touch.plus
テクノロジーとコミュニケーションの視座から、従来のモノ/コト/ヒトを拡張した、新しい体験や価値を持つプロダクトを作るチームです。
サービスについて
スタートアップ情報
投資情報
ニュース
2
メンバー
3

ニュース

2016.04.21
MEDIA
B4f677b7 2bf3 4f1d a5ec 78d9259941e4

「TABO」発進! わずか3cmのタブレットボットが、リアルの世界をさらに熱狂させる

子供の手のひらに収まりそうなほどの小さなロボットがタブレットの上を小気味よく動きまわり、人間とエアホッケーのゲームに興じている――このロボットの名前は「TABO」。2つのステッピングモーターを内蔵し、自らの位置情報を常にタブレットにフィードバックすることが可能な“タブレットボット”として誕生した。ただのおもちゃと思うなかれ、小さなTABOがテクノロジーと人とのコミュニケーションをつなぐバトンになるのかもしれないのだ。

TABOがもたらした感じたことのない“違和感”

いわばコンピューターと人間が対戦するゲームスタイルは従来からあるが、リアルに存在するロボットを相手にバーチャルのゲームをするスタイルは今までなかったように思う。なぜ“思う”のか。見えている光景にさほど意外性はないのだが、実際にプレイしてみるとこれまでに感じたことのない強烈な違和感があったのだ。ゲーム性という点ではまだ開発段階で、対戦相手としては物足りないところもあるのだが、その妙はゲームの内容ではなく、どうやら目の前にいるロボットと“バーチャルのゲーム”を通じてコミュニケーションしているところにあるようだ。ディスプレイの中にいたコンピューターが「TABO」として目の前に出てきた途端、不可思議な体験価値として心が揺さぶられるのだ。
TABOを手がけたのは株式会社バスキュールとプログレス・テクノロジーズ株式会社がタッグを組んだチーム「touch.plus(タッチプラス)」。なぜこの不思議ともいえる物体をつくることになったのか、touch.plusは何を目指しているのか。TABOへのまとまらない感情を抱きながらも、まずはtouch.plus誕生の経緯について紐解いていく。

「バスキュールは広告コミュニケーションを軸にウェブコンテンツから始まり、スマホ、さらにサイネージやテレビに至るまで、いままでになかったインタラクティブなクリエイティブを提案し続け、スクリーンのなかでできる表現においてひとつの節目をむかえたと感じていました。私たちとしてはこれまで蓄積してきたソフトのノウハウをリアルの場に出すことを求めて、昨年、日本テレビさんと共同でテレビの新しい価値を生み出すための『HAROiD』を設立しました。いまはIoTや人工知能、ロボティクスなどテクノロジーが進化してきたこともあり、わたしたちとしてもこれまで蓄積してきたソフトのノウハウをプロダクトとして、リアルの場に出すことができないかと模索していました。そこで出会ったのが、プログレス・テクノロジーズさんです」

こう話すのは、バスキュールのテクニカルプロデューサー中山誠基氏。プログレス・テクノロジーズが過去に携わって開発した製品をみて、デジタルの世界だけでは成し得ない、その想像を超えた形と動きに衝撃を受けたという。
「実はわたしたちもまったく同じことを思っていたんです」と話すのはプログレス・テクノロジーズ取締役 小西享氏。プログレス・テクノロジーズは大手メーカー向けのハードウェア設計・開発サポートを中心として事業展開を行う。

「自分たちは大手メーカーの設計・開発サポートは得意分野ですが、いざ自社で製品を開発しようとしたときに、製品に思いが寄り過ぎてサービスを大事にする力が欠けていたり、ユーザーインターフェイスになるアプリケーションを創造する力が欠けていると思っていました。ゼロベースでこの部分を構築しようとすると、大きな壁となるのでどうしたものかと思案していたところ、2015年に開催されたイベント『SENSORS IGNITION 2015』をきっかけに、共通知人の紹介を通してバスキュールさんと出会うことができました。作品を見ると、まさに私たちが求めているものがそこにあったんです。これは千載一遇のチャンスだと、何が何でも逃すまいと、バスキュールさんからのお話はどんな要求がこようと受け入れるつもりでいました(笑)」

15年間クリエイティブのトップを走ってきたバスキュールと、11年間ハードの分野で最先端を切り開いてきたプログレス・テクノロジーズ。同じものを追い求めていた両社はすぐに意気投合。しかし当初から具体的なアイデアがあったわけではないという。

「ビジネスで起こりがちな、『何かおもしろいことをやろう』の“何か”が決まらないまま実現しない例はよくありますよね。それだけは避けたかったので、お互いが世界観を上手く表現できるものをまずは目指しましょう、ということで定期的にミーティングの場を設けました。業界は違えど一線級でやってきたもの同士、アイデアが出れば形になるのは一瞬だと思っていましたから」(小西)
タブレットに夢中になっている子供たちにリアルのおもしろさを伝えたい

こうしてプロジェクトがスタート。TABOのアイデアのもとになったものは、バスキュールが文部科学省と手がけた、プログラミング学習コンテンツ「プログラミン」だ。

「これまでバスキュールの案件は広告がベースにありました。広告というのはある種のお祭りのようなもので、一瞬の大きな盛り上がりをみせて、あとは時間とともに少しずつ消えていってしまうものです。一方プログラミンは教育の現場やワークショップなど、5年経ったいまでも子供たちに使ってもらっています。ただひとつ懸念していることがありました、それはいまの子供たちはディスプレイの中にだけ関心をもってしまっていることでした。どうにか現実世界のおもしろさも体感してほしい。けれどディスプレイを奪うようなことはしたくない。そう考えたとき、子供たちに寄り添い生活のなかに自然とロボットがいる、そんなものを作れないかと考えたのです。その思いがTABOのコンセプトとなっていきました」(中山氏)

当初のTABOのアイデアは、タブレット上に線を描くと、線に沿ってTABOが動くというものだった。これは色を判定するカラーセンサーがディスプレイ上にある色を読み取る、といったものだが、過去に例があったうえ表現としての自由度は狭く、決して新しいとはいえなかった。そこで中山氏は、人間がタッチしたポイントにTABOがついてくるような仕組みができないかと考え、すぐに小西氏に相談することに。

「タブレット上で、指をタッチしたところをTABOが認識するためにはタッチされた情報をTABOに送信する仕組みが必要で、さらに、追いかけるためにはTABO自身が自分の位置と方角を正確に判断しなければならないということです。それが実現できれば一気に可能性が広がると感じたので、ほとんど決まりかけていたカラーセンサー方式の案を見直して、新たな実現方法を模索していくことにしました」(小西氏)

タブレットにおけるタッチ認識の仕組みは、縦横に微弱な電流が流れているディスプレイを指などの導電性のものが触れたときに起こる、静電容量の変化にある。その仕組みを利用することでTABOはタッチされたことを認識できるようになる。ただ、TABO自身がどうやって自分の位置を把握するか、そこに技術的な壁があった。小西氏のチームがリサーチをかけていったところ大阪大学のある研究論文にたどり着いた。論文をもとに実験を重ね、TABOの足として導電性のプラスチックを3点装着することで、位置情報を正確に取得することに成功。こうしてTABOのプロトタイプが完成した。
「TABOをコントロールしているのはタブレットです。TABOは絶えず自分の位置情報をタブレットにフィードバックし、タブレットはBLE( Bluetooth Low Energy )を使ってその情報をもとに次の命令を出します。結果、TABOとタブレットのあいだに双方向性が生まれ、これまでできなかった多くの表現が可能になりました。そうして出来上がったアプリケーションが『TABO PONG』(冒頭のムービー)です」(小西氏)

そのほかにも、昔なつかしい折り紙の“とんとん相撲”をモチーフにした2台のTABOが戦う『TABO SUMO』や、音楽ユニット口ロロ(クチロロ)とのコラボレーションによる、TABOが時間を刻みながら各国のニュースを読み上げる時報アプリ『TABO NOW』など、次々と新たなアプリケーションを開発。
「お互い違う領域でチームを組んだことで、明らかに仕事のスタイルが変わってきました。最初はTABOの開発はひとつのプロジェクトでしかありませんでしたが、作りこんでいくうちに社会にインパクトを与えられるような大きな可能性を感じ、これはしっかり意思と形をもって宣言しようということになり、今年2月8日にtouch.plus発足とTABOの発表をしました。立ち上げ当初から30名というメンバー構成にも我々の本気度があらわれていると思いませんか(笑)」(中山氏)
2日間で25万人が視聴。人々は“リアル”なTABOに熱狂する

TABOの機能が最大限に活かされたのが、2月頭に開催されたホンダ認定中古車ブランド「ホンダオートテラス」とのプロジェクト「中古車グランプリ」。これは世界初のオンラインで操作可能なミニカーとしてTABOを使用したもので、並べたiPad Proをコースに見立て、ユーザー参加型の1対1のドラッグレース大会。ニコニコ生放送とYouTubeライブを舞台に、1日9時間、2日間にわたって開催された。

「使ったiPad Proの数は36台にも及びました。大量のiPad Proの上でTABOを動かしてみたいという野望が実現しました(笑)。TABOが他にはない特徴は、オンラインで操れるだけでなく、実在する車種に合わせて走行性能を変えられたり、会場に設置された14台のカメラのスイッチングもTABOの現在位置のフィードバックをもとにシステムが自動で制御したりと、状況に応じて機能をカスタマイズできることです。結果、2日間で25万人もの人々に楽しんで頂けました」(中山氏)

イベント中、Twitterで流れてきたあるコメントに中山氏はなるほど、と納得させられたという。「“リモートリアリティ”という言葉を見たときにハッしました。やっていることはディスプレイの中だけでもできることです。ですが、それをあえてリアルなモノをコントロールして体験すると、それが人の心を動かし、今までにない新しい体験価値へと繋がるということがわかったんです。ディスプレイの中だけで完結しているものだった2日間で25万人という数字にはならなかったでしょう。やはり人は“リアル”に熱狂するのです」と中山氏は語る。

となると気になるのはどこで手に入るのか。しかしながらTABOをすぐに販売する予定はないのだという。

「すでに量産できるモデルはあるんですが、これは実際に体験していただかないとその価値をお伝えするのが難しいんです。まずはより多くの人たちに体験してもらって、不思議ともいえるこの感覚を味わって欲しいですね。その体験が伝播し、声として大きくなったときに初めて製品化しようと思っています。場合によっては大手玩具メーカーが先にやってしまうかもしれません。ですが、そのリスクをもってしてもまずは直接触れ合ってもらうことを優先していきたいと考えています。イベントでTABOを出展すると、子供たちは何も説明もないのに夢中になってずっと遊んでくれるので、我々としてもTABOの未来に期待しています。ベンチャーとはちがい、これがダメだったから終わりというわけではありません。我々にはこれまで10年以上やってきた体力があります。TABOが今と未来をつなぐ役割として、子供も大人も分け隔てなく遊べるコンテンツを開発しているので、楽しみにしていてください」(小西氏)

いまの社会を形成しているのは、デジタルテクノロジーが普及する前の世代と、普及してきたころに生まれた世代。今後はTABOを始めとした、ロボティクスやVRなど、デジタルとモノと人が融合する時代に突入する。

「TABOはわれわれの世代が目指してきたゴールのひとつです。ですが、子供たちにとってはこれがテクノロジーとのファーストコンタクトのひとつであり、スタート地点です。そう考えると子供たちが大人になったとき、我々が全く想像もしなかった世界を作ってくれるんだろうなという楽しみがありますね。と同時に、そのなかで生き抜くために戦っていかなければならない恐怖もありますが(笑)」(小西氏)

TABOを受け取った世代がつくる社会とは。未知なる未来への期待と、生き残りをかけた戦いにtouch.plusの挑戦は続いていく。
touch.plus
http://touch.plus

TABO
http://tabo.touch.plus

中山誠基

株式会社バスキュール テクニカルプロデューサー/2008年9月からバスキュールの数々のプロジェクトのテクニカル面を担当し、2015年4月から正式にバスキュールのテクニカルプロデューサーとして参画。デジタルテクノロジーの可能性とアナログでリアルな体感の融合を目指し、多岐にわたるプロジェクトを支えている。

小西 享

プログレス・テクノロジーズ株式会社取締役/世界に展開できるテクノロジーを発信し続ける技術者集団の構築を目指し、2005年8月にプログレス・テクノロジーズ株式会社を数名でスタート。
現在は、クリエイティブカンパニーバスキュールと組んでtouch.plusのブランドを立ち上げ、ユーザーの体験価値が一段上がるプロダクトを多数開発中。スタートアップコミュニティCreww のアドバイザーも務める。