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支払期日が60日を超えていたときに取れる手段

支払期日が受領日から60日を超えている。気づいたときに何をするか。事実の確定、取引先への伝え方、送る文面の型、行政の窓口の使い分けまで、順を追って整理します。相手からよく返ってくる3つの答えへの対処も含めます。

公開:2026年7月20日 最終更新:2026年7月21日 Creww Finance Media 編集部
この記事の内容

  1. 動く前に、2つ確かめる
  2. 「期日が長い」と「期日を過ぎた」の違い
  3. 証拠として揃えるもの
  4. 段階1|自社で事実を確定させる
  5. 段階2|取引先に伝える
  6. 実際に送る文面の型
  7. 段階3|行政の窓口を使う
  8. 申告するとどうなるのか
  9. 報復されないのか
  10. 遅延利息はいくら請求できるか
  11. 是正されたあと、どこまで戻るのか
  12. 取引を続けるかどうかの判断
  13. よくある誤解とチェックリスト

動く前に、2つ確かめる

支払期日が受領日から60日を超えている。そう気づいたとき、いきなり抗議に入るのは得策ではありません。前提が2つとも成立していないと、話が空振りに終わります

1本当に60日を
超えているか
2その取引が
下請法の対象か

1つ目は数え方の問題です。支払いサイトは締め日ではなく「受領日」から数えます。月末締め翌月末払いは、月初に納品すれば約60日ですが、月末に納品すれば31日です。同じ契約条件でも、案件ごとに超えているかどうかが変わります。

2つ目は、資本金と委託の種類で決まります。条件を満たしていなければ、60日という上限そのものが適用されません。相手が大企業でも、発注元がグループ内の小さな法人なら対象外になることがあります。

この章の要点

受領日から数えて60日超であること、かつ下請法の対象取引であること。この2つが揃って初めて「違反の可能性がある」と言えます。片方でも欠けていれば、契約条件の交渉として進めることになります。

「期日が長い」と「期日を過ぎた」は別の問題

混同されやすいのですが、この2つは違う話です。取れる手も変わります。

期日が長い 期日を過ぎた
何が起きているか 契約上の支払期日が、受領日から60日を超えて設定されている 定めた期日までに支払われていない
問題の所在 条件そのもの 条件は守られていない
直し方 契約条件を変更してもらう まず支払ってもらう
遅延利息 期日どおりなら発生しない 発生する(年14.6%)
急ぎ度 次回以降の話にできる 今すぐの資金繰りに直結する

両方が同時に起きていることもあります。その場合はまず支払ってもらうことを優先し、条件の見直しは別の議題として立てるのが実務的です。1回の会話に2つの要求を混ぜると、どちらも進みません。

代金を減らされている場合

入金額が請求額より少ないときは、支払期日とはまた別の問題です。対象取引では、あらかじめ定めた代金を後から一方的に減らすことは禁止されています。値引きに合意した事実がないのであれば、差額の内訳を確認するところから始めてください。

証拠として揃えるもの

交渉でも申告でも、必要なのは日付が特定できる記録です。先に揃えておくと、話が早く進みます。

資料 何を示すか 注意点
契約書・取引基本契約書 締め日・支払日・起算点の定め 覚書で条件が変更されていないか
発注書 発注日・金額・支払期日 そもそも交付されていない場合、それ自体が問題
納品の記録 受領日(起算点そのもの) 納品書の控え、送信メール、システムのログ
検収の記録 検収完了日 検収基準の契約では、ここが起算点になる
請求書 請求日と請求額 提出期限に間に合っていたかも確認
通帳・入金明細 実際の入金日と金額 減額されていないか、差額の有無

とくに重要なのが受領日を示す資料です。60日の起算点そのものなので、ここが曖昧だと「いつから数えて超えているのか」を主張できません。納品時のメールやチャットのタイムスタンプでも構いません。

相手にも保存義務がある

対象取引では、発注側にも取引記録の作成と2年間の保存が義務づけられています。自社の記録が不完全でも、相手側に残っているはずだという前提で話を進められます。

段階1|自社で事実を確定させる

資料が揃ったら、次の3つを1枚にまとめます。感情ではなく数字で話すための土台です。

  1. 受領日(または検収完了日)
  2. 契約上の支払期日
  3. その間の日数

複数案件があるなら、案件ごとに表にしてください。「いつもだいたい遅い」ではなく「4月15日受領、支払日6月30日、76日」と特定できる形にすることが目的です。

整理の例
案件 受領日 支払期日 日数 判定
A案件 4月15日 6月30日 76日 60日超
B案件 5月28日 7月31日 64日 60日超
C案件 6月25日 8月31日 67日 60日超

同じ「月末締め翌々月末払い」でも、受領日によって日数は変わります。案件単位で並べると、条件そのものに問題があることが見えます

段階2|取引先に伝える

いきなり行政に持ち込む必要はありません。実務では、伝えれば直るケースが相当あります。担当者や経理が制度を把握していないだけ、ということが珍しくないためです。

誰に伝えるか

支払条件は現場の担当者の裁量ではなく、経理部門や購買部門の規程で決まっています。担当者に言っても「そういう決まりなので」で止まります。ただし、担当者を飛ばして経理に直接連絡すると角が立つため、順序としては次のようになります。

どう伝えるか

ここでの目的は、相手を責めることではなく条件を直してもらうことです。次の3点を守ると、話がこじれにくくなります。

やること 避けること
事実(日付と日数)を示す 「違法です」と断定する
条文の名前だけ触れる 条文を長々と引用して詰める
具体的な着地点を提案する 謝罪や補償を先に求める

「違法だ」と切り出すと、相手は法務を通した防御に入ります。そうなると、直せば済んだ話が長引きます。事実を並べて確認を依頼する形が、結果として早く通ります。

実際に送る文面の型

メールで申し入れる場合の骨格です。そのまま使えるように、要素を分けて示します。

申し入れメールの構成
  1. 用件を1行で|「お支払い条件についてご確認をお願いしたく、ご連絡いたしました」
  2. 事実の提示|「弊社からの納品日と、貴社のお支払い期日を確認したところ、A案件では納品から76日、B案件では64日となっております」
  3. 根拠に軽く触れる|「下請代金の支払期日は、給付を受領した日から60日以内と定められていると認識しております」
  4. 依頼の形にする|「弊社の認識に誤りがないか、貴社にてご確認いただけますでしょうか」
  5. 着地点を示す|「もし条件の変更が難しい場合は、着手金のご設定など、別の形をご相談させていただければ幸いです」

5つ目が効きます。相手に逃げ道を用意しておくと、話が止まりにくくなります。支払サイトそのものを変えられなくても、支払回数を分ける形なら社内規程と衝突しにくいためです。

着手金の割合の決め方や見積書への書き方は、着手金・中間金を標準の見積形式にする で扱っています。

この章の要点

担当者経由で社内確認を依頼するのが最初の一手。事実を並べ、断定を避け、代案を添える。この3つで、多くの場合は行政に持ち込む前に解決します。

相手からよく返ってくる3つの答えと、その先

申し入れると、たいてい次のどれかが返ってきます。それぞれ次の一手が違います。

相手の返答 意味 次の一手
「弊社の支払規程で決まっているので」 担当者に権限がない。規程を変える話になっていない 規程を所管する部署への確認を依頼する。この案件だけの例外ではなく制度の確認として出す
「他社さんも同じ条件でお願いしています」 公平性を理由にした拒否 他社と比べる話ではなく、受領日からの日数という基準の話であることを示す
「検収が終わってからの起算なので問題ない」 起算点の認識が違う 上限は受領日から数えるものであることを、日付を並べて確認してもらう

3つ目は実際によくある誤解です。契約上の締め日を検収基準にすることと、法律上の上限を検収から数えることは別で、後者は認められていません。ここは事実として伝えれば通ることが多い部分です。

検収そのものが遅れて入金が延びる問題は、検収が終わらないと請求できない|契約前に入れるべき検収期限条項で扱っています。

社内では誰が動くか

小さな会社ほど、この作業が後回しになります。役割を先に決めておくと動きます。

経営者が全部やろうとすると止まります。集計だけでも先に走らせておくと、話が具体的になります

段階3|行政の窓口を使う

伝えても是正されない場合、公的な窓口があります。相談先は複数あり、目的によって使い分けます。

窓口 できること 向いている場面
下請かけこみ寺 無料の相談、弁護士への無料相談、当事者間の調整(ADR) まず誰かに相談したい。対象外の取引でも相談できる
公正取引委員会 申告の受付、調査、指導・勧告 是正させたい。匿名での情報提供も可能
中小企業庁 申告の受付、調査 公取委と同様。取引適正化の窓口を持つ
弁護士 代理交渉、内容証明、訴訟 金額が大きい、複数案件にわたる、関係悪化を織り込む場合

順番としては、下請かけこみ寺から入るのが負担が軽いです。無料で、対象外の取引についても相談を受け付けており、いきなり相手を調査対象にする話にはなりません。

申告するとどうなるのか

公正取引委員会や中小企業庁に申告した場合、おおむね次の流れになります。

申告からの流れ
段階 内容
1. 申告 書面・電話・ウェブで受け付けられる。匿名でも情報提供できる
2. 調査 取引の実態を確認する。書面調査が行われることもある
3. 指導 違反のおそれがある場合、是正を求められる
4. 勧告 違反が認められた場合。企業名・違反内容が公表される

多くは指導の段階で処理されます。勧告に至ると社名が公表されるため、発注側にとっては避けたい事態です。この非対称性が、交渉での実質的な後ろ盾になります。

なお、申告してもすぐに支払われるわけではありません。調査には時間がかかるため、目の前の資金繰りは別に手当てする必要があります

報復されないのか

ここが最大の懸念だと思います。結論から言えば、申告したことを理由に取引を減らす・停止するといった報復措置は、法律で明確に禁止されています

それでも不安が残る場合、次のような進め方があります。

取引が続くかどうかは、別の判断

報復が禁止されていることと、その取引先と今後も付き合うべきかは別の話です。60日を超える条件を提示し、指摘しても直さない相手は、資金繰りの観点では継続的なリスクです。取引の集中度と合わせて考える必要があります。

遅延利息はいくら請求できるか

支払期日を過ぎて支払われた場合、対象取引では年14.6%の遅延利息が定められています。起算点は、受領日から60日を経過した日です。

計算のしかた

代金 × 14.6% × 遅延日数 ÷ 365

代金500万円で、受領日から60日を経過した日からさらに30日遅れた場合:
500万円 × 0.146 × 30 ÷ 365 = 60,000円

14.6%年利
60日起算点(受領日から)
6万円500万円・30日遅延の場合

金額としては大きくありませんが、請求できる権利があるという事実そのものが交渉材料になります。実務では、遅延利息を請求するより「今後の支払期日を守ってもらう」ことを優先するほうが現実的です。

是正されたあと、どこまで戻るのか

条件が直った場合、それがいつから適用されるのかは自動的には決まりません。確認しておかないと、直ったつもりで次も同じサイトになります

確認すること なぜ必要か
適用開始はいつからか 「次回契約から」か「今出ている発注分から」かで、資金繰りへの効き方がまったく違う
すでに納品済みの案件は対象か 受領済みで未払いのものが最も影響が大きい
契約書を更新するか 口頭の合意だけだと、担当者が変わった時点で元に戻る
発注書の記載も変わるか 契約書と発注書で条件が食い違うと、後で揉める

実務では覚書を1枚交わしておくのが確実です。契約書の全面改定より軽く、記録として残ります。

どのくらいの期間で動くか

目安の時間軸
段階 期間の目安
資料を揃えて日数を集計する 数時間〜1日
担当者に確認を依頼し、回答を待つ 1〜2週間
書面で正式に申し入れる さらに2〜4週間
行政の窓口に相談する 相談は即日。調査が入る場合は数か月

条件の是正が資金繰りに効いてくるまで、早くても1〜2か月かかります。目の前の不足はこれとは別に手当てが要る、という前提で動いてください。

取引を続けるかどうかの判断

条件が直らなかった場合、その取引を続けるかを決める必要があります。判断材料は3つです。

見るもの 考え方
立替に必要な金額 月商 × 原価率 × (サイト日数 ÷ 30)。これを常時用意できるか
売上の集中度 この1社が売上の何割か。5割を超えるなら、条件を飲まざるを得ない状況そのものが問題
他社との条件差 他の取引先が30〜60日なら、この1社だけが資金を圧迫している

すぐに切れない場合でも、新規の取引先を並行して開拓し、集中度を下げること自体が資金繰りの対策になります

待っている間の資金をどうするか

交渉にも調査にも時間がかかります。その間、立て替えている資金は自社で持つことになります。

時間に余裕があれば融資が最も安く、受注が決まった時点で動けば間に合うことがあります。すでに請求済みで数日以内に必要なら、売掛債権の資金化という選択肢もありますが、コストは融資の数倍から十数倍です。今回の穴を塞ぐ手段であって、資金繰りの改善策ではありません。

いくらで資金化できるか確かめる

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よくある誤解

契約書にサインしたのだから、今さら言えない
対象取引では、合意していても60日超は認められません。サインの有無は関係ありません。
遅れているわけではないので問題ない
期日どおり支払われていても、その期日自体が60日を超えていれば問題です。遅延とは別の論点です。
申告したら取引を切られる
申告を理由とする報復措置は禁止されています。それでも不安なら、匿名の情報提供や相談窓口から入る方法があります。
まず弁護士に依頼すべきだ
金額が大きい場合は有効ですが、多くは担当者経由の確認依頼で解決します。費用対効果を考えて順序を選んでください。
申告すればすぐ入金される
調査には時間がかかります。目の前の資金繰りは、別に手当てする必要があります。

進め方チェックリスト

動き出す前に

  • 受領日から支払期日までの日数を、案件ごとに計算した
  • その取引が下請法の対象か判定した
  • 契約書・発注書・納品記録・請求書・入金明細を揃えた
  • 受領日を示す資料(メール、納品書控え等)がある

伝えるとき

  • 担当者を通して、社内の該当部署への確認を依頼した
  • 事実(日付と日数)を示し、断定的な表現を避けた
  • 着手金など、相手が受け入れやすい代案を添えた
  • やりとりを記録として残した

よくある質問

Q. 60日の起算点は納品日ですか、検収日ですか
法律上は「給付を受領した日」からです。検収の完了を待って起算する取り扱いは認められていません。契約で検収基準としていても、受領日から60日という上限は別に働きます。
Q. 支払日が休業日で翌営業日にずれ、61日になりました
結果として60日を超えるのであれば問題となり得ます。前営業日に前倒しする取り決めにしておくのが安全です。
Q. 手形で支払われる場合はどう数えますか
手形を交付した日ではなく、現金化できる時期まで含めて考える必要があります。手形のサイトが長い場合は、それ自体が問題となる扱いに変わっています。
Q. 過去の取引についても指摘できますか
申告は可能です。相手側の書類保存義務が2年であることもあり、それ以前のものは確認が難しくなります。自社の記録は保存しておいてください。
Q. 匿名で申告できますか
公正取引委員会は匿名での情報提供を受け付けています。ただし匿名の場合、調査の進捗について連絡を受けることは難しくなります。
Q. 相談だけしたい場合はどこへ
下請かけこみ寺が無料で相談を受け付けています。弁護士への無料相談も利用でき、対象外の取引についても相談できます。
Q. 遅延利息を請求すると関係が悪化しませんか
その懸念は現実的です。実務では、過去分の利息より今後の支払期日の是正を優先するほうが、話がまとまりやすい傾向があります。
Q. 発注書をもらっていない場合はどうなりますか
対象取引では、発注時の書面交付は発注側の義務です。交付されていないこと自体が問題であり、支払期日の論点とあわせて指摘できます。
Q. 一次請けから受けている場合、発注元の大企業に言えますか
自社の取引相手は一次請けなので、判定も交渉もその相手との間で行います。発注元の資本金は関係ありません。
Q. 相手が対象外でした。もう打つ手はありませんか
力関係に著しい差があり不当な条件を押し付けられている場合、独占禁止法の優越的地位の濫用にあたる可能性があります。また契約条件としての交渉は引き続き可能です。

出典

  1. 公正取引委員会「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」https://www.jftc.go.jp/shitauke/
  2. 中小企業庁「下請取引の適正化」https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/
  3. 全国中小企業振興機関協会「下請かけこみ寺」https://www.zenkyo.or.jp/kakekomi/
  4. e-Gov法令検索(現行条文)

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