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在庫を担保にする(動産担保)という手段

売掛債権だけでなく、在庫(動産)を担保に借りるABL=動産担保融資という手段があります。どんな在庫が対象になり、評価はどうされるか、売掛担保との違いを整理します。

公開:2026年7月23日 Creww Finance Media 編集部
この記事の内容

  1. 在庫を担保にするとはどういうことか
  2. 動産担保融資(ABL)の位置づけ
  3. どんな在庫が担保になるのか
  4. 在庫はどう評価されるのか
  5. お金が入るまでの流れ
  6. 売掛債権を担保にする場合との違い
  7. コストと向き不向き
  8. 使う前に確かめること
  9. よくある誤解
  10. 検討チェックリスト
  11. よくある質問

在庫を担保にするとはどういうことか

手元の資金が足りないとき、多くの経営者はまず「何を売れば現金になるか」を考えます。売掛金であれば入金を待つか、資金化する手があります。では、倉庫に積んである在庫(商品・原材料・仕掛品)はどうでしょうか。これも、そのまま資金の裏づけにできる場合があります。それが在庫を担保にした融資=動産担保融資です。

ここで大事なのは、在庫を「売る」わけではないという点です。在庫は自社に置いたまま、事業でふつうに使い続けながら、その価値を担保に金融機関から借りるのがこの手段です。担保に入れた在庫を売って売上を立て、その回収金で返済していく——在庫が動くことを前提にした借り方だ、と考えるとイメージしやすくなります。

動産不動産(土地・建物)以外の「動かせる財産」。在庫・機械設備・車両・農産物・家畜などが含まれる。
動産担保融資動産を担保に入れて借りる融資。売掛債権も含めて担保にする形は一般にABLと呼ばれる。
担保返済できなくなったときに、貸し手が回収の当てにする財産。ここでは在庫そのもの。
この章の要点

在庫を担保にする融資は、在庫を売らずに担保へ入れ、事業で使い続けながら借りる手段です。倉庫に眠る商品や原材料の価値を、資金の裏づけに変える発想だと捉えると分かりやすくなります。

動産担保融資(ABL)の位置づけ

在庫を担保にする融資は、ABL(アセット・ベースト・レンディング)と呼ばれる融資の一分野です。ABLは「資産を裏づけにした貸付」という意味で、担保にできる資産は在庫だけではありません。売掛債権、機械設備、車両など、事業に使う動産や債権をまとめて担保にできます。

そのなかで、在庫(棚卸資産)を担保の中心に据えたものが、この記事で扱う動産担保融資です。売掛債権を担保にするタイプと仕組みが近いため混同されがちですが、担保にするものが「モノ(在庫)」か「債権(売掛金)」かで、評価の仕方も注意点も変わります。売掛債権を担保にする形の詳しい仕組みは別記事に譲り、ここでは在庫を担保にする側に絞って整理します。

ABLの担保になり得るもの

在庫(棚卸資産)|機械・設備|車両|売掛債権|農産物・家畜 など

このうち在庫を中心に据えたのが動産担保融資。売掛債権を担保にする形は仕組みが異なるため、詳細は下部「あわせて読む」の記事で扱う。

「売る」ファクタリングとは別物

ファクタリングは売掛債権を売って現金化するもので、負債は増えません。一方でABLは在庫や債権を担保に借りるので、借入金として負債が増えます。売るか借りるかという根本が違うため、この違いも別記事で詳しく比べています。

どんな在庫が担保になるのか

在庫なら何でも担保にできるわけではありません。金融機関が担保として受け入れやすいのは、いざというとき換金しやすい在庫です。逆に、売り先が限られたり、時間とともに価値が落ちたりする在庫は、担保として評価されにくくなります。

観点 担保に向きやすい在庫 担保に向きにくい在庫
換金性 広く売れる汎用的な商品・原材料 特定の取引先向けの特注品
価値の安定 相場が比較的安定している 流行り廃りが激しい・陳腐化が早い
傷みにくさ 長期保管に耐える 生鮮・消費期限が短い
数量の把握 在庫管理が整い、数が正確に分かる 数量や所在があいまい
所有の明確さ 自社が確実に所有している 委託品・他社の所有権が残るもの

ポイントは、金融機関が「もし返済が滞ったら、この在庫を処分して回収できるか」を見ているということです。換金しやすく、数量が正確に把握でき、自社が確実に所有している在庫ほど、担保として評価されます。特注品や生鮮品が向きにくいのは、いざ処分しようとしても売り先や時間の制約が大きいからです。

この章の要点

担保になりやすいのは、換金性が高く・価値が安定し・数量が正確に把握でき・自社所有が明確な在庫です。特注品や生鮮品、所在があいまいな在庫は評価されにくくなります。

在庫はどう評価されるのか

在庫を担保に入れても、その帳簿価額の満額を借りられるわけではありません。金融機関は、処分するときに実際いくらで売れそうかを厳しめに見積もり、そこからさらに一定の掛け目をかけて融資額を決めます。この掛け目を掛目(かけめ)と呼びます。

担保評価から融資額が決まるイメージ

在庫の評価額 × 掛目 = 借りられる目安

たとえば処分価値を1,000万円と評価し、掛目を50%と置いた場合、借入の目安は500万円。掛目は在庫の種類・換金性・管理状況によって変わる(数値は説明のための仮の例)。

掛目が低めに設定されるのは、処分の際に想定どおりの値段で売れるとは限らないからです。売掛債権に比べて在庫は換金の不確実性が大きいため、担保としての掛目は保守的になりやすいのが一般的な傾向です。数字は在庫の性質や管理状況で大きく変わるため、具体的な掛目や評価額は金融機関の個別審査によります。ここで挙げた数値は考え方を示すための仮の例で、相場を示すものではありません。

評価では「数量が本当にあるか」も見られる

在庫担保では、価値だけでなくその在庫が実在し、数量が正確かも重視されます。帳簿上は積み上がっていても、実地に数えると合わない、というのは珍しくありません。そのため、在庫管理の帳簿と実地棚卸が整っていること、必要に応じて第三者が数量を確認できることが、評価の前提になります。

借りたあとも「見られ続ける」

在庫担保は、契約したら終わりではありません。担保である在庫は日々出入りするため、定期的に在庫の残高や動きを報告することが求められるのが一般的です。売上に応じて在庫が減れば借入枠も動くなど、実態と連動した管理が続きます。手間はかかりますが、これが「事業を続けながら借りる」仕組みの裏側です。

お金が入るまでの流れ

在庫を担保にする融資は、無担保のビジネスローンのようにその日のうちに、とはいきません。担保の評価という工程が入るぶん、準備と時間がかかります。おおまかな流れは次のとおりです。

  1. 相談・申込|在庫の種類・規模、資金の使い道を金融機関に相談する
  2. 在庫の評価|どんな在庫がどれだけあり、いくらで換金できそうかを見積もる
  3. 掛目・融資額の決定|評価額に掛目をかけ、借りられる額を決める
  4. 担保の設定・契約|在庫に担保を設定し、報告のルールなどを取り決める
  5. 実行・入金|融資が実行され、資金が入る
  6. 継続的な報告|在庫の残高や動きを定期的に報告しながら返済していく

このうち時間がかかるのは、②の在庫評価と④の担保設定です。数日で終わる手段ではないため、資金が必要になってから慌てて申し込むのではなく、余裕をもって相談を始めるのが前提になります。急ぎで現金が要る局面では、より早い別の手段のほうが現実的なこともあります。

数週間〜評価・契約にかかる時間の目安
評価額×掛目借りられる額の決まり方
定期報告借入後も続く在庫の報告

売掛債権を担保にする場合との違い

ABLでは、在庫と売掛債権のどちらも担保にできます。同じABLでも、担保が「モノ」か「債権」かで性格が変わります。ここでは在庫担保の特徴を際立たせるために要点だけ並べ、売掛債権担保そのものの詳しい仕組みは別記事に譲ります

観点 在庫を担保にする 売掛債権を担保にする
担保にするもの 商品・原材料などの在庫(モノ) 取引先への売掛金(債権)
価値の見え方 処分価値の見積もりが要る 金額が請求書で比較的はっきりする
換金の確実性 売り先・相場に左右されやすい 取引先が支払えば回収できる
掛目の傾向 保守的になりやすい 在庫より高めになりやすい傾向
向く会社 在庫を多く抱える卸・製造・小売など 売掛金が厚いサービス・受注型など

ざっくり言えば、在庫を多く抱える業態なら在庫担保、売掛金が資産の中心なら売掛債権担保が入口になります。もっとも、実務では両方を組み合わせて担保にすることも多く、どちらか一方に決めつける必要はありません。売掛債権を担保にする仕組みの詳細と、ファクタリング(売る)との違いは、下部の「あわせて読む」で扱っています。

この章の要点

在庫担保と売掛債権担保の違いは、担保がモノか債権かにあります。在庫は処分価値の見積もりが要り掛目が保守的になりやすく、売掛債権は金額が明確なぶん掛目が高めになりやすい傾向です。両方を組み合わせる形もあります。

コストと向き不向き

在庫担保融資はあくまで「融資」なので、コストの中心は利息です。売掛債権を売るファクタリングの手数料に比べれば、年利換算では低くつくのが一般的です。ただし、担保の評価や在庫の継続的な報告に手間がかかる点、そして数日では実行されない点は、コスト以外の負担として見ておく必要があります。

在庫を担保にする融資 売掛債権の資金化(ファクタリング)
性質 借りる(負債が増える) 売る(負債は増えない)
コストの中心 利息 手数料(2社間8〜18%/3社間2〜9%が目安)
入金までの速さ 数週間〜(評価・契約が要る) 最短即日のことがある
継続の手間 在庫の定期報告が続く 都度の申込
向く場面 在庫が厚く、時間に余裕がある 今すぐ現金が要る

※ ファクタリングの手数料目安は掲載102社の公表値にもとづく。融資の金利は在庫の内容・会社の状況で個別に決まるため、具体的な数値は挙げていない。

向くのは、在庫を多く抱える卸・製造・小売などで、資金の必要時期にある程度余裕がある会社です。逆に、在庫が薄い業態や、今日明日に現金が要る局面には向きません。速さが最優先なら別の手段、コストを抑えたいなら在庫担保を含む融資——という時間軸での選び分けになります。

使う前に確かめること

在庫担保融資は、条件が会社ごと・在庫ごとに大きく変わります。制度としても発展の途上にあり、「使える/使えない」を一般論で断言できません。検討するなら、次の点を金融機関に具体的に確かめてから進めます。

相談前に整理・確認すること

  • 担保にできそうな在庫の種類・数量・おおよその価値を把握しているか
  • 在庫管理の帳簿と実地の数量が合っているか
  • その在庫は自社が確実に所有しているか(委託品・所有権留保がないか)
  • 借入後に求められる在庫報告の頻度・方法を確認したか
  • 掛目や利息など、費用の見込みを確かめたか
  • 資金が必要な時期に対して、評価・契約の時間が間に合うか
  • 他の手段(融資・売掛資金化)と比べて、コストと速さが見合うか

とくに所有の明確さと在庫数の正確さは、評価の前提になります。ここが整っていないと、そもそも評価に進めないことがあります。制度や適用可否の判断は個別性が高いため、具体的な検討は取引金融機関に相談し、必要に応じて税理士・弁護士など専門家の確認を受けてください。

よくある誤解

在庫を担保にすると在庫を手放すことになる
手放しません。在庫は自社に置いたまま、事業で使い続けながら担保に入れて借ります。売るのではなく借りる手段です。
どんな在庫でも担保になる
換金しやすく価値が安定した在庫が中心です。特注品・生鮮品・所在があいまいな在庫は評価されにくくなります。
在庫の帳簿価額の満額を借りられる
処分価値を見積もり、そこに掛目をかけた額が目安です。帳簿価額より低くなるのが一般的です。
ファクタリングと同じで負債は増えない
在庫担保は「借りる」手段なので借入金として負債が増えます。「売る」ファクタリングとは性質が違います。
申し込めばすぐ現金が入る
在庫の評価と担保設定に時間がかかり、数週間かかることもあります。急ぎの資金には向きません。

検討チェックリスト

在庫担保が自社に合うかの見極め

  • 換金しやすい在庫を、まとまった規模で抱えている
  • 在庫の数量と所有が正確に把握できている
  • 資金が必要な時期まで、評価・契約の時間の余裕がある
  • 借入後の在庫報告の手間を許容できる
  • 速さより、コストの低さを優先したい局面である
  • 売掛債権担保やファクタリングと比べて、条件が見合っている
今すぐの資金なら、まず選択肢を確かめる

在庫担保は時間のかかる手段です。急いで現金が要る場合は、売掛金の額と入金してほしい時期を入れると、条件に合う事業者と手取りの目安が出ます。5問・約30秒、登録は不要です。

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よくある質問

Q. 在庫を担保にすると、その在庫は使えなくなりますか
いいえ。担保に入れても在庫は自社に置いたまま、通常どおり販売や製造に使えます。在庫が動くことを前提にした仕組みなので、事業を止める必要はありません。ただし在庫の残高や動きを定期的に報告することが一般的です。
Q. どれくらい借りられますか
在庫の処分価値を見積もり、そこに掛目をかけた額が目安になります。掛目は在庫の換金性や管理状況で変わり、保守的に設定されやすい傾向です。具体的な額は金融機関の個別審査によります。
Q. 売掛債権を担保にするのと、どちらがいいですか
担保にする資産の中心が在庫か売掛金かによります。在庫を多く抱える業態は在庫担保、売掛金が資産の中心なら売掛債権担保が入口です。両方を組み合わせる形もあります。売掛債権担保の詳しい仕組みは「あわせて読む」の記事をご覧ください。
Q. すぐに現金が必要な場合にも使えますか
向きません。在庫の評価と担保設定に時間がかかり、数週間かかることもあります。今日明日で現金が必要な場合は、より早い別の手段のほうが現実的です。
Q. 生鮮品や特注品でも担保にできますか
評価されにくい傾向があります。生鮮品は傷みやすく、特注品は売り先が限られるため、いざというときの換金が難しいからです。換金しやすく価値の安定した在庫ほど担保に向きます。
Q. ファクタリングとどう違いますか
在庫担保は在庫を「担保に借りる」手段で、借入金として負債が増えます。ファクタリングは売掛債権を「売って」現金化する手段で、負債は増えません。売るか借りるかという根本が違います。
Q. 委託で預かっている在庫も担保にできますか
自社が所有していない在庫は担保にできないのが原則です。委託品や所有権が相手に残っているものは対象外になります。担保にできるのは自社が確実に所有する在庫です。

出典

  1. 中小企業庁「資金繰り・資金調達に関する情報」https://www.chusho.meti.go.jp/
  2. 経済産業省(動産・債権を活用した資金調達に関する一般情報)https://www.meti.go.jp/
  3. 金融庁(事業性に着目した融資に関する一般情報)https://www.fsa.go.jp/
  4. 手数料水準は本サイト掲載102社の公表値(2026年7月時点)にもとづく

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