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仕入れ資金による調達必要な資金はいちばん多く払う月で決まります。発注点の決め方、まとめ買い3%引きの損得、品目ごとに発注月をずらすだけで1,200万円変わる構造を数字で示します。

年間で使う仕入れの総額が同じでも、必要な資金は「いちばん多く払う月にいくら要るか」で決まります。
| 発注の仕方 | 年間の仕入額 | いちばん多い月 | 必要な資金 |
|---|---|---|---|
| まとめて4回 | 2億1,600万円 | 5,400万円 | 大きい |
| 毎月 | 2億1,600万円 | 1,800万円 | 小さい |
同じ2億1,600万円を仕入れても、4回にまとめれば1回5,400万円、毎月なら1,800万円です。用意すべき資金は3倍違います。
必要な資金はいちばん多く払う月で決まります。山を平らにしてください。
「在庫がこの数量まで減ったら発注する」という基準です。発注してから届くまでの間に使う分と、不測の事態に備える分を足した水準にします。
| 要素 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 1日あたりの消費量 | 月間の使用量 ÷ 30 | 10個 |
| リードタイム | 発注から納品までの日数 | 14日 |
| リードタイム中の消費量 | 10個 × 14日 | 140個 |
| 安全在庫 | 変動への備え | 60個 |
| 発注点 | 140個 + 60個 | 200個 |
在庫が200個まで減ったら発注する。この基準を決めておけば、担当者が判断せずに発注できます。
発注点はリードタイム中の消費量+安全在庫。基準を決めれば判断が要りません。
月間の仕入が1,800万円の品目で、発注の頻度を変えた場合を見ます。
| 発注の頻度 | 1回の発注額 | 平均在庫 | 在庫回転日数 |
|---|---|---|---|
| 3か月に1回 | 5,400万円 | 2,700万円 | 45日 |
| 月1回 | 1,800万円 | 900万円 | 15日 |
| 月2回 | 900万円 | 450万円 | 約8日 |
平均在庫は「1回の発注量 ÷ 2」で概算できます(納品直後が最大、次の納品直前がゼロに近づくため)。発注の頻度を上げるほど、平均在庫は小さくなります。
3か月に1回を月2回にすれば、平均在庫が2,250万円減ります。その分の現金が手元に戻ります。単価が変わらないなら、これは純粋な改善です。
在庫と資金の関係は 在庫回転日数が1日延びると、現金はいくら減るか の記事で、テンプレートつきで扱っています。
平均在庫は1回の発注量 ÷ 2。頻度を上げるほど小さくなります。
| 順 | やること | データの出どころ |
|---|---|---|
| 1 | 品目ごとの、1日あたりの消費量を出す | 過去3〜6か月の出荷実績 |
| 2 | リードタイムを確認する | 仕入先に聞く。過去の実績 |
| 3 | リードタイム中の消費量を計算する | 1 × 2 |
| 4 | 安全在庫を決める | 後述 |
| 5 | 発注点 = 3 + 4 | — |
| 6 | 在庫がその水準になったら発注する | — |
仕入先が「14日」と言っていても、実際には20日かかっていることがあります。過去の発注日と納品日を突き合わせて、実績で確認してください。実績より短い日数で計算すると、欠品します。
全品目でやる必要はありません。金額の大きい上位の品目から始めてください。在庫金額の大半は、上位のいくつかで占められているのが通常です。
リードタイムは実績で確認する。金額の大きい品目から始めてください。
| 考え方 | 内容 |
|---|---|
| 需要の変動に備える | 月によって出荷が増減する幅 |
| 納期の遅れに備える | リードタイムが延びた場合 |
| 欠品したときの損失で決める | 失注の大きさ |
| 簡易な決め方 | リードタイム中の消費量の◯% |
統計的に安全在庫を求める方法もありますが、中小企業では「リードタイム中の消費量の30%」のような簡易な基準で十分なことが多くあります。決まっていないことのほうが問題です。
ただし、品目によって水準を変えてください。欠品が致命的な品目は厚めに、代替が効く品目は薄めに。一律にすると、どちらも最適になりません。
厳密さより決まっていること。品目によって水準を変えてください。
安全在庫を厚くすれば欠品は減りますが、資金が固定されます。どちらが得かを計算します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 安全在庫を60個から120個に増やす | — |
| 仕入単価 | 1万2,000円 |
| 増える在庫金額 | 72万円 |
| その資金を年利3%で借りた場合 | 年2万1,600円 |
一方、欠品による損失です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 1回の欠品で失う売上 | 50万円 |
| その粗利(率30%) | 15万円 |
| 年に1回起きるとすれば | 年15万円の損失 |
年に1回でも欠品を防げるなら、安全在庫を厚くしたほうが得です。ただしこれは、欠品が実際に起きる場合の話です。
この計算が成り立つのは、その品目が実際に売れている場合です。出荷がゼロの品目に安全在庫の議論はありません。品目別に切り分けてください。
売れている品目なら、欠品の損失のほうが大きいことが多くなります。
| 制約 | 内容 |
|---|---|
| 最低発注数量(MOQ) | これ未満では発注できない |
| 発注のたびにかかる費用 | 送料、事務の手間 |
| まとめ買いの割引 | 量が多いと単価が下がる |
| 保管のスペース | 倉庫の容量 |
| 賞味期限・劣化 | 持てる期間の上限 |
発注の頻度を上げれば在庫は減りますが、送料と事務の手間が増えます。1回の発注にかかる費用と、在庫を持つ資金のコストが釣り合う水準が、理論上の最適です。
実務では、MOQと保管スペースの制約で、選べる幅が限られることが多くあります。その場合は、制約の中で最も小さい単位を選んでください。
MOQの問題は 最低発注数量(MOQ)が資金繰りを決めてしまう の記事で扱っています。
発注費用と在庫の資金コストの釣り合い。制約の中で最小の単位を。
「まとめて買えば単価が下がる」——この判断は、計算しないと損得が分かりません。
| 比べるもの | 計算 |
|---|---|
| 得られるもの | 年間の仕入額 × 割引率 |
| 失うもの | 増える平均在庫 × 資金のコスト(年率) |
| 加えて考えるもの | 保管費用、劣化・陳腐化のリスク |
この2つは効く対象が違います。年間の仕入額が大きいほど割引の効果は大きく、在庫が増える幅が大きいほど資金コストが大きくなります。必ず金額で比べてください。
割引は年間の仕入額に、資金コストは増えた在庫に効きます。
月1回の発注を、3か月に1回にまとめて3%の割引を受ける場合を計算します。
| 項目 | 月1回 | 3か月に1回(3%引き) |
|---|---|---|
| 年間の仕入額 | 2億1,600万円 | 2億952万円 |
| 割引額 | — | 年648万円 |
| 1回の発注額 | 1,800万円 | 5,400万円 |
| 平均在庫 | 900万円 | 2,700万円 |
| 増える在庫 | — | 1,800万円 |
| その資金コスト(年利3%) | — | 年54万円 |
この条件なら、まとめ買いのほうが圧倒的に得です。3%の割引が年648万円に対し、資金コストは年54万円です。
①その在庫が確実に売れること ②1,800万円の資金を用意できること ③劣化・陳腐化しないこと。3つとも満たさなければ、この計算は成り立ちません。
とくに②が重要です。得だと分かっていても、5,400万円を一度に払えなければ選べません。これが「資金繰りが、事業の選択肢を狭める」という状態です。
割引3%なら得ですが、資金が用意できることが前提です。
| 状況 | 影響 | 対処 |
|---|---|---|
| リードタイムが60日 | 発注点が高くなる。在庫が厚くなる | — |
| 海外からの輸入 | 船積み・通関の時間も加わる | 分割して発注する |
| 受注生産の部材 | — | 納期の短縮を交渉する |
| 納期が不安定 | 安全在庫を厚くせざるを得ない | 複数の仕入先を持つ |
リードタイムが60日から30日になれば、発注点が30日分下がります。その分だけ在庫を減らせます。仕入先との交渉で短縮できないかを検討してください。
4番目も重要です。納期が守られないと、安全在庫を厚くするしかありません。その分の資金コストは、実質的に仕入先の納期管理の問題を自社が負担している形です。
リードタイムの短縮は在庫の削減と同じ効果があります。
| 状況 | 資金への影響 |
|---|---|
| 繁忙期の前に仕入れが集中 | その時期に資金が必要 |
| 閑散期は在庫が動かない | 資金が固定される |
| 年に1回しか仕入れられない | 1年分の資金が要る |
需要そのものに季節性がある場合、発注を平準化しても在庫が積み上がるだけです。この場合は、資金の側で対応することになります。季節資金の融資が、そのための仕組みです。
季節資金は、使途と返済の時期が明確なため、融資の説明としては通りやすい部類です。「◯月の繁忙期に向けた仕入れ、◯月〜◯月の入金で返済」という形になります。
年に1回しか仕入れられない商材については 年に1回しか仕入れない商材の資金計画 の記事で扱っています。
季節性は平準化できません。季節資金で対応するのが正しい形です。
季節性がない品目については、発注のタイミングを意図的にずらすことで、支払いの山を平らにできます。
| 状態 | 問題 |
|---|---|
| 複数の品目を同じ月にまとめて発注 | その月の支払いが跳ね上がる |
| 発注のタイミングがばらばら | 資金繰りが読めない |
| 品目ごとに発注月をずらす | 支払いが平準化される |
A品目を1月、B品目を2月、C品目を3月——というように、発注のタイミングをずらすだけで、1か月あたりの支払額が下がります。年間の総額は変わりません。
品目ごとに発注月をずらすだけで、支払いの山が下がります。
3つの品目を、まとめて発注する場合とずらす場合で比べます。
| 月 | まとめて発注 | ずらして発注 |
|---|---|---|
| 1月 | 1,800万円 | 600万円 |
| 2月 | 0円 | 600万円 |
| 3月 | 0円 | 600万円 |
| 4月 | 1,800万円 | 600万円 |
| いちばん多い月 | 1,800万円 | 600万円 |
| 年間の総額 | 7,200万円 | 7,200万円 |
年間の総額は同じ7,200万円でも、用意すべき資金は1,200万円違います。そして、この改善に費用はかかりません。
まず6か月先までの資金繰り表を作り、支払いが跳ね上がる月を特定してください。その月に集中している発注を、前後にずらせないかを検討します。
年間総額は同じでも、用意すべき資金は1,200万円違います。費用はゼロです。
| 相談すること | 相手の受け止め |
|---|---|
| 発注の頻度を上げる | 送料の負担が増える。難色を示すことも |
| MOQを下げてもらう | 生産ロットの都合で難しいことがある |
| 分割納品にする | 受け入れられやすい |
| リードタイムを短くしてもらう | — |
| 納期を確実にしてもらう | 安全在庫を減らせる |
「発注はまとめるが、納品を3回に分けてもらう」——相手は生産をまとめられるうえ、自社は在庫と支払いを分散できます。双方に利点がある形です。支払いのタイミングも納品ごとにできないか、あわせて相談してください。
3番目が実務的にもっとも現実的です。まとめ買いの割引を受けながら、在庫と資金の山を抑えられる可能性があります。
分割納品が現実的。割引を受けながら山を抑えられます。
| やること | 理由 |
|---|---|
| 発注点を一覧表にする | 担当者が判断せずに動ける |
| 在庫数を、毎週または毎日見る | 発注点を下回ったら発注する |
| 四半期に1回、発注点を見直す | 消費量やリードタイムは変わる |
| リードタイムの実績を記録する | 約束と実績のずれを把握する |
| 資金繰り表に、発注予定を反映する | 支払いの山が事前に見える |
| 品目を絞って始める | 全品目は無理。上位から |
品目が数百あれば、すべてに発注点を設定するのは現実的ではありません。在庫金額の上位20品目から始めてください。それだけで、在庫金額の大半がカバーできることが多くあります。
3番目も重要です。消費量が減った品目の発注点をそのままにしていると、在庫が積み上がります。定期的に見直してください。
上位20品目から始める。四半期に1回、見直してください。
1番と3番から。山がある月と上位20品目を特定してください。
この記事は仕入れ資金による調達の一部です。手段そのものを比べたい場合は、あわせてご覧ください。