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資金繰り表の作り方|入金日ベースで作る

黒字なのに資金が足りない事態は、決算書では防げません。防ぐのは資金繰り表です。ただし売上の月ではなく入金の月で作らないと役に立ちません。3ブロックの基本構造から、実例でショートする月を読む方法、続けるための運用まで、そのまま作れる形で示します。

公開:2026年7月21日 Creww Finance Media 編集部
この記事の内容

  1. なぜ資金繰り表が要るのか
  2. 損益計算書では資金は見えない
  3. 資金繰り表の基本構造
  4. 入金日ベースで作るということ
  5. 収入の入れ方|サイトから逆算する
  6. 支出の入れ方|4種類を漏らさない
  7. 3か月先まで作る
  8. 実例で読む|ショートする月が見える
  9. 資金ショートの予兆を読む
  10. 作りっぱなしにしない運用
  11. 足りない月が見えたら
  12. よくある誤解とチェックリスト

なぜ資金繰り表が要るのか

黒字なのに資金が足りない、という事態は、決算書を見ていても防げません。決算書は1年が終わってから出るもので、来月・再来月にいくら足りなくなるかは教えてくれないからです。

それを先回りで見るのが資金繰り表です。これから数か月、いつ・いくら現金が入り、いつ・いくら出ていくかを日付順に並べるだけの表ですが、これがあると「◯月に資金が足りなくなる」と何か月も前に気づけます。気づけば、融資の相談も、着手金の交渉も、間に合います。

この章の要点

資金繰り表は未来の現金の動きを日付順に並べた表です。決算書は過去、資金繰り表は未来。足りなくなる月を前もって知ることが、資金ショートを防ぐ第一歩です。

損益計算書では資金は見えない

資金繰り表と損益計算書(PL)は、似ているようでまったく別物です。決定的な違いは「いつの数字か」です。

損益計算書(PL) 資金繰り表
何を見るか 儲かったか(利益) 現金が回るか(残高)
いつで記録するか 売上が発生したとき 現金が動いたとき
売掛金は 売上として計上済み 入金されるまで載らない
借入の返済は 元本は費用に出ない そのまま出ていく
向く場面 採算の判断 資金ショートの予防

ここが肝心です。PLでは、売上を上げた月に「売れた」と記録されますが、実際に現金が入るのは支払サイトのぶんだけ後。だからPLが黒字でも、手元の現金は足りないことが起きます。資金繰り表は、この時間差を織り込んで作ります。

とくにPLに出ない2つ

借入の元本返済税金・社会保険の納付は、損益計算書にはほとんど現れませんが、現金はしっかり出ていきます。この2つを見落とすと、PLは黒字なのに資金が尽きる、という典型に陥ります。資金繰り表には必ず入れます。

資金繰り表の基本構造

資金繰り表は、たった3つのブロックでできています。

ブロック 内容
① 前月からの繰越 その月の始めにある現金(前月末の残高)
② 収入 その月に実際に入ってくる現金(売掛金の入金、借入など)
③ 支出 その月に実際に出ていく現金(仕入・人件費・返済・税金など)

計算は単純です。繰越 + 収入 − 支出 = その月末の残高。そして、その月末残高が翌月の繰越になります。これを何か月分か横に並べれば、資金繰り表の完成です。

1行で言うと

前月繰越 + 今月の収入 − 今月の支出 = 今月末の残高

難しい会計知識は要りません。入るお金と出るお金を、実際に動く日付で並べるだけです。

入金日ベースで作るということ

作り方でいちばん大事なのが、これです。売上を上げた月ではなく、現金が入る月に書く。当たり前に聞こえますが、ここを間違えると資金繰り表は役に立ちません。

例で見ます。5月に100万円の仕事を納品し、支払サイトが「月末締め翌月末払い」だとします。

5月 6月 7月
間違い(発生ベース) +100万 0 0
正しい(入金日ベース) 0 +100万 0

売上は5月でも、現金が入るのは6月末です。資金繰り表に5月の収入として書いてしまうと、実際にはない現金があるように見え、5月の支払いに使えると勘違いします。これが資金ショートの入口です。収入は必ず、入金される月に書きます

収入の入れ方|サイトから逆算する

各案件の入金月は、締め日と支払サイトから逆算します。手順はこうです。

  1. 受注ごとに、納品(検収)月を確定する
  2. 締め日を当てはめる(月末締めなら納品月の末、20日締めなら21日以降は翌月扱い)
  3. 支払サイトを足す(翌月末払いなら締め月の翌月末、翌々月末なら翌々月末)
  4. その月の収入欄に、入金額を書く

売掛金だけでなく、借入の実行、補助金の入金、資産の売却など、現金が入るものはすべて収入に入れます。逆に、まだ受注が確定していない見込みの売上は、確度に応じて分けておくと安全です。

入金の遅れも織り込む

検収が遅れがちな取引先や、支払いがルーズな相手は、実績ベースで少し後ろ倒しに入れておくと、表が実態に近づきます。楽観的に入れると、資金繰り表が現実より良く見えてしまいます。

支出の入れ方|4種類を漏らさない

支出は、性質の違う4種類を漏れなく入れます。とくに後半2つが抜けやすい部分です。

種類 注意点
変動費(仕入・外注) 材料費、外注費 自社の支払サイトで、出ていく月に書く
固定費 家賃、人件費、水道光熱費 毎月ほぼ一定。忘れにくい
借入の返済 元本+利息 元本はPLに出ない。返済予定表から転記
税金・社会保険 消費税、法人税、源泉、社会保険料 まとまった額が特定月に集中する

とくに消費税は要注意です。預かっている消費税は自社のお金ではありませんが、口座には入っています。納付月にまとまって出ていくため、これを見込んでいないと、その月に一気に資金が減ります。納税の月を、資金繰り表にあらかじめ印をつけておくのが実務のコツです。

3か月先まで作る

資金繰り表は、最低でも3か月先まで作ります。理由は、打てる手の準備期間です。

気づくタイミング 打てる手
1か月前 売掛債権の資金化(最短即日)くらいしか間に合わない
2〜3か月前 融資が間に合う。着手金の交渉もできる
それ以上前 受注ペースの調整、支払条件の見直しまで打てる

融資は申込から着金まで数週間から2か月かかります。足りない月の2〜3か月前に気づければ、最も安い融資で埋められます。1か月前に気づいたのでは、コストの高い資金化しか選べません。先まで見ることが、そのまま調達コストの差になります。

3か月最低限、先まで見る
2〜3か月前融資が間に合う猶予
毎週更新の目安

実例で読む|ショートする月が見える

ここまでの作り方で、実際に3か月の資金繰り表を作ってみます。月商600万円・原価率60%・入金は翌々月末(サイト長め)の会社が、9月に消費税の納付を控えている、という設定です。

資金繰り表の例(単位:万円)
項目 7月 8月 9月
① 前月繰越 300 240 180
売掛金の入金 600 600 600
② 収入 計 600 600 600
仕入・外注 360 360 360
固定費 200 200 200
借入返済 100 100 100
消費税の納付 240
③ 支出 計 660 660 900
月末残高(①+②−③) 240 180 −120

7月・8月は黒字で回っていますが、消費税240万円の納付が重なる9月に、残高がマイナス120万円になります。年間で見れば黒字でも、この1か月だけ現金が尽きます。

この表の価値は、9月にマイナスになることが、7月の時点で分かることです。2か月前に気づいているので、融資が十分に間に合います。もし資金繰り表を作っていなければ、9月に入って残高が足りないと気づき、その時点ではコストの高い資金化しか選べません。

読むときのコツは、いちばん下の「月末残高」の行だけを横に追うことです。240 → 180 → −120 と減っていく流れが一目で分かります。どこでマイナスに沈むか、その手前でいくら足りないかが、この1行に出ます。

資金ショートの予兆を読む

作った表からは、危険が数字で見えます。次のサインが出たら、手を打つタイミングです。

とくに2つ目の「特定の月だけマイナス」は、資金繰り表を作らないと絶対に見えません。年間を通せば黒字でも、消費税と賞与が重なる月だけ現金が尽きるといったことが、実際に起きます。表があれば、その月の前に手を打てます。

作りっぱなしにしないための運用

資金繰り表は、一度作って終わりではありません。実態とずれた瞬間に、役に立たなくなります。続けるためのコツは3つです。

1. 週に1回、決まった時間に更新する

「気づいたときに」だと、結局やらなくなります。毎週◯曜の朝にやる、と時間を固定するのが続けるコツです。更新するのは、新しく確定した受注の入金予定と、実際の入金・支払いの実績だけ。慣れれば10分で済みます。

2. 予定と実績の両方を残す

先月「入る」と見込んだ入金が、実際にいつ入ったか。ここを記録しておくと、取引先ごとの入金の癖が分かってきます。「あの会社はいつも予定より数日遅い」と分かれば、次からの予定精度が上がり、表が現実に近づきます。

3. 悪いほうに寄せて作る

資金繰り表は、楽観的に作ると意味がありません。入金は少し遅め・少なめに、支出は少し早め・多めに見積もっておくと、実際がそれより良くなることはあっても、悪くなって慌てることが減ります。安全側に倒すのが、この表の正しい使い方です。

この章の要点

週1回・時間固定で更新し、予定と実績を残して精度を上げ、常に安全側(入金は遅め、支出は多め)に見積もる。この3つで、資金繰り表は使い続けられる道具になります。

足りない月が見えたら

ショートしそうな月が見つかったら、埋め方は時間とコストで選びます。先に見つけているほど、安い手が選べます

手段 効くまで コスト
着手金・支払条件の調整 次の取引から なし
融資 3週間〜2か月 年1〜3%程度
売掛債権の資金化 最短即日 2社間8〜18%/3社間2〜9%

順序は、まず入金を早める(着手金・サイト調整)、次に融資、それも間に合わないぶんだけ資金化です。売掛債権の資金化はコストが桁違いなので、資金繰り表を早めに作り、融資が間に合う段階で気づくことが、そのままコスト削減になります。

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よくある誤解

黒字なら資金繰り表は要らない
黒字でも、入金より先に支払いが来れば資金は尽きます。利益と現金は別で、資金繰り表は現金の側を見るものです。
売上が立った月に収入として書く
書くのは現金が入る月です。売上と入金の時間差を無視すると、ない現金があるように見えます。
借入の返済は費用だから利益で見れば足りる
元本の返済は損益計算書にほぼ出ませんが、現金は出ていきます。資金繰り表には必ず入れます。
1か月先まで見れば十分
1か月前では、コストの高い資金化しか間に合いません。3か月先まで見ると、安い融資が選べます。
会計ソフトがあれば作らなくていい
会計ソフトの多くは過去の記録です。未来の入出金を並べる資金繰り表は、別に作る必要があります(作成機能を持つソフトもあります)。

作成チェックリスト

表を作るとき

  • 収入は、売上の月ではなく入金の月に書いた
  • 各案件の入金月を、締め日と支払サイトから逆算した
  • 借入の元本返済を、返済予定表から入れた
  • 消費税・法人税・社会保険の納付月に印をつけた
  • 固定費を毎月分入れた
  • 最低3か月先まで作った
  • 月末残高が月商1か月分を切る月がないか確認した

よくある質問

Q. 資金繰り表はExcelと会計ソフトのどちらがいいですか
まずはExcelで十分です。収入・支出・残高の3ブロックを月ごとに並べるだけなので、無料のテンプレートも多くあります。取引量が増えたら、資金繰り表の作成機能を持つ会計ソフトの利用を検討します。
Q. どのくらいの頻度で更新すべきですか
週に1回が目安です。新しい受注や入金の遅れが出たら、その都度反映します。作りっぱなしにすると、実態とずれて役に立たなくなります。
Q. 見込みの売上はどう入れますか
受注が確定したものと、見込みのものは分けておきます。見込みは確度に応じて別枠にし、確定したら本体に移すと、表が楽観的になりすぎません。
Q. 消費税はどう見込めばいいですか
課税方式によりますが、預かった消費税から支払った消費税を引いた額が、納付月にまとまって出ていきます。おおよその額を見積もり、納付月にあらかじめ計上しておきます。
Q. 資金繰り表を金融機関に見せてもいいですか
むしろ有効です。融資の相談時に、いつ・いくら必要かを資金繰り表で示せると、資金使途が明確になり、話が進みやすくなります。
Q. 過去の実績表と未来の予定表、どちらを作りますか
両方に意味があります。過去の実績は精度を上げる材料に、未来の予定はショートの予防に使います。まずは未来の予定表から始めるのがおすすめです。

出典

  1. 中小企業庁「資金繰り・資金調達に関する情報」https://www.chusho.meti.go.jp/
  2. 日本政策金融公庫(資金繰り表の作成に関する一般情報)https://www.jfc.go.jp/
  3. 手数料水準は本サイト掲載102社の公表値(2026年7月時点)にもとづく

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