「信頼の鎖」社会に生かす chaintope
仮想通貨の技術として注目され、金融以外でも活用に向けた動きが進む「ブロックチェーン(BC)」。「chaintope」(チェーントープ、福岡県飯塚市)は日本では数少ない、BCの基盤技術の研究開発を手掛ける企業だ。
BCはネットワーク上の利用者が互いに取引データを分散して管理し合う仕組みで「分散型台帳技術」などと訳される。「ブロック」と呼ばれるデータの塊は「鎖(チェーン)」のようにつながっており、一部の記録が書き換えられると別のブロックに齟齬(そご)が生じるため、改ざんや不正が困難という利点がある。
一方、処理速度などに課題もあり、チェーントープは独自にBCを開発。「タピルス」と名付け2019年11月にソースコードを公開した。誰もが取引に参加できるオープンな性質を残しつつ、より実社会で活用しやすい設計にした。今後は認知度を高めるため、国内外のイベントなどに積極的に参加していく計画だ。
正田英樹社長(48)は「将来はデータの確かさを示すBCのような技術がなくてはならないものになる」と語る。BCを実社会で活用するため、企業や行政と連携し、さまざまな分野で取り組みを進めている。
その一つが食品などのトレーサビリティー(生産・流通履歴)を透明化する仕組みづくり。産地や流通経路などの記録の改ざんが難しいため、信頼性が高まるとして流通大手イオンのマレーシア子会社で採用されたほか、国内でも水産業者などに採用されている。
今年7月には飯塚市と協定を締結。住民票などの各種証明書をスマートフォンで電子データとして受け取れるようにする実証事業の準備を進めている。
正田社長は、九州工業大情報工学部卒業後の1999年にIT企業ハウインターナショナルを創業。だが「インターネットの世界で、日本は(グーグルなど)『GAFA』に代表される米国企業に出遅れた」との思いがある。
社内の勉強の一環として研究を始めたBCに大きな可能性を感じ、2016年にチェーントープを設立。ハウ社から移籍した主要メンバーは、金融庁が開くBCの研究会に呼ばれるなど高く評価されている。「BCの世界は黎明(れいめい)期。今ならまだ世界に発信できる段階にある」。日本発の技術とサービス開発を急ぐ。 (仲山美葵)
【chaintope】福岡県飯塚市。2016年設立。マレーシアに子会社がある。今年8月には、社長や社員が執筆した書籍「ブロックチェーンがひらく『あたらしい経済』」が出版された。