
売掛金の資金化をやめようとして、いきなり止めると資金が回らなくなります。必要なのは、使う額と回数を段階的に減らしていく計画です。
月1,000万円・手数料8%・年12回なら、年間の手数料は960万円です。これを月500万円に減らすだけで、年480万円が残ります。
ゼロを目指さない。半分でも効果は大きいです。
| 原因 | 本質 | 解決の方向 |
|---|---|---|
| 入金と支払いの時差 | タイミングの問題 | 順序立てて減らせる |
| 成長による運転資金の増加 | タイミングの問題 | 減らせる |
| 季節変動 | タイミングの問題 | 枠で対応 |
| 売上が固定費に足りない | 損益の問題 | 資金調達では解決しない |
| 過去の借入の返済 | 損益・財務の問題 | 返済条件の見直し |
時差の問題なら、工夫で減らせます。しかし赤字を埋めるために使っているなら、手数料を払いながら赤字が膨らんでいるだけです。
どちらなのかは、営業損益が黒字かどうかで判別できます。黒字なのに資金が足りないなら時差の問題、赤字なら損益の問題です。
時差の把握は 仕入れと売上の時差表テンプレート で行えます。
営業損益が黒字かで、問題の種類が分かれます。
| 順 | やること | 費用 |
|---|---|---|
| 1 | 入金を早める | なし |
| 2 | 支払いを遅らせる | なし(制約あり) |
| 3 | 在庫を減らす | なし |
| 4 | 前受け・着手金を導入する | なし |
| 5 | 安い枠を作る | 低い |
| 6 | それでも足りない分だけ資金化する | 高い |
1〜4は費用がかかりません。これらをやり切ってから、5と6を検討します。多くの会社は、この順序を飛ばして6から始めています。
費用のかからない1〜4から手をつけてください。
| 状態 | 資金化を続けると |
|---|---|
| 営業赤字 | 手数料の分だけ、赤字が拡大する |
| 毎月使う額が増えている | いずれ枠を使い切る |
| 将来の売掛金を先取りしている | 翌月の資金がさらに減る |
| 複数社を使い始めた | 各社の枠を使い切りつつある |
今月1,000万円を先取りすれば、来月に入るはずだった1,000万円は入りません。だから来月も同じ額を資金化することになります。この構造を止めない限り、依存は続きます。
赤字が原因なら、まず損益を改善してください。売上を増やす、原価を下げる、固定費を減らす。それ以外に出口はありません。
赤字なら、損益の改善以外に出口はありません。
月1,000万円を、手数料8%で年12回資金化している場合です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 1回の資金化額 | 1,000万円 |
| 手数料(8%) | 80万円 |
| 年間の回数 | 12回 |
| 年間の手数料 | 960万円 |
年960万円は、社員1〜2人分の人件費に相当する金額です。この視点で見ると、減らすための取り組みに時間を使う価値が分かります。
年960万円は社員1〜2人分。取り組む価値があります。
| やること | 効果 |
|---|---|
| 支払サイトの短縮を交渉する | 60日→30日で1か月分 |
| 請求のタイミングを早める | 締め日の翌日に出す |
| 検収を早めてもらう | 検収待ちで請求が遅れていないか |
| 分割請求にする | 完了を待たずに請求 |
| 入金遅延を放置しない | 期日管理を徹底する |
| 早期入金の割引を提示する | 割引率を年率で検証する |
交渉が要らないのに見落とされがちです。締め日から請求書の発行までに1週間かかっていれば、その分だけ入金が遅れています。
交渉の進め方は 請求書の発行タイミングを1日早める効果 の記事で扱っています。全社は難しくても、1社でも短縮できれば効果があります。
請求を早く出すだけで、入金は早まります。
| やること | 注意 |
|---|---|
| 仕入先との支払条件を交渉する | 下請法の制限を確認 |
| 支払日を月末に揃える | — |
| 前払いをなくす | 実績を作ってから |
| 商社・代理店の掛けを使う | 口銭がかかる |
| 取引先の資金繰りを圧迫しない | 止められると損失が大きい |
支払いを遅らせるのは、相手の資金繰りを自社に付け替えることです。相手が止まれば、納期も品質も自社に返ってきます。
下請法が適用される取引では、支払期日は受領日から60日以内と定められています。適用の有無は公正取引委員会の資料で確認してください。
詳しくは 仕入先への支払いを遅らせると、何と引き換えになるか の記事で扱っています。
押し付けない。下請法の制限も確認してください。
| やること | 効果 |
|---|---|
| 発注ロットを小さくする | 1回の支払いが下がる |
| 発注点を決めて機械的に回す | 過剰在庫を防ぐ |
| 滞留在庫を処分する | 一度だけ現金が入る |
| 受注生産に寄せる | 在庫そのものをなくす |
| 商社に在庫を持ってもらう | 口銭がかかる |
売れない在庫を処分すれば現金は入りますが、それは一度だけです。構造を変えなければ、また積み上がります。
在庫と現金の関係は 在庫回転日数が1日延びると、現金はいくら減るか の記事で、テンプレートとあわせて扱っています。
処分は一度きり。構造を変えてください。
| 形 | 向いている事業 |
|---|---|
| 着手金 | 受託開発・制作・工事 |
| 前受金 | 予約販売・イベント |
| 年払いの割引 | サブスクリプション |
| 保証金・預り金 | レンタル・リース |
| 分割請求(工程ごと) | 長期の案件 |
着手金をもらえば、外注費や仕入れを立て替えずに済みます。資金化の必要そのものが減ります。
年払いの割引は、割引率を年率に換算して検証してください。10%引きの年払いは、資金調達として見ると年率約20.5%に相当します。資金化の年率と比べて判断します。
前受金の位置づけは 前受金と売掛金では、資金繰り上の意味が違う の記事で扱っています。
着手金は、資金化の必要そのものを減らします。
| 手段 | 特徴 |
|---|---|
| 当座貸越 | 使った分だけ利息。枠の維持は無料が多い |
| コミットメントライン | 枠の保証があるが手数料がかかる |
| 短期の運転資金融資 | 期間が決まっている |
| 売掛金を担保にした融資 | 買取より低いことが多い |
| 制度融資・保証協会 | 時間はかかる |
逼迫してから申し込んでも通りません。資金化で回っているうちに、並行して枠の相談を進めてください。
ただし、資金化の実績があると融資の審査に影響することがあります。なぜ必要で、いつまでに減らす計画かを説明できる資料を用意してください。
枠の種類は コミットメントラインと当座貸越枠の使い分け の記事で扱っています。
枠は足りているうちに作ってください。
月1,000万円を資金化している会社が、順に手を打った場合です。
| 順 | やったこと | 減る額 | 残る必要額 |
|---|---|---|---|
| — | 現状 | — | 1,000万円 |
| 1 | 一部の取引先の入金サイトを短縮 | ▲300万円 | 700万円 |
| 2 | 支払サイトを30日→45日に | ▲200万円 | 500万円 |
| 3 | 在庫回転日数を10日短縮 | ▲150万円 | 350万円 |
| 4 | 前受け・着手金を導入 | ▲150万円 | 200万円 |
| 5 | 当座貸越の枠を作る | ▲200万円 | 0円 |
1と2だけで、必要額は1,000万円から500万円に減ります。年間の手数料は960万円から480万円になり、480万円が残ります。
各施策の効果は、事業の構造によって大きく変わります。ここに挙げた金額は、考え方を示すための例です。自社の数字で計算してください。
1と2だけでも年480万円が残ります。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 費用が安い順になっている | 1〜4は費用ゼロ |
| 効果が構造的 | 一度変えれば毎月続く |
| 5を先にやると、依存が別の形で残る | 借入に置き換わるだけ |
| 5の審査に、1〜4の成果が効く | 資金繰りが改善していれば通りやすい |
いきなり融資を申し込むより、先に入金・支払い・在庫を改善してから相談するほうが通ります。改善の実績そのものが、説明材料になります。
1〜4の成果が、5の審査を通しやすくします。
| やってはいけないこと | 何が起きるか |
|---|---|
| 急に止める | 翌月の資金が回らない |
| 税金・社会保険料の納付を遅らせる | 融資が受けられなくなる |
| 給与の支払いを遅らせる | 人が辞める・法令違反 |
| 仕入先への支払いを一方的に遅らせる | 取引が止まる |
| より高い手段に乗り換える | 状況が悪化する |
| 3社目・4社目を増やす | 依存が深まる |
納付が遅れると、融資も保証協会も使えなくなります。資金化の依存から抜け出す道そのものが閉じます。優先順位を間違えないでください。
2社目・3社目の影響は 2社目を使い始めたときに起きること の記事で扱っています。
税金・社会保険料を遅らせると、出口が閉じます。
| 起きること | 対応 |
|---|---|
| 一時的に資金が苦しくなる | 減らす幅を小さくする |
| 取引先との交渉に時間がかかる | 1社ずつ進める |
| 在庫を減らすと品切れが増える | 発注点を見直す |
| 着手金を求めると失注する | 条件を段階的に |
| 枠の審査に落ちる | 理由を聞いて改善する |
| 1社目に「使わなくなった」と気づかれる | 問題ない(説明できる) |
月1,000万円をいきなり500万円にすると、その月の資金が回らなくなることがあります。月100万円ずつ減らすなど、段階的に進めてください。
減らすのは段階的に。一気に半減させないでください。
| 期間 | 目標の例 |
|---|---|
| 1〜3か月 | 請求を早く出す・検収の遅れをなくす |
| 3〜6か月 | 大口の取引先1社と入金サイトを交渉 |
| 6〜12か月 | 在庫の回転日数を改善・着手金を導入 |
| 並行して | 当座貸越の枠を作る |
| 12か月後 | 資金化の額を半分にする |
ゼロは現実的ではありません。1年で半分にできれば、年間の手数料は480万円減ります。まずここを目標にしてください。
この計画は、金融機関への説明資料にもなります。「なぜ資金化しているか」「いつまでにどう減らすか」を示せれば、融資の審査での見られ方が変わります。
まずは1年で半減を目標にしてください。
「減らしている」という感覚ではなく、毎月同じ指標で測ってください。
| 指標 | 計算 | 見方 |
|---|---|---|
| 月の資金化額 | その月に資金化した合計 | 減っているか |
| 月の利用回数 | — | 減っているか |
| 売上に対する比率 | 資金化額 ÷ 月商 | 規模の変動を除ける |
| 手数料の月額 | — | — |
| 月末の現金残高 | — | 増えているか |
| 入金サイトの実績平均 | 入金日 − 締め日 | 短くなっているか |
| 在庫回転日数 | 平均在庫 ÷ 日次売上原価 | 短くなっているか |
売上が伸びていれば、資金化の金額も増えます。それは依存が深まったことを必ずしも意味しません。売上に対する比率で見れば、構造が改善しているかが分かります。
最後の2つが、改善が本物かどうかを示します。資金化の額が減っていても、入金サイトも在庫回転日数も変わっていないなら、単に一時的に資金に余裕があるだけです。
売上に対する比率で見てください。金額だけでは分かりません。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 繁忙期だけ資金が必要 | 枠で対応する(資金化より安い) |
| 閑散期に固定費だけ出ていく | 固定費の見直し |
| 年度末に入金が集中する | その前の3か月が谷になる |
| 賞与・納税の月 | あらかじめ積み立てる |
毎年同じ時期に同じ額が必要だと分かっているなら、当座貸越の枠を作っておけば、使った期間だけの利息で済みます。その都度資金化するより、はるかに安く済みます。
前年の実績を12か月分並べれば、いつ、いくら足りなくなるかが分かります。それを金融機関に示せば、枠の必要性も説明できます。
月ごとの過不足は 仕入れと売上の時差表テンプレート で出せます。
季節変動は枠で対応するのが、いちばん安くなります。
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 営業損益が黒字か赤字かを確認する |
| 2 | 赤字なら、損益の改善を先に行う |
| 3 | 黒字なら、時差表で谷の深さを出す |
| 4 | 入金・支払い・在庫の日数を実績で確認する |
| 5 | 費用のかからない施策から効果を試算する |
| 6 | 月ごとの削減目標を決める |
| 7 | 並行して当座貸越の枠を相談する |
| 8 | 毎月、実績と計画を比べる |
赤字なのに時差の改善だけをしても、資金化の額は減りません。まず損益を確認してください。
最初に営業損益を確認。ここで道が分かれます。
1番と15番。この2つを外すと、計画は成立しません。
この記事はファクタリングの一部です。手段そのものを比べたい場合は、あわせてご覧ください。