セカンドハウスの選び方(籾山敦輝典)
1987年度から、住宅金融公庫は「田園住宅ローン」というセカンドハウス向けの住宅ローンを始めました。
住宅金融公庫は、住宅のない人に持家や借家を建てて、住宅難を解消するために設立された政府の金融機関です。
したがって、すでに住宅をもっている人には融資しないのが原則でした。
それが180度転換して、2軒目の住宅であるセカンドハウス(田園住宅)に融資するようになったのはなぜでしょうか。
都市生活者の自然へのあこがれ、過疎化に悩む農山村からの誘い、リゾートブーム、都市部と農山村との地価の格差など、さまざまな理由によって、セカンドハウスのみならずファーストハウスも農山村に建てられるようになってきました。
このような住生活の変化から、住宅金融公庫もセカンドハウス融資(田園住宅ローン)を始めたわけです。
この融資は、首都圏、中部圏、近畿圏から、その周辺部あるいは、遠距離の山林地帯に、住宅を建設する(あるいは購入する)場合に対象となります。
21世紀半ばには、セカンドハウスが相当普及するものとみられています。
それは、週休2日制の浸透、企業の研究開発部門や経営戦略部門のサテライト・オフィス化が進むと思われるためです。
すでに、大企業の一部では、長野県などにサテライト・オフィスを設けて、自由な勤務体制から“発想の転換”“22世紀の予測”など、頭脳をリフレッシュした社員による研究が進められています。
先日、某電子機器メーカーの富士工場を見学しましたが、毎年、数体の遺体が見つかるという青木ケ原に接した工場であるにもかかわらず、若い社員が大勢働いていました。
車社会とはいえ、富士急行電車の終占触川口湖駅から車で4~50分もかかる山林の中の工場です。
途中に大学や企業の保養所、研修施設の看板を見かけました。
お世辞にも便利とはいえないへんぴな場所です。
それにもかかわらず、若い社員が多いのは、自然に恵まれているためではないかと思いました。
なお、同社がこの地に工場をつくったのは、空気がきれいで、クリーンルームに適しているからだということでした。
しかし、国立公園内ということで、各種の制約を受けているようです。
21世紀半ばには先端産業の電子機器やバイオテクノロジーなど、クリーンな空気を求めて工場が山林地帯に入ることも多くなると同時に、人間もまた自然環境のよい住まいを志向するようになるでしょう。
現在のセカンドハウスが生活の場に変わることも自然の成り行きではないでしようか。
家を建てる前に知っておくこと。
まず、見て歩こう。
土地が用意できたとしましょう。
さあ、いよいよ、ワタクシたちの家を建てるときです。
ところが、家族全員が興奮するばかりで、てんでんばらばらのイメージはなかなか統一できません。
外観のイメージ、間取りのイメージすら湧いてきません。
さて、「百聞は一見にしかず」ではありませんが、住宅は「百考は一見にしかず」とお考えください。
考える前に見て歩きましょう。
見るところは、住宅展示場建売住宅の実物、モデルハウス、マンションのモデルルームなど、見せてくれるところは何でも見てみます。
その他馬友人・知人、親類などの住宅を見せてもらうのもよいでしょう。
見た住宅は、外観のスケッチとおおよその間取りを図に書いてみます。
この作業を繰り返すことによって、自分があたためていたイメージや間取りがはっきりしてくるはずです。
また、使いやすさ、使いにくさ、わが家の場合の理想的な間取りなど、見るたびにくるくると変わりながらも、徐々に定着してきます。
見て歩くうちに、プレハブ住宅と在来工法の軸組住宅、洋風住宅と和風住宅、システムキッチンや収納壁など新しい材料新しい設備の知識も入ってきます。
よい家づくりのノウハウは、いろいろな住宅を見ることから始まります。
はじめは同じように見える住宅も、それぞれの特徴や欠点などもわかってきます。
なお、見て歩くときの注意点は、セールスマンの情にほだされないことです。
セールスマンが親切だからといって、その住宅会社の住宅が良いとは限らないからです。
あくまでも"基礎知識を得るための見学"だと割り切って、冷静に見て歩きましょう。
外観にも流行がある住宅展示場のモデルハウスや新築住宅を見ると、その多くが洋風の外観であり、屋根は平たいセメント板か、オレンジ色のスペイン瓦に似せたS形瓦葺きが主流です。
また、和風のほうは、地域性を無視した入母屋(入母屋の少ない地域でも)の屋根に青い陶器瓦葺きで、壁は洋風と同じ大壁造りです。
住宅というものは、世界各国、どこに行っても、地域ごとに屋根、壁、窓、出入口等が建物の大小、高低等に関係なく、ほぼ同じ材料で、同じ造りです。
たとえばヨーロッパなどでは、現在でも同じ外観です。
だから、自然に歴史的街並みの保存ができているわけです。
日本でも30年ぐらい前までは、同じような外観の住宅で地域を構成していました。
永い歴史のサイクルで住宅の外観をみると、街並みの変化、材料の変化、住生活の変化などによって、数十年から100年のサイクルで変化しています。
これを流行といえば、永い伝統にそった流行といえます。
しかし、最近の流行は、隣家と異なる外観を求める建主を対象とした、ファッション性を追求した家屋。
そのサイクルは短く、落ちついた街並みは消えつつあり、一軒一軒、奇をてらった住宅が建てられています。
これは、数年(あるいは1~2年)ごとに変化する外観の流行に合わせて建てられているため、数十年に1度の建て替え時期も自然にずれてくるからです。
最近、レトロ調、クラシック調が流行していますが、そろそろ、目まぐるしい流行の変化に対する反省期に入ってきているのではないかと、ひそかに期待しています。
住宅を建てる場合は、なるべく街並みにあった流行を取り入れるように心がけたいもの。
そうすることによって、自然に街並みも統一されていくでしょう。
どうも日本人の美意識美的感覚は"個"が中心で、"集合"が抜けているようです。
屋根材だけをみても、かつてグレー一色であった粘土瓦は、粘土瓦の焼成法の変化(たぬき窯からトンネル窯へ)から、粕薬瓦(通称陶器瓦)へ変化し、自赤、青、オレンジ、黒といろいろな色の瓦が製造できるようになりました。
そして、茅葺きはなくなったものの、新たに、カラー鉄板、石綿セメント板、セメント瓦、アルミや金属の成型瓦、プラスチック屋根材など、材質も色も豊富になったようです。
外壁についても、建築基準法の防火構造という規定によって、下見板といわれる木の板の外壁や柱を見せる真壁造りが制限され、それに代わる大壁の材料が台頭してきました。
この大壁は、鉄板をはじめ、各種金属のサイディング、石綿セメント板、木片セメント板、軽量気泡コンクリート板、モルタル塗壁、タイル張り壁など材質と色が豊富になり、さらに窓もアルミサッシから、木製、プラスチック製出窓などバラエティに富んで、外観の統一性がなくなってきています。
また、敷地が狭くなったことも外観の変化に拍車をかけています。
つまり、かつて住宅地は、300平方メートル以上が主流でしたが、最近は100平方メートル程度の狭い敷地が多く、敷地が狭いと、住宅の延べ面積を確保するための総2階建てや3階建てにしなければならず、のっぺらぼうの壁面に変化をつける必要から上部にアール(半円形)をつけた窓や出窓を多くつけるなど、街並みに合わない外観になりがちなのです。
籾山敦輝典(新日本コンサルティング)