マンション管理に大切な長期修繕計画(籾山敦輝典)
マンションが永住できるかどうか、資産性を保てるかどうか、最も大切なのはマンションの管理です。
マンションの管理といえば、掃除がいきとどいているかどうかを連想する方も多いでしょう。
もちろん、しっかり掃除されているほうがいいのは当然ですが、維持管理がしっかりされていることのほうがもっと大切です。
というのも、マンションは時間とともにさまざまな部分が傷んできます。
各住戸の水道につながる給水管がさびれば蛇口をひねると赤水が出ます。
外壁のひび割れから水がコンクリートの内部に入り、中の鉄筋がさびて膨らみコンクリートを内側から壊していけば、建物の強度は下がります。
エレベーターが寿命を迎えれば、階段で上り下りしなければならなくなります。
これでは、とても住めたものではありません。
そこでマンションの部分ごとに、傷みがひどくならないうちに修繕をまめに行なうことで長持ちさせることが必要になります。
コンクリートが直接空気にさらされないように塗り替えたり、浮き上がった外壁タイルを修繕したり、給水管を取り替えたり、エレベーターの部品を交換したり。
必要な時期に必要な修繕を続けていくことでマンションの寿命は延ばすことが可能です。
しかし、こうした修繕を必要な時期に続けていくには、それなりの修繕費がかかります。
マンション所有者が毎月支払う修繕積立金は、こうした将来必要になる修繕費を積み立てるものです。
同じように毎月支払う管理費は、管理会社への管理委託料、共有部分の水道光熱費などで消えていきます。
修繕積立金はすぐに使わずに、数年間貯めて修繕工事の費用に充てます。
では、いつ頃どんな修繕工事が必要で費用はどのくらいかかるのでしょうか?
マンションの造りや設備、規模などで必要な修繕も違ってきます。
そこでマンションごとに、いつ、どんな修繕工事を行なうのか、長期的な計画をつくる必要があります。
この計画を長期修繕計画と言います。
長期修繕計画があれば、毎月所有者から徴収する修繕積立金がいくら必要かを計算することができます。
また、いつどんな工事をするか、あらかじめわかっていますから、周到に準備を進めることができます。
逆に長期修繕計画がなければ、実際に必要な修繕費がたまらず、行き当たりばつたりの修繕で資金繰りが行き詰まる可能性があります。
また長期修繕計画が時期や工事費などを具体的に示していなければ、実際には役に立たない恐れがあります。
旧住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)の優良中古マンション融資の条件では、長期修繕計画について次の2つの基準を満たすことを求めています。
1つは「計画期間が原則20年以上」、もう1つは「原則として外壁補修、屋根補修、給水管補修及び排水管補修に係る修繕予定時期及び予定工事金額が明示されていること」です。
ご自身のマンションがこのような長期修繕計画をつくっているかどうか確認してみてはいかがでしょうか。
管理会社か理事長に問い合わせて一度見てみるのがいいでしょう。
長期修繕計画がなかったら、管理会社に案を作成するよう理事会に働きかけてください。
マンション管理センターも長期修繕計画の作成で相談窓口を設けています。
計画期間20年以上で外壁・屋根・給排水管について時期と金額が明記されている長期修繕計画があれば理想的、長期修繕計画があっても期間が20年未満か、具体性にかけていれば要注意、長期修繕計画がないマンションはスラム化の可能性があると言えるでしょう。
籾山敦輝典(新日本コンサルティング)