Nature Remo
エアコンを外からスマホで操作できるスマートリモコン
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2016.06.08
MEDIA

<Engadget> スマートホーム製品「Remo」でKickstarterにチャレンジ、IRKitの大塚雅和さんが見る未来:電子工作部列伝

学習型リモコン「IRKit」を個人で開発し、製造販売する大塚雅和さんが新しいプロジェクト「Nature Remo」を立ち上げています。これは、コントローラー機能と電源制御機能を持つデバイスとスマートフォンアプリからなるIoTデバイスです。実はこちらの大塚さん、初回のEngadget電子工作部に参加していました。それがIRKitにも大きくつながっていきました。今回、電子工作部列伝として、IRKitからNature Remoの開発秘話、ものづくりに対し大塚さんが考えていることなどを聞きました。

エアコンをスマート化する「Nature Remo」

まず「Remo」はどんなプロダクトなのでしょうか。一言で表現すると、スマートフォンで家電をリモコン操作できるようにするものです。専用のスマホアプリを使って、Wi-Fiやインターネット経由でどこからでも家電のリモコン操作が可能で、デバイスとして各種センサー(温度計機能、湿度計機能、人感センサー、照度センサー、ノイズセンサーなど)も搭載し、例えばエアコンだったら、温度や湿度に応じて適切な風量などに調整してくれます。

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Remo。エアコンを含めた家電のリモコンをアプリ経由で操作でき、あらかじめ設定した温度や湿度などの条件に応じオン/オフできるほか、過去の操作履歴を学習する機能もある

エアコンの利用シーンとしては、帰宅の時刻に合わせて部屋の温度を調節したり、部屋の中の温度によって必要がないときは自動でエアコンのスイッチをオフにしたり、あるいはペットがいる部屋の温度が上がり過ぎたらエアコンをオンにするといったことが可能になります。電気代の節約にもつながります。

大塚さんが開発したIRKitよりも、生活を技術で便利にするということにさらに踏み込んだスマートホームプロダクトです。大塚さんがIRKitの次に手がけるものとして必然といえば必然な気もしますが、どういう経緯で開発に至ったのでしょうか。
自分の苦手なところに踏み出していかないとこれ以上はいけない

Remoは、もともと共同創業者でCEOの塩出晴海さんが以前から抱いていた「自然と人の関係を持続的なものに変えたい」というビジョンの第1弾という位置づけなのだといいます。

大塚:共同創業者の塩出、いまハーバードのMBAに通っているんですが、Natureの構想は彼が以前から考えていたものです。エネルギーに関連したスタートアップ、自然と人の関係をもう少し持続的なものに変えたいというビジョンがあって、そのビジョンの一歩として、第1弾としてNature Remoを作ろうということになり、僕は一緒にやれませんかと彼に口説かれました。

Remoを含めた、Natureの構想としてデマンドレスポンスというキーワードがあります。

大塚:僕の理解でお話しますが、暑くなったら人がエアコンをつけたり、いろいろな電気を消費して需要が変化するというのがあります。電力会社から見たら、需要が上がっていくとそれに応じて供給量を上げていかないといけない。発電所を動かして電力を作る、あるいは電力を他から買ってきたりします。

たとえば、ニューヨークというエリアだと、送電線が限られていたり、発電所も限られていたりするので、ピークのときに電力会社が発電所から電力を購入するときにその値段がすごく上がるんです。供給と需要のバランスなんですが、「需要が上がる」に対して「供給を上げる」のではなく、「需要を下げる」という発想もあります。この需要を下げるという能力に対して、供給を上げるのと同じ比較対象としてお金を支払うという仕組みがアメリカで動いています。

一般の家庭にあるエアコンなどをコントロール(エアコンを停めるとか、温度設定を調整する、とか)して需要を減らす。協力してくれたら代わりに報酬を払うということがもう動いています。ただ、あまりうまくいっていなかったりします。電力会社としては進めたいけれど、コンシューマの人たちにとってはハードウェアを導入しなければならないので、あまり魅力的な製品がなかったり、普及が進んでいないというところがあります。

そこに、コンシューマの人たちが使いたくなるようなデバイスを作って提供したら、みんな普通にエコの機能自体楽しんでもらえるし、需要のコントロールにも参加してくれたら、新たに発電所を動かさなくてもよくなる。そうすることによって、Natureの理念に近づけるんじゃないか、ということなのです。

塩出さんはそのアイデアを考えついて、一般の家庭に設置してエアコンをコントロールできるデバイスを開発しようとします。そのとき、最初のプロトタイプに使ったのがIRKitでした。そして、せっかくならIRKitの開発者を口説いて連れてくればいいんじゃないかという発想で、2015年夏くらいから、帰国の際にどきどき大塚さんと会うようになったそうです。

一方、大塚さんはIRKitの次のモデルをどうしようかと考えていた時期。「構想だけを持った人に一緒にハードウェアを作りましょうと言われても、他の選択肢もある中で決めきれなかったんですが、最終的に2015年の末くらいに、この人と一緒にやろうかなと思いたち、いまに至る」そうです。

理由はいくつもあるとしながらも、大塚さんが具体的に話してくれたのは、IRKitを個人で開発から製造・販売まで行った中でいきあたった課題でした。

大塚:IRKitは基本的には一人で作っていました。エンジニアリング的なことは全部自分でやっています。デザインは苦手なので他の人に業務委託的にお願いしますし、生産はもちろん工場の人にお願いするんですが。製品としても、IRKitは僕に似た人に向けて作っていました。

基本的にはシンプルな機能で、開発者が自分の好みの使い方をしたければ自由にできるようになっています。2年で1万台弱、そこそこ、売れていてきています。個人でやっている分にはすごい数字なのかもしれませんが、電気製品としてはもう少し可能性があるんじゃないかなと考えていて、ただ自分一人ではそこまでいけないなと思ったのです。得意不得意があるけれど、自分の苦手なところに踏み出していかないとこれ以上はいけないと。

とはいえ、IRKitに途中から参加してもらってパートナーとして一緒にやっていくのは難しい。次の何かを作るときには、対等だけど互いの弱点を補完し合える人とうまくチームを作りたいと考えているタイミングだったのです。そして、塩出さんと何度も話をするうちに、率直な人柄、作りたいという思いの強さがわかってきて、一緒にこの人と仕事がしたいって思う気持ちができあがっていったそうです。

大塚:一人で、というのはメリットでもありデメリットでもある。僕ができないこともあるので、それを得意とする人と組んで、全体としてもっと大きなインパクトを与えられるんじゃないかと。IRKitの反省をいかして、IRKitでできなかったもっと大きなことをやりたいということです。

また、IRkitの次のものを作ろうというとき、ただ「便利なもの」というのもいいけれど、子どもたちの時代に何かよいものを作れたらということもあったといいます。「Natureの理念に僕も協力したいと考えたんです」(大塚さん)。

(6/10 13:30 記事初出時の写真に不都合がありましたので、差し替えました)
赤外線受信器、Wi-Fiモジュール、赤外線LEDの構成はIRKitと一緒だが、IRKitでは赤外線LEDを側面に出していたのが、Remoは壁に取り付けることを想定しているので中に収めている。なるべく薄くしたかったというのもあり、このLEDの向きを調整している。筐体の素材としても、赤外線は黒いほうが通りやすいのだが真っ白な筐体にするためにどうすればいいか試行錯誤している部分だ
作り手と使う側の距離も縮まる

IoTの難しさには、デバイス、ハードウェアとしての難しさ以外に、サービスの重要度があります。人が使いたくなるサービスなのかという面と、サービスとして一度世に出してしまったら、それを続ける責任です。売れたら終わりではありません。

大塚:作り手に注目が集まっていますね。信頼がおけるメーカーなのか、信頼できる人なのかというのが、判断基準になるのはよい傾向だと思います。日本の大企業は一様に信頼性があるイメージはありますが、それぞれのメーカーに個性を感じていくようになっています。

IoTってテレビとか洗濯機だったり、みんなが必要だったり、欲しいというのがないと思うんです。だから、これからも小さな会社がいろいろたくさん出てくると思います。群雄割拠したらいいなと思っています。その中で、ここは信頼できるとか、デザインが優れているとか、それぞれの細かなところがお客さんの中である印象につながっていくんじゃないかと思います。作り手と使う側の距離も縮まるし、作り手を増やすことにもつながるという意味で、僕はそういう意味で楽しみです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAい現在、Fablab Kamakuraにて開発を進めているという大塚さん。「IRKitのときには、作る人を増やすというのが僕の中のテーマとしてありました。普通に生活しているときにこれってどうやってできているんだろうと思ったら、それを簡単に知ることができるようになっているというのは、作る側にシフトしていくのに大事だと思うんです。身の回りに、作り方がすぐにわかるというものを増やしたいなと思っているんです。そういうものが増えると、もっとみんなものを大事にしたり、人に優しくなったりするんじゃなかというのがあります」
Engadget電子工作部は「発想の自由度が魅力だった」

ものを作っている最中も楽しいし、それを誰かに使ってもらって喜んでもらう、直接声を聞くのも楽しいし、それで少しでも社会にインパクトを与えられればといいます。そんな大塚さんにとって、電子工作部はどういう体験だったのでしょうか?

大塚:その回のテーマだった「スマートフォンをつながるデバイスを作ろう」という発想の自由度の高さ、これはものすごく大きかったです。それを体験することで、ハードウェアを作っていきたいという気持ちが強くなりました。

iPhoneアプリであったり、Webサイトを作っていても、その枠の中にとらわれている感じはあったんです。Appleの提供するSDKの中であったり、ブラウザの中でしか何かが作れないということがあったんです。iPhoneアプリが多くの人に受け入れられていくということもあって競争も激しくなって。当初はエンジニアとして新しい技術を使うと差別化できるというのはあったんですが、市場が飽和してくると、もう企画勝負になってきて、そうすると段々エンジニアとしてのおもしろさがなくなってきます。相対的にハードウェアでできることの自由度の高さ、そこがおもしろいなと感じていったんです。

また、チームメンバーだった株式会社ミヨシの杉山耕治さんとは「お互いプレッシャーを掛け合っていたんでしょうね。この人とやればIRKitを生産できるんじゃないかっていうのはつかめたかもしれません」と大塚さん。杉山さん以外にも、IRKitの動画を撮影してくれた曽我浩太郎さんにもいまもお世話になっているとのこと。

一方、これから何かを作りだしたいという人には「世の中に出すところまであきらめないでほしい」といいます。「あきらめないこと」を支えてくれるのが、チームメンバーやコミュニティなのです。

大塚:エンジニアで資金調達が苦手だったり、PRが苦手だったりする人は、チームメンバーを探す場としてもいいと思います。実際、僕も杉山さん、曽我さんに出会いましたし。

みんな人の助けを借りたほうがいいと思います。聞かずにあきらめているともったいない。僕に聞いてくれてもいいし、人に聞くと意外と何でも教えてくれるものです。

僕のところにも、たまに相談にくる人もいます。僕は個人でやっているので話せないということはあまりないので。僕は、代わりに、新しいプロダクトのアイデアやその人の話が聞ければそれで満足です。

KickstarterのNature Remoプロジェクトはあと2週間ほど(6月8日現在)。うまくいけば出荷は8月から。その結果を見て、最初のロットの数を決める予定だそうです。

さらにRemoの先もあります。現在のところRemoに連携するデバイスを開発中とのこと。パワープラグとしてACアダプターの代わりにそれを付けてコンセントに挿し、デマンドレスポンスの際、たとえば電力の需要があがり過ぎていて供給を落としてくれというとき、つながっている先のエアコンを停めるのですが、それを消費電力で計測できるようなります。2016年末にかけて開発を進め、北米で販売を始めるという構想もあるそうです。

http://japanese.engadget.com/2016/06/07/remo-kickstarter-irkit/