でんさい(電子記録債権)は、手形を電子化したものです。紙の管理がなくなり便利になりましたが、「期日が来るまで現金にならない」という性質は、手形と同じです。
取引先からでんさいで代金を受け取っても、支払期日までは手元の現金になりません。その間の運転資金が必要なら、期日を待たずに資金化することになります。この記事では、その方法とコストを整理します。
でんさいの基本や、手形との違いは別記事で扱っています。
→ 約束手形の廃止方針と、電子記録債権への移行
でんさいで受け取った債権を現金にする方法は、大きく3つです。
| 方法 | 内容 | コスト |
|---|---|---|
| 期日まで待つ | 支払期日に自動で入金される | なし。ただし現金化は遅い |
| でんさい割引 | 金融機関に買い取ってもらう(保証あり) | 割引料。不渡り時は買い戻し |
| でんさいの譲渡(買取) | 対応事業者に譲渡して資金化 | 手数料。条件により買い戻し不要の場合も |
急がないなら、期日まで待てばコストはかかりません。期日前に現金が必要な場合だけ、割引や譲渡を検討します。どちらもコストがかかるので、まず「本当に期日前に必要か」を確認してから使うのが基本です。
もっとも一般的なのがでんさい割引です。手形割引の電子版だと考えると分かりやすいです。
支払期日前のでんさいを金融機関に買い取ってもらい、割引料を差し引いた金額を先に受け取ります。たとえば期日まで90日あるでんさいを割り引けば、90日ぶんの割引料が引かれた額が入ります。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 支払期日前のでんさいを持っている |
| 2 | 金融機関に割引を申し込む |
| 3 | 割引料を引いた金額が入金される |
| 4 | 期日に、金融機関が取引先から回収する |
手形割引と同じく、取引先が期日に支払えなかった場合は、割引を受けた側(自社)に買い戻しの義務が生じるのが一般的です。現金化はできても、リスクから完全には解放されません。
でんさい割引は手形割引によく似ていますが、電子化されたぶんの利点があります。
| 手形割引 | でんさい割引 | |
|---|---|---|
| 対象 | 紙の手形 | 電子記録債権 |
| 紙の受け渡し | 必要 | 不要 |
| 分割 | 額面まるごと | 一部だけ割引できる |
| 手続き | 手形の持ち込み | 電子的に完結 |
| 買い戻し義務 | あり(不渡り時) | あり(不払い時) |
手続きが電子的に完結する点と、額面の一部だけを割り引ける点が、でんさい割引の大きな利点です。
紙の手形は、額面まるごとでしか扱えません。100万円の手形なら、100万円分を割り引くしかない。一方でんさいは、必要な金額だけを分割して資金化できます。
| 手形 | でんさい | |
|---|---|---|
| 額面300万円のうち 100万円だけ必要なとき |
300万円全部を割引 (余分な割引料) |
100万円だけ割引 残り200万は期日まで保有 |
必要な100万円だけを資金化すれば、割引料も100万円分だけで済みます。全額を割り引く必要がないぶん、無駄なコストを抑えられます。
「今月は100万円だけ足りない」というとき、300万円のでんさいを丸ごと現金化するのは割高です。足りない分だけを資金化できるのが、でんさいの実務上の強みです。
でんさいの資金化は無料ではありません。判断の基準は、他の調達手段と同じです。
| 手段 | 効くまで | コスト感 |
|---|---|---|
| 期日まで待つ | 期日 | なし |
| 融資 | 3週間〜2か月 | 年1〜3%程度 |
| でんさい割引 | 数日 | 期間に応じた割引料 |
時間に余裕があるなら、まず期日まで待てないかを確認し、次に安い融資で埋められないかを見て、それでも間に合わないぶんだけ割引や譲渡で資金化するのが、コストを抑える順序です。早く現金化するほどコストがかかる、という関係は他の手段と同じです。
でんさい割引で手元に入る金額を、例で見ます。額面300万円、支払期日まで90日、割引料が年3%だとします。
額面 × 年率 × 期日までの日数 ÷ 365
300万円 × 3% × 90日 ÷ 365 = 約22,000円。手取りは約297.8万円です。期日まで待てばかからない費用ですが、早期に現金化するための対価になります。
ここで、でんさいの「分割できる」利点が効きます。もし必要なのが100万円だけなら、300万円全部を割り引く必要はありません。
| 全額(300万)を割引 | 必要分(100万)だけ割引 | |
|---|---|---|
| 割引料(年3%・90日) | 約22,000円 | 約7,400円 |
| 期日まで保有する分 | 0円 | 200万円 |
必要な100万円だけを資金化すれば、割引料は3分の1で済みます。全額を現金化して余ったお金を寝かせるのは、割引料のぶんだけ損です。でんさいは、必要な額を見極めてから、その分だけ資金化するのが賢い使い方です。
でんさいを割引・譲渡で資金化する場合の、おおまかな流れです。
| 段階 | やること |
|---|---|
| 1. 必要額を確定 | いくら、いつまでに必要かを資金繰り表で確認する |
| 2. 申込先を選ぶ | 取引金融機関、または対応する事業者 |
| 3. 条件を確認 | 割引料・手数料、買い戻し義務の有無 |
| 4. 手続き | 電子的に申込・譲渡を行う |
| 5. 入金 | コストを引いた金額が入金される |
1が抜けがちです。いくら必要かを先に確定させておかないと、必要以上に資金化して余分なコストを払うことになります。でんさいは分割できるので、必要額を決めてから、その分だけを資金化してください。
でんさいを資金化するとき、いちばん確認すべきなのが買い戻し義務があるかどうかです。ここを見落とすと、思わぬリスクを抱えます。
| 買い戻しあり(償還請求権あり) | 買い戻しなし(償還請求権なし) | |
|---|---|---|
| 不払い時 | 自社が買い戻す義務を負う | 自社は責任を負わない |
| コスト | 低め | 高めになりやすい |
| 典型 | でんさい割引 | 買取型のサービス |
買い戻しありは、コストが低い代わりに、取引先が期日に支払えなければ、資金化した額を自社が返すことになります。回収リスクが自社に残ったままです。一方、買い戻しなしは、コストが高くなりやすいものの、取引先が支払えなくても自社は責任を負いません。回収リスクを手放せます。
取引先の信用に不安があるなら、多少コストが高くても買い戻しなしを選ぶ意味があります。コストの安さだけで選ばず、不払い時に誰がリスクを負うかを必ず確認してください。
売掛債権の資金化には、ファクタリングという手段もあります。でんさいの割引・譲渡とは対象が異なります。
| でんさい割引・譲渡 | ファクタリング | |
|---|---|---|
| 対象 | 電子記録債権(でんさい) | 売掛債権(請求書ベース) |
| 取引先の関与 | でんさいの発生が前提 | 2社間なら取引先に知られない |
| 買い戻し | 不払い時にあり(割引の場合) | 償還請求権なしなら買い戻し不要 |
取引先がでんさいで支払っているならでんさい割引、通常の請求書ベースの売掛金ならファクタリング、というのが基本の使い分けです。どちらが自社の条件に合うか、また手取り額がいくらになるかは、条件によって変わります。
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※ 本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、法的・財務的な助言ではありません。でんさいの割引・譲渡の条件や、買い戻し義務の有無は個別の契約・仕組みによります。具体的な条件は、金融機関や対応事業者にご確認ください。
この記事はファクタリングの一部です。手段そのものを比べたい場合は、あわせてご覧ください。