ファッション業界に身を置く中で、業界の物流倉庫における非効率な作業と人海戦術の対応に課題意識を持っていました。その頃、海外の大手企業の倉庫では「モノが自ら移動してくる仕組みがある」という話を聞き、自身でそのイメージを想像しながら調べました。ところが、その搬送システムは車輪走行型のお掃除ロボットのようなものであり、自身が想像したものとは全く異なったものでした。
自身が想像したロボット倉庫システム(現在のCUEBUSの原型)は、商品の入った棚が床面をスライドするように円滑に動き、それが複数同時に隊列・連動しながら、倉庫作業員のところに必要な商品を届けてくれるものです。このロボット倉庫システムの構想は、他社のものと比べ、高い空間使用率や高い利便性など多くの優位性があるだけなく、拡大するEC需要にも対応した未来の物流像を感じたことから、2015年、Cuebus株式会社を設立し、構想の具現化に着手しました。
ロボット倉庫システム「CUEBUS」は、リニアモータを活用した世界初のロボット倉庫システムです。リニアモータによる高いロバスト性とコンパクト構成による利便性を持ち合わせており、他社のロボット倉庫と異なり、利用者のニーズや利用環境に併せてフレキシブルに設置/即時稼働することが可能です。最初の構想からここまで具現化するまでに数多くの課題がありました。
中でも一番大きな課題は、「ものづくり(ハードの具現化)」です。自身の情報システム開発中心のキャリアにおいて、ものづくり経験はなく、ハードの具現化に至る過程が最も苦悩しました。自身の強みである交流ネットワークを活かし、あらゆる関係者に聞き取りと相談をしながら、要素開発(設計、電気電子、制御)に知見のある方々の協力を仰ぎながら、基礎となるハードの構造を作り上げました。
その後も多くの専門の方々から、「現状のハードでは製品化は難しい」や「このハードではリニアモータを制御できない」など、多くの否定的な意見がありましたが、「できないものはない」との想いを貫き、2020年9月、初号機の完成にこぎつけました。