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仕入れ資金による調達T/T前払い・L/C・D/P・D/A・輸入ユーザンス。決済方法によって、代金を払う日が船積の30日前から127日後まで動きます。通関時に必要な関税・輸入消費税とあわせて計算します。

輸入の資金負担を決めるのは、仕入額そのものではありません。代金をいつ払い、販売代金をいつ回収するか。その差が資金繰りを決めます。
前払送金なら船積の前に全額を払い、回収まで約4か月かかります。同じ取引をD/A(期限付き)にできれば、支払いと回収がほぼ同時になります。
決めるのは金額ではなく、支払いと回収の時間差です。
| 方法 | いつ払うか | 自社の負担 | 相手の安心 |
|---|---|---|---|
| T/T前払い | 船積の前 | 最も重い | 最も高い |
| L/C(一覧払い) | 書類到着時 | 重い | 高い |
| D/P | 書類の引き取り時 | 中 | 中 |
| D/A(期限付き) | 引受から30〜120日後 | 軽い | 低い |
| T/T後払い | 船積・到着後の約定日 | 軽い | 最も低い |
| ネッティング | 相殺後の差額のみ | — | — |
この表は上から下へ、自社の資金負担が軽くなると同時に、相手の回収リスクが上がります。だから決済方法は、交渉で決まります。
資金負担と相手のリスクは常にトレードオフです。
10万ドル(1ドル150円で1,500万円)を輸入し、国内で販売する場合の時間軸です。船積の日を0日とします。
| タイミング | 何日目 | 起きること |
|---|---|---|
| 発注 | −60日 | 相手が生産を始める |
| 船積 | 0日 | 貨物が出港する |
| 入港 | +30日 | 日本に到着 |
| 通関・引き取り | +37日 | 関税・輸入消費税を払う |
| 販売 | +67日 | 国内の取引先へ納品 |
| 販売代金の回収 | +97日 | 月末締め翌月末払い |
船積から回収まで97日。この間のどこで代金を払うかが、資金拘束の長さを決めます。
船積から回収まで97日。どこで払うかが問題です。
| 項目 | T/T前払い | T/T後払い |
|---|---|---|
| 支払いの時期 | 船積の前 | 船積・到着後の約定日 |
| 自社のリスク | 払ったのに届かない | 小さい |
| 相手のリスク | ない | 回収できない |
| 手続き | 簡単 | 簡単 |
| 手数料 | 安い | 安い |
| 取引の実績 | なくても使える | 実績が必要 |
T/T前払いでは、代金を払っても貨物が届かない、仕様と違うものが届く、というリスクを自社が全部負います。資金の話だけでなく、この点も評価してください。
手続きが簡単で手数料も安いため、小額の取引や信頼関係のある相手では実務上よく使われます。ただし金額が大きくなるほど、前払いのリスクは無視できなくなります。
T/T前払いは資金と貨物の両方のリスクを自社が負います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 仕組み | 自社の銀行が、条件を満たせば支払うと確約する |
| 相手の安心 | 銀行の信用で回収できる |
| 自社の利点 | 書類の条件を満たさなければ支払われない |
| 前提 | 銀行が自社に与信枠を出すこと |
| 費用 | 開設手数料・通知手数料など |
| 注意 | 書類の不備で支払われないことがある |
銀行が見るのは書類であって、貨物ではありません。書類が条件どおりなら支払われ、条件と違えば支払われません。逆に、書類が揃っていれば中身が違っても支払われることがあります。
L/Cの開設には銀行の与信が必要です。創業間もない会社では、預金を担保に入れるなどの条件が付くことがあります。その場合、実質的には前払いと変わらない資金拘束になります。
取引先への信用の担保としてのL/Cは EMSの前払い要求に対して出せる代替案 の記事でも扱っています。
L/Cは銀行の与信が前提。担保が要ると前払いと同じになります。
| 項目 | D/P | D/A |
|---|---|---|
| 書類を受け取る条件 | 代金を払う | 手形を引き受ける |
| 実際に払う時期 | 書類の引き取り時 | 引受から30〜120日後 |
| 自社の資金負担 | 中 | 軽い |
| 相手のリスク | 小さい | 大きい |
| 銀行の保証 | なし | なし |
D/P・D/Aでは、銀行は書類の取り次ぎをするだけです。自社が払わなければ、相手は貨物を受け取れないまま損失を負います。だから相手にとっては、L/Cより不利な条件です。
D/Aは、輸入側にとって最も有利な決済方法のひとつです。手形を引き受けるだけで貨物を引き取れ、支払いは期日まで待てます。ただし相手の同意が要り、実績のない取引では通りません。
D/Aは輸入側に有利。ただし相手の同意が前提です。
先の時間軸(船積0日、回収97日)に、決済方法を当てはめます。
| 決済方法 | 支払いの日 | 回収までの拘束 |
|---|---|---|
| T/T前払い | −30日 | 127日 |
| L/C(一覧払い) | +30日 | 67日 |
| D/P | +37日 | 60日 |
| D/A(60日) | +97日 | 0日 |
| 輸入ユーザンス(90日) | +127日 | −30日 |
ユーザンス90日なら、販売代金を回収した30日後に輸入代金を払うことになります。この状態なら、輸入のために資金を用意する必要がなくなります。
1,500万円を127日拘束するのと、0日で済ませるのとでは、必要な運転資金がまったく違います。年3%で借りるなら、127日分で約15.7万円ですが、問題は金利より「1,500万円を用意できるか」です。
拘束127日と0日の差。用意すべき資金の額が変わります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 仕組み | 銀行が輸入代金を先に払い、自社は期日に銀行へ返す |
| 期間 | 90日・120日・180日など |
| 相手への支払い | 期日どおり(相手は待たされない) |
| 自社の支払い | 期日まで猶予される |
| 費用 | 期間に応じた金利 |
| 前提 | 銀行の与信枠 |
ユーザンスでは、相手は約定どおりに代金を受け取ります。猶予をもらうのは銀行からであって、取引先からではありません。だから取引条件の交渉を必要としません。
種類としては、外貨のまま借りる「外貨建て(アクセプタンス)」と、円に換えて借りる「本邦ローン(円建て)」があります。外貨建てのままにすると、期日に円安になっていれば返済額が増えます。為替の見方とあわせて選んでください。
ユーザンスは取引条件の交渉が要らないのが最大の利点です。
1,500万円を、期間と金利を変えて借りた場合です。
| 期間 | 年率 | 費用 |
|---|---|---|
| 90日 | 2.0% | 約73,900円 |
| 120日 | 2.0% | 約98,600円 |
| 90日 | 3.0% | 約110,900円 |
1,500万円の仕入れに対して約7.4万円。仕入額の0.49%です。粗利率が30%あるなら、その1.6%程度にあたります。前払いのために資金を調達する手間と比べて、判断してください。
この費用は、他の調達手段と同じ年率のものさしで比べられます。ファクタリングや短期の融資と並べて、最も安い手段を選んでください。
比較の方法は 調達手段のコストを同じものさしで比べる の記事で扱っています。
90日2%で仕入額の0.49%。年率で他の手段と比べてください。
決済方法を工夫しても、関税と輸入消費税は通関のときに現金で払う必要があります。ここを忘れると、通関の日に資金が足りなくなります。
| 項目 | いつ払うか | 戻るか |
|---|---|---|
| 関税 | 通関時 | 戻らない(原価になる) |
| 輸入消費税 | 通関時 | 仕入税額控除で戻る |
| 通関業者の手数料 | 通関後の請求 | 戻らない |
| 国内の運賃・保管料 | その都度 | 戻らない |
輸入消費税は仕入税額控除の対象になりますが、実際に反映されるのは次の申告のときです。それまでは現金が出たままになります。
支払いを猶予する制度として納期限の延長制度があります。担保を提供することで、関税・輸入消費税の納期限を延長できます。取扱いの詳細は税関に確認してください。
関税と輸入消費税は通関時に現金。延長制度は税関に確認を。
CIF価格1,500万円、関税率4.8%とした場合です。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| CIF価格 | 10万ドル×150円 | 1,500万円 |
| 関税 | 1,500万円×4.8% | 72万円 |
| 輸入消費税 | (1,500万+72万)×10% | 157.2万円 |
| 通関時に必要な現金 | 72万+157.2万 | 229.2万円 |
輸入消費税の課税標準は、CIF価格に関税を足した金額です。CIF価格だけで計算すると、7.2万円分を見落とします。
実際の関税率は品目によって大きく異なり、無税のものもあれば高率のものもあります。経済連携協定(EPA)の特恵税率が使える場合は、原産地証明を取れば税率が下がります。輸入を始める前に、自社の品目の税率を税関または通関業者に確認してください。
消費税はCIF+関税に課されます。EPAの特恵税率も確認を。
| 決済時のレート | 10万ドルの円貨 | 150円との差 |
|---|---|---|
| 140円/ドル | 1,400万円 | −100万円 |
| 150円/ドル | 1,500万円 | 0円 |
| 160円/ドル | 1,600万円 | +100万円 |
1,500万円の輸入で、レートが10円動けば原価が100万円変わります。粗利が450万円(30%)なら、その22%が為替だけで消えます。
| 対応 | 内容 | 注意 |
|---|---|---|
| 為替予約 | 決済日のレートを先に固定する | 銀行の与信が要る |
| 外貨預金で持つ | 売上も外貨なら相殺できる | — |
| 円建てで契約する | 為替リスクを相手に移す | 単価に織り込まれる |
| 価格に反映する | 販売価格を為替連動にする | 取引先の同意が要る |
為替予約は、利益を出すためではなく、原価を確定させるために使うものです。予約したレートより有利に動いても、それは「損」ではありません。
10円の変動で原価が100万円。予約は原価の確定のために使います。
| 自社の状況 | 通りやすい決済方法 |
|---|---|
| 初回・実績なし | T/T前払い |
| 小口・少額 | T/T前払い(手続きが簡単) |
| 銀行の与信がある | L/C・輸入ユーザンス |
| 取引実績が数回ある | 一部前払い・残り後払い |
| 継続取引・相手にとって重要な顧客 | D/A・T/T後払い |
| 相手が日本市場を開拓したい | 条件が通りやすい |
最後の行が見落とされがちです。相手が日本市場に入りたいと考えているなら、条件の交渉余地は大きくなります。自社の信用だけでなく、相手にとっての取引の価値も材料になります。
自社の信用だけでなく、相手にとっての取引の価値も材料です。
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 初回は小さい金額で、T/T前払いで実行する |
| 2 | 期日どおりに払い、取引を完了させる |
| 3 | 2〜3回目で「30%前払い・70%船積後」を相談する |
| 4 | 並行して、銀行にL/C・ユーザンスの枠を打診する |
| 5 | 実績が積み上がったらD/A・T/T後払いを相談する |
4番は早めに動いてください。輸入の実績がない段階では、銀行も与信枠を出しにくくなります。数回の実績を作ってから相談するほうが通ります。
この順序は、国内の仕入先との条件交渉と同じ構造です。仕入先との支払条件交渉 の記事もあわせて確認してください。
銀行の与信枠は実績を作ってから。並行して早めに打診を。
見積書に書かれた単価が同じでも、どの条件(インコタームズ)かによって、自社が別途負担する費用は大きく変わります。
| 条件 | 相手が負担する範囲 | 自社が別途負担する主なもの |
|---|---|---|
| EXW(工場渡し) | 工場で引き渡すまで | 輸出通関・海上運賃・保険・輸入通関 |
| FOB(本船渡し) | 船に積むまで | 海上運賃・保険・輸入通関 |
| CIF(運賃保険料込み) | 運賃・保険を含む | 輸入通関・関税・国内運賃 |
| DDP(関税込み持込渡し) | 関税まで含む | 国内の運賃程度 |
EXWの見積もりとCIFの見積もりを単価だけで比べると、運賃と保険の分だけEXWが安く見えます。比べるときは、日本の倉庫に入るまでの総額に揃えてください。
資金繰りの観点では、自社が負担する範囲が広いほど、支払いの相手先も時期もバラバラになります。海上運賃はフォワーダーに、関税は税関に、国内運賃は運送会社に——と、それぞれ別のタイミングで現金が出ます。
また、関税の課税価格はCIF価格が基礎になります。FOB条件で買った場合でも、運賃と保険料を加えた額で課税されるため、関税の計算では運賃を含めて考えてください。
見積もりは倉庫に入るまでの総額で比べてください。
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 船積から販売代金の回収までの日数を書き出す |
| 2 | 通関時に必要な関税・輸入消費税を計算する |
| 3 | 各決済方法で、支払いが何日目になるか置く |
| 4 | 支払いから回収までの拘束日数を出す |
| 5 | その金額を資金繰り表で出せるか確認する |
| 6 | 足りなければユーザンス・融資の費用を年率で比べる |
| 7 | 為替が10円動いた場合の原価も試算する |
決済方法をD/Aにして「支払いは3か月後」と安心していても、通関の日には229.2万円の現金が必要です。この資金を別に用意しておかないと、貨物を引き取れません。
決済を後ろにしても、通関時の現金は必ず要ります。
5番と7番は、輸入を始める前に必ず確認してください。
この記事は仕入れ資金による調達の一部です。手段そのものを比べたい場合は、あわせてご覧ください。