日本の農村では今、人口減少と高齢化で田畑や里山の手入れが行き届かなくなり、緩衝帯だった農地が失われた結果、シカ・イノシシ・サル、そして今年大きく報じられたクマなど野生動物との軋轢が急速に深刻化しています。被害が増えるほど農家は疲弊し、耕作放棄→さらに獣害増加→集落の衰退、という悪循環が各地で進んでいます。
Satoyama Commonsは、こうした里山を「一部の住民だけが背負う問題」ではなく、都市住民や企業、インバウンド旅行者も関わり合う“共有地(コモンズ)”と捉え直す試みです。シカナイトサファリなどの体験を通じて現場の課題を「楽しみながら理解」してもらい、その後はお米・オーガニック野菜のCSAや応援消費で継続的に支えてもらうことで、「利用する人=守り手」へと育っていく関係をつくりたい。その積み重ねによって、小規模農地と集落を次世代につなげる新しい里山共生モデルを形にするため、このサービスを進めています。
Satoyama Commons(さとやまコモンズ)は、まず兵庫県丹波篠山市で農家さんや集落の人、地域住民一緒に、「今いちばん困っていること(獣害・小規模農地の維持・担い手不足)」と「ここならではの魅力(里山の景観・祭り・人のつながり)」を整理するところから始まります。そこから、シカナイトサファリやモンキークエスト、田んぼやオーガニック野菜の農業体験、草刈り・里山整備、祭りや伝統行事への参加などのプログラムをつくり、ただ“見る観光”ではなく、一緒に動き・考え・食卓を囲む中で、獣害と共生の現場を「自分ごと」として感じてもらえるようにしています。
旅あとも関係が途切れないよう、CSA定期便や応援消費で日常の暮らしから里山を支えられる仕組みを用意し、季節の便りやオンライン報告会で田んぼや山の変化を共有します。さらに、地域内外の企業・大学・学校・宿泊・レジャー施設等と連携し、研修やフィールドワーク、合宿・長期滞在の場としても開いていくことで、里山を「関わるみんなのコモンズ(共有地)」として育て、地域の農業や文化が持続し、野生動物をはじめとする自然環境と共生できる循環型の地域社会をめざします。