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自社の取引が下請法の対象か判定する|資本金と委託種別の早見

支払期日が60日を超えている、代金を減らされた。そのとき打てる手は、その取引が下請法の対象かどうかで変わります。判定は資本金だけでは決まりません。委託の種類・資本金・取引の実態という3つの段階を、具体例とチェックリストで順に確かめます。

公開:2026年7月20日 Creww Finance Media 編集部
この記事の内容

  1. なぜ判定を先にするのか
  2. 判定は3つの段階で行う
  3. 段階1|委託の種類を特定する
  4. 段階2|資本金の組み合わせを見る
  5. 段階3|形式が整っていても外れる場合
  6. 具体例で判定する
  7. 対象だった場合、相手に課される義務
  8. 対象外だった場合にできること
  9. よくある誤解
  10. 判定チェックリストとFAQ

なぜ判定を先にするのか

支払期日が60日を超えている、代金を一方的に減らされた、検収がいつまでも終わらない。こうした場面で取れる手は、その取引が下請法の対象かどうかで大きく変わります

対象であれば、60日という上限は合意の有無に関係なく守られなければならないものになります。相手には法律上の義務が生じ、行政の窓口に相談する道も開けます。対象でなければ、同じ主張をしても「契約は契約です」で終わってしまいます。

つまり判定は、交渉のカードが1枚あるかないかを決める作業です。先に確かめておけば、話の持っていき方が変わります

親事業者発注する側。資本金が大きいほうと考えて差し支えない。
下請事業者受注する側。個人事業主も含まれる。
給付納品する成果物やサービスそのもの。
受領日成果物を受け取った日。支払期日の起算点になる。
この章の要点

対象なら60日上限に強制力があり、相手に義務が生じます。対象外なら契約の話にとどまります。交渉に入る前に、どちらなのかを確定させてください

判定は3つの段階で行う

下請法(下請代金支払遅延等防止法)の対象になるかどうかは、次の順で確かめます。どれか1つでも外れれば対象外です。

1委託の種類が
4類型に当てはまるか
2資本金の組み合わせが
条件を満たすか
3取引の実態が
「委託」であるか
判定の流れ|1つでも「いいえ」なら対象外
段階 問い はい いいえ
1 4類型のいずれかに当てはまるか ↓ 段階2へ 対象外
2 資本金の組み合わせが条件を満たすか ↓ 段階3へ 対象外
3 取引の実態が「委託」といえるか 対象 対象外

段階2でつまずく人が最も多いのですが、実際に見落とされやすいのは段階1です。資本金を調べる前に、まず仕事の種類を確定させてください

よくある間違いは、資本金だけを見て判断してしまうことです。資本金の条件を満たしていても、委託の種類が当てはまらなければ対象外になります。順番に見ていきます。

段階1|委託の種類を特定する

下請法が扱うのは、次の4つの類型です。自社が受けている仕事がどれにあたるかを決めます。

類型 内容
製造委託 物品の製造・加工を委託する 部品の製造、OEM生産、金型製作
修理委託 物品の修理を委託する 機械の修理、保守作業
情報成果物作成委託 プログラム、映像、デザイン、文章などの作成を委託する システム開発、アプリ制作、動画制作、ロゴデザイン、記事執筆
役務提供委託 役務(サービス)の提供を委託する 運送、倉庫保管、情報処理、ビルメンテナンス

スタートアップや小規模事業者が関わるのは、多くの場合3つ目の情報成果物作成委託です。システム開発、Webサイト制作、デザイン、コンテンツ制作はここに入ります。

ここで分かれ道がある

この4類型のうち、資本金の基準が2通りに分かれます。同じ「情報成果物作成委託」でも、プログラムの作成かそれ以外かで、適用される金額が変わります。

グループ 含まれるもの
A(3億円の区分) 製造委託、修理委託/情報成果物作成委託のうちプログラムの作成/役務提供委託のうち運送・物品の倉庫保管・情報処理
B(5,000万円の区分) 上記以外の情報成果物作成委託(デザイン、映像、文章など)/上記以外の役務提供委託(コンサルティング、清掃、警備など)
システム開発はAグループ

「プログラムの作成」にあたるため、3億円の区分で判定します。一方、UIデザインだけを請け負う、記事を書く、動画を作るといった仕事はBグループで、5,000万円の区分になります。同じ会社との取引でも、案件の内容によってグループが変わることがあります。

この章の要点

まず4類型のどれかを決め、次にAグループ(3億円区分)かBグループ(5,000万円区分)かを判断します。プログラム作成はA、デザインや制作物はBです。

段階2|資本金の組み合わせを見る

グループが決まったら、発注側(親事業者)と自社(下請事業者)の資本金を当てはめます。両方の条件を同時に満たしたときだけ対象になります。

Aグループ|3億円の区分

発注側の資本金 自社の資本金 判定
3億円超 3億円以下(個人事業主を含む) 対象
1,000万円超〜3億円以下 1,000万円以下(個人事業主を含む) 対象
1,000万円以下 対象外

Bグループ|5,000万円の区分

発注側の資本金 自社の資本金 判定
5,000万円超 5,000万円以下(個人事業主を含む) 対象
1,000万円超〜5,000万円以下 1,000万円以下(個人事業主を含む) 対象
1,000万円以下 対象外

この表で見落としやすいのが、発注側の資本金が1,000万円以下なら、どんな取引でも対象外になるという点です。相手が小規模な会社なら、下請法は使えません。

逆に、自社が個人事業主なら、資本金の条件は常に満たします。あとは相手の資本金だけを確認すれば済みます。

相手の資本金はどこで調べるか

注意したいのは、グループ会社間で発注元が変わる場合です。親会社の資本金が3億円超でも、実際の発注が資本金1,000万円の子会社から出ていれば対象外になります。契約書の当事者がどの法人かを確認してください。

いつ時点の資本金で判定するか

判定は発注が行われた時点の資本金で行います。契約締結後に相手が増資しても、すでに発注済みの取引の判定は変わりません。逆に、継続的な取引では発注のたびに判定が変わる可能性があります

自社が期中に増資して基準を超えた場合、その後の発注分は対象外になります。取引の途中で保護がなくなることがある点は、増資を計画する際に押さえておいてください。

子会社を経由させても逃れられない

資本金の小さい子会社を間に挟めば下請法を回避できる、という抜け道は塞がれています。親会社から実質的に支配されている会社が、親会社の下請取引をそのまま流しているような場合、その子会社も親事業者として扱われます

具体的には、議決権の過半を握られているなどの支配関係があり、かつ発注内容の相当部分が親会社からの取引と重なっている場合が該当します。相手がグループ会社経由で発注してきたときは、対象外と即断せず確認してください

この章の要点

発注側と自社の資本金が両方とも条件を満たしたときだけ対象です。相手の資本金が1,000万円以下なら常に対象外。自社が個人事業主なら、自社側の条件は必ず満たします。

段階3|形式が整っていても外れる場合

類型と資本金の条件を満たしていても、取引の実態が「委託」でなければ対象外です。下請法は、発注する側とされる側という関係を前提にしています。

契約の形 判定の考え方
共同研究契約 双方が費用とリスクを負担し、成果を共有する形なら委託にあたらない可能性が高い
共同事業・ジョイントベンチャー 対等な当事者として事業を行う形なら対象外
自社サービスの販売 相手の指定した仕様で作るのではなく、既製のサービスを売っているなら委託ではない
ライセンス契約 自社が持つ権利を許諾する契約であり、委託にはあたらない

スタートアップが注意すべきなのは共同研究契約という形をとったPoCです。実態として大企業の仕様どおりに開発しているのに、契約名が共同研究になっていると、下請法の保護が及ばない可能性があります。

契約名ではなく実態で判断される

逆に、契約書に「業務委託契約」と書かれていなくても、実態が委託であれば対象になります。判断されるのは仕様を誰が決め、成果物の責任を誰が負い、対価がどう決まっているかです。迷う場合は公正取引委員会・中小企業庁の窓口で確認してください。

具体例で判定する

実際の取引を当てはめてみます。

ケース 類型・グループ 資本金 判定
資本金5億円の企業から、業務システムの開発を受託(自社は資本金500万円) 情報成果物作成/プログラム=A 5億円超 × 3億円以下 対象
資本金1億円の企業から、サービスサイトのデザイン制作を受託(自社は個人事業主) 情報成果物作成/デザイン=B 5,000万円超 × 個人 対象
資本金3,000万円の企業から、記事の執筆を受託(自社は資本金300万円) 情報成果物作成/文章=B 1,000万円超5,000万円以下 × 1,000万円以下 対象
資本金3,000万円の企業から、記事の執筆を受託(自社は資本金2,000万円) 同上=B 自社が1,000万円超 対象外
資本金800万円のスタートアップから、アプリ開発を受託 プログラム=A 発注側が1,000万円以下 対象外
資本金10億円の企業と、対等な費用負担で共同研究を実施 委託にあたらない 対象外

3行目と4行目を見比べてください。取引の中身も相手も同じなのに、自社の資本金が1,000万円を超えているかどうかだけで結論が変わります。増資を検討している場合は、この線を越えることの影響も頭に入れておいてください。

対象だった場合、相手に課される義務

下請法の対象なら、発注側には次の義務が生じます。守られていなければ、それ自体を指摘できます。

義務 内容
書面の交付 発注内容・代金・支払期日などを記載した書面を、発注時に直ちに交付する
書類の作成・保存 取引の記録を作成し、2年間保存する
支払期日を定める 給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内に定める
遅延利息の支払 支払が遅れた場合、年14.6%の遅延利息を支払う

最初の「書面の交付」は、実務でもっとも軽視されがちな義務です。口頭やチャットだけで発注が進み、書面が出ていない取引は、この時点ですでに違反状態にあたる可能性があります。

発注書に書かれていなければならないこと

「書面の交付」は形式的に紙を渡せばよいというものではなく、記載すべき事項が定められています。主なものを挙げます。

実務で問題になりやすいのは、代金の額と支払期日が空欄のまま発注されるケースです。「金額は後日協議」という形は、この義務を満たしていない可能性があります。電子メールやシステム上の発注でも、同じ事項が記録されていれば書面として扱われます。

60日受領日から支払期日までの上限
14.6%支払が遅れた場合の年利
2年取引書類の保存義務

禁止されている行為

あわせて、発注側には次のような行為が禁止されています。代表的なものを挙げます。

最後の報復措置が禁止されている点は重要です。相談したことで取引を切られるのではないか、という懸念そのものが法律で手当てされています

この章の要点

対象なら、発注側には書面交付・書類保存・60日以内の支払期日設定・遅延利息の4つの義務があります。発注書が出ていない時点で違反の可能性があり、行政に相談したことを理由とする報復も禁止されています。

守られていないと分かったら

いきなり行政に持ち込む前に、順序があります。

  1. 記録を揃える|契約書、発注書、納品と検収の記録、請求書、入金の履歴。日付が分かる形で保存します
  2. 相手に事実として伝える|「支払期日が受領日から◯日になっています」と、条文ではなく事実で確認します。担当者が制度を知らないだけのことも少なくありません
  3. それでも動かない場合に窓口へ|公正取引委員会・中小企業庁、または下請かけこみ寺に相談します

具体的な進め方は支払期日が60日を超えていたときに取れる手段で扱います。まずは1と2で解決することが多いという点は、先に知っておく価値があります。

対象外だった場合にできること

下請法の対象でなくても、打つ手がないわけではありません。

手段 使える場面
独占禁止法(優越的地位の濫用) 資本金の条件を満たさなくても、取引上の力関係に著しい差があり、不当な条件を押し付けられている場合
契約に基づく請求 契約書の条件に反する扱いを受けている場合。遅延損害金の請求も含む
次回契約での条件交渉 法的な強制力はないが、着手金の設定など現実的な着地点を探る
下請かけこみ寺への相談 取引上のトラブル全般。対象外の取引でも相談できる

支払サイトそのものを短くする交渉の進め方は支払いサイトとは|締め日・支払日の数え方を1からで詳しく扱っています。

2026年1月の改正で変わった点

2026年1月1日に改正法が施行され、法律の名称と規制の内容が変更されています。取引の当事者を指す用語の見直しや、規制対象となる行為の追加が行われました。

ただし、判定の骨格である「4類型」と「資本金区分」の考え方、および支払期日の60日という上限そのものは、従来から続く枠組みです。この記事の判定手順は、その前提で書いています。

この記事は法的な助言ではありません

適用の可否は、資本金・委託の種類・取引の実態を個別に見て判断されます。実際の対応にあたっては、必ず現行条文を原典で確認し、公正取引委員会・中小企業庁の窓口、または弁護士にご相談ください

よくある誤解

相手が大企業なら必ず下請法の対象になる
委託の種類が4類型に当てはまらなければ対象外です。また発注元が資本金の小さいグループ会社なら、相手が大企業グループでも対象外になります。
契約書に「業務委託契約」と書いてあれば対象
契約名ではなく実態で判断されます。逆に共同研究契約という名前でも、実態が委託なら対象になり得ます。
自社が法人なら個人事業主より保護される
逆です。個人事業主は資本金の条件を常に満たすため、法人化して資本金が基準を超えると対象から外れることがあります。
合意した支払条件なら60日を超えてもよい
対象取引では、合意の有無は関係ありません。60日を超える定めは認められません。
行政に相談したら取引を切られる
相談や申告を理由とする報復措置は、法律で明確に禁止されています。

判定チェックリスト

順番に確認する

  • 受けている仕事は4類型(製造・修理・情報成果物・役務提供)のどれか
  • それはAグループ(3億円区分)か、Bグループ(5,000万円区分)か
  • 発注元の法人名を契約書で確認した(グループ内の別法人ではないか)
  • 発注元の資本金を登記または公開情報で確認した
  • 自社の資本金が基準を下回っているか
  • 取引の実態が「委託」といえるか(共同研究・共同事業ではないか)
  • 発注時に書面(発注書)を受け取っているか
  • 支払期日が受領日から60日以内に設定されているか

よくある質問

Q. 資本金は登記簿のどこに書かれていますか
登記事項証明書の「資本金の額」の欄に記載されています。法務局の窓口のほか、登記情報提供サービスでオンライン取得もできます。
Q. 相手が外国法人の場合はどうなりますか
資本金の概念が日本法と異なるため、個別の判断になります。国内子会社を通じた発注であれば、その子会社の資本金で判定します。
Q. 一次請けから再委託を受けている場合は
自社と一次請けとの間の取引について、その二者の資本金で判定します。発注元の大企業の資本金は関係ありません。
Q. 開発とデザインを一括で受注した場合、どちらの区分ですか
取引ごとに判断されます。実務上は、契約や発注を分けて、どの部分がどの区分かを明確にしておくほうが判断しやすくなります。
Q. 増資して資本金が基準を超えると、保護されなくなりますか
その取引について下請法の対象から外れることになります。資本準備金への組み入れも含め、増資の設計時に確認しておく価値があります。
Q. 発注書をもらっていません。請求できますか
対象取引であれば、発注時に書面を交付することは発注側の義務です。交付を求めることができ、応じない場合は行政の窓口に相談できます。
Q. 対象かどうか判断がつきません
中小企業庁が委託する「下請かけこみ寺」で無料相談できます。対象外の取引についても相談を受け付けています。
Q. 過去の取引についても指摘できますか
過去の取引についても申告は可能です。書類の保存義務が2年であることもあり、契約書・発注書・請求書・入金記録は保存しておいてください。
Q. 相談すると相手に自社名が伝わりますか
申告者の秘密は保護される扱いです。また申告を理由とする報復措置は禁止されています。具体的な進め方は窓口にご確認ください。
Q. 対象外でも支払サイトは交渉できますか
できます。法的な強制力はありませんが、着手金の設定など、相手の支払総額を変えない形の提案は通りやすい傾向があります。
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出典

  1. 公正取引委員会「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」https://www.jftc.go.jp/shitauke/
  2. 中小企業庁「下請取引の適正化」https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/
  3. 国税庁「法人番号公表サイト」https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/
  4. e-Gov法令検索(現行条文)

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