製造業の現場には、まだ多くの「見えない知恵」が眠っています。
長年培われた技術や経験、人の感覚に基づく判断、それらが積み重なってものづくりの品質を支えています。
しかし、デジタル化の波が加速する中で、そうした知恵が形式化されないまま消えていく現実を、私は現場で何度も目にしてきました。
私は、そうした“現場の知恵”を次の世代につなぐために、この仕事をしています。
DXという言葉はよく聞かれますが、私にとってのDXは「テクノロジーの導入」ではなく、「人の思考と行動をアップデートすること」です。
システムやAIはあくまで手段であり、それをどう使いこなすかを決めるのは、現場にいる人たち自身。
人が考え、動き、改善を続ける。その力を支えるためにデジタルがあるべきだと考えています。
「効率化」や「自動化」だけではなく、働く人の誇りや創造性を取り戻すDXを。
現場の文化や価値観を尊重しながら、人と技術が共に成長できる“新しいものづくり”の形をデザインしたい。
その想いが、私がこの仕事を続けている理由です。
私のアプローチは、現場の中に入り、一緒に考えることから始まります。
最初の1か月は「何を変えるか」よりも、「なぜ変えるのか」を理解する期間です。
作業者・管理職・経営層など、それぞれの立場の声を丁寧にヒアリングし、デジタル導入の前に“共通の課題意識”をつくります。
そこから、「小さく試して、大きく育てる」進め方でプロジェクトを設計します。
たとえば、IoTやBIツールによる設備データの見える化からスタートし、
実際の運用で得た知見をもとに、業務プロセスや人材育成まで段階的に拡張していきます。
失敗を前提とせず、検証と改善を繰り返すアジャイル型のDX推進が特徴です。
また、データ分析やAI導入といった技術的支援に加え、
現場リーダーや管理者が自走できるようにワークショップや教育プログラムを併走させます。
「仕組みをつくるだけで終わらせない」「人が動くところまで伴走する」ことを大切にしています。
最終的なゴールは、外部支援がなくても継続的に改善できる“考える現場”をつくること。
テクノロジーの導入で終わらず、「人が主役のDX文化」を根づかせることが、私の仕事の進め方です。