社の資金を個人が使っている」という事実が残ります。これがあると、他の要件がどれだけ整っていても、保証の解除は難しくなります。

事業用資産の名義も重要です。代表者個人が持つ不動産を会社が使っている場合、賃貸借契約を締結し、適正な賃料を支払う形にしてください。無償で使っている状態は、区分ができていない典型例です。

これらは決算書と勘定科目内訳明細書に表れます。銀行がどこを見ているかは 銀行は決算書のどこを見るか の記事で扱っています。

この章の要点

まず役員貸付金をゼロに。ここが残っていると、他が整っていても進みません。

要件2|財務基盤を強くする

時間がかかる部分です。見られるのは、会社の資産や収益力で、借入を返済できる状態にあるかです。

見られる点 目安
純資産 債務超過でないこと。実質ベースで判断される
収益力 継続的に黒字であること
内部留保 利益の蓄積があること
債務償還年数 実務では10年以内がひとつの目安
資産の内容 換価可能な資産があるか

ここで言う「返済できる状態」は、個人の保証がなくても回収の見込みが立つという意味です。保証は、会社の信用が足りない部分を個人が補う仕組みですから、会社の信用だけで足りるようになれば、保証は不要になります。

したがって、この要件を満たす道は2つです。収益を積み上げて純資産を厚くするか、担保などの保全で代替するか。後者については、後の章で触れます。

この章の要点

要件2の本質は会社の信用だけで足りるか。保証は信用の不足を埋める仕組みです。

要件3|情報を開示し続ける

ここも、今日から取りかかれる要件です。

やること 頻度
月次試算表の提出 毎月
資金繰り表の提出 毎月
決算書の速やかな提出 確定後すぐ
業況の変化の報告 随時。悪い情報を先に
求められた資料への対応 速やかに

ガイドラインが求めているのは、「経営の透明性」です。求められたら出す、という受け身の姿勢ではなく、継続的に、こちらから出している状態が必要です。

この要件は、実は要件1とつながっています。法人と個人を分けていなければ、開示できる状態にならないからです。役員貸付金や個人的な経費が混ざった決算書を、堂々と毎月出すことはできません。

具体的な進め方は 試算表を毎月出す意味 の記事で扱っています。

この章の要点

求められて出すのではなく、こちらから継続的に出している状態が要件です。

2023年に変わったこと|説明が義務になった

2022年12月に経営者保証改革プログラムが公表され、監督指針が改正されました。2023年4月から、金融機関には次の対応が求められています。

求められている対応 中身
個別具体的な説明 保証を求める場合、どの部分が要件を満たしていないのかを説明する
改善の道筋の説明 どのような改善を図れば、保証の解除の可能性が高まるかを説明する
記録 説明した内容を記録し、件数を当局に報告する
「なんとなく保証を取る」ができなくなった

以前は、保証を取る理由が明示されないまま契約に至ることがありました。現在は、金融機関が理由を説明し、記録することを求められています。借り手の側から見れば、説明を求める根拠ができたということです。

なお、制度は改定されます。最新の運用については、金融庁の公表資料と、取引金融機関に確認してください。

この章の要点

2023年4月から金融機関に説明が求められています。聞く根拠があります。

「どこが足りないか」を聞く

前章を踏まえると、実務でやるべきことがはっきりします。「なぜ保証が必要なのですか」ではなく、「3要件のうち、どこが足りていませんか」と聞くことです。

聞き方 返ってくるもの
「保証を外してほしい」 「難しいです」で終わりやすい
「なぜ保証が必要ですか」 一般的な説明になりやすい
「ガイドラインの3要件のうち、当社はどこが足りていませんか」 具体的な項目が返る
「何を改善すれば、解除の可能性が高まりますか」 次にやることが決まる

この聞き方をすると、解除を1回の交渉で決めるのではなく、数年かけて条件を整える計画に変わります。1回断られて終わりにするより、はるかに前に進みます。

そして、返ってきた答えは記録しておいてください。次の交渉のときに、「前回ご指摘の点は、こう改善しました」と言えることが効きます。

この章の要点

聞くべきは「どの要件が足りないか」。答えを記録し、次の交渉で使ってください。

新規と既存で、難易度が違う

場面 難易度 理由
新規の借入で保証を付けない 相対的に通りやすい その融資の条件として検討される
借換のときに外す 中 新しい契約として条件を見直せる
既存の借入から保証だけ外す 難しい 金融機関に、外す理由がない

ここは実務上、非常に重要です。すでに実行されている融資から保証だけを外してもらうのは、金融機関にとって一方的に保全が薄くなる話です。応じる理由がありません。

したがって、狙うべきタイミングは新規の融資と、借換のときです。新しい契約を結ぶ場面であれば、条件の一部として交渉できます。

借換のタイミングを、意図的に作る

複数の借入をまとめて借り換える、期日が来たものを新しい条件で組み直す——こうした場面を、保証を外す交渉の機会として使ってください。借換保証については 借換保証 の記事で扱っています。

この章の要点

狙うのは新規と借換。既存から保証だけ外すのは、ほぼ通りません。

事業承継のときの特則

事業承継の場面については、ガイドラインの特則が2019年12月に公表され、2020年4月から適用されています。

原則 中身
二重には取らない 前経営者と後継者の双方から保証を取ることは、原則として行わない
前経営者の保証 承継後、解除を適切に検討する
後継者への保証 承継の阻害要因とならないよう、慎重に判断する

実務でよく起きるのが、承継したのに前経営者の保証が残ったままという状態です。役員を退任しても、保証は自動では外れません。承継の手続きの中に、保証の解除を明示的に組み込んでください。

後継者の側から見れば、「保証を求められるなら継がない」という判断があり得ます。それが承継を妨げてきたことへの対応が、この特則です。承継の交渉では、この特則を前提に話してかまいません。

この章の要点

承継では二重には取らないのが原則。前経営者の保証解除を、手続きに組み込んでください。

すでに保証している債務を整理する場合

事業が立ち行かなくなり、保証債務を整理する場面についても、ガイドラインは定めを置いています。

項目 内容
手続き 法的整理ではなく、私的整理として進める枠組み
残せる資産 破産手続で認められる自由財産を超える資産を、残せる可能性がある
自宅 一定の要件のもとで、住み続けられる可能性がある
信用情報 手続きによっては、事故情報として登録されない扱いがある
前提 早期に申し出ること。財産の隠匿などがないこと
早く動くほど、使える選択肢が多い

この枠組みは、資産が残っているうちに申し出ることが前提です。限界まで持ちこたえてから相談しても、残せるものがありません。使えるかどうかは、タイミングでほぼ決まります。

要件や手続きは複雑で、専門家の関与が必要です。該当しそうな状況にあるなら、弁護士や、中小企業活性化協議会などの公的な相談窓口に、早い段階で相談してください。

この章の要点

整理の枠組みは早期の申し出が前提。限界まで待つと使えません。

保証を外す代わりに、何かを求められることがある

保証は、会社の信用の不足を埋める仕組みです。したがって、外すときには代わりの手当てを求められることがあります。

求められること 内容 判断
金利の上乗せ 保証がない分、リスクを金利に反映する 金額を計算して比べる
担保の提供 不動産などで保全する 慎重に。完済まで外れない
財務制限条項 純資産や利益の水準を維持する約束 達成できる水準か確認する
報告義務の強化 四半期ごとの報告など 負担は小さい。受けてよい
期間の短縮 長期ではなく短期にする 借換の手間が増える

財務制限条項には注意してください。「純資産を◯◯万円以上に維持する」といった約束を入れると、それを下回った時点で、期限の利益を失う(一括返済を求められうる)ことになります。水準が達成可能かを必ず確認してください。

報告義務の強化は、受けてよい条件です。どのみち要件3で求められていることですから、追加の負担はほとんどありません。

この章の要点

代替を求められます。報告義務なら受ける、財務制限条項は水準を確認してください。

スタートアップの場合

赤字が前提のスタートアップでは、要件2(財務基盤)を満たすのが構造的に困難です。ただし、別の道があります。

選択肢 内容
創業向けの保証制度 経営者保証を不要とする制度が用意されている
純資産で説明する 調達により資本が厚く、純資産がプラスであることを示す
要件1と3を完璧にする 財務で足りない分を、区分と透明性で補う
公庫の制度を使う 保証人を不要とする取り扱いがある制度を確認する

いちばん現実的なのが1番目です。創業期には、経営者保証を不要とする保証制度が用意されています。詳しくは スタートアップ創出促進保証 の記事で扱っています。

3番目も軽視できません。要件1と3は、赤字であっても完璧にできます。財務で不利な分、ここで差をつけておくことが、後の交渉の土台になります。

この章の要点

財務で不利な分、創業向け制度を使い、要件1と3を完璧にしておいてください。

進め方の順序

1区分を整える
2足りない点を聞く
3新規・借換で交渉
順 やること 期間の目安
1 役員貸付金・個人的な経費・口座の混用をなくす 決算期まで
2 事業用資産の名義と賃貸借契約を整える 数か月
3 月次の試算表・資金繰り表の提出を始める すぐ
4 担当者に「3要件のうち、どこが足りないか」を聞く —
5 回答を記録し、改善の計画を作る —
6 改善を実行し、次の決算に反映させる 1期
7 新規融資または借換の機会に、解除を申し入れる —
8 代替条件が出たら、金額と影響を計算して判断する —

1回で決まる話ではありません。数年かけて条件を整え、機会を待つ取り組みです。ただし1番と3番は今日から始められますし、それが前提条件になります。

この章の要点

数年がかりです。1番と3番は今日から始めてください。

チェックリスト

経営者保証の解除を目指すときに

  • 現在の借入のうち、経営者保証が付いているものを一覧にした
  • 役員貸付金がゼロである(あるなら返済計画がある)
  • 会社の口座と個人の口座が完全に分離している
  • 個人的な支出が、会社の経費に混ざっていない
  • 事業用資産が代表者名義の場合、賃貸借契約と適正な賃料がある
  • 役員報酬が、職務内容に見合った水準である
  • 親族の会社との取引条件が明確である
  • 実質ベースで債務超過でない
  • 月次の試算表・資金繰り表を継続的に提出している
  • 決算書を確定後すみやかに提出している
  • 担当者に「3要件のうちどこが足りないか」を聞いた
  • その回答を記録した
  • 次の新規融資・借換の予定を把握している
  • 代替条件(金利上乗せ・担保・財務制限条項)の影響を試算した
  • 役員を退任した人の保証が、残っていないか確認した
この章の要点

2番の役員貸付金ゼロが最初の関門。ここが残っていると先に進めません。

よくある質問

Q. 3要件を満たせば、必ず保証が外れますか
外れません。ガイドラインに法的拘束力はなく、判断は金融機関が行います。ただし監督指針に取り込まれており、要件を満たしていれば検討してもらえる根拠になります。
Q. 既存の借入から、保証だけ外せますか
難しいのが実情です。金融機関にとって一方的に保全が薄くなるため、応じる理由がありません。新規の融資や借換のタイミングを狙ってください。
Q. 役員貸付金が少額でも問題になりますか
金額の大小より、法人と個人が分離できていないという事実が問題になります。要件1に直接抵触するため、優先して解消してください。
Q. 会社を辞めれば、保証は外れますか
自動では外れません。解除の手続きが必要です。事業承継の場面では、前経営者の保証解除を適切に検討するという特則がありますが、放置すれば残り続けます。
Q. 保証を外す代わりに金利が上がると言われました
金額を計算して比べてください。金利の上乗せ分は年間いくらか、それに対して保証を外すことの価値をどう評価するか、という判断になります。報告義務の強化で済むなら、そちらのほうが有利です。
Q. 担保を入れれば保証は外れますか
外れる可能性はありますが、慎重に判断してください。一度入れた担保は完済まで外れず、他の調達の余地を狭めます。保証と担保のどちらが重いかを比べてください。
Q. 財務制限条項を入れると言われました
水準が達成可能かを必ず確認してください。下回った時点で期限の利益を失い、一括返済を求められうる条項です。過去3期の実績と照らして、余裕があるかを見てください。
Q. 赤字が続いていても、交渉する意味はありますか
あります。要件1と3は赤字でも完璧にできます。今すぐ外れなくても、「どこが足りないか」を聞いて記録しておけば、財務が改善したときに一気に進められます。
Q. 保証協会付きの融資でも、保証人は必要ですか
保証協会の保証と、経営者の連帯保証は別の話です。ただし創業向けの制度など、経営者保証を不要とする保証制度が用意されています。該当する制度がないか確認してください。
Q. 説明を求めても、具体的な回答が得られません
2023年4月から、保証を求める場合の個別具体的な説明が金融機関に求められています。「ガイドラインの3要件のうち、どこが足りていませんか」という形で、要件に沿って聞いてみてください。
Q. 保証債務を整理することになったら、自宅は必ず失いますか
ガイドラインの枠組みでは、一定の要件のもとで住み続けられる可能性があります。ただし早期に申し出ることが前提です。限界まで持ちこたえてからでは使えません。弁護士や公的な相談窓口に早めに相談してください。
Q. 共同代表の場合、両方が保証人になりますか
金融機関の判断によります。ガイドラインでは、必要最小限の範囲とすることが求められています。全員が必要なのかを確認してください。
出典

  • 経営者保証に関するガイドライン、同ガイドラインの特則(事業承継時)— 日本商工会議所/全国銀行協会
  • 経営者保証改革プログラム、中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針 — 金融庁
  • 経営者保証、中小企業活性化協議会 — 中小企業庁