遅延損害金とは、代金の支払いが約束の期日より遅れたときに、遅れたぶんだけ上乗せして請求できるお金のことです。買った側・発注した側が期日までに払わなかった場合、受注側は「遅れによって生じた損害」を金銭で求めることができます。
ポイントは、遅延損害金は「請求してよいもの」であって、自動で振り込まれるものではないという点です。相手が遅れたからといって勝手に増えて入金されるわけではなく、受注側が計算し、請求して、はじめて回収の対象になります。逆に言えば、請求する権利があること自体が、期日を守らせるための交渉材料になります。
遅延損害金は支払いが期日より遅れたぶんに対して上乗せできる金銭です。自動では発生・入金されず、受注側が計算して請求する必要があります。権利があること自体が、期日を守らせる材料になります。
「そもそも遅延損害金を請求できるのか」という疑問には、はっきり答えられます。期日を過ぎた代金には、原則として遅延損害金を請求できます。根拠は大きく2つに分かれます。
| 根拠 | 使う利率 | どんなとき |
|---|---|---|
| 契約の定め(約定) | 契約で決めた利率 | 取引基本契約や注文書に「遅延した場合は年◯%」と書いてあるとき |
| 法律の定め(法定) | 法定利率 | 契約に遅延損害金の定めがないとき |
| 下請法の対象取引 | 年14.6% | 下請法が適用される取引で、支払いが期限を過ぎたとき |
順序で覚えると分かりやすいです。契約に定めがあればその利率、なければ法定利率。そして、その取引が下請法の対象であれば、法律が別に年14.6%の遅延利息を定めています。まずは自社の契約書に遅延損害金の条項があるかを確認するのが出発点です。
書面の契約書を交わしていなくても、注文と納品という取引の実態があれば代金債権は成立します。契約に遅延損害金の定めがないだけなので、その場合は法定利率で請求できます。請求をあきらめる理由にはなりません。
取引基本契約書や注文書に「支払いが遅延した場合は年◯%の遅延損害金を支払う」といった条項があれば、その約定利率が優先して適用されます。まずは手元の契約書を確認してください。
約定利率は、当事者の合意で決めた率です。実務では、法定利率より高めに設定されていることが多く、その場合は約定のほうで計算します。契約に書かれた率が、そのまま計算に使う利率になります。ただし、あまりに高すぎる利率は、公序良俗などの観点から制限される場合があるため、契約段階で常識的な範囲に収めておくのが安全です。
契約に遅延損害金の定めがない場合は、法定利率を使います。法定利率は民法で定められており、2020年4月の民法改正で年3%を出発点とし、その後3年ごとに見直される変動制になりました。
変動制のため、実際に計算に使う率は「その債務が遅滞に陥った時点」の法定利率です。時期によって率が変わりうるので、計算の前に、その時点の法定利率を必ず確認してください。ここは断定せず、e-Gov法令検索や公的機関の情報で現行の率を確かめるのが確実です。
変動制のため、記事や書式に書かれた古い率をそのまま使うと誤ります。遅滞が始まった時点の法定利率を、e-Gov法令検索などで確認してから計算するのが正しい手順です。
取引が下請法(下請代金支払遅延等防止法)の対象である場合は、話が変わります。下請法は、支払いが期限を過ぎたときに年14.6%の遅延利息を支払うことを、法律として発注者(親事業者)に義務づけています。
この年14.6%は、契約に遅延損害金の定めがあるかどうかにかかわらず、下請法の対象取引で支払いが遅れれば法律上発生するものです。法定利率よりかなり高い水準で、それだけ「下請代金は期日どおりに払うべし」という要請が強いことを表しています。
ただし、自社の取引が下請法の対象に当たるかどうかは、資本金の区分や取引の内容によって決まり、個別の判断が必要です。ここは思い込みで進めず、判定の詳しい条件は別記事にゆずります。まずは「対象なら年14.6%が法律で定められている」という事実を押さえてください。
下請法の対象取引では、支払いが期限を過ぎると年14.6%の遅延利息が法律で定められています。法定利率より高く、契約の定めの有無にかかわらず発生します。対象かどうかの判定は個別判断です。
遅延損害金でつまずきやすいのが「いつから数えるか」です。起算点を間違えると、金額が大きくずれます。
一般の取引では、支払期日の翌日から遅延損害金が発生します。期日当日はまだ遅延ではなく、その翌日が1日目です。
一方、下請法の対象取引では、支払期日の考え方そのものが法律で定められています。下請代金は、物品やサービスを受領した日から60日以内のできるだけ短い期間内に支払わなければならず、この期限を過ぎると遅延になります。そして遅延利息は、受領日から60日を経過した日を起点に計算します。
| 取引の種類 | 遅延損害金の起算点 |
|---|---|
| 一般の取引(約定・法定) | 約束した支払期日の翌日から |
| 下請法の対象取引 | 受領日から60日を経過した日から |
下請法では、契約で60日より長いサイトを定めても、受領日から60日を過ぎた分は遅延として扱われる点が特徴です。
遅延損害金の計算式は、覚えてしまえば単純です。
代金 × 利率 × 遅延日数 ÷ 365 = 遅延損害金
利率は、契約に定めがあれば約定利率、なければ法定利率、下請法の対象なら年14.6%。365で割るのは、年利を1日あたりに直すためです。
順に当てはめるだけです。まず対象の代金額を置き、次に使う利率を決め、遅延した日数をかけ、最後に365で割って1日あたりに直します。うるう年を厳密に見る場合は366で割ることもありますが、実務では365で計算するのが一般的です。
代金100万円の支払いが30日遅れた場合で、利率ごとにいくらになるかを比べます。
| 使う利率 | 計算 | 遅延損害金 |
|---|---|---|
| 法定利率(年3%と仮定) | 1,000,000 × 0.03 × 30 ÷ 365 | 約2,466 |
| 約定利率(年6%の例) | 1,000,000 × 0.06 × 30 ÷ 365 | 約4,932 |
| 下請法(年14.6%) | 1,000,000 × 0.146 × 30 ÷ 365 | 12,000 |
年14.6%は「1日あたり代金の約0.04%」にあたり、100万円なら1日400円・30日で12,000円という覚えやすい数字になります。法定利率(年3%と仮定)とは金額が大きく異なります。
数字が大きく違うのが分かります。同じ遅れでも、どの利率を使うかで金額が数倍変わるため、まず「自社の取引がどの根拠に当たるか」を確認することが、正しい請求額を出す前提になります。なお法定利率は変動制なので、上表の3%は説明のための仮定です。実際の計算では、その時点の率を確認してください。
遅延日数は、起算日から実際に入金された日(または請求時点)までを1日単位で数えます。起算点を1日でも早く取ると過大請求になり、逆に遅く取ると取りこぼします。カレンダーで実日数を正確に数えてください。
ここが実務の勘どころです。遅延損害金は「請求できる権利がある」こと自体が交渉材料になりますが、実際には満額を取り立てるより、今後の期日を守らせるほうを優先することが多くあります。
理由は取引の継続です。数千円から数万円の遅延損害金を厳密に取り立てることで、その後の関係がぎくしゃくし、次の受注に響くなら、割に合わないことがあります。むしろ「本来は遅延損害金を請求できる立場だが、今回は期日を正してもらえれば求めない」という形で、次回からの支払期日の是正を引き出すカードとして使うほうが、受注側の利益になる場面が多いのです。
一方で、下請法の対象取引で親事業者が繰り返し支払いを遅らせる、あるいは受領から60日を大きく超えるといった場合は、話が別です。これは受注側が我慢して調整する問題ではなく、法律違反の可能性がある領域で、公正取引委員会や中小企業庁への相談という道があります。60日を超えるときに取れる手段は、次の関連記事にまとめています。
遅延損害金は請求権があること自体が交渉材料です。少額を厳密に取り立てるより、今後の期日是正を優先する実務判断が多い一方、下請法の対象で常態的に遅れる場合は公的機関への相談も選択肢になります。
実際に請求する、あるいは交渉材料として持ち出す場合は、事実を数字で示せる状態にしておきます。手順はこうです。
証拠として役立つのは、注文書・納品書・検収の記録・請求書・入金の履歴です。いつ受領し、いつが期日で、いつ入金されたかが日付で追える状態にしておくと、金額の根拠が明確になり、交渉でも請求でも通りやすくなります。
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※ 本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の法律・税務の助言ではありません。下請法は2026年1月1日に改正法が施行され、法律の名称や規制内容が変更されています。法定利率も変動しうるため、遅延損害金の請求にあたっては、e-Gov法令検索や公正取引委員会・中小企業庁の最新情報で現行の条文・利率を確認し、適用の可否など具体的な判断は弁護士等の専門家にご相談ください。
この記事はファクタリングの一部です。手段そのものを比べたい場合は、あわせてご覧ください。