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遅延損害金は請求できるのか|利率と計算

支払いが遅れたときの遅延損害金。契約の定めや法定利率、下請法対象なら年14.6%。計算式と具体例、そして請求する権利が交渉材料になる一方で、実務では期日の是正を優先する現実を示します。

公開:2026年7月21日 Creww Finance Media 編集部
この記事の内容

  1. 遅延損害金とは何か
  2. 請求できる根拠|契約か法律か
  3. 契約に定めがあるとき|約定利率
  4. 定めがないとき|法定利率
  5. 下請法の対象取引|年14.6%の遅延利息
  6. 起算点|いつから数えるか
  7. 計算式と具体例
  8. 金額を試算してみる
  9. 実務ではどう使うか
  10. 請求の進め方と証拠
  11. よくある誤解
  12. 請求前チェックリスト

遅延損害金とは何か

遅延損害金とは、代金の支払いが約束の期日より遅れたときに、遅れたぶんだけ上乗せして請求できるお金のことです。買った側・発注した側が期日までに払わなかった場合、受注側は「遅れによって生じた損害」を金銭で求めることができます。

ポイントは、遅延損害金は「請求してよいもの」であって、自動で振り込まれるものではないという点です。相手が遅れたからといって勝手に増えて入金されるわけではなく、受注側が計算し、請求して、はじめて回収の対象になります。逆に言えば、請求する権利があること自体が、期日を守らせるための交渉材料になります。

この章の要点

遅延損害金は支払いが期日より遅れたぶんに対して上乗せできる金銭です。自動では発生・入金されず、受注側が計算して請求する必要があります。権利があること自体が、期日を守らせる材料になります。

請求できる根拠|契約か法律か

「そもそも遅延損害金を請求できるのか」という疑問には、はっきり答えられます。期日を過ぎた代金には、原則として遅延損害金を請求できます。根拠は大きく2つに分かれます。

根拠 使う利率 どんなとき
契約の定め(約定) 契約で決めた利率 取引基本契約や注文書に「遅延した場合は年◯%」と書いてあるとき
法律の定め(法定) 法定利率 契約に遅延損害金の定めがないとき
下請法の対象取引 年14.6% 下請法が適用される取引で、支払いが期限を過ぎたとき

順序で覚えると分かりやすいです。契約に定めがあればその利率、なければ法定利率。そして、その取引が下請法の対象であれば、法律が別に年14.6%の遅延利息を定めています。まずは自社の契約書に遅延損害金の条項があるかを確認するのが出発点です。

「契約書がない」場合でも請求できる

書面の契約書を交わしていなくても、注文と納品という取引の実態があれば代金債権は成立します。契約に遅延損害金の定めがないだけなので、その場合は法定利率で請求できます。請求をあきらめる理由にはなりません。

契約に定めがあるとき|約定利率

取引基本契約書や注文書に「支払いが遅延した場合は年◯%の遅延損害金を支払う」といった条項があれば、その約定利率が優先して適用されます。まずは手元の契約書を確認してください。

約定利率は、当事者の合意で決めた率です。実務では、法定利率より高めに設定されていることが多く、その場合は約定のほうで計算します。契約に書かれた率が、そのまま計算に使う利率になります。ただし、あまりに高すぎる利率は、公序良俗などの観点から制限される場合があるため、契約段階で常識的な範囲に収めておくのが安全です。

約定利率契約当事者が合意して契約書に定めた利率。定めがあれば法定利率より優先して使う。
法定利率契約に定めがないときに、法律が定める利率。民法上は3年ごとに見直される変動制。

定めがないとき|法定利率

契約に遅延損害金の定めがない場合は、法定利率を使います。法定利率は民法で定められており、2020年4月の民法改正で年3%を出発点とし、その後3年ごとに見直される変動制になりました。

変動制のため、実際に計算に使う率は「その債務が遅滞に陥った時点」の法定利率です。時期によって率が変わりうるので、計算の前に、その時点の法定利率を必ず確認してください。ここは断定せず、e-Gov法令検索や公的機関の情報で現行の率を確かめるのが確実です。

法定利率は「その時点」で確認する

変動制のため、記事や書式に書かれた古い率をそのまま使うと誤ります。遅滞が始まった時点の法定利率を、e-Gov法令検索などで確認してから計算するのが正しい手順です。

下請法の対象取引|年14.6%の遅延利息

取引が下請法(下請代金支払遅延等防止法)の対象である場合は、話が変わります。下請法は、支払いが期限を過ぎたときに年14.6%の遅延利息を支払うことを、法律として発注者(親事業者)に義務づけています。

この年14.6%は、契約に遅延損害金の定めがあるかどうかにかかわらず、下請法の対象取引で支払いが遅れれば法律上発生するものです。法定利率よりかなり高い水準で、それだけ「下請代金は期日どおりに払うべし」という要請が強いことを表しています。

14.6%下請法が定める年利
60日受領日から起算する日数
365日計算で1年とみなす日数

ただし、自社の取引が下請法の対象に当たるかどうかは、資本金の区分や取引の内容によって決まり、個別の判断が必要です。ここは思い込みで進めず、判定の詳しい条件は別記事にゆずります。まずは「対象なら年14.6%が法律で定められている」という事実を押さえてください。

この章の要点

下請法の対象取引では、支払いが期限を過ぎると年14.6%の遅延利息が法律で定められています。法定利率より高く、契約の定めの有無にかかわらず発生します。対象かどうかの判定は個別判断です。

起算点|いつから数えるか

遅延損害金でつまずきやすいのが「いつから数えるか」です。起算点を間違えると、金額が大きくずれます。

一般の取引では、支払期日の翌日から遅延損害金が発生します。期日当日はまだ遅延ではなく、その翌日が1日目です。

一方、下請法の対象取引では、支払期日の考え方そのものが法律で定められています。下請代金は、物品やサービスを受領した日から60日以内のできるだけ短い期間内に支払わなければならず、この期限を過ぎると遅延になります。そして遅延利息は、受領日から60日を経過した日を起点に計算します。

起算点の考え方
取引の種類 遅延損害金の起算点
一般の取引(約定・法定) 約束した支払期日の翌日から
下請法の対象取引 受領日から60日を経過した日から

下請法では、契約で60日より長いサイトを定めても、受領日から60日を過ぎた分は遅延として扱われる点が特徴です。

計算式と具体例

遅延損害金の計算式は、覚えてしまえば単純です。

遅延損害金の計算式

代金 × 利率 × 遅延日数 ÷ 365 = 遅延損害金

利率は、契約に定めがあれば約定利率、なければ法定利率、下請法の対象なら年14.6%。365で割るのは、年利を1日あたりに直すためです。

順に当てはめるだけです。まず対象の代金額を置き、次に使う利率を決め、遅延した日数をかけ、最後に365で割って1日あたりに直します。うるう年を厳密に見る場合は366で割ることもありますが、実務では365で計算するのが一般的です。

金額を試算してみる

代金100万円の支払いが30日遅れた場合で、利率ごとにいくらになるかを比べます。

代金100万円・遅延30日の場合(単位:円)
使う利率 計算 遅延損害金
法定利率(年3%と仮定) 1,000,000 × 0.03 × 30 ÷ 365 約2,466
約定利率(年6%の例) 1,000,000 × 0.06 × 30 ÷ 365 約4,932
下請法(年14.6%) 1,000,000 × 0.146 × 30 ÷ 365 12,000

年14.6%は「1日あたり代金の約0.04%」にあたり、100万円なら1日400円・30日で12,000円という覚えやすい数字になります。法定利率(年3%と仮定)とは金額が大きく異なります。

数字が大きく違うのが分かります。同じ遅れでも、どの利率を使うかで金額が数倍変わるため、まず「自社の取引がどの根拠に当たるか」を確認することが、正しい請求額を出す前提になります。なお法定利率は変動制なので、上表の3%は説明のための仮定です。実際の計算では、その時点の率を確認してください。

日数の数え方に注意

遅延日数は、起算日から実際に入金された日(または請求時点)までを1日単位で数えます。起算点を1日でも早く取ると過大請求になり、逆に遅く取ると取りこぼします。カレンダーで実日数を正確に数えてください。

実務ではどう使うか

ここが実務の勘どころです。遅延損害金は「請求できる権利がある」こと自体が交渉材料になりますが、実際には満額を取り立てるより、今後の期日を守らせるほうを優先することが多くあります。

理由は取引の継続です。数千円から数万円の遅延損害金を厳密に取り立てることで、その後の関係がぎくしゃくし、次の受注に響くなら、割に合わないことがあります。むしろ「本来は遅延損害金を請求できる立場だが、今回は期日を正してもらえれば求めない」という形で、次回からの支払期日の是正を引き出すカードとして使うほうが、受注側の利益になる場面が多いのです。

遅れたら必ず満額を取り立てるべきだ
権利はあっても、取引継続を優先して「今後は期日を守ってもらう」ことと引き換えにする実務判断もあります。状況しだいです。

一方で、下請法の対象取引で親事業者が繰り返し支払いを遅らせる、あるいは受領から60日を大きく超えるといった場合は、話が別です。これは受注側が我慢して調整する問題ではなく、法律違反の可能性がある領域で、公正取引委員会や中小企業庁への相談という道があります。60日を超えるときに取れる手段は、次の関連記事にまとめています。

この章の要点

遅延損害金は請求権があること自体が交渉材料です。少額を厳密に取り立てるより、今後の期日是正を優先する実務判断が多い一方、下請法の対象で常態的に遅れる場合は公的機関への相談も選択肢になります。

請求の進め方と証拠

実際に請求する、あるいは交渉材料として持ち出す場合は、事実を数字で示せる状態にしておきます。手順はこうです。

  1. 支払期日を確定する(契約・注文書・下請法の60日ルールから)
  2. 使う利率を決める(約定 → なければ法定 → 下請法対象なら14.6%)
  3. 遅延日数を数える(起算日から入金日または請求時点まで)
  4. 計算式に当てはめて金額を出す(代金 × 利率 × 日数 ÷ 365)
  5. 根拠と計算過程を添えて書面で伝える

証拠として役立つのは、注文書・納品書・検収の記録・請求書・入金の履歴です。いつ受領し、いつが期日で、いつ入金されたかが日付で追える状態にしておくと、金額の根拠が明確になり、交渉でも請求でも通りやすくなります。

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よくある誤解

遅延損害金は相手が自動で払ってくれる
自動では発生・入金されません。受注側が計算し、請求してはじめて回収の対象になります。
契約書がないと遅延損害金は請求できない
契約に定めがなければ法定利率で請求できます。契約書の有無は請求をあきらめる理由になりません。
遅延損害金の利率はどの取引でも同じ
約定・法定・下請法(14.6%)で率は異なります。まずどの根拠に当たるかの確認が先です。
下請法の60日は「支払期日の翌日」から数える
下請法の遅延利息は、受領日から60日を経過した日を起点に数えます。一般取引とは起算点が違います。
請求すると必ず取引が壊れる
満額の取り立てを求めず、今後の期日是正を引き出す材料として使う実務判断もあります。使い方しだいです。

請求前チェックリスト

計算・請求の前に

  • 契約書に遅延損害金の定め(約定利率)があるか確認した
  • 定めがない場合、その時点の法定利率を確認した
  • 下請法の対象取引かどうかを確認した(対象なら年14.6%)
  • 起算点を正しく取った(一般=期日の翌日/下請法=受領日から60日経過後)
  • 遅延日数をカレンダーで正確に数えた
  • 代金 × 利率 × 日数 ÷ 365 で金額を出した
  • 注文書・納品書・入金履歴など、日付の証拠をそろえた
  • 取引継続とのバランスで、請求か期日是正かの方針を決めた

よくある質問

Q. 遅延損害金は必ず請求しなければいけませんか
義務ではありません。請求できる権利があるだけで、行使するかは受注側の判断です。取引の継続を優先し、今後の期日是正と引き換えに請求しない、という選び方も実務では一般的です。
Q. 契約書に利率が書いていない場合はいくらで計算しますか
法定利率で計算します。民法上は3年ごとに見直される変動制のため、遅滞が始まった時点の率を、e-Gov法令検索などで確認してから計算してください。
Q. 下請法の年14.6%はどんな取引でも使えますか
下請法の対象取引に限られます。対象かどうかは資本金区分や取引内容による個別判断です。判定の詳しい条件は関連記事にゆずります。対象であれば、支払いが期限を過ぎると年14.6%が法律で定められています。
Q. 100万円が30日遅れたら、下請法ではいくらですか
1,000,000 × 0.146 × 30 ÷ 365 = 12,000円です。年14.6%は100万円なら1日あたり約400円にあたるため、30日で12,000円という計算になります。
Q. 遅延日数はいつからいつまで数えますか
起算日(一般取引は支払期日の翌日、下請法は受領日から60日を経過した日)から、実際に入金された日または請求時点までを、1日単位で数えます。
Q. 遅延損害金の平均額や、遅延が起きる割合は分かりますか
確認できていません。取引ごとに代金額・利率・日数が異なり、公的に確定した平均値を確認できていないため、本記事では具体的な統計値は示しません。
Q. 相手が繰り返し支払いを遅らせる場合はどうすればいいですか
下請法の対象取引で常態的に遅れる、または受領から60日を大きく超える場合は、法律違反の可能性があります。公正取引委員会・中小企業庁への相談や、弁護士への相談を検討してください。60日を超えたときの手段は関連記事にまとめています。
Q. 利率が高すぎる約定でも、その率で請求できますか
約定利率が優先されますが、社会通念上あまりに高い利率は、公序良俗などの観点から制限される場合があります。契約段階で常識的な範囲に収めておくのが安全です。個別の可否は弁護士にご相談ください。

出典

  1. 公正取引委員会「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」https://www.jftc.go.jp/shitauke/
  2. 中小企業庁「取引・下請け」https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/
  3. e-Gov法令検索(民法の法定利率、下請代金支払遅延等防止法の条文)https://laws.e-gov.go.jp/
  4. 計算例は本文記載の計算式(代金 × 利率 × 遅延日数 ÷ 365)による算術。手数料水準は本サイト掲載102社の公表値(2026年7月時点)にもとづく

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