2019年の5月、愛妻をがんで亡くしました。
最期の3か月は、がん治療の副作用であるリンパ浮腫と皮膚から滲み出るリンパ液との闘いでした。
リンパ液を吸わせるために病院で勧められたのは、ペット用のトイレシートと女性用の使い捨て生理用ナプキン。
人間の尊厳に触れるようなザワツキとショックで、声も出ませんでした。肌はすぐにかぶれました。なぜ、他の用途に使うモノを転用しなければならないんだろう?なぜ、専用品が世の中にないんだろう?
そんなときSNSで偶然目にした1枚の写真。華やかであたたかくて肌にやさしい布ナプキン。「これや!」
妻の喜ぶ顔が見たくて、写真の2人に特注品をオーダーしました。しかし、妻は特注品を見ることなく、ぼくの腕の中で息を引き取りました。
大切な家族を最期まで当たり前に大切にしたかった。ぼくのような思いをする人を1人でも減らしたい。
世の中にないものは創ればいい。これがとりこっとんの原点です。ペット用のトイレシートを使う「医療の現場の常識」と、それをイヤだと感じながらも口に出せないでいる人たちの「声なき声」。
これらをつなぐことが亡妻からもらった宿題です。
●布の素材:群馬県の公募型共同研究実施企業に選定され、群馬県と共同開発し、吸水性と撥水性、防臭性と抗菌性、保水力と通気性など相反する機能を同時に実現し、2020年9月、特許出願済み。
●患者が作り手になる:患者自身もベッドの上で作ることができるよう「製作キット」を販売予定。製作は、針も糸も使わなくて済むテープを使った工程を模索したい。
●あしながおじさん方式の販売:自分の家族にしてあげられなかった「心残り」を他の誰かにしてあげたいという温かい気持ちと、そんな優しさを受け取ってみたいという人をつなぐ。
●縫製:ぼくたちの活動を知った障がい者就労支援施設から、縫製請け負いの申出あり。大企業の下請け経験があって実績も十分。
●販路:病棟は使い捨ての世界で、洗って繰り返し使うものは立ち入り禁止。そこで、患者の家族に届くように、販売拠点は病院内の購買部・薬局・訪問看護ステーションを想定。
●定期便:適切な交換時期にお届けし、いつも衛生的な状態を保つ。
●Bto B:布を扱うメーカーから「その布を使ってみたい」というオファーあり。事業者に向けた布の素材自体の提供にも需要が見込める。