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約束手形の廃止方針と、電子記録債権への移行

約束手形は2026年度末を目標に利用廃止へ向かっています。受け皿となる電子記録債権(でんさい)とは何か、手形との違い、移行で受注側に起きる良いこと、始め方までを整理します。手形で受け取る側の負担が軽くなる前向きな変化です。

公開:2026年7月21日 Creww Finance Media 編集部
この記事の内容

  1. 約束手形は廃止の方向へ
  2. なぜ手形をなくすのか
  3. 受け皿になる電子記録債権(でんさい)
  4. 手形とでんさいの違い
  5. 移行で受注側に起きる良いこと
  6. でんさいを始めるには
  7. 移行期に気をつけること
  8. 廃止までの流れ/金額で見るメリット
  9. いま自社が手形を受け取っているなら
  10. 自社が支払う側でもでんさいは効く
  11. よくある誤解とチェックリスト

約束手形は廃止の方向へ

長く使われてきた約束手形が、2026年度末を目標に、利用を廃止する方向で進められています。政府と経済界が足並みをそろえて取り組んでおり、すでに手形の利用は年々減っています。

これは、手形で代金を受け取っている中小企業にとって、資金繰りが楽になる方向の変化です。受注側にとって不利だった慣行が、社会全体で見直されているということです。この記事では、何が変わり、自社にどう影響するのかを整理します。

この章の要点

約束手形は2026年度末を目標に利用廃止へ向かっています。手形で受け取る側の負担が大きかったため、これは中小企業の資金繰りにとって前向きな変化です。

なぜ手形をなくすのか

理由は明確で、手形が受注側の資金繰りを重くしていたからです。手形で代金を受け取ると、現金化までに支払サイトに加えて手形サイト(受取から満期までの期間)がかかり、実質の入金が大幅に遅れます。

手形の何が問題だったか 受注側への影響
現金化まで長い 支払サイト+手形サイトで、入金が数か月遅れる
不渡りのリスク 相手の資金不足で、代金が回収できないことがある
割引にコスト 早く現金化するには割引料がかかる
紙の管理負担 紛失・盗難の管理、印紙、満期日の管理が必要

とくに、大企業が中小企業に長期の手形で支払うことが、下請けの資金繰りを圧迫する構造として問題視されてきました。手形をなくすことは、この負担を取り除く取り組みです。

受け皿になる電子記録債権(でんさい)

手形の代わりとして広がっているのが、電子記録債権です。「でんさい」と呼ばれます。紙の手形が持っていた「期日に支払う約束」を、電子的に記録したものだと考えると分かりやすいです。

銀行が運営する「でんさいネット」という仕組みの上で、債権の発生・譲渡・支払いが電子的に記録されます。紙のやり取りがなくなり、期日が来れば自動的に口座間で決済されます。

この章の要点

でんさいは、手形の役割を電子化したものです。紙のやり取りがなくなり、期日が来れば自動で決済されます。手形の「約束」の機能は保ちつつ、紙ならではの手間とリスクを減らせます。

手形とでんさいの違い

受注側の目線で、何がどう変わるかを並べます。

約束手形 でんさい
紙の証書 電子データ
紛失・盗難 リスクあり なし(電子記録)
印紙 必要な場合がある 不要
分割 できない 一部だけ譲渡・資金化できる
支払期日 満期に取り立て 期日に自動決済
資金化 手形割引 でんさい割引・対応事業者

とくに大きいのが「分割できる」点です。紙の手形は額面まるごとでしか扱えませんが、でんさいなら必要な金額だけを資金化し、残りは期日まで持つといった使い方ができます。全額を割り引く必要がないので、無駄なコストを抑えられます。

移行で受注側に起きる良いこと

手形からでんさいへの移行は、受け取る側にいくつかの利点があります。

そして何より、手形そのものが減っていく流れは、支払条件を振込に変えてもらう交渉の追い風になります。「時代に合わせて振込かでんさいに」という相談が、以前より通りやすくなっています。

でんさいを始めるには

でんさいを利用するには、取引金融機関を通じた手続きが必要です。おおまかな流れです。

段階 内容
1. 利用申込 取引のある銀行を窓口に、でんさいネットの利用を申し込む
2. 審査・登録 金融機関の審査を経て利用者として登録される
3. 利用開始 取引先との間で、でんさいでの受け取り・支払いが可能になる

受け取る側だけでなく、支払う側(取引先)もでんさいを利用している必要があります。取引先がまだ対応していない場合は、まず相手に打診するところから始まります。すでに手形をでんさいに切り替えている大企業も増えています。

手続きの詳細は金融機関へ

利用条件や手数料は金融機関によって異なります。具体的な申込方法やコストは、取引のある銀行に確認してください。この記事は、制度の全体像を把握するためのものです。

移行期に気をつけること

手形からでんさいへの移行はまだ途中です。過渡期ゆえの注意点があります。

電子化されても、「期日まで待つ」という性質そのものは手形と同じです。現金化を早めたい場合はコストがかかる点は変わりません。でんさいで受け取った債権をどう資金化するかは、別の記事で扱っています。

廃止までの流れと、いま起きていること

手形の廃止は、ある日突然使えなくなるものではありません。段階的に進んでいます。

時期 起きていること
これまで 手形の発行枚数・金額は年々減少してきた
2024年11月 サイト60日を超える手形は、下請法上問題とされる扱いに
2026年度末 約束手形の利用廃止を目標とする方針
移行後 でんさい・振込への切り替えが進む

すでに多くの大企業が、手形からでんさいや振込へ切り替えを進めています。「うちだけが手形をやめてほしいと言い出す」のではなく、社会全体が動いている状況です。だからこそ、取引先への切り替えの相談がしやすくなっています。

金額で見る、でんさいのメリット

でんさいへの移行は、手間だけでなくコスト面でも受注側に有利です。

金額は取引規模によりますが、手形1枚ごとにかかっていた印紙代や管理の手間が積み重なれば、無視できないコストでした。でんさいはこれを取り除きます。

いま自社が手形を受け取っているなら

すでに手形で代金を受け取っている場合、いますぐ全部を切り替える必要はありませんが、次のことは検討する価値があります。

  1. 取引先にでんさいや振込への変更を打診する|手形廃止の流れを背景に相談する
  2. 手形の実質サイトを把握する|支払サイト+手形サイトで、入金が受領日から何日後になっているか
  3. 下請法の対象なら、長すぎる手形は見直しを求められる|60日を超える手形サイトは問題となり得る

手形の実務や、下請法での扱いについては、関連記事で詳しく扱っています。

自社が支払う側でも、でんさいは効く

ここまで受け取る側の話をしてきましたが、自社が外注先などに支払う立場でも、でんさいには利点があります。手形を発行していた会社にとっては、その置き換えになります。

支払う側の視点 手形 でんさい
発行の手間 用紙の作成・郵送 電子的に完結
印紙代 金額に応じて必要 不要
支払期日の管理 自社で管理 期日に自動決済

ただし、支払う側として気をつけたいのは、外注先に長いサイトのでんさいを発行すれば、相手の資金繰りを圧迫する点です。手形と同じ問題が、電子化されただけで起きます。下請法の対象なら、でんさいでも支払期日は受領日から60日以内が原則です。受け取る側で嫌だったことを、支払う側でしないことが、健全な取引につながります。

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よくある誤解

手形はもう使えなくなった
2026年度末を目標に利用廃止の方向ですが、現時点で使用が禁止されたわけではありません。段階的に減っている状況です。
でんさいなら不渡りのリスクはない
電子化されても、期日に相手が支払えなければ決済されないリスクは残ります。約束である点は手形と同じです。
でんさいにすれば手数料はかからない
紙の管理や印紙は不要になりますが、早期に資金化する場合は割引料がかかります。
でんさいは自社だけ登録すれば使える
支払う側の取引先も利用している必要があります。相手が未対応なら、まず打診が必要です。

移行を考えるときのチェックリスト

確認すること

  • いま手形で受け取っている取引先はどこか
  • その手形の実質サイト(支払サイト+手形サイト)は何日か
  • 取引先はでんさいに対応しているか
  • 振込またはでんさいへの変更を打診できるか
  • 下請法の対象で、実質の入金が60日を超えていないか

よくある質問

Q. 約束手形はいつ使えなくなりますか
2026年度末を目標に利用廃止の方向で進められています。現時点で禁止されたわけではなく、段階的に減っている状況です。最新の状況は、金融機関や公的機関の情報をご確認ください。
Q. でんさいと手形は何が一番違いますか
紙か電子かの違いに加え、でんさいは分割して一部だけ資金化できる点、紛失・盗難や印紙の心配がない点が大きな違いです。
Q. でんさいを使うにはお金がかかりますか
利用手数料は金融機関によって異なります。早期に資金化する場合は、別途割引料がかかります。詳細は取引金融機関にご確認ください。
Q. 取引先が手形のままだと、自社は何もできませんか
でんさいや振込への変更を打診することはできます。手形廃止の流れを背景に、以前より相談しやすくなっています。変更が難しければ、手形サイトの短縮から相談する方法もあります。
Q. でんさいで受け取った代金を早く現金化できますか
でんさい割引や、対応する事業者を通じて資金化できます。必要な金額だけを資金化できるのが、手形にはない利点です。詳しくは資金化の記事で扱っています。
Q. 移行の手続きは複雑ですか
取引金融機関を窓口に利用申込を行い、審査を経て利用開始となります。詳細な手続きや条件は、取引のある銀行にご確認ください。

出典

  1. 中小企業庁「約束手形の利用の廃止等に向けた検討」https://www.chusho.meti.go.jp/
  2. 公正取引委員会「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」https://www.jftc.go.jp/shitauke/
  3. 全国銀行協会「でんさいネット」に関する一般情報https://www.densai.net/

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