歴史は人が生きていく上で欠かせない教養である。しかし、どれだけの人が興味を持っているか。思った以上に少ないし、歴史を学ぶことの重要性を認識している人はさらに少ない。その理由は、暗記ばかりに重点をおき、書物中心に行う勉強に嫌気をさしたからに他ならないからだろう。
私はその概念を真っ向から否定する。歴史は体験をすることで楽しみながら学ぶことができると。
私は歴史を事業にすべく新潟に移住した。その理由は、上杉謙信と戊辰戦争という日本人ならなんとなく知っている歴史的人物が存在し、歴史的戦争が展開された地だからだ。ここで本を書き、史跡案内をすることもできる、でも、それでは今までの自治体がやってきたことと何ら変わらない。では、私がやりたいこととは何か。それは、「戦」である。「戦」と言っても、実際に弓矢鉄砲槍刀で戦うわけではない。チャンバラや忍者体験などのアクティビティ化したエンターテインメントとしての戦である。このエンタテインメント化した戦を通して、参加者にその土地にまつわる歴史を学んでもらうことである。
2つ例を挙げる。1つは、新潟市の戊辰戦争である。戊辰戦争は、鳥羽伏見や会津、函館五稜郭などがよく知られているが、重要な転換点として新潟が挙げられる。実は、新潟は会津藩や長岡藩に武器の補給港になっており、この新潟を支配することが長岡や会津との戦の生命線と考えた新政府軍と死守しようとする奥羽越列藩の間で戦になった。この事実を知っている新潟市民は少ない。では、「戦」を通して地域の戦を知り、学ぶきっかけにしてほしい。全国に広める前に、地域の人たちが、地域の歴史を魅力的に語れないと話にならないと考えるからである。
もう1つは、上越市の春日山城の上杉謙信のプログラムある。謙信は有名だが、上杉家に仕えた忍集団「軒猿」は知られていない。優秀な忍びはその存在を知られてはいけないからである。その点、「軒猿」は優秀だった。その優秀さが、現代では観光に関しては仇になっている。そこで、上越では「軒猿体験」を提供したい。
その内容とは、忍者衣装と上越のアクティビティを組み合わせることである。さらに忍者は、主君よりの密命を完遂せねばならない。これを全て体験してもらうことを考えている。
具体的には、参加者に手裏剣投げや殺陣の体験をしてもらったあと、忍者衣装でボブスレーやパラグライダー、シュノーケリングなどを味わってもらう。これは、忍びのミッションを完遂するための現代風の忍術である。例えば、パラグライダーは「現代版むささびの術」、シュノーケリングは「現代版水遁の術」といった具合である。そして、最後の密命を「敵将を暗殺」ということにすれば、術で敵将の許に近づいた後、殺陣を演じて敵将を討つことで密命達成となる。
こういった内容は一例である。新潟にある歴史を体験することを通じて、地域の歴史を知ってもらう。地域の歴史を知り、シビックプライドを醸成し、地域を誇りに思う人を増やす。地域を誇りに思う人が増え、地域の魅力が増せば、観光客も増え、地元に残る人も多くなる。移住者も増える。
この計画は、歴史を題材にした地域の魅力向上のプログラムである。新潟から始めて、やがては日本全国に広げていきたいと考えている。