膝前十字靭帯損傷(断裂)は、スポーツでみられる比較的頻度に高いケガです。断裂の治療には、外科的に行う再建術が必須ですが、現在は患者さん自身の健康な組織を採取して移植用のグラフト(移植組織)を用いて移植する方法しかありません。健康な組織を採取するため、侵襲性(身体へのダメージ)があり、また感染や神経障害のリスクもあります。さらに、患者さんはしばしば再断裂するのですが、再度断裂した場合には使える組織が不足したり、無かったりします。そのため、安定的に供給され何時でも使用可能な人工靭帯が医師、患者さんから求められてきましたが、合成樹脂(ポリエステルやテフロン)、金属などでは、強度や生体適合性のある製品の開発は不可能でした。当社では、患者さんに移植した際に拒絶反応を起こさないようにする脱細胞化技術(DNAなどの細胞成分を除去)を用いて、動物組織から移植用の人工靭帯を開発しており、今までのところヒツジを用いたPoC(概念実証)に成功しました。今後、商用生産への以降、治験の実施を経て、医療機器として製造販売を開始する計画です。