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支払いが遅れたときの督促の順序|口頭から内容証明まで

入金が期日を過ぎたとき、督促には段階があります。事実確認の連絡から書面、内容証明、法的手続きまで。関係を壊さない初期対応から、証拠を残す段階への切り替えを順に示します。

公開:2026年7月21日 Creww Finance Media 編集部
この記事の内容

  1. 督促は「順序」で考える
  2. 連絡する前に|自社側の事実を確認する
  3. 第1段階|口頭・メールで事実確認する
  4. 第2段階|書面で正式に催促する
  5. 第3段階|内容証明郵便で証拠を残す
  6. 第4段階|法的手続き(支払督促・少額訴訟)
  7. 遅延損害金と時効|放置のコスト
  8. 段階を上げるタイミングの見極め
  9. 下請法の対象なら別の道がある
  10. よくある誤解とチェックリスト

督促は「順序」で考える

入金予定日を過ぎても代金が振り込まれない。このとき、いきなり内容証明を送ったり、逆にいつまでも待ち続けたりするのは、どちらも得策ではありません。督促には踏むべき順序があり、段階を追って強めていくのが基本です。

順序の背骨は2つの軸です。ひとつは「関係を壊さない」から「証拠を残す」への切り替え。もうひとつは時間の経過。最初は相手の面子を保ちながら軽く確認し、反応がなければ徐々に正式・強力な手段へ上げていきます。最初から強く出れば、単なる振込忘れだった場合に取引先を失います。逆に遠慮して放置すれば、相手の資金繰りが悪化して回収不能になったり、時効が近づいたりします。

督促の4段階(弱→強)

① 口頭・メールで事実確認 → ② 書面で催促 → ③ 内容証明郵便 → ④ 法的手続き

左ほど関係を保ちやすく、右ほど証拠力・強制力が上がります。相手の反応を見ながら1段ずつ上げるのが原則で、飛ばすほど関係修復は難しくなります。

この章の要点

督促は弱い手段から順に強めていくのが基本。「関係を壊さない初期対応」から「証拠を残す段階」へ、相手の反応を見て切り替えます。いきなり最強手段を使うと、単なる振込忘れの相手を失います。

連絡する前に|自社側の事実を確認する

相手を催促する前に、まず自社側にミスがないかを確認します。督促してから「実はこちらの請求書が届いていなかった」では、立場が逆転してしまいます。

連絡前に確認すること

  • 請求書は正しく発行し、相手に届いているか(送付日・宛先・金額)
  • 振込先口座・金額・支払期日に間違いはないか
  • 検収は完了しているか(相手の社内で承認が止まっていないか)
  • 入金の締め日・支払サイトから逆算した期日は本当に過ぎているか
  • 実は入金済みで、こちらの消込が漏れていないか

とくに多いのが、請求書の未達締め日の勘違いです。相手の「月末締め翌月末払い」を自社が「翌々月末」と誤解していれば、まだ期日は来ていません。期日の数え方そのものに不安があるなら、督促に入る前に整理しておきます。

期日の数え方に自信がないとき

「いつ入金されるはず」を締め日・支払サイトから正確に逆算できていないと、督促の前提が崩れます。数え方は別記事で1から解説しているので、あいまいな場合はそちらで確認してから督促に進んでください。

第1段階|口頭・メールで事実確認する

自社側に問題がなければ、いよいよ相手に連絡します。第1段階は「督促」ではなく「確認」の体裁で行うのが要点です。単なる振込忘れや社内の処理漏れであることは実際に多く、ここで相手を責めると、取引そのものを失いかねません。

電話・メールの使い分け

金額が小さく関係が良好なら、電話やメールで「ご入金の確認が取れておらず、行き違いでしたら恐縮ですが」と柔らかく切り出します。相手の担当者も、忘れていた場合はこの言い方なら動きやすくなります。

ただし電話は記録が残りません。口頭で「来週払う」と言われても、証拠にはなりにくい。そこで、電話で話した内容は必ずメールで追いかけて文字に残します。「先ほどお電話で伺った通り、◯月◯日にご入金いただける旨、承知しました」と一通送るだけで、後の証拠になります。

事実確認の連絡督促の第1段階。相手を責めず「入金が確認できていない」と伝え、行き違いや振込忘れを解消する軽い接触。関係維持を最優先にする。
追いメール電話で話した内容を文字に残すために送るメール。口頭のやり取りを証拠化し、「言った・言わない」を防ぐ。
この章の要点

第1段階は「確認」の姿勢で。多くは振込忘れや検収遅れです。電話で済ませず、必ずメールで文字に残す。ここで関係を壊さないことが、その後の取引を守ります。

第2段階|書面で正式に催促する

第1段階で反応がない、あるいは「払う」と言ったのにまた期日を過ぎた。このときは書面での催促に上げます。ここからは「確認」ではなく、明確な「請求」です。

書面といっても、この段階ではまだ普通郵便やメール添付のPDFで構いません。内容証明はもう一段上です。ただし、文面は口頭より格段に正式にし、支払いを求める意思を明確にします。

催促書(督促状)に入れる項目
項目 書く内容
債権の特定 契約日・取引内容・請求書番号
金額 未払いの元本額(税込)
当初の期日 本来支払われるべきだった日
新たな支払期限 「◯月◯日までにお支払いください」
振込先 口座情報を再掲
連絡の依頼 支払えない事情があれば連絡がほしい旨

この段階では相手の事情を聞く余地を残します。資金繰りが厳しいなら分割払いの相談に応じたほうが、結果的に回収できることも多いためです。

大事なのは、期限を具体的な日付で切ることです。「早めに」ではなく「◯月◯日まで」。期限を切ることで、その日を過ぎたら次の段階に進む根拠になります。同時に、この督促状は控えを必ず保存します。後で法的手続きに進むとき、「催促した事実」の記録になります。

第3段階|内容証明郵便で証拠を残す

書面でも動かない、または相手が支払いを渋る姿勢を見せた。ここで内容証明郵便に切り替えます。これが「関係維持」から「証拠を残す」への明確な転換点です。

内容証明郵便とは何か

内容証明郵便は、いつ・誰が・誰に・どんな内容の文書を送ったかを、日本郵便が証明する制度です。ふつうの手紙は「送った」「届いていない」で争いになりますが、内容証明なら文面と差出日が公的に記録されます。配達証明を付ければ、相手が受け取った日も証明できます。

内容証明郵便文書の内容と差出日を郵便局が証明する郵便。相手にプレッシャーを与え、後の裁判で「催告した」証拠になる。それ自体に強制力はない。
配達証明相手に配達された日付を証明するオプション。内容証明とセットで使い、「いつ届いたか」まで押さえる。
催告支払いを求める意思表示。内容証明での催告には、時効の完成を6か月間先延ばしにする効果がある(民法150条)。

内容証明が持つ2つの効果

内容証明そのものに、お金を強制的に取り立てる力はありません。しかし2つの実務的な効果があります。

心理的圧力「本気だ」と相手に伝わる
証拠化催告した事実と日付が残る
6か月催告による時効の完成猶予

ひとつは心理的な効果です。内容証明が届くと、相手は「次は法的手続きだ」と受け取ります。これまで放置していた相手が、ここで支払ってくるケースは少なくありません。もうひとつは証拠と時効の効果。裁判に進んだとき「きちんと催告した」証明になり、あわせて時効の完成を一時的に止められます(詳しくは次章)。

書き方の要点

内容証明には字数・行数の形式ルール(1行の文字数、1枚の行数など)があります。テンプレートは日本郵便のサイトや書式集で確認できます。文面で外せないのは次の点です。

内容証明の文面に入れる

  • 債権の特定(契約日・取引内容・請求書番号・金額)
  • 本来の支払期日と、すでに経過している事実
  • 明確な支払期限(「本書面到達後◯日以内」など)
  • 遅延損害金を請求する場合はその旨
  • 期限までに支払われない場合は法的手続きを取る旨
  • 差出人・宛先の正確な氏名/名称・住所
弁護士名で出すという選択

内容証明は自社名でも出せますが、弁護士名で送ると相手の受け止めが変わります。費用はかかりますが、金額が大きい、相手が悪質、といった場合は、この段階で専門家に相談する価値があります。文面の不備で効果が薄れるのも防げます。

第4段階|法的手続き(支払督促・少額訴訟)

内容証明でも支払われなければ、裁判所を使う法的手続きに進みます。中小の取引でよく使われるのが「支払督促」と「少額訴訟」です。どちらも弁護士なしで本人が申し立てられ、通常の訴訟より手軽です。

支払督促 少額訴訟
対象 金銭の支払い請求(上限なし) 60万円以下の金銭請求
審理 書類審査のみ(出廷不要) 原則1回の期日で結審
申立先 相手の住所地の簡易裁判所 簡易裁判所
相手が争うと 通常訴訟に移行 通常訴訟に移行
向く場面 相手が争わなそうな明白な債権 少額で早く決着させたい

支払督促

簡易裁判所の書記官に申し立てると、裁判所から相手へ支払督促が送られます。相手が2週間以内に異議を出さなければ、仮執行宣言が付き、強制執行(差押え)が可能になります。書類だけで進み、出廷も要りません。ただし相手が異議を出すと、通常訴訟へ移行します。争いになりにくい明白な債権に向きます。

少額訴訟

60万円以下の金銭請求に限り使える簡易な訴訟です。原則として1回の期日で審理を終え、その日のうちに判決が出ます。証拠はその場ですぐ調べられるものに限られるため、契約書・請求書・内容証明の控えなど、書面をそろえておくことが前提になります。ひとつの簡易裁判所で同じ人が使える回数は年10回までと決まっています。

勝っても自動では払われない

支払督促や判決で「支払え」となっても、相手が任意に払わなければ、別途強制執行(差押え)の手続きが必要です。差し押さえるには相手の財産(銀行口座・売掛金など)を把握している必要があり、財産がなければ回収できません。「勝訴=回収」ではない点は、進む前に理解しておきます。

この章の要点

60万円以下なら少額訴訟、争いが少なそうな債権なら支払督促。どちらも本人で申し立てられます。ただし相手が争えば通常訴訟に移り、勝っても回収には差押えが要ります。

遅延損害金と時効|放置のコスト

督促を後回しにすると、2つの問題が育ちます。遅延損害金の取りそびれ時効です。

遅延損害金は請求できる

支払いが遅れた期間について、遅延損害金を請求できます。契約書に利率の定めがあればその率、なければ法定利率によります。法定利率は2020年4月の民法改正で年3%を出発点とし、3年ごとに見直される変動制になりました。金額自体は小さくても、督促の文面に「遅延損害金も請求する」と入れておくこと自体が、相手への圧力になります。

売掛金にも時効がある

売掛債権は放置すると時効で消滅します。改正民法では、原則として「権利を行使できると知った時から5年」で時効にかかります。5年もあると思いがちですが、忙しさで督促を止めているうちに近づくことは実際にあります。

時効を止める手段
手段 効果
内容証明での催告 完成を6か月先延ばし(その間に次の手を打つ)
訴訟・支払督促の申立て 手続き中は時効が完成しない
相手による債務の承認 時効がリセットされる(一部入金・支払う旨の書面など)

催告(内容証明)は6か月の猶予にすぎません。その間に訴訟などの本格的な手続きを取らないと、時効の進行は止まりません。

5年売掛債権の時効(原則)
6か月催告による完成猶予
年3%〜法定利率(変動制)

段階を上げるタイミングの見極め

各段階でどれくらい待ってから次に進むか。決まった正解はありませんが、目安を持っておくと迷いません。相手の反応の有無で判断します。

状況 次の一手
期日を過ぎた(数日) ① 口頭・メールで事実確認
反応がない/期日を再度過ぎた ② 書面で催促(期限を日付で切る)
書面も無視・支払いを渋る ③ 内容証明郵便(証拠を残す)
内容証明の期限も過ぎた ④ 支払督促・少額訴訟
相手が「払う意思」を示す 段階を上げず、期日と方法を書面で確定

ポイントは、相手が誠実に対応している間は段階を上げないことです。分割で払う意思があるなら、条件を書面(合意書)にして着実に回収したほうが、訴訟より早く確実なこともあります。逆に、約束を繰り返し破る・連絡が取れなくなる、といったサインが出たら、ためらわず次の段階へ進みます。

この章の要点

段階を上げる基準は相手の反応。誠実に対応している間は待ち、無視・約束破り・音信不通が出たら次へ。判断材料になるよう、各段階のやり取りは必ず記録に残します。

下請法の対象なら別の道がある

取引が下請法の対象にあたる場合、督促とは別に、公的機関に是正を求める道があります。下請法は、発注側(親事業者)に対して代金の支払期日や遅延利息などのルールを課しており、違反があれば公正取引委員会・中小企業庁が調査・指導を行います。とくに、支払いが受領後の一定期間を超えて遅れている場合は、行政による是正の対象になり得ます。

自社の取引が下請法の対象になるか、支払遅延がどの段階で問題になるかは、資本金や取引内容による個別判断です。とくに支払いが60日を超えて遅れているようなケースで取れる手段は、別記事で具体的に整理しています。督促と並行して、そちらも確認してください。

支払いが遅れて資金が回らないなら

督促に時間がかかる一方で、自社の支払いは待ってくれない。そんなときは、売掛金を早期に資金化する選択肢もあります。額と入金希望時期を入れると、条件に合う事業者と手取りの目安が出ます。5問・約30秒、登録不要です。

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支払いが60日を超えて遅れているとき

支払いが60日を超えたとき取れる手段|下請法と是正の求め方

よくある誤解

遅れたらすぐ内容証明を送るべき
まずは事実確認から。単なる振込忘れや検収遅れも多く、いきなり内容証明では取引先を失います。段階を追って強めます。
内容証明を送れば強制的に回収できる
内容証明に強制力はありません。証拠と心理的圧力、時効の猶予が効果です。取り立てるには法的手続きと差押えが要ります。
裁判で勝てば必ずお金が戻る
勝訴しても相手が払わなければ、別途強制執行が必要です。相手に財産がなければ、判決があっても回収できないことがあります。
督促は電話で言えば十分
電話は記録が残りません。口頭のやり取りは必ずメールで文字に残し、後の証拠にします。「言った・言わない」を防ぎます。
忙しいので時効まで放置してもいい
売掛債権は原則5年で時効消滅します。放置すると回収不能になるだけでなく、遅延損害金の請求機会も逃します。

督促の進め方チェックリスト

督促を始める前・進める中で

  • 請求書の発行・到達と、期日の数え方を自社側で確認した
  • 第1段階は「確認」の姿勢で、電話の内容はメールで残した
  • 書面の催促では、支払期限を具体的な日付で切った
  • 督促の控え・やり取りの記録をすべて保存している
  • 内容証明は債権を特定し、期限と次の手段を明記した
  • 時効までの残り期間を把握している
  • 下請法の対象になり得るか、あわせて確認した

よくある質問

Q. 入金が遅れたら、まず何をすればいいですか
相手に連絡する前に、自社側の確認からです。請求書が届いているか、期日の数え方は正しいか、実は入金済みで消込が漏れていないか。問題がなければ、電話やメールで柔らかく事実確認します。
Q. いきなり内容証明を送ってはいけませんか
禁止ではありませんが、おすすめしません。単なる振込忘れの相手にいきなり内容証明を送ると、取引関係を壊します。口頭・書面で反応がない、支払いを渋る、といった段階で切り替えるのが実務的です。
Q. 内容証明を送れば必ず払ってもらえますか
保証はありません。内容証明自体に強制力はなく、心理的圧力と証拠化、時効の一時的な猶予が主な効果です。応じない相手には、支払督促や少額訴訟など次の段階に進む必要があります。
Q. 少額訴訟と支払督促、どちらを使えばいいですか
60万円以下で早く決着させたいなら少額訴訟、相手が争わなそうな明白な債権なら支払督促が使われます。ただし相手が異議・反論を出すと、どちらも通常訴訟に移行します。個別の見極めは弁護士や簡易裁判所の窓口にご相談ください。
Q. 遅延損害金は請求できますか
遅れた期間について請求できます。契約に利率の定めがあればその率、なければ法定利率(2020年4月時点で年3%を出発点とする変動制)によります。督促の文面に明記しておくこと自体が相手への圧力になります。
Q. 売掛金の時効は何年ですか
改正民法では原則として、権利を行使できると知った時から5年です。内容証明での催告で完成を6か月先延ばしにでき、訴訟や支払督促の申立てでその間の進行を止められます。詳細は条文と専門家で確認してください。
Q. 相手が「資金繰りが厳しいので分割にしてほしい」と言ってきたら
頭ごなしに拒まず、条件を書面(分割払いの合意書)にして着実に回収する方が、訴訟より早く確実なこともあります。ただし約束を繰り返し破るなら、ためらわず次の段階へ進みます。
Q. 下請法の対象かどうかは自分で判断できますか
資本金や取引内容による個別判断で、2026年1月の法改正もあり細部は変わっています。対象になり得ると思ったら、公正取引委員会・中小企業庁の窓口や弁護士に確認するのが確実です。60日超のケースは別記事も参照してください。

出典

  1. 公正取引委員会「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」https://www.jftc.go.jp/shitauke/
  2. 中小企業庁「取引・展示会情報(下請取引の適正化)」https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/
  3. e-Gov法令検索「民法」「民事訴訟法」(時効・法定利率・少額訴訟・支払督促の各条)https://laws.e-gov.go.jp/

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